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知的財産マネジメント
トピックス 2006.2.8
知的資産経営開示
知的財産グループ 森田 克之
【はじめに】
経済産業省では産業構造審議会新成長政策部会経営・知的資産小委員会にて、2005年10月に「知的資産経営の開示ガイドライン」を公表した。
http://www.meti.go.jp/press/20051014003/20051014003.html
当該ガイドラインは知的資産経営報告を作成する企業(経営者)、およびそれを評価する者への参考指針となるものであり、本稿では、「知的資産経営の開示ガイドライン」を中心に知的資産経営を概観していく。
なお、本稿での意見に関する部分は私見である。

【知的資産と知的資産経営報告】
昨今はステークホルダーからの情報開示欲求が高まっており、いわゆる会計ビッグバン後は時価を反映させた会計制度が適用されている。しかしながら、特に公開企業では財務データによる企業評価額とマーケットの評価額には常に乖離が生じており投資家にとっては不明部分が拡大しているのが実情である。
企業価値や企業などの競争力の源泉としては、人材、技術、組織力、顧客とのネットワーク、ブランドなどの財務会計の枠では開示されない「知的資産」が影響力を発揮しており、こうした無形の資産を活用した「知的資産経営」が資本市場側でも企業などの評価において、より重視する傾向が国際的にも強まっている。
財務データには反映されない知的資産を活用した知的資産経営は、経営の一側面というよりも他者が真似することのできない自らの有する固有の能力を活かして持続的な利益や発展を目指すことにより、企業価値を高める経営の方法であると考えられている。
これらの知的資産経営をステークホルダーに開示するのが知的資産経営報告である。

【「知的資産経営の開示ガイドライン」の構成】
知的資産経営の開示ガイドラインは本編の他に以下の別紙・参考資料で構成されており、具体例を多く示している。
(別紙1)典型的な知的資産指標の例
(別紙2)知的資産経営報告の具体的な記載例(仮想サンプル)
(別紙3)SWOT分析の具体例
(参考資料)EU、英国、独における非財務情報の開示

本編は以下の6章から構成されている。
1章 ガイドライン制定の背景・意義
2章 知的資産経営報告の概要
3章 具体的な記載の方法と留意点
4章 評価する側の留意点
5章 簡易な方法
6章 今後の展望
“概要”や“記載側の留意点”というのは良く見られる構成ではあるが、“評価する側”として利用者である一般投資家についても説明を加えているのは特徴的である。情報の提供者と利用者が共通の基盤で情報共有するというポリシーの表れであるとも思われる。

まず、開示に先立ち会社が知的資産経営を行っていることが前提となるが、それには経営者が自社の知的資産を認識し、それを有効活用した企業価値向上のための経営方針を明らかにすることが必要となる。そのような知的資産経営に基づく企業の実業が経営者からステークホルダーに提供する際に説明方法を整理した目安を設けたものが当該ガイドラインである。開示の方法について“開示基準”などの用語ではなく“目安”という用語を用いているのは、開示企業が主体となり相当弾力的な対応となる意味合いを表現したものであると考える。

知的資産経営報告には8つの基本的な原則と5つの要素を含むことを望ましいとしているが、特筆すべきは、ステークホルダーに判り易いように経営者からは“ストーリー”として情報を提供することを定めていることである。そして、知的資産経営報告は公開企業・非公開企業を問わずに当ガイドラインを活用した開示が可能とされ、開示方法は単独の報告書を新たに発行する他、事業報告書、企業の持続可能性評価報告書(サステイナビリティレポート)などの既存の開示文書の一部とすることも認めている。

知的資産経営報告は、前述のように本編部分と別添部分で構成されるが、本編部分では“ストーリー”を、全般、過去から現在、現在から将来という時系列の流れで表示し、それを裏付ける指標が記載される。別紙1では典型的な知的資産指標を例示しており、別添部分では本体には記載しなかった指標のうち自主的に記載することで情報提供し、同業他社比較などに資することを考えている。

これらの典型的指標についても必須を設けていないのは、企業により“ストーリー”に関連する指標が異なったり、秘匿の必要があったり、算出コストが高いなどの理由があるからである。また、自社の“ストーリー”に関連性の低い指標まで利用者に求められ、企業側が高評価のために努力することが無い様にと注意を喚起している。

利用者に対しても知的資産経営報告の特徴として、短期的な利益のための情報ではなく、中期的な視点が必要なこと、評価の多様性や単純比較が困難であることについても述べ、自らが企業が公表する“ストーリー”を理解し、信憑性を評価することが求められている。

企業によっては馴染みの薄い知的資産経営報告のためにガイドラインはSWOT分析(企業の強みと弱み、機会と脅威を軸とした分析方法)を説明する他、別紙1では典型的な知的資産指標の例として7つの視点に関して各々3〜7の指標を示し、指標の解説や算出方法について記述する他、別紙2では具体的な知的資産経営報告の記載例を、別紙3ではSWOT分析の具体例を示している。
財務情報の開示では統一化が進んでいるため、他社事例などを参考にすることが多く行われているが、知的資産経営報告は企業各社の独自の開示となるためにこのように詳細な記載方法が示されていると思われる。

このガイドラインでは、参考資料として欧州連合(EU)、イギリス、ドイツの開示制度を示している。また、OECDは「知的資産と企業価値」に関するプロジェクトとして、各国の取り組み状況を紹介し、それぞれの成果を持ち寄り、OECDのガイドラインにまとめていく方向性を探るコンファレンスを2005年10月にイタリアのフェラーラ大学で開催した。

【おわりに】
このように国際的にも環境整備が進んできており、日本でも今後これらの動きも見ながら知的資産経営の開示が行われることとなると思われる。
経営者から提供される情報が非財務情報の範疇までに拡大することで、経営者とステークホルダーの共通の理解が深まり、市場の活性化などのマクロ経済の好循環のきっかけとなる事を期待するのと同時に、まずは前提となる知的資産経営を個々の企業が実施する中で自社の経営を見直す契機となることを期待したい。
以上
 
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