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トピックス 2006.8.30
経営管理システムの整備と導入の留意点
鳥山 秀弘
1.はじめに
上場のためには、経営管理システムの整備は不可欠です。効率的に企業を成長させるためにも必須と言えます。売上拡大のための情報を提供するシステムや、コストダウンを実現させるためのシステムならば、いずれも利益に直結するシステムであるため、どの企業も関心の高い分野と思います。しかし、上場のためには、次のように多くのシステムを整備する必要があります。中には直接的に利益を生み出さないシステムもあり、このようなシステムについては、導入効果が明確でないことから、できるだけ安く、とりあえず形だけ仕上げればよいと考える経営者の方々もいらっしゃるのではないでしょうか。

上場のために必要な経営管理システム
・利益計画・利益管理システム
・意思決定支援システム
・販売管理システム
・生産管理システム
・原価計算システム
・購買・在庫管理システム
・財務会計システム
・連結経営システム

なぜ上場のためにシステム整備をしなければならないのでしょうか。システム整備の目的と整備上の留意点について、以下に解説します。なお、文中の意見に関する部分は私見です。

2.上場のためのシステム整備の目的
実際、上場のためのシステム整備の効果を特定・算定することは非常に困難です。しかし、システムの整備により、投資家に対してタイムリーで正確なディスクローズや、社内体制の整備状況をアピールすることが可能となります。このことはひいては安定株主の確保や、不安定な開示日による不安感からの株価変動を避けることに繋がります。目に見えない効果ですが、上場企業としての責任を果たすためにはシステム整備は必要不可欠だと言えるでしょう。

3.システムの特色と整備上の留意点
(1)内部管理体制の整備とシステムの整備との関連
申請書類や開示書類を作成するためにシステムが必要なのは当然ですが、内部管理体制の整備と、コンピュータシステムの整備との関連は非常に重要です。内部管理体制を支え、内部統制整備を具体化していくことが上場準備段階で求められる経営管理システムの特色と言えましょう。
したがって、システムの整備に関わる設計段階において、システムでカバーする内部統制の範囲をどこまで具体的に定義付けできるかが成功のカギとなります。例えば、伝票の承認はコンピュータ上で行うのか、紙に出力して承認印を押すのかは上場前後の組織体制やシステム整備コストとの兼ね合いで考えていかなければなりません。

(2)システム稼働の時期
もう一つ重要なのがシステム稼働の時期です。上場申請には最低限直前々期からの監査が義務付けられています。そのため、直前々期の期首からシステムを稼働させると思いがちですが、例えば、棚卸資産の評価方法が上場に向けて変更になった場合、直前々期の期首の評価方法を合わせなければなりません。そうすると更に最低でもその半期前からシステムが稼働している必要があり、システム整備に更に半年を要すると考えると、申請期から数えて3年前にはシステムの準備に取り掛かる必要があります。具体的に上場スケジュールを考える際にとても重要な事項ですので十分に注意しなければなりません。

4.個別管理システムでの留意点
経営管理システムを構成する個別の管理システムについて、どのようなデータ整備し、管理していかなければならないか、上場審査上の審査項目や、上場後の開示情報を詳しく検討してみると明確になります。
ここでは、我々の上場準備サポート業務の中で多くの会社で散見された未整備事項の一部を、システム構築上のポイントとして簡単にご紹介しましょう。

(1)ランキング
申請書類に登場する様々なデータのほとんどは上位数件についての説明となります。そのため残高や取引金額についてランキング順の出力ができることが望まれます。売上・売掛金、仕入・買掛金などのビジネスを支える主要科目については、それぞれ取引先ごと、製商品ごとにランキングが作成できるように設計する必要があります。

(2)セグメント
申請書類では、会社の事業をセグメント別に区分して開示する必要があります。部門がセグメントに対応していれば良いのですが、同一部門で複数の開示上のセグメントを担当している場合、開示資料を作成するために過去のデータを振り分けることになります。セグメントと部門・製商品の対応関係を明確にしてシステムで対応する必要があります。また、セグメント別の総資産額の表示も求められていますので、全社資産をどのようにセグメント分けするのか、それをシステムでどこまでサポート可能かについて検討しなければなりません。

(3)その他
上場審査段階では顧客に対する与信管理がどのように行われているかについて審査されますので、受注段階で売掛残高と受取手形残高など、顧客に対する債権残高と受注額が与信を上回っていないかをチェックできる体制を構築する必要があります。このようにシステムでどこまでカバーできるのかを検討しなければなりません。
また、売掛金残高では日々の売上や入金の取引が交錯する中で各時点での残高を管理するのが一般的ですが、上場申請書類に要求される売掛金年齢表は、前期末時点での状況を過去に遡って作成しなければなりません。特に国内では1件ごとに個別請求するよりも、締日を設定してまとめて請求する方法を採用している会社が多いのですが、1件ごとの売上データの個別消込を行わず、請求書単位の入金消込だけを行っていると、売上月を基準とした売掛金年齢表を作成することはできません。このような請求・回収システムを採用されている会社の場合、大幅な改善が必要となります。

5.おわりに
上場のためには経営管理システムの整備が欠かせないことを大筋で認識していても、“わが社にはフィットしない”と思われる方も中にはいらっしゃると思います。それぞれの会社ごとにビジネスの特色があり、パッケージソフトや他社のシステムをそのまま導入すれば問題が解決するというわけではありません。上場準備の早い時期に経営管理システムの構築について着手することをお勧めします。
以上
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