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| トピックス 2007.2.28 |
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| 2006年 IPO市場の動向 |
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| IPO支援室 公認会計士 津村 陽介 |
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1.はじめに
2006年の日本経済は、息の長い景気回復を続けており、戦後最長のいざなぎ景気を超えたとも言われている。株式市場では、日経平均が1万7千円台を回復したが、年初に社会問題として大きく取り上げられた新興企業の粉飾事件をきっかけとして新興市場から資金が流出したままであり、個人投資家の投資心理も冷えたままで、新興企業全体に対する不信感は未だに払拭されていない。
このような状況のなか、IPO(新規株式公開)銘柄は株式の流動性が比較的低く株価が急騰することが多いため注目が集まるものの、8月以降には初値が公募価格を割り込む銘柄が多く発生しており、投資家は銘柄選別を強めている。
しかしながら、現状、IPOは資金調達、知名度・信用力の向上、経営体質の強化など、自社の成長を達成するための一つの手段として評価されていると言える。以下では、2006年におけるIPO市場の動向について、各取引所の特徴を踏まえながら整理してみることとする。
2.過去5年間の新規上場会社数の推移
過去最多の203社が新規上場(店頭登録を含む)した2000年以降、2003年までは株式市場の低迷により、新規上場会社数の減少傾向が続いたが、依然として120社を超える水準にあった。一部・二部市場への直接上場が20社強程度で推移する中、ジャスダック、マザーズなどの新興市場においては毎年100社以上が新規上場を果たしており、継続的に行われてきた市場改革や新市場の創設が、成長性のあるベンチャービジネスに必要な資金を調達する機会を与えることとなっている。証券市場そのものがベンチャー企業のニーズに応えられるものに変貌したものと言える。
2003年の後半からは株価水準が8千円を割り込む状態から脱して回復に向かったこともあり、2004年の新規上場会社数は175社と増加に転じ、2006年には188社まで回復して200社に迫る状況であった。
2004年に56社が上場したマザーズは、2005年以降上場件数が減少している。2004年3月に上場した不動産業の会社の不祥事が直後の4月に発生し、5月に東京証券取引所(以下、「東証」と言う)が金融庁から業務改善命令を受けたり、IT関連企業の粉飾決算が表面化したこともあり、これらの事象は上場審査に少なからず影響を及ぼしたものと考えられる。
2002年に大阪証券取引所(以下、「大証」と言う)とナスダックの業務提携が解消されて誕生したヘラクレスは、一時上場会社数が低迷していたが2006年には37社と躍進している。注文件数急増に伴うシステムトラブルにより、2005年5月から同年10月まで新規上場の受付を停止したため2005年の上場会社数は伸び悩んでいたが、2006年には正常化しマザーズに迫る勢いとなった。
ジャスダックは2004年12月に証券取引所に移行して、直接上場審査を行うようになった。上場までに要する期間は間接審査による時代と比べて大差はないと言われているが、上場会社数では若干の減少傾向にある。
3.2006年の各証券市場別の状況
【取引所(一部・二部)】
2006年の取引所(一部・二部)への直接上場は33社(前年20社)と好景気を反映してか13社の大幅増加となった。東証は重複上場4社を含めて29社(前年19社)を占めており、一部市場へ直接上場した会社は13社(前年8社)であった。このうち銀行業が3社もあり、なかでも1998年に経営破綻した日本債券信用銀行を前身とする株式会社あおぞら銀行は、外資系ファンド主導で再生を果たした事例で、売出総額が3,500億円を超える超大型案件であった。
売上規模としては100億円以上が30社と全体の90%を占めており、約3分の2の会社が経常利益15億円以上、当期純利益10億円以上を計上している。
【ジャスダック】
2006年のジャスダックへの新規上場は56社(前年65社)であったが、一方で相変わらず東証への上場を目指す会社も多く、22社(前年31社)が東証に上場した。東証に移行する会社は比較的規模が大きいため、ジャスダックの市場規模が伸び悩む原因となっている。
ジャスダックは他の証券取引所とは異なり、成熟企業向け市場と成長企業向け市場を区分していないため、売上規模は30億円未満から500億円未満の広範囲に分散する傾向は続いており、経常利益、当期純利益とも1億円から10億円に分散している。約3分の2の会社が経常利益15億円以上、当期純利益10億円以上を計上している一部・二部市場に比べれば、ジャスダックは一段低い水準でも十分に上場が可能な状況となっている。
【マザーズおよびヘラクレス他】
2006年のマザーズへの新規上場は41社(前年37社)、ヘラクレスは37社(前年22社)、その他21社(前年16社)となった。その他の内訳は、セントレックス13社(前年13社)、アンビシャス4社(前年1社)、Q-Board 4社(前年2社)で、アンビシャスとQ-Boardの社数が増加している。
マザーズ以外は新規上場に関して新興の証券会社が主幹事となっているケースが多い市場であり、売上規模は30億円未満の会社が中心で全体の65%を占め、経常利益についても3億円未満の比率が高くなっている。約半数の会社が当期純利益1億円未満であり、うち2社は赤字での上場を果たしている。
地方市場において、時価総額の小さい会社が上場されるケースが出ているが、上場維持費用が増大していることを考えると懸念材料である。一部・二部市場やジャスダックと異なり、設立後10年未満での上場が57%を占めているが、マザーズが2003年に上場要件から新規事業性を除外し、高い成長可能性に一本化したため、社歴の長い中堅企業がマザーズでの上場を検討するようになったことなどから、設立後経過年数は若干長期化する傾向がある。
4.新興市場の資金調達の状況
| 項 目 |
ジャスダック |
マザーズ |
ヘラクレス |
| 2004年 |
2005年 |
2006年 |
2004年 |
2005年 |
2006年 |
2004年 |
2005年 |
2006年 |
| 上場会社数(社) |
71 |
65 |
56 |
56 |
37 |
41 |
16 |
22 |
37 |
| 上場時資金調達額(億円) |
1,392 |
2,158 |
1,962 |
1,262 |
1,303 |
974 |
394 |
474 |
496 |
| 平均資金調達額(億円) |
19.6 |
※1 33.2 |
※3 35.0 |
22.5 |
※2 35.2 |
23.7 |
24.6 |
21.5 |
13.4 |
※1 ジュピター・テレコム(1,047億円)を除くと17.3億円
※2 ソニーコミュニケーションネットワーク株式会社(346億円)を除くと26.5億円
※3 ビックカメラ(345億円)、アトリウム(272億円)を除くと24.9億円
新興市場の資金調達額(公募・売出金額合計)の平均値は20億円程度で推移しているが、各市場の中位の会社の資金調達額は、ジャスダック13億円、マザーズ15億円、ヘラクレス9億円である。100億円以上調達したのは7社(前年7社)で、最高は株式会社ビックカメラの345億円であった。
上場時時価総額は、一部・二部市場の新規上場会社の70%以上が100億円以上であるのに対し、新興市場は逆に70%が100億円未満となっている。会社の成長性が重視される新興市場であるが、市場から調達できる金額は、数億円から30億円までが中心となっている。
近年のIPO市場は、好調な株式市場の影響もあって初値が高騰するなど過熱気味の状況となっていたが、8月以降は銘柄選別の動きが強まっており、公募価格が仮条件の上限で決定しない銘柄も出てきている。初値/公募価格倍率は、平均でジャスダックは1.6倍(前年2.1倍)、マザーズは2.0倍(前年2.6倍)、ヘラクレスは2.5倍(前年3.4倍)となっている。特に5倍を超えた銘柄が6社あり、最高は人材派遣会社の株式会社ジェイテック(ヘラクレス)の8.7倍であった。一方、公募価格割れとなったのは10社(全市場では20社)となり、前年の2社(全市場では3社)から大幅に増加している。
5.おわりに
2006年6月7日に改正証券取引法(金融商品取引法)が成立し、2008年4月1日以降開始する事業年度より、上場企業に内部統制報告制度が導入されて、公認会計士による監査が義務付けられることとなった。各証券取引所の上場規則は改定されていないため、上場準備段階での内部統制の監査は現時点では義務付けられていないが、これから上場を目指す企業は上場後すぐに当制度への対応が必要となることから、上場準備段階で上場企業と同水準まで管理レベルを引き上げる必要があり、上場審査の中でも対応状況が確認されることが予想される。
また、近年引受審査業務に新規に参入する証券会社が多くなっており、引受審査の状況に格差が生じてきているとの指摘に対応し、日本証券業協会は2006年9月20日付けで『「会員における引受審査のあり方等に関するワーキング・グループ」における検討状況(第一次報告)』を公表し、公正慣習規則第14号第3条の内容を改正し、新たに24項目の審査項目を規定した。
これらの改正により今後の上場審査がさらに厳格化すると考えられ、上場を目指す企業にとってコーポレート・ガバナンスの強化はもちろんのこと、内部管理体制の整備・運用がますます重要な課題になってきていると言える。
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| 2005年 |
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2006年 |
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| ※各取引所Webサイト開示データ及びQUICKより作成 |
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| 以上 |
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