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トピックス 2008.4.30
東京証券取引所の四半期決算短信の様式・作成要領について
IPO支援室 公認会計士 和泉 嘉人
1.はじめに
株式会社東京証券取引所(以下「東証」という)から、平成20年3月19日付けで、金融商品取引法に基づく四半期報告制度の導入に伴う対応の一環として「四半期決算短信の様式・作成要領(平成20年4月1日以後に開始する事業年度から適用)」が公表された。今後、各証券取引所からも同様のものが公表される見込みである。なお、本文中の意見に係る部分は私見である。

2.四半期決算短信の概要
四半期決算短信(以下「四半期短信」という)は、従来より開示が要求されていた四半期財務・業績の概況(以下「四半期概況」という)を名称変更し、四半期報告制度の導入に伴い開示項目及び構成の見直しを行ったものである。
東証は、四半期短信を四半期の状況に関する有用な情報をできる限り速やかに投資者に伝えるための速報としての役割を担うものと位置づけている。そのため、四半期短信の内容は四半期報告書における開示内容のうち、特に速報性が重視される項目に限定している。しかし、従来開示が要求されていた四半期概況とは異なる開示も多い。多くの上場会社が初めて四半期短信を作成する平成20年7月まで間もないことから、実務上影響が大きいと思われる項目について要約する。

3.四半期短信作成上の留意事項
1)業績予想

従来の四半期概況では、直前に開示された業績予想について見直しを行った場合のみ記載が要求されていた。
四半期短信においては、「業績予想は必ず記載が必要な項目」とされており、直前に開示された業績予想からの修正の有無について欄外に注記が必要とされている。
また、業績予想の期間については、従来の四半期概況で中間期の業績予想が(第1四半期で開示する場合には)要求されていたが、四半期短信でも第1四半期においては、「第2四半期累計期間の業績予想の開示が通期予想とともに要求されている」ことに留意が必要である。

2)簡便な会計処理等
従来の四半期概況では、中間連結財務諸表等の作成基準からの簡便な方法の採用の有無を記載することとされていたが、四半期短信では、「四半期連結財務諸表規則に規定されている簡便な会計処理と四半期連結財務諸表に特有の会計処理の適用の有無を記載する」こととされている。
従来の四半期概況では税金計算等について記載するケースが多かったようであるが、四半期短信では四半期短信発表後に提出する四半期報告書と同様の記載が求められる点に留意が必要である。
なお、四半期連結財務諸表規則に規定されている簡便な会計処理としては、例えば、固定資産の減価償却費の算定方法等があり、四半期連結財務諸表に特有の会計処理としては、例えば、税金費用の計算等がある。

3)会計処理の変更
従来の四半期概況では、会計基準等の改正に伴う会計処理の変更についての記載は要求されていなかったが、四半期短信では、原則として四半期連結財務諸表規則に規定されている会計処理の変更の記載が要求されるため、「会計基準等の改正に伴う会計処理の変更も記載される」ことになる。
特に、平成20年4月以降開始事業年度については、多くの新会計基準が適用となるため、留意が必要である。

4)発行済株式総数
従来の四半期概況では、発行済株式総数は開示情報として要求されていなかったが、四半期短信においては、「サマリー情報として、期末発行済株式総数等の開示が必要」とされている。
ただし、従来より1株当たり四半期純利益の開示は要求されていたため、新たに集計等を要するものではなく、実務上の負担は大きくないと考えられる。

5)連結経営成績に関する定性的情報
従来の四半期概況では後述の通り、期首からの累計期間の損益計算書のみが開示されていたため、定性的情報も四半期累計期間のみであったが、四半期短信では、「四半期会計期間(3カ月、例えば3月決算の第2四半期の場合7月〜9月)の連結損益計算書を開示している場合は、四半期会計期間(3カ月)の定性的情報も記載する必要がある」点に留意が必要である。

6)四半期連結貸借対照表
従来の四半期概況においては、独自の様式として当四半期末と前年同四半期末を比較し増減を示した上で、参考情報として前期末の連結貸借対照表が比較開示されていたが、四半期短信では「四半期連結財務諸表規則の様式に従い、当四半期末と前期末の比較形式により記載」することとされ、増減の記載も不要となった。

7)四半期連結損益計算書
四半期連結貸借対照表と同様に、四半期決算短信では「四半期連結財務諸表規則の様式に従い、当四半期累計期間と前年同四半期累計期間の比較形式により記載」することとされ、増減の記載も不要となった。
なお、四半期会計期間(3カ月)の連結損益計算書については、四半期連結財務諸表規則では要求されているものの、四半期短信においては「原則として省略ができる」こととされた。
ただし、「四半期報告書に記載予定の四半期会計期間(3カ月)の連結損益計算書における売上高又は利益(損失)額 *1 と四半期短信における当四半期連結累計期間の売上高又は利益(損失)額 *1 から直前四半期連結累計期間の売上高又は利益(損失)額 *1 を差し引いた金額との間に重要な差異がある場合は、必ず当四半期会計期間(3カ月)及び前年同四半期会計期間に係る連結損益計算書を併せて開示する」こととされた。
また、「当四半期会計期間(3カ月)に係る連結損益計算書を開示していない場合は、前年同四半期会計期間(3カ月)に係る連結損益計算書を開示する必要はない(前年同四半期の四半期短信において、四半期会計期間(3カ月)に係る連結損益計算書を開示した場合であっても同様)」。
なお、上記に該当しない場合であっても、「四半期会計期間(3カ月)に係る連結損益計算書を任意で開示することは差し支えない」とされている。

*1 ここでいう「利益(損失)額」とは、営業利益(損失)、経常利益(損失)、税金等調整前四半期純利益(損失)、四半期純利益(損失)のことを指しており、これらの利益(損失)額のうち、いずれか1つでも重要な差異がある場合は、四半期会計期間(3カ月)に係る連結損益計算書を開示することになる。なお、重要な差異が発生する場合として、累計の数値を算出するにあたり、同じ連結会計年度に属する過去の四半期連結損益計算書について換算等をし直す場合 *2 が例示されている。

*2 四半期決算手続における「四半期単位積上げ方式」、「累計差額方式」、「折衷方式」のいずれを採用するかにおいて、例えば、下記の場合が想定される。
棚卸資産の評価方法
期末単価の計算方法に総平均法や売価還元法を採用する場合において、四半期・期首からの累計期間等のうちいずれかの期間を選択するか。
外貨建収益及び費用の為替換算
為替相場に期中平均相場を採用する場合の算定期間として月、四半期、期首からの累計期間等のうちいずれかの期間を選択するか、又は決算日の為替相場を選択するか。
有価証券の減損処理や棚卸資産の収益性の低下に伴う簿価切下げ
四半期段階で切放し法と洗替え法のいずれを選択するか。
税金費用の計算
例えば第3四半期において初めて課税所得がマイナスとなった場合、当該四半期の税金費用(課税所得に係わる部分)は「0」となるが、累計差額では税金費用はマイナスとなる。

8)四半期連結キャッシュ・フロー計算書
従来の四半期概況においては、任意開示項目であったが、独自の様式として当四半期と前年同四半期を比較した上で、参考情報として前期末の連結キャッシュ・フロー計算書が比較開示されていた。
四半期短信では、従来通り任意開示項目としての位置付けは変えていないが、開示する場合は、四半期連結財務諸表規則に従い、「当四半期累計期間と前年同四半期累計期間の連結キャッシュ・フロー計算書を開示」することが求められる。

9)四半期連結株主資本等変動計算書
従来の四半期概況では任意開示項目として例示されていたが(様式の開示はなし)、四半期短信では、言及されていない。これは、四半期財務諸表に関する会計基準において、四半期財務諸表の範囲から四半期株主資本等変動計算書が除かれたためであると推定される。ただし、四半期連結財務諸表規則で求められている、「株主資本の金額に著しい変動があった場合の注記を行う場合」は、四半期決算短信においても記載する必要がある(この注記は、「該当事項がない場合も「該当事項なし」と記載」する必要がある)。

10)継続企業の前提に関する注記
従来は特に規定がなかったが、四半期短信においては、必ず注記を行うものとされた(「該当事項がない場合も、省略は認められず、「該当事項なし」と記載」することとされている)。

11)セグメント情報
従来の四半期概況と同様四半期短信においても任意開示であるが、四半期会計期間(3カ月)の連結損益計算書を開示している場合は、「同期間のセグメント情報を併せて開示する」ことも可能とされている。

12)連結財務諸表作成会社の個別財務諸表の開示
四半期概況では、連結財務諸表作成会社がサマリー情報で個別ベースの開示を行う場合の取扱いは規定されていたものの、個別財務諸表そのものを開示する場合の特別の規定はなかった。
四半期短信においては、連結財務諸表作成会社が四半期個別財務諸表を任意で開示する場合の取扱いを規定している。具体的には、「「参考」と明記して個別財務諸表を掲載した上で、開示した四半期個別財務諸表は法定開示におけるレビュー対象にならないことと、採用した財務諸表の作成基準を記載」することを求めている。

13)その他の注記事項について
四半期概況では明確な規定はなかったが、四半期短信においては、「短信で開示することが有用であると判断し、決算発表のタイミングで開示できるのであれば、開示することも差し支えない」旨、明記されている。

4.四半期決算の発表時期
四半期決算は、開示の迅速性が年度末の決算以上に重視されるため、少なくとも年度末の決算発表 と同等以上の早期開示が求められるとし、目安として、四半期末後30日以内の開示がより望ましいとされている。

年度末決算短信については、遅くとも期末後45日以内に開示されることが適当であり、さらに30日以内の開示がより望ましいとされている。

5.特定事業会社に関する取扱い
特定事業会社(銀行業・保険業等)の第2四半期決算については、特定事業会社(第2四半期)用の四半期短信様式・作成要領に従って、従前の中間決算短信に近似した四半期短信を、第2四半期のみ開示することになる。

6.適用初年度における取扱い
四半期報告制度において作成される四半期財務諸表については、四半期報告制度の適用初年度において、四半期損益計算書及び四半期キャッシュ・フロー計算書について、前年度の対応する四半期会計期間及び期首からの累計期間に関する四半期財務諸表の記載を要しない旨が規定されている。
一方、四半期短信については、当四半期の情報とともに前四半期の情報を開示することを求めているため、適用初年度における四半期短信についても、これまでの四半期概況における数値を前四半期の情報として記載することとなるが、適用される会計基準や用語、様式及び作成方法に関する規則が当四半期に係る財務情報と前四半期に係る財務情報との間で異なることとなるため、四半期短信の適用初年度においては以下のような特別の取扱いが規定されている。

(1)サマリー情報の連結経営成績に関する項目については、前四半期及び当四半期の数値の両方を記載するが、前年同四半期増減率には「−」を記載する。

(2)財務諸表等については、前四半期及び当四半期に係るものを記載するが、前四半期に係る財務諸表等と、当四半期に係る財務諸表等は並べて記載するのではなく、当四半期に関する財務諸表等を先にまとめて記載し、前四半期に関する財務諸表等については、当四半期に係る財務諸表等の次にまとめて記載し、その冒頭に「参考資料」である旨を明記する。

(3)上記にかかわらず、従前の四半期概況では、四半期会計期間(3カ月)の連結損益計算書の作成は求めていなかったため、四半期決算短信の適用初年度においては、当四半期会計期間(3カ月)の連結損益計算書を開示する場合であっても、前年同四半期会計期間(3カ月)の連結損益計算書の開示は任意とする。

7.おわりに
四半期短信は、四半期末後30日以内の開示が望ましいとされている一方、四半期報告書と同様の記載が求められている項目もあるため、四半期短信記載項目のうち、四半期報告書記載事項については、早期に記載内容を検討することが重要と考えられる。
以上
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