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| トピックス 2007.2.28 |
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| 比較可能性の観点から見た病院会計準則の必要性 |
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| 大阪事務所 ヘルスケアコンサルティング部 公認会計士 黒田 拓四郎 |
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1.はじめに
病院会計準則(2004年8月改正)がその適用に法的強制力を持たないことは、『新病院会計準則の適用を考える』(2006.3.15) で述べられたとおりである。
医療機関の開設主体には図表1に示すとおり、実に様々なものがあるが、病院会計準則の適用が強制ではないことから、各々の医療機関が独自の会計基準を適用し決算を行っているのが実状である。
[図表1]医療機関の開設主体

出所:平成17年病院経営実態調査報告
(全国公私病院連盟 社団法人日本病院会 平成17年6月現在調査)
一般事業会社においては、株式を公開している企業は一般に公正妥当と認められた会計基準に基づき財務諸表を作成・開示する義務があり、投資者は企業の財務状況をいつでも閲覧できるようになっている。これによって、投資者は同じ会計基準に基づき作成された財務諸表による企業間の比較が可能となり、投資判断を行うことが出来るようになる。
ここで留意すべき点として、比較可能ということは投資者等の外部利害関係者にとって有用であることに違いはないが、むしろ内部においてより有用であるということである。例えば、自病院の経営指標も他病院の指標と対比できなければ、それが妥当な水準であるかどうかは判断がつかない。つまり、他病院と比較できる環境があって初めて、自病院の状況を客観的に分析し自病院の特徴や問題点を認識できるのであり、それが経営改善につながると考えられる。上記に基づき、本稿では、比較可能性の観点から見た病院会計準則の必要性について述べることとする。
なお、本文中の意見に関する部分は私見である。
2.開設主体ごとの会計基準
主な開設主体において適用される会計基準は図表2に示すとおりである。
[図表2]主な開設主体別会計基準

出典:『病院経営実践ノウハウ』(2005年12月 清文社)
そもそも会計基準は、その開設主体の設立目的に合致した基準が適用されることが原則である。したがって、各々の開設主体はその設立目的が全く異なることから、適用される会計基準も異なるものとなる。
例えば、「開設主体別病院会計準則適用に関する調査・研究 平成15年度 総括研究報告書」(厚生労働科学研究費補助金 政策科学推進研究事業 2004年4月)によれば、地方公営企業に関して“地方公営企業の会計の基本原則は、…(中略)…地方公営企業法に特例規定がある場合を除き、官公庁会計の原則が適用されることである”とされている。また、医療法人に関しては、“医療法人の会計は、医療法における届出義務において、財務諸表の種類が定められているにすぎず、具体的な会計基準は存在しない”とされており、実際多くの医療法人は法人税等の税務申告に必要な決算しか行っていないのが現状ではないかと推察される。
このような状況の下、仮に異なる開設主体の病院における経営状態を比較しようとした場合、異なる会計基準で作成された財務諸表では比較が困難であることは容易に想像がつくであろう。以下では、異なる会計基準で作成された財務諸表を用いて比較を行い、有用な比較を行うために必要となる事項について解説する。
3.説例
図表3に示すのは、民間病院・自治体病院・大学附属病院の財務諸表(損益計算書または消費収支計算書のみ要約したもの。数値は仮定)である。この財務諸表に基づいて、損益的には同じに見える、これら3病院の経営状態を比較分析してみよう。
[図表3]設立主体の異なる病院の決算書

出所:筆者作成
一見するとC病院の財務諸表(消費収支計算書)は、表示方法がA病院・B病院とは全く異なるため、どの部分を比較すればよいのか分かり難い状況にある。また、A病院とB病院に関しては、両病院とも経常利益は200の黒字と同じであるものの、自治体病院であるB病院の医業収益には一般会計からの繰入金が含まれている。また、民間病院であるA病院は法人税等の負担があり純利益が少なくなっているという特徴がある。
そこで、この3つの病院を比較するために、表示方法も含め共通の会計基準に基づいた財務諸表(損益計算書)に修正する。具体的には、病院会計準則を共通の会計基準として、それぞれ各病院が所定の会計基準に基づき作成した財務諸表を病院会計準則における様式に組み替えるとともに、会計処理方法が相違するものについても比較のために必要な修正を加えることとなる。
まず、全ての病院について、翌期に支給が見込まれる賞与について引当金の計上がなされていないため、適正な期間損益計算の観点から、賞与引当金500を計上する必要がある(病院会計準則 注解13)。その結果、各病院とも医業費用が500増加することになる。
A病院については、追加計上した賞与引当金(一時差異)について税効果会計を適用し、法人税等負担額▲200を計上する必要がある(病院会計準則 注解24)。【注:税効果会計における法定実効税率は40%とする。また、翌期における課税所得は一時差異を十分に上回るものと仮定する。】
B病院については、医業収益の中に一般会計からの繰入金が1,000含まれている。病院会計準則においては、運営に係る補助金・負担金は医業外収益の区分に計上することとされているため(病院会計準則 第36)、当該繰入金を医業収益から控除し、医業外収益の区分に振り替えて表示する必要がある。
C病院については、表示方法の変更が必要となる。すなわち、医業収益(事業収入)から医業費用(人件費・医療経費)を差し引いて医業利益を算定し、次いで医業外収益(補助金・受取利息)・医業外費用(借入金利息)を加減して経常利益を算定し、さらに臨時収益(固定資産売却差額)を加え当期純利益を算定する必要がある(病院会計準則 第35〜38)。
以上の組替え・修正を行った各病院の財務諸表(損益計算書)は、図表4に示すとおりである。
[図表4]病院会計準則を適用した場合

出所:筆者作成
修正前では純利益が最も少なかったA病院は、賞与引当金の計上により経常利益が赤字になったものの、税効果会計の適用によって実質的な赤字額は3病院の中で最も少ないという結果が導かれる。
また、賞与引当金の計上により純利益が同じ▲300の赤字となるB病院とC病院であるが、C病院の表示方法を変更することによって損益構造の実態が大きく異なることが分かる。すなわち、B病院は本業で多額の赤字を計上しているのに対し、C病院は本業ではなく借入金利息の多大な負担が赤字の要因となっていることが判明する。
このように、開設主体の異なる病院であっても、病院会計準則という共通のモノサシ(会計基準)を適用することによって、同じ目線で「病院」の経営状態を財務的に比較することができ、真の実態が浮かび上がってくるのである。
4.おわりに
以上、病院会計準則を適用することにより、異なる開設主体であっても病院間の経営状態を比較することができ、またそれによって本質が見えてくることを述べた。
病院会計準則は2004年8月に改正されて以来変更はないが、会計基準というものは日々変化する環境に対応して改定されるべきものである。例えば、企業会計において既に導入されている減損会計基準は病院会計準則には織り込まれていないが、その適用のあり方の検討を経て、病院会計準則にも反映されるべきであろう。
また、病院会計準則に基づいて作成された財務諸表の信頼性を高めるためにも、医療業界としての財務情報の開示制度や会計監査制度の整備についても活発な議論が望まれるところである。 |
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| 以上 |
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