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トピックス 2006.7.26
研究開発型バイオベンチャーの収益認識 その1
ライフサイエンスグループ 公認会計士  木村 秀偉
公認会計士  佐野 明宏
1.はじめに
研究開発型バイオベンチャーとバイオ会計のエッセンス』(2006.2.8)において解説した通り、研究開発型バイオベンチャーでは企業活動として、「シーズ研究開発」によるアカデミアへのキャッシュ・アウトと「製品研究開発」による製薬企業等(製薬企業及び公的機関)からのキャッシュ・インが生じる(図表1参照)。
本稿では、このうち、製薬企業等からのキャッシュ・インに関する会計処理を考察する(但し、資本取引に該当するキャッシュ・インについては対象外とする)。まず、はじめにキャッシュ・インに基づく収益の代表となる売上について検討する。
なお、文中における意見に係る部分は私見である。
研究開発型バイオベンチャーのキャッシュ・インとキャッシュ・アウト
2.売上とは何か
利益の獲得を目的とする企業にとっての売上とは、その企業の「主たる企業活動(営利活動)」によって得られた収入(キャッシュ・イン)をいう。「主たる企業活動」であるか否かは個々の企業の経営者が決めることであり一概にはいえないが、次のような要件が判断上の助けとなる。

●定款への具体的な記載
●専門に行う部署の存在
●リスクテイク

研究開発型バイオベンチャーとバイオ会計のエッセンス』(2006.2.8)において、「主たる企業活動」と研究開発活動との関係により製造業型と研究開発型の2つにバイオベンチャーを区分し、更に研究開発型を利潤獲得のための活動範囲によってリニアモデルとノンリニアモデルに分けたが、特に創薬プロセスにおける製薬企業等からのキャッシュ・インを売上と認識すべきかどうかについては、この3つの区分によって判断することが重要となる。
新薬製品化後の製造販売やライセンス・アウトによるロイヤリティ獲得を主たる企業活動とする製造業型バイオベンチャーの場合には、「製造業型会計」が適しているといえ、新薬製品化前の段階における研究開発活動に付帯して発生する収益は、実費負担か否かを問わず、営業外収益など「非売上」として処理すべきである。
一方、製薬企業等とのアライアンス(製品研究開発)による利益獲得を主たる企業活動とする研究開発型バイオベンチャーにとっては、「研究開発リニアモデル型会計」もしくは、「研究開発ノンリニアモデル型会計」が適しているといえ、製薬企業等からのキャッシュ・インに基づく収益は、原則として「売上」に区分されよう。

3.創薬プロセスにおける製薬企業等からのキャッシュ・インの種類
一般に、創薬プロセスは、大学や公的研究機関などのアカデミアが担当する「疾患遺伝子の発見」「遺伝子・タンパクの機能解析」から、製薬企業側が担当する「化合物の発見と最適化」「前臨床試験/臨床試験」「認可/新薬発売」へと進展する。
こうした一連の創薬プロセスにおいて、研究開発型バイオベンチャーがどのフェーズを担当するかについては、さまざまなケースがみられる(例えば、遺伝子・タンパクの機能解析から化合物の発見までを担当するケースもあれば、前臨床試験までを担当するケースもある)が、いずれのケースでも基本的には製薬企業等とのアライアンスを前提としてビジネスモデルを構築するケースが多く、資本取引による調達を除いては、製薬企業等からのキャッシュ・インこそが研究開発型バイオベンチャーの研究原資の中心となる点では共通であろう。製薬企業等からみれば、新薬研究のためのリスクマネーとして、実現可能性等を勘案しながら段階的に研究開発型バイオベンチャーに投資していることになる。製薬企業等からのキャッシュ・インの種類は一様ではないが、その主たる対価性から以下のように分類し整理する。

(1)契約一時金
バイオベンチャーが保有するシーズ自体や過去の研究成果の評価に基づき、共同研究開発を開始するに当たり製薬企業等から契約時に一括して収受する契約金(契約時に一括して収受する資金の性格やその解釈は多様であると考えるが、本論ではこのような性格のものに限定する。研究協力金やマイルストーンに相当する資金を契約時に一括して収受する場合には、その対価性からそれぞれ(2)、(3)に含める)。

(2)研究協力金
バイオベンチャーにおいて共同研究開発活動が実行されることに対して製薬企業等から提供された資金(共同研究として製薬企業等がバイオベンチャーの研究成果の全部又は一部を随時利用することを約しているものもある)。

(3)マイルストーン・ペイメント
バイオベンチャーでの研究開発の進捗やその後の製品化までのプロセスにおいて、あらかじめ設定された一定の条件をクリアした際に収受する報奨金。

(4)ロイヤリティ
製品化された新薬の製造販売を担う製薬企業等から収受するライセンスフィー。

また、研究開発型バイオベンチャーでは、研究の過程で公的機関からの補助金を収受することがある。

(5)補助金
技術的な評価をもって、研究開発を促進するなどの目的で公的機関から提供される対価性のない資金

創薬プロセスの各フェーズによって製薬企業等からのキャッシュ・インの種類にも特徴が見られる。これらのキャッシュ・インを創薬プロセスとの関連で示すと(図表2)のようになる。
アカデミアで発見された疾患遺伝子をシーズとして事業化したバイオベンチャーは、「遺伝子・タンパクの機能解析」「化合物の発見と最適化」フェーズを中心に、製薬企業等とアライアンスを構築して契約一時金および研究協力金を得る。また、公的機関からの補助金の収受を模索する。
「前臨床試験/臨床試験」フェーズでは、研究の進捗や成果の進展が測定し易い臨床試験にマイルストーンを設定し、クリアするごとに、所定の報酬を設定することが考えられる。
「認可/新薬発売」フェーズでは、バイオベンチャーが保有している薬剤の基礎となるタンパクや化合物についての特許権を製薬企業等にライセンス・アウトすることによって、製薬企業等の薬剤の販売に応じたロイヤリティを得ることになる。
創薬プロセスと製薬企業などからのキャッシュ・インモデル例
4.おわりに
次回は、研究開発型バイオベンチャーのキャッシュ・インの種類ごとに、収益の認識と会計処理区分について考察する。
以上
『会計情報』(トーマツリサーチセンター発行/2004年12月号)
木村秀偉、佐野明宏執筆分より抜粋
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