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トピックス 2006.5.10
包括外部監査における病院事業の指摘事項と措置状況
名古屋事務所 ヘルスケアグループ 公認会計士 中村 貢
1.はじめに
地方自治体の包括外部監査は平成10年度から実施され、病院事業をテーマとして多くの報告書が提出されている。今回は、病院事業の外部監査報告書の指摘事項について、対象自治体から公表された措置状況と対比して検討することにより、自治体病院の業務改善に包括外部監査が果たした役割を概観してみることとしたい。
病院事業は包括外部監査制度の創設当初に監査テーマとして多く取り上げられたものの、ほぼ一巡し、最近はテーマとして取り上げられるケースが減少している。また、外部監査に関する措置は1〜2年経過しないと公表されない。したがって、最近公表された監査結果に対する措置の公表にはまだ行われていないものがある。病院事業の外部監査報告書のうち、自治体から公表された措置状況を入手できたもののうち、自治体が積極的な措置をとった自治体の措置状況について記載することとした。
なお、文中の意見に係る部分は私見であることを申し添える。

2.収益向上
(豊橋市への指摘)
MCR(病診連携室)の利用割合は75%程度で、提携先拡大の余地が残されている。病診連携の充実に取り組むことで、入院患者・外来患者ともに増加が期待できる。
(措 置)
MCRフォーラムのほか一層の連携を図るための一環としてMCR教育講演会を平成11年9月から開催し、その後、平成12年7月から平成15年6月までの間に病診連携協議会12回、MCRフォーラム6回、MCR教育講演会16回を開催し、病診連携利用施設との連携を深めている。

3.診療報酬請求管理
(大阪市への指摘)
住吉市民病院において、レセプトの返戻(内容照会のため返却を受けたもの)の再請求について最終的には請求されるとはいうものの6ヶ月を超えるほど大幅に処理の遅れていた事例が見受けられた。返戻の再請求遅れは医業未収金の延滞原因となり、返戻管理のための事務処理が煩雑となることを避けるため、速やかに再請求する体制の構築が必要と考える。
(措 置)
レセプト再請求の遅延を防ぐため、指摘以降、返却を受けたレセプトの内容訂正の処理について処理期限を定めるとともに、整理簿により処理状況を定期的にチェックし、返戻月の翌月に請求を行う体制を整えた。
さらに、返戻の内容等を検討するレセプト査定委員会を毎月開催し、返戻レセプトの防止に努めていく。

(横須賀市への指摘)
診療報酬算定漏れ防止のため、入院患者の会計に利用される「医師オーダーシート」に外来基本伝票(会計票)と同様の伝票枚数記入欄を設けて、外来同様の体制を整えるべきである。また、オーダー対象外である外来患者に対する注射・処置についてオーダー対象とし、すべてオーダー対象外となっている救急外来についても、時間内についてはオーダー対象とすることによりオーダリングシステムの対象範囲を拡大すべきである。
(措 置)
診療報酬算定漏れ防止のため「医師オーダーシート」に伝票枚数記入欄を設ける。オーダー対象範囲の拡大については、平成16年度から院内で検討を開始している。

(長野市への指摘)
未収金の発生原因別分析・滞留期間分析を行い、発生原因別に督促方法及び督促スケジュールをマニュアル化して、網羅的な督促業務を実施するとともに、毎月その回収管理状況を確認する制度の構築を検討すべきである。
(措 置)
未収金管理については、増員により業務に専任できる職員を平成13年4月から増員配置し、重点的に取り組むよう改善した。定期的に未収リストの発行・理由分析を行い、訪問徴収、督促状の発送、電話による督促など未収理由に応じた対応とするよう改善した。

4.棚卸資産管理
(豊橋市への指摘)
薬品が倉庫から払出されているのに請求に結びつかない払出請求差異がある。また、払出されていないのに請求が計上されている余剰在庫がある。注射薬払出差異額の入力ミス等による差異を除いた原因不明分が解消された場合、約50百万円の損益改善となるため、管理方法の改善によって相当額の損益改善が見込める。
払出額と請求高の両面から実在庫の推移を掌握し、少しでも在庫の無駄を減らすために、精度の高い発注量管理の実施が望まれる。院内の実在庫量をできるだけ詳細に把握し、可能な限り無駄な在庫を持たない(余分な発注はしない)という体制の確立が急務である。
(措 置)
請求差異調査対象薬品については、平成12年度末には105品目、平成13年度末には121品目、そして平成14年10月には132品目と調査対象の拡大を図り請求差異の縮減に努めており、医事課との連携を強化して改善を図ってきた。
院内の各病棟・各外来及び薬局において、無駄な在庫を持たないように周知・徹底を図っている。また、病棟の在庫量削減・在庫管理に効果のある注射薬の患者別セット(1本渡し)の病棟を平成12年4月より従来の6病棟から7病棟に、平成15年2月より8病棟に、6月には9病棟に増やすとともに、薬剤師による病棟・外来への薬品チェックの強化を図り院内在庫の適正化に努めている。
また、総合情報システムの全面稼動により注射薬オーダリングが実施されることになるので、導入後については請求差異の縮減が図れる。

(茨城県への指摘)
注射薬について、受払台帳上の払い出し数量と請求数量の定期的な照合を行っていない。金額的重要性の高い注射薬については、請求漏れを防止するためこのような照合は必要である。
(措 置)
1万円以上の高額注射薬を薬剤科から払い出す場合において、平成13年6月から高額注射薬管理票(4枚複写)により払い出しを行い、薬剤科からの払い出し量と医事課のレセプト請求量を照合することにより、請求漏れの防止を図った。

(豊橋市への指摘)
診療材料は償還率が84.3%しかなく、破損・減耗・過剰使用による請求不可、請求漏れなどが考えられるが、実在庫が把握されていないため、詳細なたな卸が必要であり、購入額と請求額の差異が約140百万円発生している状況を見る限り、管理方法の改善によって相当額の損益改善が見込める。
(措 置)
平成12年2月に管理マニュアルの整備を図り、毎年たな卸調査の実施と年4回余剰品などの返品受付を実施するように改善し、さらに平成13年度からは毎月返品受付を実施するよう改めた。また、請求漏れ防止のためには平成10年8月から実施している特定保険医療材料への黄色ラベル(通称チャージラベル)の貼付により効果を上げている。

5.固定資産
(福岡市への指摘)
固定資産の現物管理は、器械備品については、現物に管理用のシールを貼付することにより行われている。しかしながら、シール貼付後では実査という形での現物照合は行われていない。固定資産台帳には所管部署の記載があるが、部署別に固定資産台帳が作成されていないため、各部署の所管する資産の内容が把握できないのが現状である。
この点、各部署ではそれぞれ独自に管理用の帳票・一覧表のようなものを作成しており、現場のレベルでの現品管理は一応行われているものと推察される。しかしながら、その様式、記入方法等は一様ではなく、各部門間での移管作業や管理状況の把握のためには十分であるとは認められない。統一された部署別の固定資産明細を作成することが望ましい。
(措 置)
こども病院・感染症センターにおける現場レベルでの現品管理については、固定資産管理システムから出力した部署別一覧表を各部署に配布し、同表に基づき、一年に一度実査するよう改めた。

6.人件費
(豊橋市への指摘)
給与費については、病院独自では給与水準の適正化は難しいが、業務委託の推進等により人員数の側面から給与総額の抑制に取り組むことが必要である。
(措 置)
平成12年度に給料表の抜本的な見直しや、特殊勤務手当の改定等給与水準の適正化に努めている。また、平成12年度以降も給食部門等間接部門の段階的委託の推進により定数の削減を行い、人件費の抑制に取り組んでいる。
平成13年度をもって委託事務の一定の区切りを迎えたが、今後も適正な定数管理を行うとともに、職員の意識改革と能力開発に努め、より効率的な業務運営体制の確立を図っていく。

(豊橋市への指摘)
病棟看護師のパート割合は現在約4%と低く、柔軟かつ低コストで対応するには、できるだけパート看護師を活用することが経営的に望ましい。正規職員との組み合わせ、パート看護師の教育充実等に工夫を凝らしながら、今後とも一層の看護業務のパート化を推進されたい。
(措 置)
平成14年度から夜勤パート看護師制度を導入するなど、パート看護師の効率的な活用に努めており、今後も夜勤パート看護師の雇用の拡大と現行組織の見直しを行うなど新たな業務執行体制の確立を図っていく。

7.退職給与引当金
(長野市への指摘)
退職給与金の支給は労働協約等に定められた場合、従業員の退職に際して退職給与金の支払義務を負う。よって、退職金は労働の提供に応じて発生する賃金の後払い的な性質を有すると考えられ、毎期その費用負担は発生している。この費用発生に応じて、将来の支出に備える制度が退職給与引当金である。
期間損益を適正に計算するため、会計方針に従った適切な費用処理が必要である。
(措 置)
退職給与引当金の計上不足を生じていたが、平成12年度決算において必要額の計上を行い、適正化を図った。

8.経営管理制度
(大阪市への指摘)
市民病院事業の経営健全化計画の進行管理について収益面では計画と実績との比較がなされているが、差異分析がなされていない。また、費用面においては、給与費について人数によって改善結果が捉えられているが、金額ベースでの実績が把握されていない。このように、計画に対する実績額の把握と差異分析を実施していく体制が整備されておらず、進行管理が十分になされているとはいえない状況にある。
(措 置)
市民病院事業では「大阪市立市民病院経営健全化計画」を策定し、平成10年度から平成14年度までの5年計画で経営改善に取り組んでいる。
しかしながら、計画と実績とを比較すると、目標診療単価・目標患者数の設定など、当初の改善項目に取り組むことにより一定の改善が図られたものもある一方で、病棟再編成(小児系)のように、少子化が進むなかで小児医療を行う民間医療機関が減少するなどの社会背景の変化から実施が困難となった項目もあるため、取り組み事項の差異が生じている。今後とも、計画の実行に当たっては、実績値の速やかな把握と分析を行い、進捗状況の管理に努めていく。

(長野市への指摘)
市は、公社と協議のもと、経営方針に基づき、設備・医療レベル等の目指すべき方向性とその具体的な施策計画を総合的に取りまとめた中期経営計画を策定することを検討すべきである。また公社は、市の策定した中期経営計画をもとに、より具体的な年度計画を策定することを検討すべきである。上記の各種計画の実行にあたっては、計画の実施状況を管理するため、公社が自ら予算を作成して実績との比較分析等の予算管理を実施すること、市が公社の年度計画及びその執行状況の報告を受けて管理監督すること、等の経営管理制度の構築が必要となる。
(措 置)
平成12年度末に制定した設置要綱に基づき、経営指針、経営計画、医療の目指すべき方向、設備、医療レベル等、市民病院の今後の方向性を総合的・中長期的に協議するため、助役以下市関係課職員と病院長以下公社職員で構成された「長野市民病院経営管理検討会」を、平成13年5月に設置し検討を開始した。
平成7年の開院以降、公社職員も業務に習熟し、病院経営も軌道に乗ってきたこともあるので、公設民営のメリットを充分踏まえ、より公社の自主性が発揮できるような経営管理制度の構築について検討していく。

9.予算制度
(長野市への指摘)
業績評価単位ごとに予算の設定権限と予算を達成する責任を与え、その結果を今後の対応に資する管理制度の構築を検討すべきである。
また、予実分析が業績評価単位として機能するよう、科別、疾病別、患者別等の原価計算制度の構築を検討することが望まれる。
(措 置)
総合的な予算編成の第一段階として、平成13年度の収入予算については、受入予定患者数など業務目標値を部門(科別)ごとに設定した上で、予算編成を実施した。
さらに今後は、平成15年度の予算編成に業績評価単位ごとの予算と実績の比較分析による改善努力目標が反映できるよう、予算管理の責任単位である業績評価単位の設定、平成13年度決算における部門別原価計算の実施などに着手しながら、中期経営計画の策定及び経営管理制度の構築と併せて予算編成制度・予算管理制度の構築を検討していく。

10.手術室の効率的利用
(長野市への指摘)
効率的な手術室利用の管理指標として空き情報は重要である。救急患者への対応を考慮し、時間帯別に効率的と考えられる利用率の目標を設定するとともに、手術室管理体制の構築を検討すべきである。
(措 置)
「週間手術予定表」が手術室を効率的に利用するための管理資料として有効に利用されていないということについては、日別の時間・部屋割りスケジュールが各診療科へ公開されていないことによる手術室の空き情報の不足が原因であったため、手術部運営会議(平成13年6月13日)にて検討し、時間・部屋割りスケジュール表を週間手術予定表とともに診療科へ公開することで改善を図った。
さらにリアルタイムでの空き情報の管理・伝達については、院内情報システムの入替え時に抜本的な改善を検討していく。

11.人員配置
(豊橋市への指摘)
中央臨床検査室の業務実態を見ると、人員稼動的にはまだ業務改善余地があると考えられるため、検査機器の容量次第では検査件数の増加が可能である。
中央臨床検査室の業務においては、給与水準が高い階層で難易度の低い業務に従事する割合が若干高くなっており、必ずしも対価(給与)に見合った業務実施体制となっていない。職員の経験年数と個々の業務処理能力が必ずしも合致していないので、実際の人員配置の検討は、現実の業務処理能力と業務の難易度の整合性確保を重視した人員配置を検討されたい。
また、中央臨床検査室の業務においては、給与水準と患者サービスへの貢献度に乖離が見受けられるので、間接的な貢献度を含めた追加分析が必要である。
(措 置)
平成12年度から健診部門の腹部超音波検査を検査技師が実施している。また平成13 年度から結核菌などの遺伝子検査の受託検査を実施し、検査件数の増加に努めている。
平成13年度から業務担当部門の再編成を行い、検査機器利用の効率化を図り、各機種のランニングコストの削減化に努めている。また、業務処理能力及び精度向上のために各種の資格取得に努めている。平成14年度末現在、細胞検査士4名、超音波検査士2名、認定輸血検査技師1名、認定微生物検査技師1名であるが、その他数名が資格取得を目指している。
平成14年4月から採血スペースを3箇所から4箇所に拡大し、このことにより採血担当の看護師も3名から4名に増員することにより、採血待ち時間の短縮に努めている。平成15年2月から開院日の時間外及び閉院日の宿日直体制を24時間の2交代勤務体制に変更して、地域医療基幹病院に見合った臨床検査機能の拡充に努めている。

12.購買業務
(愛媛県への指摘)
薬品は6病院で統一単価を採用しているとはいえ、交渉力や分析力が民間病院と比べるとまだ十分でなく、スケールメリットが単価交渉に十分生かされていない可能性がある。
診療材料は、病院ごとに購入業者を選定しているため、同一品であっても各病院間で単価に格差が生じているものがある。今後は、SPD(物品管理システム)導入に伴い病院間比較が容易にできるようになるため、スケールメリットによる単価引下げ効果も期待できることから薬品と同様に6病院統一の購入単価に変更すべきである。
診療材料は民間病院と同様に購買活動を一元化すれば、アイテムの整理統合・共同仕入等による単価引下げなど価格交渉の余地はまだ残されていると考えられる。ただし、このような購買活動の一元化を有効に機能させるためには、その責任と権限を明確にし、6病院全体を統括する管理部署を公営企業管理局又は中央病院に配置し、責任者を置くことが必要である。
(措 置)
医薬品については、現在においても、6病院統一の単価を採用するとともに、価格交渉も一括して行っており、6病院全体のスケールメリットは十分生かされていると考えているが、今後とも、鋭意交渉を行い、廉価購入に努める。
診療材料の購入については、現在のところ一元化は図られていないが、昨年度の今治、新居浜病院へのSPD導入により、中央病院を含めた3病院において、統一したデータ管理が可能となったため、同一品目にかかる病院間の価格格差の解消(最低見積単価への調整)に努めている。他の3病院についても、同様な手法を取り入れることにより、スケールメリットを生かしていく。
診療材料は医薬品と同様に統一化を図る。また、購買部門の一元化については、中央病院での統括管理を検討する。

13.管理システム
(東京都への指摘)
カルテをもとにした管理情報は手作業で収集しなければならない。また、病歴に関しては外部委託で行われているのみで、専任スタッフが不在である。
(措 置)
病歴管理情報については電子都庁推進計画における病院情報システムの再構築の中で、電子カルテ化の導入について検討する。また、病歴担当係長ポストを平成12年度から設置した。

(長野市への指摘)
診療資源を有効活用するために、病院全体のスケジュール情報の一元的管理及び全部門への一元的提供を目的としたERP、SCMの導入を中長期的な視野から検討すべきである。そして、統合的な管理のもと、病床・手術室・医師・高度医療機器等の個々のスケジュール管理をさらに充実することを検討すべきである。
(措 置)
現在使用している医事、オーダリングシステムは平成7年に導入されたものであり、病床管理や診療検査予約受付等の機能が低い。このため、看護婦や受付事務員などの人手により運用している部分もあるが、その情報量の多さから限界である。よって、現在検討中の次期システムで改善を図っていく。

(長野市への指摘)
長野市民病院では、医療事故防止対策委員会を発足して対応を図っているが、安全性をより強化する観点から、意識付けの徹底、課題把握の方法、課題への適時対応策、等を再検証し、医療事故防止に対する管理制度のさらなる充実を検討すべきである。
(措 置)
意識付けの徹底については、平成12年10月13日に外部講師を招いて、全職員対象の研修会を開催した。また、平成13年4月2日には、医療事故予防対策委員会の委員が講師となり、新人職員対象の研修会を開催した。さらに、従来から行っている医療事故報道等による医療事故情報の職員への配布は継続させるなど、意識付けの徹底を図った。
さらに、平成13年4月には、医療事故発生時の対応について、統一的な方針を策定することにより迅速かつ的確な対応を確保するとともに、その後の事故防止策への反映を組織的に図るため「長野市民病院における医療事故発生時の対応方針」を策定し、医療事故防止に対する管理制度のさらなる充実を図った。

14.おわりに
自治体病院においては、地方公営企業法が適用され、独立採算制により効率的に経営することが要請されているが、事業運営において発生した赤字を一般会計繰出金によって補てんしている事例が多い。各地方自治体の措置状況を検討して把握されたように、包括外部監査において提示された意見が病院業務の改善に大きな効果をあげており、今後も自治体病院の業務改善に公認会計士が果たす役割は大きいものと考えられる。
以上
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