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| 行政経営 トピックス 2004.6.16 |
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| 地方自治体における行政評価の重要性と今後の課題 |
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| 公認会計士 世羅 徹 |
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I 何故、行政は評価をやらなければならないのか?
ここ数年の間で、国では政策評価、自治体では行政評価の導入が進められている。特に自治体の行政評価は、三重県の北川改革に端を発して全国の自治体に加速度的に普及してきており、現在では、全国で「すでに導入済み」が406団体(12.7%)、「試行中」が266団体(8.3%)と、合計で672団体に行政評価が導入されている(平成15年7月末現在総務省調べ・平成15年12月5日公表)。自治体での行政評価導入は法令等で義務付けられたものではなく、その必要性や意義を自治体が自ら認めて自主的に導入しているものである。では、何故、このように多くの自治体で導入が進んでいるのであろうか。
まず第一番目の理由としては、自治体における「財政状況の悪化」である。右肩上がりの経済成長は終わりを告げ、長引く経済不況、金融破綻、デフレスパイラルなどの状況下で倒産していく企業が多い中、自治体においても税収不足に陥っている。経済成長・人口増加時期においては、増え続ける住民ニーズに対応すべく「あれもこれも」事業を行うことが可能かつ必要であったが、現在のような状況下では実施する事業を「あれかこれか」選択していかなくてはならなくなっているのである。一律シーリングなどで予算額カットを行っている自治体はよく見受けられる。しかし、そのような手法ではなく、住民の満足度を高めるためにはどの事業を重点的に実施すべきなのか、補助金行政と揶揄される支出が今本当に必要なのか、などを自治体職員自ら考えることが重要なのである。そのための自己点検ツールが行政評価システムなのである。
また、政府の三位一体改革として補助金の減額と地方への税源移譲、地方交付税制度の見直しが検討されている。自治体において、これまでは法令等で定められた事項に沿って業務執行をしたり、国や県への補助金申請などに相当注力してきたものの、補助金が減額され税源移譲されると、自治体の判断で使途を決めることができる財源が増えることになる。そうなると、その財源を有効配分して住民満足度を高めることを自治体自らが考えていかなくてはならないのである。その他にも合併促進などにより、今後ますます地方分権が進んでいくものと思われる。それらに対応していくためには、政策形成能力、すなわち自治体の将来ビジョンを職員一人ひとりが明確に理解し、ビジョン実現のための手段を考え出す力が必要となる。そのためには現在実施している事業の現状を分析し、評価し、その結果を踏まえて既存の行政経営資源を有効に配分する力を自治体職員が養う必要がある。それを手助けする仕組みが行政評価システムなのである。
さらに、自治体にはアカウンタビリティ(説明責任)が求められている。これは今までは行政内部での意思決定過程が住民にとって理解し難かった面があり、公共工事などはその槍玉にあげられていた。そこで、行政評価システムを利用して、事業の目的や実施内容、必要性、有効性などを公表し、わかりやすく説明することによって、意思決定過程までを住民のモニタリング(監視)にかけるのである。意思決定過程の透明化により自治体職員が常に住民に見られているという意識をもって業務に取組んでいくことが期待できる。
但し、日本においては住民の行政活動への関心が低いことは否めない。そこで、税金がどのように使われているのか、行政が行っている事業を住民も絶えずチェックするなど、住民側の意識変革の必要がある。特に平成11年度の包括外部監査導入により、公認会計士等が行政に入り込んでいく機会が多くなっている。例えば公認会計士のように社会的責任を負った者は行政が実施している事業や仕事を評価して、それを住民に伝えていくことが求められていると考える。
II 行政評価の基本的な考え方
行政評価の基本的な考え方に「PDCAサイクルマネジメント」というものがある。(図1参照)。自治体では地方自治法に基づき議会制度のもとで予算統制が行われているが、その仕組みのもとでは、計画(Plan)−実施(Do)のみが重視され、評価(Check)が充分に行われにくいという指摘がある。つまり、一旦獲得した予算は、そのとおり使用すれば、当初の目的が達成されたのかどうかを問われる仕組みが弱く、予算策定と予算どおりの執行以外に自治体の関心事は向かなくなりがちである。
しかし、これからは厳しい財政状況のもとで限られた経営資源でもって住民ニーズに対応した効率的・効果的な行政を行う必要がある。そのためには、事業を実施した結果が次の計画に活かされるように、計画(Plan)−実施(Do)−評価(Check)―改善(Action)のサイクルを確立しなければならない。行政評価はまさにこのサイクルを行政活動に埋め込むものである。
行政評価を定義するならば「行政活動の目的を明確にして活動成果を数値化して現状分析を行い、マネジメントサイクルを行政活動に組み入れることによって、行政の意思決定における評価・改善に至るプロセスを明確化し、また、評価結果を住民に公表することにより行政の透明性の確保、住民と行政とのパートナーシップづくりなどに役立てるもので、行政運営を「経営」という視点から見直し、質的改善を図るための仕組み」といえる。
この中でいくつかのポイントがあるが、最も特徴的なものは「数値化」である。今まで、行政活動の「定性的」な評価は多くなされてきたものの、「定量的」に数値を用いて行政活動を測定することはあまりなされてこなかった。日本で行政評価といわれているものは、実は欧米からの輸入品であり、英語では「Performance Measurement」といわれている。つまり、行政活動(行動)を数値を用いて測定することが行政評価なのである。
民間企業では数値目標を掲げるのは当たり前のことであるが、行政においても将来ビジョンを数値化するという動きがある。そのひとつが最近の統一地方選でも各政党が掲げていた「マニフェスト」である。マニフェストも輸入品であり「政策綱領」「宣言」「誓約」「住民との約束」などという訳語が使われているが、マニフェストとは、選挙前に候補者が当選後実行する具体的な政策を体系的・網羅的にまとめ、個々に数値目標を設定し、それぞれ財源・期限などを示して有権者に約束した文書のことである。
行政評価においても、個々の事業単位において、事業を執行した結果の産出量を示す数値(活動指標や結果指標といわれる)や、執行した結果、住民満足度がどれほど向上し、成果があがったのか(成果指標や目標指標などといわれている)などを示す数値が重要となる。また、支出額が効率的に執行されているかコスト面からのチェックも重要となる。
PDCAサイクルマネジメントに沿って説明すれば、成果とコストの両面から時系列比較や他団体比較などを行うことにより、まずは事業の現状を数値を用いて把握・分析する。そして、現状数値が理想とする数値(目標値)に到達していなければ、改善手段を、職員自ら考えることが重要である。また、「成果」と「コスト」で評価した結果、不要だと判断された事業であれば、実際に廃止することを検討し、その検討結果を公表しなければならない。上記のように、行政で数値化(可視化)された将来ビジョンを持ち、そこまで数値を高めていくことは、すなわち「住民の生活の質を高めていく」ことになるのである。

III 行政評価の基本コンセプト
行政評価システム構築にあたって統一されたルールはなく、各自治体で細部において手法を開発されてきたが、ここ数年の取り組みをみると、基本的には各自治体ともにほぼ同様の手法によって行政評価が行われていることがわかる。行政評価を行う上で常に意識しなければならないのが政策体系であり、それと評価システム、評価責任者、評価重点項目の関係は以下のようになる(図2参照)。 |
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政策体系は政策―施策―事務事業という3層構造で捉えられるが、政策及び施策のレベルは総合計画で策定されている。総合計画は、自治体がその置かれた環境や課題などから、5年後、 10年後の自治体のビジョンを記載したものである。そこで策定されている内容は総花的であり、数値目標を掲げていない自治体が多い状況である。そして、例えば「中心市街地活性化事業」「道路改良事業」及び「健康フェスティバル事業」など、自治体が実施している事業は事務事業と呼ばれているが、それは施策の下位に位置づけられる。ここで重要なのが、3つの階層はそれぞれ「目的」と「手段」の関係で整理できることである。
前年踏襲や手続志向になりがちな自治体職員にとって、自分が実施している事業が、どの政策や施策に貢献しているのかを考えることは、非常に重要な作業であり、本来の成果を考える上では欠かせないものである。なお、政策―施策と策定されている総合計画のどの分野に、事務事業が貢献しているかを考える作業は「政策体系化」とよばれ、行政評価を行う上で重要な前作業なのである。
その体系化作業を行うことによって、政策―施策―事務事業はそれぞれ目的と手段の関係であることが明確となる。つまり、政策目標を達成するための手段は施策であり、施策目標を達成するための手段が事務事業である。行政評価を導入している団体では、事務事業レベルから評価を始める団体が多いが、その取り組みは現在自治体が行っている仕事内容の棚卸し的な意味合いを持つ。それによって、自治体が行っている業務の現状把握を行うことができる。
前記の数値化作業について、事務事業レベルでは「成果指標」「結果指標」「コスト指標」などとよばれる指標を設定し、事務事業の有効性や効率性を測定する。その数値化作業を行うことによって客観性が増すことになり、誰が見てもわかりやすく、かつその達成状況が明らかになる。当初に掲げた目標の達成状況や前年度からの改善状況を外部に数値で説明できれば、それだけ説得力も増すことになるのである。
事務事業評価が軌道に乗った後は、施策評価を行う場合が多い。施策レベルにおいては「施策指標」とよばれる指標を持たせ、目標設定する。その設定過程において住民と合意された施策指標や目標値とすることによって、住民との約束指標となりえるのである。また、仕事の成果を測定した後は、住民・議会などに積極的に開示し、アカウンタビリティを果たすことが要求される。
施策指標は住民とのコミュニケーションツールにもなり得る。従来、住民を含めた街のあり方の議論では、利害が絡んだものが見受けられるが、誰もが理解しやすい数値による議論を行っていくことで、住民と行政が同じ目標に向かうことが期待できる。
施策指標の例としては「住民一人当たり公園面積」「人口1000人当たりの犯罪数」「健康寿命」などが考えられるが、前記のように住民とのコミュニケーションツールとして利用するほか、他自治体との比較(ベンチマーク)を行うことも有効である。そもそも自治体には競争原理が働かないが、他市数値と比較することによって、自自治体の「弱み」を認識することができ、改善活動の糸口となるのである。
IV 今後の課題
日本では行政評価を導入して年数が浅く、確立された成果指標や施策指標がないこともあり、数値化による効果が十分に発現していない。特にコスト(事業費)については、欧米各国のように発生主義・複式簿記が自治体に導入されていない現状においては、十分な情報収集やデータ整理などができにくい状況となっている。従って、今後は行政評価システムとあいまって公会計システム改革も重要となる。
また、行政評価は各自治体で独自に導入が進み、導入年度も異なることから、浸透度合いや職員の意識の持ち方などが先進自治体と後発では、その差が歴然としてきている。また、全自治体共通の統一ルールで行政評価を実施しなければ、他自治体との比較ができにくいなど、いくつもの課題を抱えている。そんな中、地方分権がますます進んでいくものと考えられ、今後自治体でも能力差がはっきり分かれることが予想される。
なお、本文中の意見に係る部分は、筆者の私見であったことを申し添える。 |
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| 以上 |
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『会計情報』(トーマツリサーチセンター発行/2004年5月号)
世羅徹執筆分より抜粋 |
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