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公会計改革 コラム 2007.11.21
「新地方公会計制度実務研究会報告書」における2つの財務書類作成モデル
第1回 2つのモデルの特徴
公認会計士 小室 将雄
新地方公会計制度実務研究会報告書」が公表されてから約1カ月が経過しようとしている。また、総務省主催のブロック説明会が各地で開催されるなど、新地方公会計制度が徐々に浸透し始めているところである。
その一方で、「新地方公会計制度実務研究会報告書」では、「基準モデル」と「総務省方式改訂モデル」の2つの財務書類作成モデルが提示されており、そのいずれを選択すればよいかを悩まれている地方公共団体も多いと思われる。
そこで、今回から3回にわたり、次の内容で解説していきたいと考えている。これから検討を始められる地方公共団体の一助になると幸いである。

第1回 2つのモデルの特徴
第2回 いずれのモデルを採用すべきか
第3回 先進団体における取組事例



1.2つのモデルに共通の特徴
筆者は、「新地方公会計制度実務研究会報告書」で提示された「基準モデル」と「総務省方式改訂モデル」の2つのモデルに共通の特徴としては、発生主義・複式簿記の考え方の導入にあると考えている。平成18年5月に公表された「新地方公会計制度研究会報告書(PDFファイル)」や平成18年8月31日に通知された「地方公共団体における行政改革の更なる推進のための指針(地方行革新指針)」において、その基本的考え方の1つとして「発生主義の活用及び複式簿記の考え方の導入」が掲げられていることからも明らかである。
発生主義の活用については、「新地方公会計制度研究会報告書」第37段落で整理されており、「地方公共団体の財務書類において発生主義を活用する場合に重要なのは、地方公共団体に帰属するすべての経済資源を認識の範囲に含める」点であり、その理由として「地方公共団体が資産・負債管理というストック面でも有効・適切な財政運営を行っていくためには、すべての経済資源を認識し、貸借対照表上、資産、負債及び純資産として計上する必要があるが、従来の現金主義の下では、単に資産のごく一部を構成する現金のみを認識するに過ぎなかったからである。」とされている。
また、複式簿記の考え方の導入については、具体的な明示はないものの、「統合的な会計情報の管理と相互検証機能の確保」を意図しているものと考えられる。これは、単に複式記帳をするということではなく、財務書類とその基となる帳簿の整備、そしてその数値の裏づけとなる財産等との照合が可能である状態を保持することにある。たとえば、財務書類に車両300万円が記載されているとする。これに対して、車両台帳(帳簿)には1台100万円の車両が3台記録され、かつその車両3台が車庫にきちんと並んでいることを相互に確かめることができる、ということである。

2.基準モデルの特徴
(1)固定資産台帳の一括整備による早期の固定資産管理の充実
地方公共団体の固定資産(公有財産)については、これまで公有財産台帳等で把握・管理されてきたが、既存施設の効果的な維持管理や計画的な大規模修繕などが行われているとは言いがたい状況にある地方公共団体が少なくない。金額情報も含む固定資産台帳を早期に整備することにより、資産ごとに耐用年数が明らかになり、それらの情報を用いることで、固定資産管理がより充実したものになると考えられる。

(2)国の財務書類等に対応した勘定科目体系の整備
「新地方公会計制度実務研究会報告書」第2部51段落において、「基準モデルにおいては、固定資産台帳の整備による公正価値評価とすべての取引・会計事象の複式処理を通じて財務情報を作成する。特に、純資産の内部構成の変動をも処理し得る拡張的な勘定体系を備えていることから、これに若干の補助簿や精算表を付加することによって、(中略)我が国の省庁別財務書類作成基準(財務省・財政制度等審議会)等の様式に組替えて表示することも可能である。」とされている。国と地方の連結財務書類を検討する際には、このような考え方も重要となってこよう。

(3)予算編成上のシミュレーションを可能にする純資産変動計算書
「新地方公会計制度実務研究会報告書」第2部34段落において、「基準モデルの導入後、当分の間、決算情報(決算分析のための情報)の作成・開示を優先するが、可能な限り予測財務諸表の作成・開示及び予算編成上のシミュレーションの実施にも取り組むべきである。」とされている。また、第2部補論において、純資産変動計算書の「固定資産形成または長期金融資産形成のための資本的支出を予算書・決算書における予算科目と同じレベルにまで細分化したうえで、その金額をいくつかのシナリオに従って変動させることにより、純資産及びその内部構成がどのように変動するか、というシミュレーションを行うことも可能である。また、純資産変動計算書の他、貸借対照表、行政コスト計算書、資金収支計算書も含めた予測財務諸表を作成し、包括的な予算編成の管理を行うこともできる。」とされている。
これらの詳細は、新地方公会計制度研究会・同実務研究会委員でもある桜内文城氏の著書「公会計 国家の意思決定とガバナンス(NTT出版、2004年)」において、『自治ナビ』として解説されているのでそちらをご参照いただければと思う。

3.総務省方式改訂モデルの特徴
(1)喫緊の課題に優先的に対応するプロセスの採用
交付税改革や少子高齢社会の進展などにより、地方公共団体の財源が不足するといわれる中では、やはり十分な財源確保と効率的・効果的な財源配分が求められるところである。
総務省方式改訂モデルは、「新地方公会計制度実務研究会報告書」第3部217段落及び230段落で図示されているとおり、当初に(基準モデルと同様の)固定資産台帳の一括整備と複式記帳による財務書類の作成を妨げているものではない。ただし、台帳の一括整備や複式記帳の採用を行えば、もはや「総務省方式改訂モデル」とは言いがたく、依然として「基準モデル」と財務情報についての考え方に相違があることから、「新総務省モデル」とでも呼ぶべきであろう。
しかし、法的根拠のない中で、かつ人的・資金的制約があると考えられる地方公共団体にそこまで求めることは酷であることから、喫緊の課題に優先的に対応、それ以外については段階的に精緻化するプロセスを採用することを認めていると思われる。
喫緊の課題の具体例としては、次の4点が挙げられる。

・売却可能資産の洗い出しと評価(売れる公共資産はどの程度あるか)
・貸付金及び未収金の評価(債権がどれだけ回収可能か)
・投資及び出資金の評価(売れるものはいくらで、業績不振の第三セクターはないか)
・職員の退職手当の支給見込額とその財源としての基金等の積立状況(積立不足の退職手当はどの程度あるか)

いずれも財源確保の観点からは重要かつ優先度も高いと考えられ、早急に金額等を把握し、対応が求められるべき課題であると考えられる。
上記に関しては、先のトピックス『 「新地方公会計制度実務研究会報告書」の公表と今後の取り組み』(2007.10.24)もご参照いただけると幸いである。

(2)既存制度等との整合性に配慮(既存資料の有効活用)
総務省の「地方公共団体の平成17年度版バランスシート等の作成状況について(調査日:平成19年3月31日)」によると、6割を超える地方公共団体で現行総務省方式による普通会計ベースのバランスシートが作成されている。また、「地方財政状況調査(決算統計)」は、すべての地方公共団体で作成が求められている統計資料である。
「総務省方式改訂モデル」は、すでに普及している決算統計を活用する現行総務省方式の作成方法を継承しながらも、資産債務の適切な管理の観点から必要な修正を加えて提示されている。このことから、多くの地方公共団体が取り組みやすく、早期に整備可能かつ早期に整備効果も発現しやすいモデルとなっている。

※本文中の意見に関わる部分は私見である。
以上
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