| トピックス 2007.8.1 |
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| 病院の組織文化と組織変革 |
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| 大阪事務所 ヘルスケアコンサルティング部 小伏 寛枝 |
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1.はじめに
病院が提供する医療というサービスは、高度な専門知識を有する様々な職種の医療従事者がそれぞれの役割を果たすことによって完遂される。「チーム医療」という概念が患者中心の医療を行う上で不可欠な要素となってきているが、以前から病院という組織では職種や部門を越えた連携が弱いと指摘されている。
組織論を展開する上で「組織文化」の概念は欠かせない。「組織文化」とは一般的に「ある特定の集団で共有される価値観、考え方、行動様式」と定義されるが、具体的な内容を明確に示すことは容易ではない。それでもなお、この概念が注目されるのは、組織に属する誰もがその存在を認めざるを得ない経験を有しているからではないだろうか。
本稿では、病院を「組織」という角度から焦点をあて、病院職員の行動に影響を及ぼす「組織文化」について、組織変革における組織文化の効用、組織文化を変えるためのポイント等を考察する。なお、本文中の意見に関わる部分は私見である。
2.組織文化の効用
組織の変革を進める際、組織文化は良くも悪くもそのプロセスや結果に影響を与える。実際、経営管理の責任者が組織変革に取り組むに当たり、組織全体あるいは下位集団が持つそれぞれの文化によって、組織変革の推進を阻まれることも少なくない。
組織文化は集団の数だけ存在するといっても過言ではない。病院では職種や部門を越えた連携が弱いと言われるが、逆に言えば各集団内の凝集性が高いため、職種・診療科・病棟・部門等の病院の下位集団での文化が強くなる。「強い文化」を持つ組織では、そこに属する個々人が当該組織固有の価値感・考え方・行動様式を暗黙知として内面化しているため、その組織固有の文化をより強く反映した行動をとる。従って強い文化を持つ組織に属する者は、その組織で求められる行動を自主的に進められる。
強い文化を持つ組織では、目的意識の共有により高いモチベーションが維持できるため、目標に向けて自律的に行動することができ、管理コストが抑えられると言われている。また、組織文化の強さと業績の高さは関連しているとも言われている。組織に属する者であれば、組織文化が効率性や生産性に少なからず影響を与えていることを実感することも多いであろう。
病院全体の文化と下位集団の文化が同質であれば、職員全員が一丸となり目標に向かって行動できる。しかしながら病院では、下位集団の文化が強く、それぞれが異質であるため、病院長が各集団をひとつにまとめ、それぞれの文化を上手く調整しながら組織変革を進めることは容易ではない。
病院の経営改善に取り組むに当たっては、医療サービス提供において中心的役割を担う医師の協力が不可欠であるが、大学の医局から派遣されている医師は勤務している病院への帰属意識が低いことがままあり、如何にして病院全体の改善活動に医師を巻き込めるかは、多くの病院に共通の課題と言えよう。
現状の姿から新しい姿へと組織が変革するには大きなパワーが必要であり、組織全体で取り組むことが不可欠である。その際、病院全体の組織文化のみならず、職種や部門等の下位集団が持つ組織文化を十分に考慮して行動計画を立てることが、成果を生むための重要なポイントとなる。
3.組織の変革と組織文化
最終的な目標として組織変革を達成しようとする場合、その礎として組織文化を変えることが求められる。つまり、組織が変革するということは職員が目標を共有し一丸となって行動した結果であり、そこには強く一体感のある組織文化が欠かせない。しかしながら、長い時間をかけて醸成された組織文化を変えることは容易ではなく、組織文化を変えるには組織のリーダーが積極的に関わることが極めて重要である。効率性や生産性の高い組織に共通する「望ましい組織文化」に近づけるために、病院組織においても以下の7つの視点から組織文化をチェックすることができる。
(1)明確な目標:病院全体が目指す方向性が明確に示され、職員に共有されているか。
病院ではとかく部門や職種ごとに個々の方向性を持って活動しがちであるため、病院全体が目指すべき目標を病院長自らが明確に示され、それが共有されていなければならない。
(2)エンパワーメント:目標を達成するために必要な権限が付与されるよう努めているか。
目標達成のために、多忙な病院長が細かい業務の変革にまで関わることは現実的ではなく、病院長が示した方針等に従い、現場レベルでスムーズに変革が進められるよう、適切な人材に必要な権限を与え、適時に実行できる仕組みづくりが必要である。
(3)情報共有:変革のために必要なあらゆる情報が共有されるよう工夫されているか。
情報の共有は医療安全の観点からも重要である。病院は24時間体制で運営されており、人員の入れ替わりが激しいため、確実に情報を周知徹底できる仕組みを構築することは不可欠である。
(4)チーム志向:協働や連携が推奨・実施されているか。
チーム医療の実現には、カンファレンス等の実施もさることながら、日常的な業務の中での連携体制を構築することが肝心であり、疑問に思うことや意見を職種や所属部門に関わらず言い合える環境をつくることもリーダーの役割の一つである。
(5)成長を促す土壌:組織変革を支える職員が、絶ゆまざる成長をめざす土壌があるか。
職員のスキルアップについては、学会や研修等への参加を奨励されることに加えて、日常的に職場の上司や同僚から触発され、継続的な成長を目指して切磋琢磨するような雰囲気や環境がつくられなければならない。
(6)変革への刺激:変革の必要性を認識させるため、刺激を与えているか。
ルーチンな業務に対しては漫然と取り組んでしまいがちであるが、刻々と変化する外部環境に適応するためには、継続して日々改善に努める姿勢を意識づけることが大切である。日常業務に埋没しがちな現場の職員に、変革に必要な刺激を与えることもリーダーの重要な責務である。
(7)評価:業績や変革に向けた行動を、正当に評価できるよう努めているか。
評価については、経済的な報酬を伴うものであることが望ましいが、適切な評価体系を構築することはやさしくはない。一方で、必ずしも経済的なインセンティブが伴わずとも、例えば、病院長が直接現場を訪れ、職員を労い励ますだけでも一定の意義はある。やっていることが正当に評価されていると職員自身が認識できることで、職員のモチベーションが向上することもあろう。
4.最後に
病院全体が目標を共有して組織変革に向かうためには、病院長のリーダーシップが欠かせない。職種や部門等の下位集団における下位文化を凌駕し、変革の原動力となるような病院としての一つの強力な組織文化を築くことは、病院組織のトップである病院長に求められる重要な役割である。
望ましい組織文化は職員個人の行動変容をもたらし、組織変革への手がかりをつくることができる。病院長はそれを認識した上で、組織変革を促すような病院全体の組織文化を築くために、自ら積極的に行動することが求められる。前述のような視点で組織を見直すことで、組織変革への道のりに新しい示唆をもたらすことが期待できるのではないだろうか。 |
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| 以上 |
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<参考文献>
1.テレンス・ディール、アラン・ケネディー著/城山三郎訳 『シンボリック・マネジャー』 岩波書店 1997年
2.E.H.シャイン著/清水紀彦、浜田幸雄訳 『組織文化とリーダーシップ:リーダーは文化をどう変革するか』 1989年 |