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公会計改革 コラム 2008.5.28
「総務省方式改訂モデル」を出発点とした公会計改革の有用性
公認会計士 小室 将雄
1.「総務省方式改訂モデル」と「基準モデル」のいずれを採用すべきか
総務省から公表された『新地方公会計制度実務研究会報告書』では2つのモデルが示されている。巷では、「基準モデル」が原則で、「総務省方式改訂モデル」は簡便法や過渡期モデルであると説明されることが少なくない。しかし、これは大きな誤解であり、総務省から平成20年2月に改訂版が公表された『「地方公共団体財務書類作成にかかる基準モデル」及び「地方公共団体財務書類作成にかかる総務省方式改訂モデル」に関するQ&A』(PDFファイル)の答63においてもその旨が明記されている。
また、基準モデルは全ての固定資産の台帳整備と複式簿記システムの導入を求めているのに対し、総務省方式改訂モデルは決算統計情報を組み替える簡便モデルであるとの説明もなされるが、これも誤解である。
総務省方式改訂モデルも基準モデルもその目指すべき方向性は同じであり、異なるのは「公表される財務書類の雛形(様式)」と「会計処理方法」の違いである。したがって、いずれの財務書類で作成・公表・説明するのがよいのか、いずれの会計処理方法を採用するのが各団体の実状を表すこととなるのか、という観点からどちらのモデルを採用するかを決定すべきである。

2.「総務省方式改訂モデル」に基づく財務書類の活用効果
「総務省方式改訂モデル」に基づく財務書類の作成により、次の3つの効果が得られると考えられる。

(1)住民公表の視点
真っ先に検討されるべき効果は、住民への公表による「透明性の確保」である。総務省方式改訂モデルでは、単にストック情報・コスト情報を開示するという観点にとどまらず、住民にわかりやすい科目名称の採用(例:行政目的別の開示、一般住民が理解しやすい名称)や自治体の財政状況をよりわかりやすく示す工夫(例:財源とその使途とを対応させた資金繰り状況の開示)が随所に盛り込まれている。

(2)内部活用の視点
地方行革新指針」などにより、各自治体には平成21年度中に「資産・債務改革の方向性と具体的な施策」の策定が求められているが、その策定には財務書類から得られる情報の活用や類似団体等との比較を行うことが有効である。平成20年5月14日に総務省から公表された「地方公共団体の平成18年度版財務書類の作成状況について」の調査結果では、7割を超える団体が総務省方式改訂モデルの採用を予定しているため、比較可能性の観点からも総務省方式改訂モデルの採用が効果的である。

(3)情報整備の視点
総務省方式改訂モデルでは、売却可能資産をはじめとした公共資産の洗い出しと評価、貸付金や未収金の回収可能性評価などの資産情報の整備と活用に有用な様式が、作成要領の別表(PDFファイル)で提示されている。したがって、財務書類の作成に至るこれらの情報整備の過程においても、その効果が早期に発現すると考えられる。

3.財務書類の効果的活用に向けて
財務書類の整備にあたっては財政担当課が中心となるが、資産情報の整備は各所管課の協力を得て行うことになり、またそれらの情報を活用した資産管理も各所管課が担うこととなる。しかし、今回の公会計改革の趣旨や意図を理解しないまま各所管課が作業を進めると効果が半減するおそれがあるため、現場の改革改善につながることを念頭に置き、庁内の適切な理解をもとに推進を図ることが必要である。
また、財務書類から得られる情報は、首長や幹部職員などのトップ層の経営の羅針盤になりうるものである。したがって、単に財務書類を作成するだけでなく、そこから得られる情報を首長や幹部職員がどのように読み解き、経営意思決定に役立てていくかが重要な視点である。
基準モデルが公会計の“型”としての理想系から提示されたモデルであるのに対し、総務省方式改訂モデルは、各自治体における近年の財政的課題に対する実務に活用することを念頭において提示されたモデルである。総務省方式改訂モデルの作成要領や別表に込められた意図を適切に理解し、財務書類作成による効果に結び付けていくことが期待される。

※本文中の意見に関わる部分は私見である。
以上
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