| トピックス 2006.6.28 |
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| 年金の次世代コミュニケーション |
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| 監査法人トーマツ 参与 山本 御稔 |
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プロジェクターで映し出された質問に注目が集まる。
『お金をもらえるとしたら、どちらのもらい方がいいですか?』
(1)50%の確率で100ドルを手にすることができる
(2)確実に50ドル手にすることができる
生徒たちの手が挙がるのは圧倒的に(2)である。画面が替わり次の質問になる。
『お金を損するとすればどちらの損の仕方の痛手が少ないですか?』
(3)50%の確率で100ドル損をする
(4)確実に50ドル損をする
多数を占めるのは(3)である。講師の一言で教室は笑いにつつまれる。「喜ばしいですね。皆さんも他の4,000万人の加入者同様に資産運用で失敗する“才能”を持っています」。どこかの学校の確率の授業ではない。アメリカの大手の生命保険会社が実施している401(k)プランの投資教育の一こまだ。
平成17年8月10日付けで、厚生労働省年金局長名で出状された『「確定拠出年金制度について」の一部改正について(年発第0810001号)』は、わが国の確定拠出年金制度にとって画期的なものだ。
これまで「情報提供」というあいまいな言葉遣いであったものが「投資教育」という具体的・明示的な言葉に置き換わっただけでなく、導入時教育と継続教育を分離すること、加入者の理解度等の把握に努めること、加入者のレベルに応じた投資教育の内容とすること、そして加入者のライフプランという広い視点から確定拠出年金制度を位置づけるようにすること等の、いわば投資教育のあり方が盛り込まれている。
投資教育は投資についての教育である。教育を有効に行うためには、加入者とのコミュニケーションが欠かせない。コミュニケーションを有効に行うためには、加入者の頭の中と心の中を知らねばならない。投資の知識はどの程度なのか、確定拠出年金制度の理解は進んでいるのか等々、加入者を知ってはじめて必要十分な投資教育を施すことができるのである。
投資教育は時間の変化と加入者の変化というダイナミズムをとらえねばならない。投資教育を行う前にアンケート調査を行い、加入者をセグメント化する。「投資知識レベル」と「投資行動レベル」で4分類するのである。「投資の知識もあり、スイッチングといった投資行動を起こすこともできる」優等生タイプ、「投資の知識はあるが行動しない」躊躇タイプ、「投資の知識もないし行動も起こさない」無関心タイプ、そして「投資の知識がないのに行動してしまう」無鉄砲タイプといったセグメント化を行う。投資教育プログラム実施後に再度アンケートを行い、どれだけ優等生タイプが増えたかを時間軸で検証するのである。
投資教育の成否は、コミュニケーターの能力にも依存する。講師が会議室でぼそぼそとお経のように教育内容を唱え、それを馬耳東風で聞き流すだけの石の地蔵の群れのような加入者がいるという投資教育はそろそろ本格的コミュニケーションに変貌する時期である。投資教育なのであるから教育者としての工夫があってしかるべきである。
アメリカには投資教育のコミュニケーションを努力する理由がある。従業員の401(k)の加入率を維持・拡大しないと制度のメリットが縮小されるといった罰則がある。わが国でも、投資教育を充実させることを目的に、なんらかの罰則を導入することも一計である。
さて、冒頭のアメリカの例であるが、投資教育を終えたあとで講師は自らビデオを見直して「ここでは、こういうジェスチャーをすべきだった」「ここで休憩をいれるべきだった」と事細かにチェックしていた。彼ら講師は年に1回社内で格付けされている。その格に応じて講師料も変わるのだ。わが国の投資教育コミュニケーションに参考となるヒントは多い。
(文中の意見、コメントその他事実認識等はすべて筆者個人の責に帰するものです。なお、本稿は格付投資情報センター「年金情報」誌に掲載されたものです。) |
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