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公会計改革 コラム 2008.9.24
今後の地方公会計制度改革の方向性
公認会計士 小室 将雄
現在、総務省の「新地方公会計モデル」などを活用して、「地方行革新指針」やその後の総務省からの通知(PDFファイル)で示された平成21年秋頃の期限に向け、各自治体でまずは財務書類4表を作ってみようという動きが着実に進んでいる。その一方で、複数の作成モデルが存在することによって比較可能性が損なわれるという意見や国際的な公会計のルールを適用すべきという意見など、今後の作成モデルの統一化に向けた提言もみられる。
そこで、最近の地方公会計制度改革の状況を確認するとともに、中長期的視野に立った地方公会計制度改革の方向性について考えてみたい。

1.夕張市の財政破たんと財政健全化法・地方公会計制度改革

夕張市の財政破たんの一因は、不適切な財政運営があったことに加え、公会計制度の不備にもあると言われている。そこで、この財政破たんを未然に防止するために真っ先に制度化されたものが、昨年6月に公布された財政健全化法である。
もちろんこの法律により算定・公表される一般会計等の実質赤字比率などの健全化判断比率や公営企業会計の資金不足比率により、真に財政が悪化した団体はあぶり出されるであろうし、本稿の執筆時点でもいくつかの自治体が早期健全化団体に相当する比率になっているとの報道も見られる。
しかしながら、真に財政が悪化してから対応するのでは、行政サービスの大幅な見直しや住民負担の増大など、かなりの痛みを伴うことにもなりかねない。そこで、全国の自治体が“筋肉質”を目指すために、幅広い視点で健康チェックをするための手段として整備が進められているのが、総務省の「新地方公会計モデル」である。
短期間で取りまとめられたこともあり、実践過程では自治体が自ら考え、創意工夫を促すことにつながっていると聞く。また、多少の差異がみられる2つのモデルでの作成を認めているが、総務省自治財政局長通知(PDFファイル)における「簡潔に要約された財務書類」では両者を統一した様式で示すことを求めるなど、一定の比較可能性に配慮されているし、夕張市の財政破たんの一因も「新地方公会計モデル」や旧総務省方式に基づく連結財務諸表の作成・開示がなされておれば、早期に警告が発せられていたであろう。
すでに「新地方公会計モデル」にいち早く取り組んでいる先行自治体では、整備している固定資産台帳(公有財産台帳)が実質的に資産管理に活用できないことが判明したり、既に解散した法人に対する出資金が計上され続けている、特定の部署で不納欠損処理がほとんどなされていないなどの資産管理の不備が明らかになった事例も少なくない。
そこでこれらの不備の解消に向けた取り組みが行われるとともに、これまであまり目を向けられてこなかった遊休財産の洗い出しによる有効活用や売却促進、回収不能見込額の算定による滞納税金の回収促進、業績不振の第三セクターの整理統合などの改革改善へ、一歩も二歩も踏み出した自治体も出てきている。また、これらの取組状況が財務諸表とともに開示されることにより、両者が有機的に結合していることを住民や議会に示す効果も表れてきている。

2.今後の地方公会計制度改革の方向性
「新地方公会計モデル」の整備趣旨が「資産・債務改革」などにあることは、「新地方公会計制度研究会報告書(PDFファイル)」の冒頭にも示されているところであり、この趣旨に合致した取り組みにつながっているのは前述のとおりである。しかしながら、すでに「新地方公会計モデル」の先行自治体や一部の関係者から課題があるとの声が寄せられているのも事実である。
その声の1つとして、「新地方公会計モデル」が本格的な発生主義・複式簿記の考え方に則っておらず、国際的な公会計ルールとも異質のものであるという意見がある。確かに、中長期的には国際的にも通用するような本格的な発生主義・複式簿記の会計基準に基づく財務諸表の作成を目指すことは不可避であるとは思われる。
しかしながら、それに至る前に片付けておくべき課題である「資産・債務改革」は、「新地方公会計モデル」でも果たせることは先行事例からも明らかになっている。したがって、すでにあるこの器を有効に活用し、総務省が期限を示している平成21年秋頃に全国1,800団体の財務諸表が出揃い、それを活用した行財政改革につながることを期待したい。
そして、「新地方公会計モデル」によって一定程度の発生主義・複式簿記の考え方が自治体に浸透し、それらの活用によって自治体の足腰が据わると見込まれる時期を捉え、「新地方公会計モデル」の推進により得られた課題や国際レベルでの公会計基準の検討状況などを踏まえ、本格的な発生主義・複式簿記の自治体への導入推進や場合によっては地方自治法など関係法令の改正も視野に入れた取り組みに発展させていくことが、多少の回り道であったとしても、日本の自治体現場に根付いた地方公会計制度になるであろうと筆者は確信している。

※本文中の意見に関わる部分は私見である。
以上
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