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トピックス 2006.9.27
上場準備で求められるディスクロージャーと会計処理
公認会計士 鈴木 基之
1.はじめに
株式上場はマイ・カンパニーからパブリック・カンパニーへの変革を意味します。すなわち、自社の株式が証券市場において広く一般投資家の間で売買されることになり、それにより飛躍的に増加した利害関係者に対して投資判断に役立つ情報を適時・適切に開示することが必要になります。したがって、適時・適切なディスクロージャーを行える体制を構築することは株式上場準備において非常に重要なテーマとなります。

2.ディスクロージャー制度
ディスクロージャー体制の構築のためには、まず日本における企業の情報開示の制度を理解する必要があります。具体的には会社法に基づく開示と証券取引法における開示の2種類があります。

(1)会社法における開示制度
全ての会社は定時株主総会の招集通知に計算書類(貸借対照表、損益計算書及び株主資本等変動計算書)、事業報告を提供しなければなりません。
なお、平成17年7月26日に公布され18年5月1日に施行された「会社法」は、会社法制の現代化を図るため、中小会社法制の総合的な見直し、株式会社における定款自治の範囲の拡大、合併等の組織再編行為に係る規律の一層の合理化等、会社に関するさまざまな制度の在り方について、従来の規律を体系的かつ抜本的に見直し、制定されたものです。従来、商法の計算書類と証券取引法の財務諸表は開示方法が異なっていましたが、会社法では証券取引法との調整が図られており、両者の内容は基本的に一致することになりました。

(2)証券取引法における開示制度
証券取引法におけるディスクロージャー制度(企業内容等開示制度)とは、有価証券の発行・流通市場において、一般投資家が十分に投資判断を行うことができるような資料を提供するため、有価証券届出書を始めとする各種開示書類の提出を有価証券の発行者等に義務づけ、これらを公衆縦覧に供することにより、有価証券の発行者の事業内容、財務内容等を正確、公平かつ適時に開示し、もって投資者保護を図ろうとする制度です。具体的には財務局に上場時には「有価証券届出書」を、その後は「有価証券報告書」(事業年度終了後3ヵ月以内に提出)等、会社の内容を詳細に記載した書類を提出することが義務づけられています。記載内容については、「企業内容等の開示に関する内閣府令」という内閣府令で様式、記載内容が詳細に決められています。
また、法律上は規程はありませんが、証券取引所が投資情報の迅速な開示を目的に、上場企業に対して決算短信の提出を義務づけています。決算短信は上場会社が決算発表時に作成する各社共通様式の決算情報のことで、企業の業績、財産の状況が総合的に表示されています。業績数値の注釈事項及び決算発表に際して重要と思われる事項などが記載されており、これを見れば企業の財務内容を一通り把握することができます。なお、各証券取引所は決算短信の提出について各決算日より一定の期間(期末においては45日以内)で提出するよう要請しています。

3.会計制度の見直し
非上場会社の場合、経理面でのチェックを受けるのが税務調査のみという場合が多く、単に税法のみを念頭においた会計処理を採っているということが良くありますが、株式を上場する場合、「一般に公正妥当と認められる会計処理基準」で会計処理をする必要があります。したがって、株式上場準備において税務的観点からの会計処理を「一般に公正妥当な会計処理基準」に則った会社処理に見直す必要があります。
さらに、近年、日本における「一般に公正妥当な会計処理基準」も欧米等国際的な会計基準との協調化で、会計処理基準の見直し、新しい会計基準の導入等、劇的に変革しているため、その変革への対応も考慮しておくことが必要になります。

4.原価計算制度
株式上場においては、原価計算制度の整備及び適切な運用が求められます。原価計算というと、非上場会社の多くは原価管理や売価を設定するための原価の計算を想起するかもしれませんが、原価計算制度とは、生産や購買などの実際の活動から得られた数量と金額をもとにして原価計算を行い、企業の会計帳簿に反映させることを制度として実施、運用していくことを言います。原価計算制度の要件として、次の事項が必要となります。

1)適正な原価計算基準(「一般に公正妥当な会計処理基準」のひとつ)に準拠していること
2)財務会計と有機的に結合し導き出された原価であること
3)原価計算が制度として継続的・組織的に実施されていること

ここで時間、労力、金額的に一番負担となるのが、原価計算を実施するために必要な情報を継続的に組織的に入手する仕組みを構築することです。したがって、原価計算制度構築に向けて、原価をどのレベルまで管理していくか明確にした上で、準備をスタートすることが最も重要になります。

5.おわりに
国内外における不祥事や事件から、四半期報告制度及び内部統制強化等に関する制度の導入、会社法の施行等、ディスクロージャー制度が大きく変革しています。このような激動期における株式上場は超えなければいけないハードルが多くあり、多大な負担が掛かることが予想されますが、これをクリアしないと上場会社にふさわしい会社とは認められないのです。
以上
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