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トピックス 2008.8.27
金融商品取引法等の一部を改正する法律(平成20年6月13日公布)の概要
金融インダストリーグループ 公認会計士 藤村 誠
1.改正の背景
安倍政権における経済財政運営の基本方針となる「経済財政改革の基本方針2007 〜「美しい国」へのシナリオ〜」(以下、「基本方針2007」)は平成19年6月19日に閣議決定されています。この基本方針2007において新しい日本の国づくりへの課題として、成長力強化と財政健全化を両輪とした一体的改革が挙げられています。その上で、生産性を上昇させるための包括的な取組、日本経済のオープン化の促進、行政・財政システムの革新、及び将来の生活を安心して展望できる土台づくりの4つが一体的改革に必要であるとされています。このうち、日本経済のオープン化、すなわちグローバル化改革の一事項である金融・資本市場の競争力強化については、その具体的手段として、取引所等の市場インフラ(フィールド)、金融機関や機関投資家(プレーヤー)及び市場監視(審判)を包括する総合的なプランである「金融・資本市場競争力強化プラン」を、平成19年内を目処に金融庁が取りまとめ、策定することとされました。この「金融・資本市場競争力強化プラン」の策定に際しては、取引所の競争力の強化、銀行と証券に係るファイアーウォール規制の見直し、準司法機関の強化による市場監視体制の整備及び競争力強化に向けた総合的な取組を特に重点的事項として取り上げることとされました。

「基本方針2007」での決定に基づき、金融庁により平成19年12月21日に「金融・資本市場競争力強化プラン」(以下、「強化プラン」)が取りまとめられました。この強化プランにおいて、我が国金融・資本市場の競争力を強化するために(1)信頼と活力のある市場の構築、(2)金融サービス業の活力と競争を促すビジネス環境の整備、(3)より良い規制環境の実現、及び(4)市場をめぐる周辺環境の整備が求められており、これらについて総合的な取り組みを進めていくこととされました(図表1、図表2参照)。
このうち、「(1)信頼と活力のある市場の構築」では、市場参加者が安心して取引を行うとともに内外の投資者や資金調達者等の多様なニーズにこたえることができるよう、公正性・透明性を確保しつつ、多様性・利便性を高める市場インフラを整備することがその課題です。また、「(2)金融サービス業の活力と競争を促すビジネス環境の整備」では、時代のニーズにマッチし、金融サービス業が内外の利用者のニーズに的確に応え、多様で質の高い金融サービスの提供が可能となるような制度的枠組みを整備することがその課題です。これらの課題に対する取組みを進めていく一環として、金融商品取引法等の一部を改正する法律案が平成20年3月4日提出され、平成20年6月6日に成立いたしました。これにより、金融商品取引法を含め、関連する法律の改正が行われています。

図表1
「金融・資本市場競争力強化プラン」の基本的な考え方

図表2
「金融・資本市場競争力強化プラン」の概要
出所:金融庁Webサイト

2.改正の概要
「1.改正の背景」において述べたように、金融商品取引法等の一部を改正する法律は、(1)信頼と活力のある市場の構築、及び(2)金融サービス業の活力と競争を促すビジネス環境の整備という課題への対応に資することを主たる目的としております。以下では、この目的に沿って今回の改正の要旨をみていきます。

(1)信頼と活力のある市場の構築
我が国の市場をより魅力あるものとし競争力を強化するためには、内外の投資者や資金調達者等の様々なニーズに応えるべく、多様な取引を可能とする確実かつ利便性の高い市場インフラを整備し、その機能を高める必要があります。また、同時に、市場の公正性・透明性をより高めかつ確保し、市場の信頼を強固にしていく必要があります。このため、主に以下の改正が行われています。

1)多様な資金運用・調達機会の提供
我が国市場をより魅力的で競争力のあるものにしていくため、取引所における取扱商品の多様化を図るとともに、プロの投資者のための自由度の高い取引の場を整備すること等により、多様な資金運用・調達機会の提供を可能とするための改正が行われています。
  ア)取引所における取扱商品の多様化
我が国の取引所又はそのグループ等において、総合的で幅広い品揃えを可能とする制度整備等を行い、取引所の競争力を強化するとともに、利用者の利便向上を図るために、主に以下の改正を行っています。

・ETF(上場投資信託)の多様化
委託者指図型投資信託について、金銭信託の例外である投資信託の範囲を、「主として換価の容易な資産に対する投資として運用することを目的する投資信託」に拡大しています。(投資信託及び投資法人に関する法律第8条関係)
投資運用業者が投資信託又は投資法人スキームにより商品投資運用を行う場合には、商品投資顧問業の規制を適用除外としています。(商品投資に係る事業の規制に関する法律第40条関係)

・金融商品取引所と商品取引所の相互乗入れのための枠組みの整備
金融商品取引所は、認可を受けた場合には、本業の遂行を妨げない限度において、算定割当量に係る取引その他の金融商品の取引に類似する取引を行う市場の開設及びこれに附帯する業務を行うことができることとしています。(金融商品取引法第87条の2関係)

イ)プロに限定した取引の活発化 ― プロ向け市場の枠組みの整備
金融・資本市場の活性化、国際競争力の強化を図っていく観点から、プロの投資者については、一般投資者と区別した上で、自己責任に立脚した、より自由度の高い取引を可能とするため、主に以下の改正を行っています。
特定投資家向け有価証券等の発行者に対する法定開示規制の免除等(金融商品取引法第2条第3項、第4項関係、同法第4条第3項関係、同法第23条の13第3項関係、投資信託及び投資法人に関する法律第13条関係)
特定投資家向け有価証券等に関する情報(特定証券情報)及びその発行者に関する情報(発行者情報)の提供(金融商品取引法第27条の31関係、同法第27条の32関係)
虚偽の特定証券情報等に係る損害賠償責任規定の整備等(金融商品取引法第27条の33〜第27条の35関係)
特定取引所金融商品市場(会員等が特定投資家等以外の者から委託を受けて有価証券の買付けを行うことが禁止される市場)の開設等に関する規定の整備(金融商品取引法第117条の2関係、同法第85条、第102条の19関係、同法第67条、第67条の12関係)
特定投資家向け有価証券の取引に係る行為規制(金融商品取引法第40条の4、第66条の14の2関係、同法第40条の5関係)
PTS業務(私設取引システム運営業務)の要件(金融商品取引法第2条第8項第10号関係)

2)市場の公正性・透明性の確保
金融・資本市場の信頼性の確保は、市場機能が十全に発揮されるために不可欠の前提となるため、市場の公正性・透明性の向上を図ることにより、内外の投資者等からの信頼を強固にしていく必要があります。このため、違反抑止策や市場監視機能の強化等のための改正が行われています。
  ア)課徴金制度の見直し
市場の公正性・透明性を高め、市場に対する信頼を確保するには、違反行為に対するより実効的な抑止が必要となります。このため、金融商品取引法上の課徴金制度について、その対象範囲、金額水準、除斥期間等の見直しを行い、主に以下の改正を行っています。
現行の課徴金の算定方法の見直し
発行開示書類、継続開示書類等の虚偽記載、風説の流布・偽計、現実売買による相場操縦及び内部者取引の課徴金の金額水準の見直し(金融商品取引法第172条の2関係、同法第172条の4関係、同法第173条関係、同法第174条の2関係、同法第175条関係)
課徴金の対象範囲の見直し
発行開示書類・継続開示書類の不提出、公開買付開始公告の不実施等、大量保有報告書等の不提出等、特定投資家向け有価証券に係る特定証券情報等の虚偽等、仮装・馴合売買、及び違法な安定操作取引を課徴金の対象に追加(金融商品取引法第172条関係、同法第172条の3関係、同法第172条の5、第172条の6関係、同法第172条の7、第172条の8関係、同法第172条の9〜第172条の11関係、同法第174条関係、同法第174条の3関係)
課徴金制度のその他の改正
除斥期間を現行の3年から5年に延長(金融商品取引法第178条関係)
発行開示書類の虚偽記載等の一定のものについて、違反者が当局による調査前に申告を行った場合には、課徴金の額を半額に減額(金融商品取引法第185条の7第12項関係)
違反者が過去5年以内に課徴金納付命令等を受けたことがある場合には、課徴金の額を1.5倍に増額(金融商品取引法第185条の7第13項関係)

イ)市場監視部門の体制強化
市場の公正性・透明性を高めていくため、規制当局による監督や市場監視体制のより一層の充実が必要となるため、主に以下の改正を行っています。
金融商品取引法等に違反する行為を行い、又は行おうとする者に対する禁止又は停止の命令に係る裁判所への申立て権限を証券取引等監視委員会に委任(金融商品取引法第194条の7関係)

(2)金融サービス業の活力と競争を促すビジネス環境の整備
金融グループが自ら創意工夫を凝らしながら、グループ全体として顧客に対しより質の高いサービスを提供することが求められているため、金融グループとしての的確なリスク管理を通じた金融機関の経営の健全性を確保し、利益相反による弊害や銀行等の優越的地位の濫用の防止に留意しつつ、これを可能とするために、新たな時代のニーズにマッチした制度的枠組みを整備していく必要があります。このため、主に以下のような改正が行われています。

ア)銀行・証券・保険会社間のファイアーウォール規制の見直し
顧客利便の向上や金融グループの統合的内部管理の要請に応える観点から、銀行・証券・保険会社間のファイアーウォール規制を見直し、新たな規制の枠組みを導入するため、主に以下の改正を行っています。
>取締役等の兼職規制の撤廃等(金融商品取引法第31条の4関係、保険業法第8条関係)

イ)利益相反管理体制の構築
金融機関の業務の多様化やグループ化の進展に伴い、グループにおける内部管理態勢の強化を図るため、証券、銀行・保険会社に対し、利益相反管理態勢の整備を義務付けるため、主に以下の改正を行っています。
顧客の利益の保護のための体制整備(金融商品取引法第36条関係、銀行法第13条の3の2、第52条の21の2関係、保険業法第100条の2の2、第193条の2、第271条の21の2関係)

ウ)銀行・保険会社グループの業務範囲の拡大
金融サービスの多様化、高度化、国際化の一層の進展を踏まえ、銀行・保険会社グループの業務範囲規制のあり方について見直しを行い、主に以下の改正を行っています。
財務の健全性や的確なリスク管理等一定の要件を満たす銀行グループの銀行の兄弟会社に対して商品現物取引等の新たな業務を解禁する枠組みの導入(銀行法第52条の23の2関係)
銀行・保険会社本体における投資助言・排出権取引の解禁(銀行法第11条関係、保険業法第99条関係)
外国銀行の業務の代理・媒介制度の導入(銀行法第10条関係、同法第52条の2関係、同法第52条の2の2〜第52条の2の4関係、同法第52条の2の5関係、同法第52条の2の6関係、同法第52条の2の7関係、同法第52条の2の8関係、同法第52条の2の9関係、同法第52条の2の10関係)
企業再生(地域再生)支援等の観点からの銀行及び保険会社に対する議決権保有制限の例外措置の拡充(銀行法第16条の2、第52条の23関係、同法第16条の3、第52条の24関係、保険業法第106条、第271条の22関係、同法第107条関係)

以上の内容の概要を図示したものが図表3です。

図表3
金融商品取引法等の一部を改正する法律の概要
出所:金融庁Webサイト

3.その他
金融商品取引法等の一部を改正する法律の施行日は、公布の日(平成20年6月13日)から起算して6月を超えない範囲内において政令で定める日とされています。但し、ファイアーウォール規制の見直し(前述2.(2)ア)と利益相反管理体制の構築(前述2.(2)イ)は公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとされています。また、今後施行に向けて、所要の経過措置及び関係政府令の整備等が行われる予定です。

■参考文献
「経済財政改革の基本方針2007 〜「美しい国」へのシナリオ〜」
金融庁Webサイト
以上
 
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