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トピックス 2007.8.1
東京証券取引所による上場整備制度プログラム2007の公表について
IPO支援室 公認会計士 岡田 雅史
1.はじめに
東京証券取引所では本年3月に昨年6月の「上場制度整備プログラム」への対応を「上場制度整備懇談会」の中間報告として公表した。今回公表された「上場制度整備プログラム2007」はこの中間報告を受けて、昨年公表した上場制度整備プログラムを改訂したものである。
本プログラムにおいても上場制度整備懇談会の中間報告と同様以下の点を基本方針として策定されている。

●市場の健全性確保に向けて、上場会社などの市場関係者に対して証券市場を構成する一員としての一層の自覚を促すような制度を整備する。
●会社情報の開示の一層の充実を図ることにより透明性を確保する。
●投資者保護及び市場機能の適切な発揮の観点から、企業行動に対して適切な対応をとる。
●上場会社などの市場関係者にとってより使い勝手のよい市場の整備に取り組む。
●上記の対応に当たっては、国際的な整合性に配慮する。

2.制度整備の方向性
プログラム内容は、上場制度整備懇談会の中間報告での「企業行動に関する制度の整備」と「市場制度の整備」と「上場規則の実効性の確保に向けた制度の整備」の3つの項目に加え、「多様な商品の上場に向けた対応」「その他」の5つに大きく分類されている。
また、実施の方法やタイミングによって以下の3つに分類されている。

直ちに実施する事項
(第一次実施事項)
本プログラムの公表後速やかに制度要綱をとりまとめ、又は要請を実施することとした事項

具体案を検討のうえ実施する事項
(第二次実施事項)
2007年度中に制度要綱を取りまとめ、又は要請を実施するために、詳細について有識者を交えて検討を行うこととした事項
検討を継続する事項 基礎的な問題点の洗い出しなど、実現に向けた検討を継続的に行っていくこととした事項(上場制度整備懇談会での検討を含む)

3.具体的なプログラム内容
各項目における整備内容は以下のとおりである。
1)企業行動に関する制度の整備
1.適時開示の充実
(i)直ちに実施する事項 ●適時開示に関する上場会社の意識の啓発や投資家の利用を促進する環境整備
●MSCB、第三者割当増資に関する開示の充実
●四半期報告制度に導入に伴う中間決算短信と四半期財務・業績概況の開示の統合
(ii)具体案を検討のうえ実施する事項 ●投資判断上の重要な事項の過不足のない開示を図る上場規則の見直し(軽微基準の見直しや包括規定の設置等)
●適時開示ガイドラインの見直し。開示・記載上の注意事項やQ&Aの充実。
(iii)検討を継続する事項 ●TDnetの上でのXBRL形式の決算情報の提供に向けての準備

2.企業行動規範の制定
(i)直ちに実施する事項 ●会社情報の適時開示履行に加え、株主・投資家の保護や市場運営の点で、企業行動に適切な対応を求める事項についての企業行動規範の上場規則上での制定
― 従来からの取引所からの要請事項や上場会社の尊重事項等を再整理し行動規範化する。
― 流通市場の機能や投資家保護の尊重について一般的規範として明示する。
― 監査役会や会計監査人の設置等、参考書類の作成等、ガバナンスに関してのあるべき基本的事項等を含める。
●企業行動規範に関する実効性の確保についての整理
●企業行動規範の整備に伴う、「コーポレート・ガバナンス」及び「内部管理体制の有効性」に関する上場審査における実質審査の項目としての明確化
(ii)具体案を検討のうえ実施する事項 ●経営陣や支配株主が関わる取引に際しての利益相反による少数株主の不利益に対する施策の行動規範への記載の検討
― 子会社においては親会社出身以外の社外役員の選任を義務付ける。
― 支配株主との重要な取引等に際しては社外役員により構成される特別委員会の承認を経る。
― MBOに関する意見表明に際して、利益相反の弊害を防止する措置をとる。
●反社会的勢力による被害を防止するための社内体制の整備に関する行動規範への記載の検討
(iii)検討を継続する事項 ●追加的に企業行動規範に含めるべき内容の有無に関する継続的検討
― 既存株主の持分の希釈化や支配権が変更するような大規模な株式の発行に際しての株主の同意の要否等を規範の対象とするかの検討を行う。

3.親会社等を有する上場会社への対応
(i)直ちに実施する事項 ●親会社を有する会社の上場に関する東証の考え方(少数株主との利益相反等を考えれば望ましい資本政策ではないこと)の公表
(ii)具体案を検討のうえ実施する事項 ●経営陣や支配株主が関わる取引に際しての利益相反による少数株主の不利益に対する施策を行動規範への記載の検討
●実質的に一体の親会社及び子会社による上場の防止に向けて他の証券取引所と協調した検討の実施
(iii)検討を継続する事項 ●親会社等を有する会社の上場審査について、審査項目・内容についての再整理
●上場会社が企業再編等により親会社等を有することになった場合の内部管理体制の確認を実施する制度の整備
― 従来は未上場会社の子会社化等に関しては上場廃止基準に基づく猶予期間入りの措置はあったが、未上場会社の親会社化に際しての実質審査制度は設けられていなかった。

4.内部統制報告制度への対応
(i)直ちに実施する事項 ●内部統制制度に関して、上場会社はディスクロージャーの信頼性確保のため内部統制体制の整備が必要である旨の東証の考え方の公表
●内部統制報告制度に関する上場審査及び上場管理上の当面の取扱いの方向性についての公表
― 内部統制報告制度開始前、及び制度開始後の未上場会社の上場審査については現行の規定の中で確認を行う。
― 内部統制報告書及びこれに係る監査報告書の記載内容を理由に上場廃止とは しない。
(ii)具体案を検討のうえ実施する事項 ●内部統制報告制度の導入にあわせて他市場に上場している会社の新規上場申請時の取扱い等についての上場規則の見直しの検討
― 他市場からの移籍上場案件については制度開始後は内部統制報告書及びこれに係る監査報告書の提出を求める。
― 当該書類において経営者が評価結果を表明できない場合、又は監査人が意見表明しない場合は不受理事由とする。
― 上場会社について内部統制報告書において内部統制に重要な欠陥があるとする場合、内部統制の評価結果を表明できない場合、及び監査人が不適正意見を表明もしくは意見不表明とする場合は、適時開示事由とする。
(iii)検討を継続する事項 ●今後の実務の動向を踏まえた、未上場会社の上場申請時での内部統制の整備状況を確認するための書類の提出の検討
●上場会社について内部統制の重要な欠陥が継続的に是正されない場合等における上場管理上の取扱いの検討

5.種類株式の上場制度の整備
(i)直ちに実施する事項 ●議決権に関する種類株式の上場を認める場合の要件の検討
●既上場会社による種類株の発行が認められないケースの整理
― 「株主の権利を不当な制限」に該当するか否かで判断する。
― 該当する事象として上場株式より議決権の多い種類株式の発行する場合や上場株式の議決権を制限する場合が想定される。
(ii)具体案を検討のうえ実施する事項 ●議決権に関する種類株式上場に必要な要件の整理
― 上場が認められるスキーム・審査基準・廃止基準・行動規範への反映・種類株である旨の表示方法・株価指数等への影響等を検討する。
― 上記の各項目ついて新規公開の場合、上場会社が普通株式より議決権が少ない株式を発行する場合等に分けて検討する。
(iii)検討を継続する事項 ●普通株式を上場していない会社の優先株式のみの上場の可否の検討
●議決権に関する種類株式の上場に関するガイドラインの作成

2)市場制度の整備
1.マザーズの信頼性向上
(i)直ちに実施する事項 ●「成長の初期段階にありかつ将来的に本則市場への上場を志向する企業に早期に資本市場へアクセスする機会を提供する市場」というマザーズの位置づけを明確にする上場制度の整備
― 本則市場からマザーズへの市場変更に関する規則は廃止する。
― 成長性の見込まれる企業の上場を促すため、現行の売上高に関する上場審査基準を廃止するとともに、売上高に関する廃止基準について5年間の間不適用とする。
●マザーズ上場会社の新規上場における流動性向上の上場制度の整備
― 現状の形式基準にない本則市場のような少数特定者持株比率に関する形式基準を新設する。
●マザーズ上場会社の経営者向けセミナーの開催
(ii)具体案を検討のうえ実施する事項 ●マザーズの信頼性向上、成長性のサポートに向けた上場制度の整備の検討
― 高い成長可能性に対する審査の規則上の位置付けを明確化する。
― 上場後一定期間(例えば5年間)経過後での本則市場の上場審査で実施する実質審査に準じた審査(企業の継続性・収益性に関するものを除く)を実施し、不備がある場合に改善を勧告できる制度を導入する。
― 上記審査で改善すべき事項がなかった場合の、その後一定期間内での本則市場への市場変更申請に際しての実質審査項目の一部免除する。
― 上記審査は5年毎に実施する。
― 現状、上場後3年以内に限定されている年2回の会社説明会は3年経過後も継続する。
(iii)検討を継続する事項 ●上場後一定期間経過後において成長が確認されない場合のマザーズ市場からの退出を促す方策の検討
― 上場後一定期間経過後は一定規模以上の利益又は売上高の水準を求めるともに、満たせない場合は上場廃止もしくは他の市場区分への移行を求める。
●マザーズに関する投資者の理解を充実させる施策の検討

2.売買単位の見直し
(i)直ちに実施する事項 ●売買単位の集約及び統一の実現に向けての関係者との調整
●新規上場会社及び単元変更会社等に対する売買単位の集約へ向けての要請
(ii)具体案を検討のうえ実施する事項 ●1単元100株への統一、及びその前段階としての1単元100株と1単元1,000株の2種類に集約するための行動計画の策定・公表
(iii)検討を継続する事項 ●将来的な売買単位の統一に向けた検討の継続

3.流動性等に係る基準の見直し
(i)直ちに実施する事項 ●株主数基準の見直し
― 上場廃止基準について現行の逓増方式から一定水準の固定方式へ変更する。
●浮動株式数基準及び浮動株時価総額基準の導入
●少数特定者持株比率基準の見直し
― 上場廃止基準については浮動株式数基準、浮動株時価総額基準の導入を前提に、少数特定者持株比率が95%を超えるような極端な場合にだけ適用される基準とする。
― 上場審査基準については上場後の相場の乱高下の緩和し円滑な流通を確保するため現行の水準を継続する。
― マザーズの上場審査時にも本則市場より緩和した水準であるが適用を行う。
(ii)具体案を検討のうえ実施する事項 該当事項なし
(iii)検討を継続する事項 該当事項なし

4.市場区分の見直し
(i)直ちに実施する事項 該当事項なし
(ii)具体案を検討のうえ実施する事項 ●市場第一部、第二部の区分を定める基準についての実務的な問題点についての検討
― 一部指定及び指定替え基準に関し流動性に市場の評価を加味した基準である浮動株時価総額を中心に再構成する。
― 一部指定基準での少数特定者持株比率基準は廃止する。
― 既上場会社への内部管理体制の確認制度(£で言及)の導入に伴い、現状の一部指定時の実質審査は廃止する。
― 上記変更はTOPIX等の株式指数の継続性や企業行動規範のあり方についても配慮する。
(iii)検討を継続する事項 ●既上場会社の内部管理体制の確認方法の整理
― 上場後の内部管理体制の有効性を継続的に確保する観点から以下のような内部管理体制が不適切と判断される企業行動が行われた場合の確認制度を整理する(規模の大きな非上場企業との経営統合・株主や役員の大幅な変更・故意重過失の適時開示違反・事業内容の短期での著しい変更等)。
― 上記の確認の結果、問題点が指摘された場合の取扱いを検討する(問題点の改善が確認されるまでの別個の市場区分への移行等)。

3)上場規則の実効性の確保に向けた制度の整備
(i)直ちに実施する事項 ●上場規則の違反行為に対する制裁金の賦課に関する具体的検討
●既存の改善報告書、注意勧告、公表措置等の総合的見直し
●問題銘柄のための新たな市場区分の設置に関する制度整備
― 上場会社について上場廃止基準への抵触ほどではないが重大な上場規則違反が認められる場合及び前述したような内部管理体制の確認の結果改善すべき点が発見された場合に移行する市場区分の整備を検討する。
●上場廃止等の決定等、上場会社にとって不利益となる措置を実施する場合の判断の透明性、公平性の向上
― 独立性を強化した自主規制法人による判断により決定内容の公平性、透明性の向上を図る。
●監理ポスト制度の呼称の見直し
― 上場廃止基準上の審査とそれ以外の場合との呼称を分け、廃止基準上の審査を行っている状況の投資家への明確化を図る。
(ii)具体案を検討のうえ実施する事項 ●制裁金制度に関しての制度整備
― 適用に当たっての手続や金額に関するガイドラインについても整理を行う。
●上場廃止等の上場会社にとって不利益となる措置の決定に関する、更なる透明性の向上を図るための検討
― 上場会社の自主規制法人への不服申立て制度を検討する。
― 不服申立て期間中は措置実施の中断する。
(iii)検討を継続する事項 ●上場廃止基準に抵触した銘柄の流動性の確保についての市場制度整備に向けての整理
― 上場廃止銘柄について投資家の流動性確保の点から流通の場の維持が望まれる銘柄を取り扱う市場についての検討を行う。

4)多様な商品の上場に向けた対応
(i)直ちに実施する事項
●ファンドの上場制度の創設
― 現状不動産投資信託証券だけに限定して整備されている上場制度について、幅広い運用資産・投資方針の投資法人が上場できるような規則改正を検討する。
― 投資法人の上場に際しては、投資法人だけでなく運用会社の経営体制に加え、投資方針の健全性や継続性についても確認を行う。
●ETFに関する上場制度整備
― 新たな種類のETF商品の上場に向けての制度整備を実施する。特に対象となる指数や信託報酬等が同じ内容となる商品の複数上場による弊害を防止するような対応を図る。
― ETFの流動性基準にのあり方について検討を行う。
●受益証券発行信託の受益証券(日本型預託証券(JDR))に関する上場制度の整備
(ii)具体案を検討のうえ実施する事項 ●欧米の取引所において上場が認められている多様な商品(商品連動型ETF等)についての提供の検討
(iii)検討を継続する事項 ●外国株市場の活性策についての検討
●受益証券発行信託の受益証券の上場制度に関して、外国会社が発行する株式意外の資産を原資産とする場合の要件の検討

5)その他
1.公認会計士との連携強化
(i)直ちに実施する事項 ●証券取引法上の監査を行う公認会計士等について会社法上の権限が付与されるような工夫
― 会社法上の大会社以外の上場会社への会計監査人の設置を求める。
(ii)具体案を検討のうえ実施する事項 ●公認会計士の交代時における開示の充実
― 監査人の交代時での交代の経緯や理由等の記載についての検討を行う。
●上場会社監査事務所登録制度への協力
(iii)検討を継続する事項 ●公認会計士へのヒアリングに関する上場会社の協力義務の拡大及び具体的な方法についての整理

2.自主規制機能の強化
(i)直ちに実施する事項 ●自主規制機能の強化に向けての自主規制法人の設立及び上場制度の見直し
― 上場及び上場廃止に関する業務の自主規制法人へ委託する。
― 自主規制法人設立に伴い、上場規則体系を整備する。
(ii)具体案を検討のうえ実施する事項 ●自主規制法人の行う自主規制業務の執行に関する透明性の向上についての検討
― 透明性の向上に向け、判断の基本的な考え方の明示等の施策を実施する。
(iii)検討を継続する事項 該当事項なし

3.その他
(i)直ちに実施する事項 該当事項なし
(ii)具体案を検討のうえ実施する事項 ●内部者取引の未然防止体制の充実のため、上場会社役員に関するデータの収集・管理を行う内部者情報センター(仮称)の開設及び制度整備の検討
― 内部者情報センターは全国の取引所の上場会社を対象とする。
― 登録情報を更新は上場会社で行う旨を上場規則上で明記する。
(iii)検討を継続する事項 該当事項なし
以上
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