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トピックス 2006.11.1
日本証券業協会の『「会員における引受審査のあり方等に関するワーキング・グループ」
における検討状況(第一次報告)』の公表について
IPO支援室 公認会計士 津村 陽介
1.はじめに
日本証券業協会は、平成18年9月20日付けで『「会員における引受審査のあり方等に関するワーキング・グループ」における検討状況(第一次報告)』を公表した。
現行の公正慣習規則第14号第3条の内容を改正し、新たに24項目の審査項目を規定することとしており、本稿ではその内容について解説することとする。
なお、日本証券業協会は、会員が行う引受審査のあり方等について抜本的に見直すために、エクイティ市場委員会の下部機関として、本年4月17日に「会員における引受審査のあり方等に関するワーキング・グループ」(以下「引受審査ワーキング」という。)を設置するとともに、検討事項の範囲が多岐に亘ることから、引受審査ワーキングの下部機関として、本年5月25日に「新規公開における引受審査のあり方に関する分科会(IPO審査分科会)」、「上場会社の公募増資等における引受審査のあり方に関する分科会(PO審査分科会)」及び「MSCB(転換価格修正条項付き転換社債)の取扱いに関する分科会(MSCB分科会)」の3つの分科会を設置し、テーマ毎にそれぞれの分科会において検討を行っているが、以下ではIPO審査分科会の内容に限定して記述する。

2.公表の背景
近年の証券取引所の市場改革により、新興市場の創設や上場審査基準の緩和が行われ、2000年以降毎年100社を超える企業が新規上場を果たしている。
このような状況の中、引受審査業務に新規に参入する証券会社が多くなってきており、引受審査の状況に格差が生じてきているとの指摘がなされている。
また、引受審査手続きの実務指針である「有価証券の引受審査手続きに関する事務処理指針」(平成4年8月、未公開)についても制定から相当の期間が経過している。
一方、有価証券届出書や上場申請書類に含まれる財務諸表には公認会計士による監査意見が必要になるが、昨今、監査人の責任の厳格化、明確化が求められていることから、本年9月25日付けで日本公認会計士協会 監査・保証実務委員会報告第68号「監査人から事務幹事証券会社への書簡について」が改正されているように、証券会社と監査人の連携に関しても制約が生じることとなってきている。
金融庁では、本年3月以降、「証券会社の市場仲介機能等に関する懇談会」において、発行体に対する証券会社のチェック機能の発揮に関する様々な論点について検討が行われた結果、本年6月30日、証券会社における有価証券の引受け等の審査を強化する観点から、審査項目・内容の見直し、審査体制の強化並びに第三者割当増資及びMSCB等の引受け・買受け時の留意事項の明確化等に向けた諸施策について、日本証券業協会に対して検討を要請する旨の論点整理が行われている。

3.IPO審査分科会における検討状況
IPO審査分科会では表1の事項について検討を行っているが、今回(2)イ.の内容に関し、金融庁の「証券会社の市場仲介機能等に関する懇談会」で追加すべきとされた引受審査項目(コーポレート・ガバナンスの状況、事業計画・業績見通しの妥当性、企業の成長性、資金使途の適正性、関係会社の管理状況、財務データの整備状況及び適時開示に向けた体制の整備状況)を踏まえつつ検討を行い、現行の公正慣習規則第14号に規定されている審査項目の大分類について、中分類まで細分化し、規則化することとし、その中身について決定した。
今後、同分科会においては、引受審査に係る事務処理指針の見直し、引受審査体制の強化等の残りの論点について順次検討を行う予定である。

表1:IPO審査分科会における主な検討項目
(1)新規公開における引受審査の問題点の整理
(2)証券会社が行うべき標準的な引受審査のあり方について
イ. 「有価証券の引受け等に関する規則」(公正慣習規則第14号)における新規公開における公募増資等の引受審査項目・内容の見直し
ロ.
ハ.
引受審査手続きに関する事務処理指針の見直し
引受審査体制の強化
(3)引受業務と引受審査業務の利益相反について
(4)主幹事証券とその他の幹事証券における引受審査のあり方について
(5)証券会社の引受審査と公認会計士監査の役割分担及び引受責任の明確化
(6)適切な発行条件の設定について

4.引受審査項目
各証券会社の引受審査基準の向上を図り、投資家保護、資本市場の健全化・活性化に資することを目的として、表2のとおり24の審査項目が決定され、大分類項目は「公正慣習規則第14号」に、中分類は「同規則細則」に規定されることになった。

表2:規則改正後の引受審査項目
1.公開適格性
(1)事業の適法性及び社会性
(2)会社の経営理念及び経営者の法令遵守やリスク管理等に対する意識
(3)反社会的勢力との関係の有無及び排除への仕組み
(4)上場するに当たっての市場の利用目的の健全性

2.企業経営の健全性と独立性
(注) ベンチャー企業などの過渡的な体制にある企業については、事業立ち上げに必要な支援関係を考慮した上で、各会員において判断をする。
(1) 関連当事者(公開前規制にて規定する人的関係会社を含む)との取引の必然性、取引条件の妥当性
(注)企業会計基準公開草案第14号による関連当事者の範囲の見直しに対応する。
(2) 親会社等など特定の者からの独立性
(3) 関係会社(資本上位会社を除く)の管理状況と出資構成
(注) 関係会社の財政状態及び経営成績は、連結ベースでの審査を実施することとなるため、大項目5.財政状態及び経営成績に含まれる。

3.事業継続体制
(1)企業活動における法令遵守の状況及びコンプライアンス体制の整備状況
(2)事業推進に必要な知的財産権の保護の状況、他社の権利侵害の状況
(3)事業継続に当たって重要な契約の締結状況、権利の確保の状況

4.コーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の状況
(1)会社の機関設計の妥当性(会社規模、事業リスクへの対応力等)
(2) 取締役・代表取締役・取締役会の責任遂行の状況(委員会設置会社の場合、代表執行役・執行役・執行役会等の責任遂行の状況等)
(3) 監査役・監査役会の責任遂行(委員会設置会社の場合、取締役会、3委員会の責任遂行の状況等)及び内部監査機能の状況
(4)内部管理体制(組織、社内規則、売上債権管理、予算管理、労務管理、システム管理等)の運用状況と牽制機能

5.財政状態及び経営成績
(1)財政状態の健全性と資金繰り状況
(2)財政状態及び経営成績の変動理由分析

6.業績の見通し
(1)利益計画の策定根拠の妥当性
(2)利益計画の進捗状況
(3)企業の成長性・安定性
(4)剰余金の配当に関する考え方

7.調達する資金の使途・売出しの目的
(1)調達する資金の使途(売出しの場合は当該売出しの目的)の妥当性(事業計画との整合等)
(2)調達する資金の使途の適切な開示

8.企業内容等の適正な開示
(1)法定開示制度及び適時開示制度への適応力
(2)「事業等のリスク」など企業情報等の開示内容の適正性・開示範囲の十分性・開示表現の妥当性

9.その他会員が必要と認める事項

(参考:現行の公正慣習規則第14号第3条に規定されている審査項目)
1.財政状態及び経営成績
2.調達する資金の使途及びその効果(売出しの引受けの場合は当該売出しの目的)
3.剰余金の配当の状況及び剰余金の配当に関する考え方
4.株券等の発行数量及び発行額(売出しの引受けの場合は売出数量及び売出額)
5.株券等の流動性及び収益性
6.過去に発行された株券等の状況
7.株価等の動向
8.その他会員が必要と認める事項
以上
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