| トピックス 2006.5.10 |
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「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」の改正について(2)
― 金融庁の金融監督及び監督指針改正の概要 ― |
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| 金融インダストリーグループ 公認会計士 大森 茂 |
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1.はじめに
金融庁の金融機関の監督は、平成14年の金融再生プログラム以降、主要行と中小・地域金融機関とに区分し、その特性を踏まえた形で実施されてきている。
中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針については、昨年12月に改正されているが、本稿では、金融庁の金融監督及び監督指針の概要について説明するとともに、この改正の概要について説明を以下に実施したい。
なお、文中意見に係るものはすべて筆者の私見であることを予めお断りしておく。
2.金融監督の全体像
金融監督の目的は、「信用秩序の維持、預金者保護の確保、金融の円滑を図る観点から、金融機関の業務の健全かつ適切な運営を確保することにある」、とされている。
金融監督と金融検査は、まさしく金融機関を対象とする金融行政の両輪であり、金融監督はオフサイトのモニタリング、金融検査はオンサイトのモニタリングと言われる。
平成14年10月30日に公表された「金融再生プログラム(主要行の不良債権問題解決を通じた経済再生)」以降、金融庁の金融機関に対する金融監督等の行政上の取組みは、主要行(あるいは主要行等)と中小・地域金融機関とに分けて実施されるようになった。
これに伴い、監督のためのガイドラインについても、従来は事務ガイドライン(「金融監督にあたっての留意事項について」)として公表されていたが、金融再生プログラム以降、業種や業態ごとに監督指針が作成、整備されることとなった。
以上の流れについて時系列的に記載すると以下のとおりである(なお、以下、各業種・業態とも監督指針が公表されるまでは従前の事務ガイドラインが監督上の指針として活用されてきた)。
平成14年10月30日
平成14年11月29日
平成15年3月28日
平成16年5月31日
平成16年7月27日
平成16年12月24日
平成16年12月28日
平成17年3月29日
平成17年3月29日
平成17年6月24日
平成17年6月24日
平成17年7月15日
平成17年7月28日
平成17年8月12日
平成17年10月4日
平成17年10月28日
平成18年3月31日 |
金融再生プログラム
金融再生プログラム 作業工程表
リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム
中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針について
平成16事務年度中小・地域金融機関向け監督方針の公表について
金融改革プログラム―金融サービス立国への挑戦―の公表について
信託会社等に関する総合的な監督指針の策定について
地域密着型金融の機能強化の推進に関するアクションプラグラム(平成17〜18年度)について
金融改革プログラム工程表の公表について
金融コングロマリット監督指針等について
金融先物取引業者向けの総合的な監督指針の策定について
証券会社向けの総合的な監督指針の策定について
平成17事務年度の中小・地域金融機関向け監督方針の公表について
保険会社向けの総合的な監督指針の策定について
平成17事務年度証券会社向けの監督方針の公表について
主要行等向けの総合的な監督指針の策定について
少額短期保険業者向けの監督指針について |
以上の流れを主要行向けと中小・地域金融機関向けに整理・図解すると以下のとおりとなる。

3.中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針の概要
従前公表されていた「リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム」を踏まえて、平成16年5月に中小・地域金融機関に対する監督方針を「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」(以下、特段の記載がない場合に「監督指針」という)としてまとめている。ガイドラインとしての「監督指針」は、必要に応じて内容を改正するものとされているが、各期の監督方針については事務年度ごとに「平成××事務年度中小・地域金融機関向けの総合的な監督方針」として公表されることとなった。これは、金融検査マニュアルと各検査事務年度ごとの「検査方針及び検査基本計画」の公表と歩調を合わせており、同様の趣旨であると考えられる。
「監督指針」は、地域密着型の営業展開を行い、主要な取引先が中小企業や個人であるといった中小・地域金融機関の特性を踏まえた内容とされており、多面的な評価を行うこととしている。
このような監督方針の確立により、監督当局としては、リレーションシップバンキングの機能強化を図るとともに、イ.地域の中小企業の再生、ロ.地域経済の活性化、ハ.不良債権問題の解決、といった重要課題の解決を企図している。
平成16年5月に公表された「監督指針」においては、多面的な評価としては、具体的には以下の評価項目が挙げられている。
a.有効な経営管理の確立
b.地域貢献
c.中小企業金融の再生
d.顧客保護に関する態勢の確立
評価項目ごとの概要については以下のとおりである。
a.有効な経営管理の確立
金融機関の自主的な努力を尊重しつつ、金融機関の経営管理において役職員がそれぞれの機能を有効に発揮しているかを検証するための監督上の着眼点を整理するとともに総合的なヒアリング等の監督手法・対応を整備した。
b.地域貢献
中小・地域金融機関の特有な項目として「地域貢献」を設け、地域貢献に関する基本的な経営姿勢、地域貢献に関する情報開示、地域貢献が収益力や財務の健全性に与える影響に関し、監督上の着眼点等を整備した。
c.中小企業金融の再生
「中小企業金融の再生の促進」を監督上の評価項目として新たに設け、創業・新事業支援機能等の強化、経営相談・支援機能の強化、早期事業再生に向けた取組み、担保・保証に過度に依存しない融資等に関する取組み状況をフォローアップすることとした。
d.顧客保護に関する態勢の確立
「顧客保護」を監督上の評価項目として新たに設け、顧客への説明態勢、顧客情報管理、預金口座の不正利用防止等について、監督上の着眼点等を整備した。
なお、評価項目以外の重要な内容として、検査部局との連携確保と協同組織金融機関の特性を踏まえた監督の実施が挙げられている。
e.検査部局との連携確保
新たに検査・監督連携会議を設置し、検査部局との適切な連携を確保する。
f.協同組織金融機関の特性を踏まえた監督
協同組織金融機関の業務運営について自主的な努力を尊重しつつ、総代会の機能向上に向けた取組み状況、中央機関に対するヒアリングなど、協同組織金融機関の特性を踏まえた監督上の着眼点等を整備した。
g.その他
新たに、事務リスク、システムリスク、危機管理体制、銀行持株会社等に関する監督上の着眼点を整備した。またノーアクションレター制度における事務手続を明確化した。
4.監督指針の改正(平成17年12月22日改正)
(1)改正の経緯、考え方
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改正の基本的な考え方は以下のとおりとされている。
| a. |
リレーションシップバンキングを中心とした、主要行とは異なる業務特性等を有する中小・地域金融機関を対象とした、財務局職員向けの「オールインワン型手引書」としての位置付けを維持する。 |
| b. |
現行の構成を基本として、主要行向け監督指針の策定を踏まえた改正を行う。 |
| c. |
主要行向け監督指針におけるベスト・プラクティス的な規定のうち、中小・地域金融機関にとって必要性が乏しいと認められるものは、盛り込まない。 |
| d. |
主要行並みの先進的取組みを行う一部の金融機関のみに適用される規定については、敢えて盛り込まず、「必要に応じて主要行向け監督指針を参照する」旨バスケット規定で注記する。 |
すなわち、「主要行等向けの総合的な監督指針の策定について」が昨年10月に公表され、「監督指針」においても参照すべきものとの位置づけとなり、両者の整合性・連携等を図ることも必要となっていた。また、「監督指針」においては、主要行向けに対応した取扱いだけでなく、中小・地域金融機関への監督も対象となり、金融庁(本庁)のみならず財務局レベルでの対応が中心となるため、財務局の担当者が判断できるよう、より詳細な取扱いも書き込む必要があったとされている。 |
(2)改正の概要
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大きく区分して以下の点が今回の改正のポイントと考えられる。
a.他の監督指針等との関係及び「監督指針」の位置づけの整理
b.各評価項目を対象としたもの
c.情報開示(ディスクロージャー)の適切性・十分性
d.銀行持株会社の取扱い
e.行政処分を行う際の留意点
a.については前段で述べたとおり、主要行向け監督指針や検査マニュアルとの関係について、その位置づけを明確にしている。
b.については、監督指針の主要な評価項目(経営管理、経営の健全性等:<収益性、信用リスク、市場リスク、流動性リスク>、業務の適切性<法令等遵守、利用者保護等、システムリスク、事務リスク>)のそれぞれについて、その意義、着眼点、監督手法・対応を明確にしている。このうちシステムリスク等については次回の記事で詳細に記述する予定である。
c.情報開示について、近年の財務内容の開示に係る不適切な事例を発端として、開示やその前提となる財務報告に係る内部統制についての要請の高まりを踏まえた記載が追加されている。また金融機関の場合、既に平成18年3月期より代表者確認書の有価証券報告書への添付等の取扱いが必要とされていることから、「監督指針」上もその取扱いも踏まえた改正となっている。なお、このうち貸出条件緩和債権に係るものについては前回の記事『「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」の改正について』(2006.2.15)に詳細に記載している。
d.については主要行のみならず、地域金融機関においても経営統合、再編が行われてきており、主要行向け監督指針、金融コングロマリット監督指針に対応した形で、持株会社についても監督上の取扱いを明示する必要があり、追加記載されたものである。
e.については各評価項目について監督手法・対応を明示したことに対応して、それを受けた行政処分(各条文に基づく報告命令、業務改善命令、業務停止命令、免許取消し等)について事務の流れを中心に記載している。また、異議申立てや処分取消しといった行政手続法との関係も整理して記載されている。
以下、主要なものについて項目ごとに簡単に記載することとしたい。
(i)当該「監督指針」の位置づけ
昨年公表された主要行向け監督指針までに、様々な監督指針が公表されているが、これを踏まえて整合性や連携を図る必要も出てきたことから、今回の改正で対応している。主要なものとして、以下のものがある。
・「監督指針」が金融機関の自主的な努力を尊重しつつ、その業務の健全かつ適切な運営を確保することを目的とするものであることに鑑み、運用に当たっては、各金融機関の個別の状況等を十分踏まえ、機械的・画一的な取扱いとならないよう配慮するものとする。
(コメント:当該記載については検査マニュアルにも同趣旨のことが記載されており、整合性を図っているものと考えられる。)
・主要行等、リスク管理について特に高度な対応を行うとともに、利用者利便と国際競争力の向上を目指し、業態に相応しい適切な経営管理(ガバナンス)を行うことを必要とし、これを踏まえた監督指針を策定したが、中小・地域金融機関についても、個別項目において言及している場合も含め、その業務や活動範囲、リスク管理態勢の状況等に応じて必要がある場合には、適宜主要行向け監督指針を参照し、これに準じることとする。
(コメント:他の者も含め主要行向けの取扱いを前提として中小・地域金融機関向けに特に考慮すべき事項をリマインドするようなつくりとなっており、主要行向け監督指針の公表により、同様の位置づけとしたものと考えられる。)
・検査マニュアルとの関係については、検査マニュアルが検査官の手引書という位置づけであり、同時に監督上も有効な着眼点を示すものとなっており、さらに監督部局がオンサイト(検査)、オフサイト(監督)の双方のモニタリングから得た情報を元に行政処分や監督上の措置を行うこととしていることから、検査マニュアルに加えて、監督事務のための指針、マニュアルが必要であり、今般監督部局向け手引書として監督指針が作成された旨が明示されている。
(コメント:検査マニュアルの位置づけと目線を合わせたものと考えられる。)
・金融機関に対して監督上の明確なルールを示し、行政処分等の予見可能性についても明確にすることが重要であり、行政処分等の前提となる監督上の評価項目、オフサイトモニタリングや不利益処分及び申請等に対する行政処分等の事務処理方法、法令等の解釈等について監督指針として取りまとめ、公表するものとしている。
(コメント:「監督指針」として公表することにより、検査マニュアルと同様、まず金融機関における経営管理や業務の適切性改善等の努力を促し、これにより銀行サイドの実態の改善、監督当局としてのモニタリングの実効性向上に資することを意図しているものと思われる。)
・地域金融機関であり、かつ銀行持株会社の監督指針については、「金融コングロマリット監督指針」及び地域金融機関向けの総合的な監督指針」の両方の規定に準じることを基本とすることとされている。
(ii)各評価項目に関するもの
a.経営管理(ガバナンス)
経営管理については、その組織の各構成要素(組織としての機関、代表取締役、取締役、取締役会、監査役、監査役会、内部監査部門、外部監査等)がそれぞれ本来求められる役割を果たしていることが前提となるとしているが、今回の改正では以下の点が追加されている。
・代表取締役には、財務情報その他の企業情報を適正かつ適時に開示するための内部管理体制を構築していることが要請されている。
(コメント:代表者確認書制度を踏まえた対応を改めて記載したものと考えられる。財務報告に関する内部統制については今回の改正の重要なポイントである。)
・代表取締役及び取締役会は、内部監査の重要性を認識し、定期的にその有効性を検証していることを要請されるとともに、監査役監査や金融検査の指摘事項を踏まえた実効性ある監査に積極的に取り組むことが要請されている。
(コメント:経営管理のレベルアップのために、経営管理のPDCAサイクルを機能させることが重要であるが、その中で内部監査、監査役(会)、当局検査といったモニタリング、監査機能を重視し、対応に取り組むことが重要である旨記載されている。同時に、その実現により監督当局として銀行のモニタリングの実効性も上がることが期待されている。)
・代表取締役及び取締役会は、同時に監査役監査の重要性及び有用性を十分認識し、その有効性確保のための環境整備が重要であることを認識することが要請されている。
(コメント:特に会社法施行に伴い、法令上も内部統制の整備運用が要請されることとなったが、その監査主体としての監査役監査の重要性を指摘しており、監督当局としてもこれまで以上の位置づけでモニタリングを実施していくとの考えである。)
・社外取締役及び社外監査役については、その選任にあたり、独立性、適格性が検討されていることが必要であり、また社外取締役は、経営の意思決定の客観性を確保する等の観点から自らの意義を認識し、積極的に取締役会に参加することが要請されている。
(コメント:経営の透明性の確保、ガバナンスの実効性確保の観点からは、委員会等設置会社への移行も考えられるが、監査役設置会社においても社外取締役や社外監査役を選任することにより、同様の効果が得られる。また、社外取締役、社外監査役がガバナンス向上に貢献するためには適格者を選任するとともに、積極的な経営管理への関与が必要であると思われる。)
・法令等遵守態勢、リスク管理態勢及び財務報告態勢等の内部管理態勢(いわゆる内部統制システム)を構築することは、取締役の善管注意義務及び忠実義務の内容を構成することを理解し、その義務を適切に果たすことが要請されている。同時に監査役は業務監査の職責を担っていることから取締役の内部管理態勢(いわゆる内部統制システム)の構築を行っているか否かを監査する職務を担っている。
(コメント:これまで内部管理態勢として金融検査マニュアル等においても取り扱われてきたが、これまでの法令等遵守態勢、リスク管理態勢に加えて財務報告に係る管理態勢を加えて、内部統制システムの概念整理を行っている。これにより、いわゆるCOSOフレームワークといった内部統制概念との整合性が監督指針上も図られている。)
・実効性ある外部監査が、銀行の業務の健全かつ適切な運営確保に不可欠であることを十分認識し、有効に活用することが必要となること、また外部監査が有効に機能しているかを定期的に検証するとともに、外部監査の結果等について適切な措置を講じていること、関与公認会計士の監査継続年数等が適切に取り扱われていることが必要となる。
(コメント:ガバナンス向上の前提として、既に金融検査マニュアルにおいても会計監査人等に要請されているが外部監査が、そもそも実施が不可欠である会計監査も含めて、重要な機能を果たしていること、独立性の観点も含めて、外部監査の機能の有効性を検証することが重要である、とされている。)
・外部監査機能と内部監査部門または監査役・監査役会の連携が有効に機能していることが要請されている。
(コメント:チェック機能としての監査機能が有効に機能することは重要であり、そのためにはそれぞれの監査機能が個々に対応するのではなく、その連携が監査機能の有効性自体を高めることとなるため、監督上も重視されている。またヒアリングの対象項目にもなっている。)
b.経営の健全性にかかる着眼点については収益性、信用リスク、市場リスク、流動性リスクの各項目ごとに着眼点や監督手法・対応規定の追加されている。リスク管理については、リスクの意義を明確にするとともに、必要とされるリスク管理について中小・地域金融機関の経営環境を踏まえて記載している。
・収益性についての着眼点としては、経営陣は業務純益、経常利益、当期利益等の量的指標、及び利鞘、ROA、ROE、OHR等の効率を表す指標等を参考に、また管理会計を用いて、自行の収益性を総合的に分析・評価していること、さらには、これに基づく収益管理態勢の改善に組織的に取り組むため、役職員の権限と責任分担の明確化等が図られていることを要請している。
(コメント:収益管理は単に実績把握と次期の計画策定のために実施するものではなく、経営管理の実績を収益面で把握し、評価するためのものである。したがって、評価の基礎となる責任分担や組織・権限との対応を明確にしたうえで、それに対応した管理会計を構築することで、真の収益管理が可能となり、経営管理にも役立つものとなるものと思われる。また、経営資源の投入やビジネスポートフォリオの取捨選択といった観点でも当該評価が重要と考えられる。)
・信用リスクについては、信用リスクの意義として「信用供与先の財務状況の悪化等により、保有資産(オフバランス資産を含む)の価値が減少ないし消失し、銀行が損失を被るリスクをいう」とし、具体的な信用リスク管理として、銀行の経営方針に沿った戦略目標を踏まえた信用リスク管理の方針を取締役会が定めており、営業推進部門と審査管理部門の分離等適切な与信管理、審査管理体制を整備していることを要請している。特に大口先の継続的なモニタリングや、自己査定の実施や事業再生に当たっての十分な検討を行う前提として、与信先の再建計画の検証を慎重に実施する態勢が構築されていることを重視している。
(コメント:信用リスク管理は引き続き重要な課題である。不良債権問題は一段落したとはいえリスクをとりつつ収益を拡大するためには、信用リスクコストのコントロールが極めて重要である。地域金融機関はポートフォリオが偏っていることも比較的に多く、また、特定大口先への集中度合いが高い場合には、リスクが高いものとして十分な対応が必要となる。ポートフォリオ管理、リスク軽減策も含めた信用リスク管理が必要となる。同時にバーゼルIIへの対応上も信用リスクが中小・地域金融機関にとって最も影響が大きいリスクカテゴリーであり、十分な対応が必要となる。)
・市場リスクについては、市場リスクの意義として「金利、有価証券等の価格、為替等の様々な市場のリスクファクターの変動により、保有する資産(オフバランス資産を含む。)の価値が変動し、銀行が損失を被るリスク」とし、具体的な市場リスク管理として、銀行の経営方針に沿った戦略目標を踏まえた市場リスク管理の方針を取締役会が定めており、収益目標等に見合った適切な市場リスクの管理態勢を整備していること、ポジション枠(金利感応度や想定元本等に対する限度枠)、リスクリミット(VaR等の予想損失額の限度枠)、損失限度の設定に際して、取締役会が基本的な考え方を明確に定めるとともに、当該枠について定期的に見直していること、ポジションやリスク量等についてリスク管理部門が適切に把握し、報告していること、などを要請している。さらに仕組債等の複雑なリスク特性を有する商品への投資を行っている場合、経営陣が商品のリスク特性を把握し、適切なリスク管理態勢を整備していることが重要であるとしている。
(コメント:市場リスクについても特段目新しいことは記載されていないが、これまでの低金利下で、仕組債やその他デリバティブが組み込まれた金融商品に対する運用が増加しており、そのリスクを十分把握、管理することが必要である。特に融資残高を伸ばせない環境下では有価証券投資が増加する傾向にあり、1件あたりのロットの大きい商品への投資も見受けられるため、リスクの識別と継続的なモニタリングが重要である。)
・流動性リスクについては、「銀行の財務内容の悪化等により必要な資金が確保できなくなり、資金繰りがつかなくなる場合や、資金の確保により通常よりも著しく高い金利での資金調達を余儀なくされることにより銀行が被るリスク(資金繰りリスク)と、市場の混乱等により市場において取引できなかったり、通常よりも著しく不利な価格での取引を余儀なくされることにより損失を被るリスク(市場流動性リスク)からなる」ものとしている。具体的な流動性リスク管理については、銀行全体の経営方針に沿った戦略目標を定めるにあたり、資金繰りリスクが考慮されていること、資金繰り管理部門とリスク管理部門を分離するなど十分な牽制機能が発揮される体制を整備していること、資金繰りの状況を資金繰りの逼迫度に応じて区分し、各区分時における管理手法、報告方法、決済方法等の規定を取締役会等の承認を得ていること、即時売却可能あるいは担保として利用可能な資産を保有するなど、危機時を想定した調達手段を確保していること、などを要請している。
(コメント:流動性リスクについても特段目新しいものはないが、市場流動性リスクについては、前述の市場リスクの仕組債等と同様の趣旨である。)
c.業務の適切性
法令等遵守、システムリスク関連(システム統合、インターネットバンキング等を含む)、事務リスク、利用者保護等について、いくつかの重要な点について記載が追加されている。
・法令等遵守のうち、役員による法令等違反行為については、当該個人の責任だけでなく法人としての責任も問われる重大な問題であり、信用失墜・風評等により銀行の経営に重大な影響を及ぼすこと、また、銀行は公共性を有し、地域経済において重要な機能を有することから、顧客等とのリレーションに基づく信頼関係を阻害するような問題が発生した場合には、地域の金融システムに大きな影響を及ばす恐れがあることを十分理解する必要があるとされている。また検査の結果、役員により組織的な法令違反の疑いがあると認められた場合には、厳正な内部調査を行うことを要請し、事案によっては弁護士(顧問弁護士を除く)、外部専門家等の完全に独立した第三者による客観的かつ厳正な調査を行うことが要請されており、銀行法24条報告を求めるものとしている。
(コメント:金融庁が公表する行政処分の内容からも、引き続き法令等遵守違反が多く指摘されている。中には経営者による違反も見受けられる。金融検査マニュアルの公表、行政処分内容の公表により、経営者の法令等遵守に対する意識は高まっているはずであるが、金融検査における指摘事項の状況からも、実際には必ずしも十分コントロールできている状況とまでは言えない。特に役員による組織的な法令違反の疑いがあると認められる場合には、内部調査も厳正に行う必要があり、利害関係のない弁護士等の関与により厳正さを確保することも必要となることが記載されている。)
・アンタイ・マネーロンダリング、組織犯罪法対応、本人確認法対応については詳細な記述により、その遵守を要請している。
(コメント:今回新たに記述が加わっているが、その重要性等についてはこれまでの行政対応の中で十分認識され、対応されているものと思われる。)
d.利用者保護等
特に顧客に対する説明責任を重視しており、契約時点における商品または取引の内容及びリスク等に係る説明については重要であるとしており、商品内容、リスクとともに、最悪のシナリオを想定した場合の想定最大損失額や住宅ローン利用者に対して金利変動リスク(将来金利上昇時の返済額の目安の提示等)の説明を十分に行うよう要請している。
銀行は取扱商品の範囲が拡大し、投資信託等のリスク商品も取り扱っており、預金等との誤認がないよう適切な説明をすることが必要となると同時に、独禁法の観点からは貸し手としての優越的地位の濫用と誤認されかねない説明を防止する体制が必要とされている。
保険募集に関しても、法令等の遵守、保険商品及び契約に関する正確な説明ならびに顧客情報の取扱い等の適切な保険募集態勢の確保が必要であるし、銀行の影響力を行使した販売、銀行取引に影響を与えないことの説明のみ実施など契約者保護に支障となりうる事態を未然に防止するための態勢の整備が要請され、特に、保険募集に係る取引強制、優越的地位の濫用、抱き合わせ販売等の不公正な取引が認められる場合には独禁法の問題にもなりうるため、特にこれらについて未然防止する体制整備が重要である。
(コメント:投信販売に始まり、証券仲介業、保険窓販等、銀行窓口における取扱い商品拡大は銀行にとってはワンストップサービスによる収益拡大を指向しているが、窓口行員のリスク認識と顧客サイドの商品知識の双方がないと事後不公正取引として取り扱われるリスクも高まる。最近では顧客説明用のマテリアルを使用することが通常となっているが、販売する銀行側の意識のレベルアップ、及びその継続が重要である。)
事務リスクについては大きな変更はない。
システムリスクについて次号において詳細に説明する予定であるため、説明は次号に譲りたい。 |
(3)オフサイドモニタリングの年間スケジュール
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定期的なヒアリングとして、トップヒアリングに加え、内部監査ヒアリングも実施されることとなった。
内部監査ヒアリングは金融検査においても初期段階で金融機関のリスクプロファイルやリスク管理状況を把握し、内部管理態勢の実情を把握するため、極めて重要な位置づけとされているが、オフサイトモニタリングにおいても同様に重要なものとされている。リスク管理やコンプライアンスの状況等について年1回はヒアリングを実施されているとしているが、内部監査の監査計画、実施状況、問題点の是正状況等についてもヒアリング対象とされている。
(コメント:内部監査は当局検査の指摘事項のフォローアップや当該金融機関の経営課題に関連する事項についても監査対象となることも多く、監督当局としてはその結果を十分活用することを意図しているものと考えられる。) |
(4)情報開示(ディスクロージャー)の適切性・十分性
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情報開示の充実は、銀行の経営の透明性を高め、市場規律や自己責任の基礎として重要なものと取り扱われている。そのためには経営内容がより正確に反映された財務諸表が作成されることがその前提となる。同時に最近のディスクロージャーや内部統制に対する認識あるいは期待の高まりを反映し、銀行に対しては一般事業会社に先駆けて代表者確認書の有価証券報告書等への添付が平成18年3月期より要請されている。このような状況をも踏まえて監督指針も改正されている。
a.財務報告に係る内部統制
適切な情報開示の前提となる財務諸表等が適正に作成される内部統制(内部監査を含む)を構築するとともに、内部統制が機能していたかを経営者自らが確認し、そのシステムを不断に見直すことにより、銀行経営のガバナンスも発揮されるものとされている。すなわち有価証券報告書提出会社である銀行においては代表者確認書の有価証券報告書等への添付が要請され、当該代表者確認書には財務報告に係る内部統制についての内部監査の有効性を確認した結果も記載することとされている。なお代表者確認書の要請は有価証券報告書を提出している銀行だけでなく、その他の銀行、協同組織金融機関、労働金庫等の業態の金融機関にも求められている。
(コメント:平成21年3月期より内部統制監査制度が導入される予定である。金融機関はこれまでリスク管理態勢あるいは法令等遵守態勢といった検査マニュアル対応の視点から管理態勢の充実に取り組んできているが、今後はこれに加え財務報告の観点で内部統制を整備・運用していくことが肝要となる。また新会社法の施行により、財務報告以外の内部統制について整備するとともに監査役(会)の監査を受ける必要があり、連結ベースの内部統制あるいは管理態勢の整備が必要な状況である。)
b.銀行に求められる開示
法律で求められるものも含め、さまざまな形で財務諸表等、銀行の財務内容の開示が実施されている。
・銀行法上の開示
銀行法第20条に基づき貸借対照表等の公告、銀行法第21条に基づき「業務及び財産の状況に関する説明書類の縦覧等」(=ディスクロージャー誌)が開示されることが要請されている。
・証券取引法上の開示
株式を公開している銀行等については、投資家の判断を誤らせないように法令等に基づき適切な開示がなされる必要があるが、当該適切な開示とは、財務諸表の正確性が確保されているだけでなく、コーポレートガバナンスの状況、事業等のリスクや財政状態及び経営成績の分析といった情報開示の適切を含むものとされている。
・任意開示
これまでの法令に基づく開示以外として、東京証券取引所の要請による開示(決算開示だけでなく、四半期開示、適時開示が要請されている)やIR(インベスターズリレーション)活動や広告等の任意の開示も有用であり、いずれもインターネット上で容易に入手することが可能である。
(コメント:金融機関の場合、その公共性から他業種に比し、より多目的な要請から、詳細で多種類の情報開示が要請されている。財務諸表の正確性はもちろんのこと、それ以外の情報、IR資料についても、適切な財務報告に係る内部統制の下、作成され、公表されるような仕組みを構築することが重要であると考えられる。)
・リスク管理債権
開示のうち、特に不良債権の開示(=リスク管理債権の開示)が最重要な開示である。特に貸出条件緩和債権についてはその開示対象範囲についてこれまで実務上も混乱があったが今般の監督指針の改正により整理され、明確になったと考えられる。
(コメント:当該内容については前回の記事内容に詳述されているので参照いただきたい。) |
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