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トピックス 2006.1.11
事業再編に伴う退職給付制度の取り扱い(ポータビリティーの拡充を中心に)
金融インダストリーグループ 年金数理人 堀田 晃裕
平成16年年金改正法において、企業年金のポータビリティ(年金通算措置)確保の拡充策が講じられることになり、平成17年10月より実施されている。昨今の雇用の流動化が進む中では転職などにより年金を受給するために必要な勤続期間などの要件が満たせず、年金を受給できない事態が想定される。そのため、年金資産を転職先の年金資産に「持ち込む」仕組みを拡充することで企業年金による老後の保障を充実させようという趣旨である。
なお、文中の意見に関する部分は私見である。

1.企業年金のポータビリティの概要
ポータビリティの形態として「脱退一時金相当額の移換」と「権利義務の移転」という2つの仕組みが用意された。
脱退一時金相当額の移換は厚生年金基金や確定給付企業年金から支給される脱退一時金を他の企業年金制度に持ち込める仕組みであり、給付は「移転先」の規約に基づいて行われる。一方、権利義務の移転は厚生年金基金や確定給付企業年金の規約に基づく給付の義務をそのまま移転先の制度に引き継ぐものであり、原則として「移転元」の規約に従うこととなる。

2.脱退一時金相当額の移換
これまでは厚生年金基金の中途脱退者が厚生年金基金連合会に移換する仕組みしかなかったが、今回、厚生年金基金・確定給付企業年金の中途脱退者について以下のようなパターンの移換が可能になった。なお、中途脱退者の範囲は加入員(者)期間が20年未満で年金受給権を有しない者とされている。

脱退一時金相当額の移換イメージ図

厚生年金基金・確定給付企業年金間についてはあらかじめ双方の規約で定めている場合に限り、加入員(者)の申し出により脱退一時金相当額の移換を行うことができる。これ以外の場合でも企業年金連合会(平成17年10月に厚生年金基金連合会から改称)へは加入員(者)の申し出があれば必ず移換しなくてはならないので、ポータビリティが確保される。また、加入員(者)の申し出がある場合には確定拠出年金(企業型・個人型)への移換も必ず行わなくてはならないとされている。
移換先制度では脱退一時金相当額の算定基礎期間の全部又は一部を引き継ぐこととされている。厚生年金基金・確定給付企業年金間での移換の場合で、一部を引き継ぐ場合には移換先の規約に照らして脱退一時金相当額の算定基礎期間を算定するなどの方法で行うこととなる。なお確定拠出年金への移換の場合には脱退一時金相当額の算定基礎期間の全部を引き継がなくてはならない。

3.権利義務の移転
権利義務の移転には「個人単位」と「事業所単位」がある。以下のように厚生年金基金・確定給付企業年金間で権利義務の移転が可能である。

権利義務の移転イメージ図

あらかじめ規約で定めている場合には加入員(者)の申し出により、「個人単位」の厚生年金基金・確定給付企業年金間の権利義務の移転が可能である。またあらかじめ規約で定めている場合には、「事業所単位」の厚生年金基金・確定給付企業年金間の権利義務の移転が可能である。
移転元の制度での給付内容を移転先にそのまま引き継ぐことになるので、移転元の制度における加入期間を移転先の制度の加入期間とみなすこととなる。移転先の制度とあわせるために給付水準を引き下げるようなことも考えられるが、この場合には通常の給付減額手続きが必要であることに留意する。

4.ポータビリティの活用
企業間での人事交流が頻繁に行われているケースにおいては、「脱退一時金相当額の移換」または「個人単位の権利義務の移転」を活用することによって、給付を一本化することが考えられるだろう。
「脱退一時金相当額の移換」を活用する場合、移転先・移転元の双方で規約を定める必要があるが、あくまで脱退一時金相当額の授受を行うだけで移転先・移転元の給付水準や内容を制約するものではないため、給付を一本化する目的に限っていえば比較的実現が容易な方法といえるだろう。ただし、年金の受給資格がある加入者や移換を希望しない者が対象とならないことから必ずしも退職給付制度として連続したものになっているとはいい難く、人事(給与)施策の実現という観点からは不十分ともいえる。
一方で、「個人単位の権利義務の移転」は移転元の制度が完全に移転先の制度に引き継がれるのが原則であるため、従業員から見れば退職給付制度として連続しているように見え、人事施策上は有利であると考えられる。ただし、移転元と移転先の制度が大きく異なる場合に、移転先で移転元の制度を継続させることは現実的ではないと思われるので、両制度の仕組みが似通っているケースでないと活用は困難かもしれない。
「事業所単位の権利義務の移転」は事業再編で活用できると考えられる。特に総合型厚生年金基金の一事業所が既存の確定給付企業年金に移る、あるいは新規に確定給付企業年金を設けることが可能になっているが、これは事業所単位で代行返上ができるようになったことを意味する。
これまで企業合併においていずれかが総合型厚生年金基金に加入している場合には、制度の統合において厚生年金基金の脱退を検討せざるを得なかった。事業所が厚生年金基金を脱退すると、事業所の従業員は制度からの脱退となり、年金の受給権がない者には脱退一時金が支払われてしまうこととなる。これが総合型厚生年金基金から確定給付企業年金へ「事業所単位の権利義務の移転」のスキームを活用することによって基金での権利義務を引き継ぐことができるようになる。ただし、事業所単位の権利義務の移転には、対象となる事業所以外の事業所に係る代議員の4分の3以上の同意などが必要であり、厚生年金基金の財政状況などによっては必ずしも容易ではないことに留意する必要がある。
以上
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