| トピックス 2007.1.31 |
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| 研究開発型バイオベンチャーの費用認識(研究開発コスト) |
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| ライフサイエンスグループ 公認会計士 |
馬口 周子 |
| 公認会計士 |
佐野 明宏 |
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1.はじめに
『研究開発型バイオベンチャーとバイオ会計のエッセンス』(2006.2.8)において解説した通り、研究開発型バイオベンチャーでは企業活動として、「シーズ研究開発」によるアカデミアへのキャッシュ・アウトと「製品研究開発」による製薬企業等(製薬企業及び公的機関)からのキャッシュ・インが生じる(図表1参照)。
『研究開発型バイオベンチャーの収益認識 その1』(2006.7.26)、『研究開発型バイオベンチャーの収益認識 その2』(2006.7.26)では、研究開発型バイオベンチャーにおけるキャッシュ・イン、主に売上に関する検討を行ったが、本稿では主たる企業活動である研究開発活動に伴うキャッシュ・アウトつまり、「シーズ研究開発」や「製品研究開発」のための費用に関わる会計処理について考察する。

2.研究開発活動に伴うキャッシュ・アウトについて
研究開発活動のための支出は「研究開発費等に係る会計基準」、「研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針(会計制度委員会報告第12号)」にもある通り、「研究開発費」として発生時に販売費及び一般管理費の一項目として費用処理することが原則である。
しかし、これは
・発生時には将来の収益を獲得できるか否か不明
・また、研究開発計画が進行し、将来の収益の獲得期待が高まったとしても、依然としてその獲得が確実とはいえない
という理由からであり、研究開発活動を営利活動として行う企業を前提にされていない。つまり、研究開発を“製造販売等の主たる事業により得られた利益の範囲内で行われる、将来のための投資活動”として位置づけた上での会計処理といえる。
一方、研究開発による価値創造が主たる目的事業であるバイオベンチャーの会計を考える上では研究開発費の計上区分、タイミングについて再考する必要がある。
3.事業モデル別 研究開発費の計上区分の検討
『研究開発型バイオベンチャーとバイオ会計のエッセンス』(2006.2.8)において、「主たる企業活動」と研究開発活動との関係によりバイオベンチャーを製造業型と研究開発型の2つに区分し、さらに研究開発型を利潤獲得のための活動範囲によってリニアモデルとノンリニアモデルに分けた。創薬プロセスにおける研究開発活動のためのキャッシュ・アウトを研究開発費と認識すべきか、売上原価として認識すべきかについては、この3つの区分によって判断することが重要となる。
新薬製品化後の製造・販売やライセンス・アウトによるロイヤリティ獲得が主たる企業活動であり、それまでの研究開発過程を先行投資として位置づける製造業型の場合、研究開発活動は主たる事業による獲得利益の範囲で行われるため、原則通り、発生時に販売費及び一般管理費の一項目として費用処理することになる。
一方、シーズ探索〜事業化したシーズをコアとした製品研究開発までの過程において製薬企業等とアライアンスを構築、維持することを主たる企業活動としている研究開発型バイオベンチャーの場合、創薬プロセス上シーズの事業化のための研究開発(シーズ研究開発)と新薬の製品化のための研究開発(製品研究開発)の両者が行われ(図表2参照)、これらの研究開発活動に対して製薬会社等から収益を得ている。この場合、研究開発活動に伴う費用のうち製薬企業等からの収益に明確に対応する事業コストについては売上原価として計上する必要があろう。
つまり、「シーズ研究開発」「製品研究開発」において発生する事業コスト(費用)のうち、自己のリスクで行っている部分については発生時に販管費の一項目として費用処理する必要があるが、他社からの収益と直接紐づく部分については売上原価計上する必要がある。
研究開発型については、利潤獲得のための活動範囲によってリニアモデルとノンリニアモデルにわけてさらに検討を行うことにする。

4.研究開発型バイオベンチャーにおける研究開発費
シーズの探索から臨床試験まで一連の創薬プロセスにおいて、研究開発型バイオベンチャーがどのフェーズを売り物にしているか、つまりどの活動に対して収益を得ているかはさまざまである。
研究開発による価値創造プロセスをリニアモデルで捉え、収益を生んでいる活動を狭く定義する“リニアモデル型バイオベンチャー”の場合には、具体的な化合物の探索や臨床試験など「製品研究開発」の領域に関する研究開発活動に対して対価を得ているのに対して、研究開発による価値創造プロセスをノンリニアで捉え、収益を生んでいる活動を広く定義する“ノンリニアモデル型バイオベンチャー”の場合には「製品研究開発」のみならず、疾患遺伝子の発見や遺伝子・たんぱくの機能解析など「シーズ研究開発」に関わる活動に対しても対価を得ていると解釈する。そのため、「シーズ研究開発」「製品研究開発」それぞれの段階において発生する事業コストについても、リニアモデルとノンリニアモデルとでその計上区分が異なってくる。
つまり、リニアモデルでは「製品研究開発」活動における費用と対応する収益を売上原価と売上として対応させ、それ以前の将来の収益獲得能力が不明な研究開発活動のための費用については、従来どおり販管費の一部として研究開発費処理する必要がある。一方、ノンリニアモデルでは収益に対して「シーズ研究開発」から「製品研究開発」までの費用を含めて対応関係を捉えなければならない。
この点、「シーズ研究開発」のステージでは、基礎研究過程においてこれから生み出される成果を期待して共同研究契約を締結するなど、研究成果が当初より明確になっていないケースや製薬会社等からの収益と対応する費用が過去の研究開発費であるケースも多く、自己のリスクで行っている研究開発と製薬会社等共同研究先のための研究開発の区分が不明確な場合もある。この場合、研究開発費と売上原価との区分は一層複雑になるが、不明確な両者を無理な仮定により区分を行うより、損益計算書においてより適切に企業の実態を表現することを優先して、研究開発という企業の主たる企業活動に関して発生する収益と費用を大きく対応させる方法も考えられよう。具体的には、製薬会社等から受ける収益を事業収益、研究開発費を含めた販売費及び一般管理費を事業費用として表示する方法である。
5.おわりに
研究開発型バイオベンチャーでもそのビジネスモデルには多様性があり、企業の成長により研究開発型から製造業型へと脱皮するケースもあるだろう。ビジネスモデルの変革に伴いより適切な表示を検討する必要があり、また実際に締結する契約条件によってもその会計処理は大きく変わるため、必ずしも上記の会計処理にあてはまるわけではない点には留意が必要である。各バイオベンチャーのビジネスモデルや個々の取引における契約内容などの個別的事情を吟味して、より実態に即した会計処理を決定することが重要である。 |
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| 以上 |
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『会計情報』(トーマツリサーチセンター発行/2005年4月号)
馬口周子、佐野明宏執筆分より抜粋 |