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株式公開
トピックス 2006.2.8
2005年 IPO市場の動向
IPO支援室 公認会計士 津村 陽介
1.はじめに
2005年は日本経済に長期にわたるデフレからの脱却の兆しが見える中、株式市場も日経平均が1万6千円を回復するなど活況を呈した。インターネット技術の発達に支えられ、個人投資家による株式投資額が急増しているが、株式の流動性が比較的低く、株価が急騰することが多いIPO(新規株式公開)銘柄にも高い注目が集まっている。
資金調達、知名度・信用力の向上、経営体質の強化など、自社の成長を達成するための一つの手段としてIPOが考えられるが、以下では、2005年度におけるIPO市場の動向について、各取引所の特徴を踏まえながら整理してみることとする。
なお、文中の意見に関する部分は私見である。

2.新規上場会社数の推移
新規上場会社数の推移
2000年は2万円を超える株価水準、情報通信(IT)関連企業の活況、上場審査基準の緩和(いわゆるテリトリー制の撤廃)に支えられ、過去最多の203社が上場した。それ以降2003年までは株式市場の低迷が続き、新規上場会社数は減少傾向が続いたが、依然として100社を超える高い水準が続いた。一部・二部への直接上場が20社程度で推移する中、ジャスダック、マザーズなどの新興市場には毎年100社以上の会社が上場しており、継続的に行われてきた市場改革や新市場の創設が、成長性のあるベンチャービジネスに必要な資金を調達する機会を与え、証券市場がそのニーズに応えられるものに脱皮しつつあったと言えよう。
2003年の後半からは株価水準が8千円を割り込む状態から脱して回復に向かったこともあり、2004年には新規上場会社数は175社と増加に転じたが、2005年は160社と若干の減少となった。
2004年3月にはマザーズに上場した会社の不祥事が発生し、同年5月に東京証券取引所(以下、「東証」という)が金融庁から業務改善命令を受けた。また、IT関連企業の粉飾決算が表面化したこともあり、2005年の第4四半期には回復が見られたものの、第3四半期までの状況を見ると、一部・二部は7社、マザーズは18社と激減しており、上場審査に少なからず影響を及ぼしたものと考えられる。
東証の上場件数が減少する一方で、ヘラクレスは2005年上半期で16社と2004年と同数が上場し、マザーズ・ヘラクレス以外の市場への上場も16社と活発化している。しかし、ヘラクレスでは注文件数急増に伴うシステムトラブルにより、5月26日から10月31日まで新規上場の受付を停止したため、その後の上場数は伸び悩んだ。
ジャスダックは2004年12月に取引所に移行され、直接審査が行われることとなり、その影響が懸念されたが、上場までに要する期間は間接審査による時代と比べて大差なく、上場会社数も例年並みと順調に推移した。

3.各証券市場別の状況
【取引所(一部・二部)】
2005年の取引所(一部・二部)への直接上場は20社(前年25社)と減少した。このうち東証は19社(前年22社)で、一部に直接上場した会社は8社(前年8社)であった。
売上規模としては100億円以上が16社と全体の80%を占めており、半数以上の会社が経常利益15億円以上、当期純利益10億円以上を計上している。
外国企業で久々の大型上場となった株式会社ポスコは、韓国企業として、また米国預託証券(ADR)としてはじめての上場事例となった。

【ジャスダック】
2005年のジャスダックへの新規上場は65社(前年71社)であったが、一方で相変わらず東証へ経由上場する会社も多く、31社(前年44社)が東証に上場した。東証に移行する会社は比較的規模が大きいため、全体としての市場規模が伸び悩む原因となっている。しかし、取引所化によって東証との重複上場も可能となったため、数社がそのままジャスダック上場を継続している。また、東証一部に上場している日本駐車場開発株式会社のように重複上場で株式の取引機会を拡大するとともに、東証上場で高い信用力を維持しながら成長性もアピールするためにジャスダックに上場する事例もある。
売上規模は30億円から500億円未満の広範囲に分散する傾向は続いており、経常利益、当期純利益とも1億円から10億円に分散している。半数以上の会社が経常利益15億円以上、当期純利益10億円以上を計上している一部・二部上場に比べれば、一段低い水準でも十分に上場が可能な状況となっている。

【マザーズおよびヘラクレス他】
2005年はマザーズは37社(前年56社)、ヘラクレスは22社(前年16社)、その他16社(前年7社)となった。特にセントレックスは13社(前年5社)が上場するなど躍進している。新興の証券会社が主幹事となっているケースが多い市場であり、特にネット専業のマネックス・ビーンズ証券株式会社が主幹事となったドリームバイザー・ドット・コム株式会社のような上場事例もあった。
売上規模は30億円未満の会社が中心で全体の65%を占め、経常利益についても3億円未満の比率が高くなっている。約半数の会社が当期純利益1億円未満であり、うち4社が赤字でも上場している。
一部・二部やジャスダックと異なり、設立後10年未満での上場が67%を占めているが、マザーズが2003年に上場要件から新規事業性を除外し、高い成長可能性に一本化したため、社歴の長い中堅企業がマザーズでの上場も検討するようになり、若干長期化する傾向がある。

4.新興3市場の資金調達の状況
新興3市場の資金調達額(公募・売出金額合計)は20億円程度で推移している。100億円以上調達したのは7社(前年3社)で、中でも株式会社ジュピターテレコム(ジャスダック)は1,047億円の超大型案件であった。
上場時時価総額は、一部・二部の70%が100億円以上であるのに対し、新興3市場は逆に70%が100億円未満となっている。会社の成長性が重視される新興市場であるが、市場から調達できる金額は、数億円から30億円までが中心となっている。
2005年のIPO市場は好調な株式市場の影響もあって、初値が高騰するなど過熱気味の状況となっている。初値/公募価格倍率は、平均でジャスダック2.1倍、マザーズは2.6倍、ヘラクレスは3.4倍となっている。特に5倍を超えたのは6社あり、最高はインターネットメディアを運営する株式会社オールアバウト(ジャスダック)の7.8倍であった。
一方、公募価格割れとなったのは2社(全市場では3社)であった。大学発バイオベンチャーと再生企業の上場と注目を集めた会社であったが、事業の将来性の不透明感を払拭し切れなかったことが原因だったようである。

項   目 ジャスダック マザーズ ヘラクレス
2003年 2004年 2005年 2003年 2004年 2005年 2003年 2004年 2005年
公開会社数(社) 62 71 65 31 56 37 7 16 22
公開時資金調達額(億円) 1,054 1,392 2,158 768 1,262 1,303 57 394 474
平均資金調達額(億円) 17.0 19.6 ※1 33.2 24.7 22.5 ※2 35.2 8.2 24.6 21.5
※1 株式会社ジュピターテレコム(1,047億円)を除くと17.3億円
※2 ソニーコミュニケーションネットワーク株式会社(346億円)を除くと26.5億円

5.おわりに
2005年は、東証自身の上場問題がクローズアップされる中、システムトラブルの発生が繰り返されたり、上場企業の不祥事が相次いで発覚するなど、証券市場の信頼を損なう事件が発生した。
その一方で、株式会社ライブドアのニッポン放送株買収問題をきっかけに、企業価値とは何かというテーマが大きく取り上げられ、モノ言う株主の言動がメディアの注目を集めた1年であった。株式を公開すれば常に敵対的買収の危機にさらされることになり、経営者は企業価値を向上させなければ利害関係者を満足させることができないことが改めて認識された。
コーポレート・ガバナンスの強化に関する企業の責任はますます重要であると認識されるようになっており、東証は2006年3月よりガバナンス報告制度を導入し、決算短信での開示を廃止する予定である。
また、会社法の施行により導入が可能となる黄金株については市場によって上場ルールの取扱いが異なる可能性があり、子会社上場についても審査上の取扱いが厳しくなりつつあるので、今度の動向に留意が必要である。


(参考資料)
新規上場企業の属性のグラフ
凡例    
2004年   2005年
2004年売上高   2005年売上高
2004年経常利益   2005年経常利益
2004年当期利益   2005年当期利益
2004年設立経過年数   2005年設立経過年数
2004年公募+売出金額   2005年公募+売出金額
2004年上場時時価総額   2005年上場時時価総額
2004年初値/公募価格倍率   2005年初値/公募価格倍率
※各取引所Webサイト内、開示データより作成    
以上
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