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知的財産マネジメント
トピックス 2006.7.19
知的財産マネジメントの必要性
知的財産グループ 公認会計士 坂田 秀
【はじめに】
企業経営において、有形資産よりも特許権等の知的財産を中心とする無形資産に注目が集まり、知的財産を含めた無形資産は、ヒト、モノ、カネに続く第四の経営資源と言われて久しいが、何分、無形であるが故に、どのように扱ったら良いかが論点となる。
本稿では、知的財産をどのように扱うか、すなわちどうマネジメントすべきかを述べるとともに、同時にマネジメントの意義及びその必要性についても触れたい。
なお、本稿での意見に関する部分は私見である。

【知的財産と経営戦略】
他社の製品を市場から駆逐するような製品は、恐らく、非常に良質な技術、ブランド、キャラクターもしくはコンテンツ等、他社の製品にはないセールスポイントがあり、このセールスポイントを構築しているのは無形資産である。そして、この無形資産によって、企業は無形資産がない場合に比較して、より多くのキャッシュフローを得ることができる。企業の価値はこのキャッシュフローで決定される傾向にあることから、良質な無形資産を集めることがキャッシュフローの最大化、すなわち、企業価値最大化という経営課題に繋がるといっても過言ではない。
それでは、どのように良質な無形資産を集めれば良いのだろうか。
具体的には、以下のようなサイクルでマネジメントを行い、知的財産のポートフォリオ経営を行うことが、この目的を達成する近道であると考える。

1)決定
2)活用
3)確保
4)管理

【決定】
知的財産のマネジメントサイクルを適切に行うためには、まず、企業の行くべき方向を決定することが第1歩となる。この方向付けが明確に行われていないと海を渡るつもりが山へ登ることになりかねない。
知的財産が事業を構成する要素のうちで重要な割合を占めることが多く、事業のポートフォリオ=知的財産のポートフォリオの関係が成り立ち、まず、事業のポートフォリオを決定し、今後、注力すべき事業を決定することが知的財産のポートフォリオ経営の第一歩となる。
この決定においては、注力すべき事業分野での競合先の状況を知的財産を中心に調査・検討する必要がある。
具体的には、知財デューデリジェンスを行い、競合先がどのような権利を取得しているか、例えば、決定的に自社が不利となる知的財産を握られていないか(基本特許のようなもの)、他社の権利に関して回避可能か、もしくは対抗可能か等の検討を行い、場合によっては方向転換等を含めた方向性を決定することになる。

【活用】
次に、その注力すべき事業分野において、勝ち抜いていけるだけの戦力が十分整っているか、不足している場合はどのように確保していくか等の現状分析と戦略立案検討が必要になる。
活用の段階では、現状分析、具体的には、自社の知的財産のたな卸しが必要となる。知的財産のたな卸しは、自社の保有している知的財産に関して、十分な調査検討を行い、知的財産を以下の区分に整理することにある。

a.事業を構成する上で、必要不可欠で収益貢献顕著なもの
b.事業に供しているが、事業を防衛する目的で収益貢献不明なもの
c.事業に関連しているが、保有目的や収益貢献が不明なもの
d.未利用ではあるが、今後、事業に供する予定があるもの
e.未利用でかつ、事業に供する予定がないもの

知的財産を継続して保有した場合の効果と保有するためのコストを比較検討し、効果がコストを下回る等、十分に活用されていない知的財産(上記のcやe)については、放棄や売却等を検討する必要がある。
なお、知的財産を保有する場合の効果とコストの比較検討を有効に行うためには、知的財産を保有する効果を経済的価値に換算する必要があり、合理的な知的財産の経済的価値測定方法を整備する必要がある。

【確保】
確保の段階では、保有すべき知的財産と現状の知的財産のギャップを分析し、そのギャップをどのように埋めていくかの戦略を立案することになる。
この戦略としては、大きく2つに大別される。1つ目は自社で創出する戦略であり、2つ目は他社から調達する戦略である。
自社で創出する場合のポイントは、知的財産創出力は高まっているか、また有効に知的財産創出を促進する体制になっているかである。事業戦略の方向と知的財産創出すなわち研究開発の方向が合致していなければ、有効な知的財産創出が行えないのは自明の理であり、この方向の合致は、経営の意思が末端まで有効に伝わる組織になっており、どのようなものが、いつまでに、どれくらいで必要かを明確に全員が情報共有し、そのミッションを達成することで評価されるようなシステム作りが必要であろう。
なお、このシステムを有効に機能させるには評価をどのように行うかがポイントであり、技術的、法的、経済的側面からの評価が必要となる。簡易な評価であっても、合目的でかつ周知していれば、納得感はあるものと考える。
2つ目の戦略は、購入、いわゆるM&Aによるもので、わが国においても増加しつつある。商標権等、購入先がそのままの状況で使用できるものは知的財産のみの売買が行われているが、特許権等技術関連の知的財産は、今後の技術開発の方向性やレベル維持の観点から、会社単位や組織単位でのM&Aが行われる場合もある。
いずれにせよ、この場合は、購入する知的財産の経済的価値をどのように評価するかが大きな問題となる。

【管理】
管理の段階では、事業戦略の方向性と現状の知的財産とを比較検討し、再検討を行う。上記の「活用」や「確保」のサイクルとも重なるが、ある一定の期間経過後に、再度、知的財産のたな卸しを行い、事業戦略を実現するための十分性を検討するとともに、知的財産の評価も行い、取捨選択を行う。この結果を受けて、場合によっては経営戦略の変更を行う等、知的財産マネジメントの情報を経営にフィードバックすることで、経営と知的財産のマネジメントの一体性が高まる。

【おわりに】
知的財産は、キャッシュフローを獲得するまたは獲得キャッシュフローを増加させる有効な武器ではあるが、ある日突然の侵害訴訟によって、莫大な賠償を求められるリスクもある。特に、新規事業を行う上で、どのようなリスクがあるか事前に十分調査しておかないと地図を持たずに山に登るようなもので、絶えず遭難の危険性がある。
知的財産の重要性が高まっている現在だからこそ、経営と知的財産のマネジメントを一体化し、十分に相手を知り、己を知ることでこのようなリスクも回避できると考える。
なお、知的財産をどのように調べるか、すなわち、デューデリジェンスを行うか及びどのように評価するかは、知財マネジメントにおける2大キーファクターであるため、今後、詳細に述べたい。
以上
 
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