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トピックス 2007.8.29
金融商品取引法の概要(2)
金融インダストリーグループ 公認会計士 星 知子
1.はじめに
今回は、『金融商品取引法の概要(1)』(2006.8.30)に引き続き、2007年9月30日施行予定の「金融商品取引法」の概要として、
●金融商品取引法施行までの経緯・時期
●金融商品取引法の対象商品・取引の拡大
●金融商品取引法の対象業務の横断化・業務内容に応じた参入規制の柔軟化
●顧客の属性に応じた行為規制の柔軟化
についてご説明します。なお、本稿中の意見に係るものは全て筆者の私見であることをお断りします。

2.金融商品取引法施行までの経緯・時期
今回の証券取引法改正は2006年6月に公布され、そこで多数の事項が改正されています。そして、その改正の施行も複数の時期に亘っています。
これまでに、罰則強化、公開買付制度、大量保有報告制度に関する部分は既に施行されています。後に残った部分が、いわゆる「投資サービス法制」と呼ばれる部分で、ここで法令の名称が「金融商品取引法」に変わります。この施行は、法律上は公布後1年6カ月以内(2007年12月13日までの政令指定日)です。具体的には、当該施行日を定める政令により、2007年9月30日とされました。

<図表1>金融商品取引法施行までの経緯・時期
図表1
図表1
(出所)金融庁ホームページ


【コラム(1)】金融商品取引法の条文配列と政・府令
金融商品取引法では、証券取引法の条文配列は原則として維持され、条文番号も変わっていません。例えば、1条が目的規定、2条が有価証券概念、そしてその概念を入口として法律の適用範囲を画するという配列は以前の通りです。また、条文が増えた場合や移動した場合は、枝番号で足されています。これに対し、新会社法では商法の条文番号が全部変わってしまいました。
現在の証券取引法は、法律があり、政令にあたる施行令が1つありますが、省令にあたる内閣府令は20以上もあります。これに対し、銀行法や保険業法をみると、法律があり、政令が1つあり、内閣府令は1つだけです。これについて、2007年8月に公布された金融商品取引法制に関する政令・内閣府令等では、「整備政令」があり、内閣府令は7本新設された上で、現行内閣府令が整理統合されています。この他に共管命令は3本新設されています。

<図表2>
図表2
(出所)金融庁ホームページ


3.金融商品取引法の対象商品・取引の拡大
金融商品取引法は、「有価証券の取引」と「デリバティブ取引」に適用されます。金融商品取引法は「金融商品」の定義を置きましたが、これはデリバティブ取引を定義するための技術的概念として置かれたものです。金融商品取引法は、「金融商品の取引」に適用されるわけではありません。

金融商品取引法の対象商品・取引について、図表3をご参照下さい。左上は法律であり、下が政・府令事項です。金融商品取引法の対象商品・取引について、法律のレベルでは、限定列挙されている証券取引法の対象となる商品・取引の範囲を拡大しました。拡大の主な内容は、集団投資スキームに包括的な定義を置いたことと、デリバティブ取引を幅広く定義したことです。

集団投資スキームは、他の人から資金を集めて、何らかの事業を行ってリターンを分配すると、「集団投資スキーム」に該当するという包括的な定義になりました。法律では、出資者全員が関与するもの、収益をそもそも分配することを予定していないもの等を除外しています。具体的な適用除外項目は、政・府令事項で定められます。

デリバティブ取引について、現行法の規制対象は、(1)証券取引法における有価証券デリバティブと、(2)金融先物取引法における金融先物取引です。金融商品取引法では、「デリバティブ取引」の定義を置き、有価証券デリバティブと金融先物取引を統合したほか、現行法で規制対象としていないデリバティブ取引を新たに規制対象に追加しています。なお、金融先物取引法は廃止され、金融商品取引法に吸収されます。

<図表3>金融商品取引法の対象商品・取引の拡大
図表3
(出所)金融庁ホームページ


4.金融商品取引法の対象業務の横断化・業務内容に応じた参入規制の柔軟化
金融商品取引法の対象業務の横断化・業務内容に応じた参入規制の柔軟化について、図表4をご参照下さい。上半分は法律であり、下半分が政・府令事項です。

現行、各業法により、証券業、金融先物取引業など縦割り規制されているもの(上左)を、一旦「金融商品取引業」と横断化した上で、「第一種金融商品取引業」、「投資運用業」、「第二種融商品取引業」、「投資助言・代理業」という4つの分類で参入条件に差を設けています(上右)。

政・府令事項で、最低資本金要件や登録拒否要件の審査基準等の参入規制を置いています。また、国、地方公共団体、日銀の行為を、この法律の趣旨に照らして規制の必要のないものとして除外しています。プロ顧客向けのデリバティブ取引(有価証券関連デリバティブ取引を除く)も規制対象から除外しています。これについては、現行の金融先物取引法にある資本金3千万円以上のプロ顧客の場合には業規制を適用しないという考え方を引き継ぎながら、金額を10億円以上と厳格化しています。

<図表4>
図表4
(出所)金融庁ホームページ


5.顧客の属性に応じた行為規制の柔軟化
「顧客の属性に応じた行為規制の柔軟化」は、いわゆるプロアマ区分と呼ばれているものです。図表5の説明の上半分は法律であり、下半分が政・府令事項です。

現行の証券取引法等に基づく業者の行為規制は、投資家の属性に係りなく一律に適用されますが、金融商品取引法では、投資家を特定投資家(いわゆるプロ)と一般投資家(いわゆるアマ)に区分し、この区分に応じて金融商品取引業者等の行為規制の適用を行うことにより、規制の柔軟化(柔構造化)を図ることとしています。

顧客の属性に、4つの類型を設けました。

(1)の類型(一般投資家への移行不可の特定投資家)というのは、適格機関投資家、国、日銀であり、今回このうち適格機関投資家の範囲を大幅に拡大しています。

(2)の類型(一般投資家への移行可能な特定投資家)は、プロ投資家ですが、業者は、プロ投資家に対して、一般投資家への移行を選択できるという告知をする義務があります。図表5の左下の内閣府令では、この対象を、上場会社と資本金5億円以上の大会社等としています。

(3)の類型(特定投資家への移行可能な一般投資家)は、それ以外の中小法人です。

(4)の類型(特定投資家への移行を選択できない一般投資家)は、個人ですが、一定の富裕層などについてはプロ扱いを選択できる((3)の類型)ことになっています。図表5の右下には、プロ扱いを選択できる内閣府令の基準が示されています。

業者がアマとの間で取引を行う場合には、投資者保護の観点から十分な行為規制を適用します。プロとの間で取引を行う場合には、例えば契約締結前の書面交付義務等、情報格差の是正を目的とする行為規制の適用を除外しています。但し、損失補てん等の禁止等、市場の公正確保をも目的とする行為規制は適用除外しないこととしています。

<図表5>
図表5
(出所)金融庁ホームページ

【コラム(2)】金融商品取引業者向けの総合的な監督指針
金融庁は、金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針を2007年7月に公表しました。ここでは、業法ごとに縦割りになっていたものを横断的に統合することが基本的な方向となっており、基本的には現行の監督指針の内容が承継されています。

これまでと、例えば以下のところが異なります。
●金融商品取引法の府令における第一種金融商品取引業での人的構成要件の審査基準(役員等の適格性に関するFit & Proper原則)について、ここで監督できることになりました。

●投資運用業について、不動産ファンド運用業を巡って生じた様々な問題を考慮して、「業務の適切性」についてのいくつかの監督の上での注目点が加わっています。

●第二種金融商品取引業について、集団投資スキームの持分の販売・勧誘が規制対象になっています。

<図表6-1>
図表6-1
<図表6-2>
図表6-2
(出所)金融庁ホームページ


6.おわりに
金融商品取引法は、日本の証券市場、証券取引のルールを全面的に改正する大変大きな法改正です。この金融商品取引法の施行は2007年9月30日とされ、併せて政・府令が2007年8月に公布されました。金融商品取引法には、政・府令に内容を委任している規定が少なくないため、これら政・府令の内容もまた注目されます。

(参考文献)金融庁ホームページ
以上
 
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