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株式公開
トピックス 2006.6.28
内部管理体制の確立
公認会計士 森竹 美江
1.はじめに
株式上場準備の過程で内部管理体制の構築は非常に重要な意味を持ちます。パブリックカンパニーになるためには相当の管理体制が構築されていなければならないからです。しかも、内部管理体制の整備は日常業務の見直しだけでなく、諸規程の整備や内部監査の導入まで多岐に亘るため多大な時間と労力が必要となり、上場準備の中では申請書類の作成と並ぶ一大作業になります。
また、上場審査においては内部管理体制の運用実績は通常1年以上求められることになります。1年程度の実績がない場合、上場時期が後ろにずれ込むおそれがあります。そのため、内部管理体制の見直しは上場準備の中でまず最初に手をつけるべき重要作業の一つと言えます。

2.内部管理体制の構築
内部管理体制とは「企業の資産を保全し、会計記録の正確性と信頼性を確保し、かつ、経営活動を総合的に計画し、調整し、設定するために経営者が設定した制度、組織、方法および手段を総称するもの」です。もっとわかりやすく言えば、不正やうっかりミスを事前に防止または適時に発見・修正して会社を健全に保つ体制と言うこともできるでしょう。
内部管理体制を構築する場合、経営者が強力なリーダーシップを発揮することが重要ポイントとなります。もちろん従業員の理解と協力が十分に得られることが前提条件として必要ですが、内部管理体制を見直す場合、全社に亘って改善を要することが多く、経営者の強力なリーダーシップが欠かせません。
ところで、内部管理体制をどこまで構築すればよいのか?という疑問を持たれる経営者・管理者も多いと思いますが、これに関して一律の答えはありません。不正やうっかりミスが適時に発見できるところまで構築すべきであり、会社の業務内容や規模等によって当然にその答えは異なります。従って上場審査においても整備状況の実質面が重要視されることになるのです。
なお、東証マザーズやヘラクレスといったいわゆる新興市場においても、それ相当の管理体制は求められます。そのため、株式上場の時期を定めたら、なるべく早期に主幹事証券会社や監査を担当する監査法人の指導・助言を受けながら内部管理体制の見直しにとりかかることが望まれます。

3.日常業務の見直し
内部管理体制の大部分は日常業務と密接な関係にあります。仕入、販売、財務等、主なサイクル毎に承認方法の細かい違いはあっても担当者→部門責任者→経営者とチェックを受ける仕組みになっているのが通常です。これらの過程でいかに不正やうっかりミスを見逃すことなく有効なチェックが出来るかを考えることが、内部管理体制を構築することなのです。
一言で日常業務を見直すといっても、範囲が広すぎてどこから手をつけていいのかわかりにくいものです。そこで、まずはどのような流れで業務が行われているのかを把握することから始めると良いでしょう。仕入業務であれば発注業務から始まって支払いまで、販売業務であれば与信管理から始まって債権管理や入金に至るまでの一連の流れをフローチャートに描いてみるのが有効です。一連の業務をフローチャートに描くことによって、誰のチェックも受けずにオペレーションが進む業務、あるいは取締役会決議や稟議決裁等の事前の協議が不十分である業務等、「抜け穴」を把握しやすくなるのです。フローチャートの把握で発見された問題点を改善するために、必要な管理を追加したり処理の順番を入れ替えたりと、試行錯誤しながら日常業務の見直しを行います。その際には業務の流れを阻害することなく、機能的にチェック体制を織り込んでいくような工夫が必要です。また、各業務の担当者が代わっても常に同じ品質で業務が遂行できるように、これらを各種規程、マニュアルに定めておくことも重要です。

4.内部監査の導入
内部監査も内部管理体制の構築には欠かせない機能の一つです。上場審査においても内部監査の実効性は重要ポイントとなっています。内部監査とは、会社の定めたルールどおりに業務が行われているかをチェックするとともに、現状の業務に付け加えるべき事項はないか、無駄な事項はないかといったことも検討する手続です。当初設定したルールどおりに運用されていなければ、いくら機能的な内部管理体制を構築したといっても意味がありませんので、それらが引き続き有効であるかどうかをチェックする部門が必要となるのです。内部監査とはあらゆる社内業務の品質管理活動であり、これが有効に機能していれば内部管理体制も引き続き有効であると言うことができるのです。
内部監査の品質を一定以上に保つためには、内部監査規程、マニュアルに基づいた手続の実施が必要です。また、監査対象部門から独立していなければ実効性ある内部監査は困難であることから、社長直属の独立部門が内部監査を担当することが望まれます。もっとも独立部門による内部監査の実施は人件費の負担等の問題もあり、相当程度規模の大きな会社でなければ実質的には難しいでしょう。そこで当面の間、経営企画室や管理部門等、比較的他の部門から独立性がある部門が内部監査を兼務することも考えられます。この際には経営企画室や管理部門自身に対する監査の実施においては自己監査とならないような工夫が必要です。
内部監査の1サイクルを示すと図表1のとおりとなります。

内部監査の1サイクル

5.おわりに
限られた時間の中で内部管理体制を構築するためには全社一丸となって取り組まなければなりません。株式上場の予定時期から逆算して、現在どの作業まで終了していなければならないかを意識することが非常に重要となります。最後に効率よく内部管理体制を確立するためのタイムスケジュール案を図表2に示しますので、この表のどの位置に会社が置かれているかを確認していただきたいと思います。

内部管理体制を確立するためのタイムスケジュール案
以上
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