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監査 トピックス 2006.1.11
包括外部監査のテーマ別事例(その2) 契約・委託
本部パブリックセクター 公認会計士 川畑 秀二
I はじめに
地方公共団体における契約事務は支出の原因となるものであり、近年の地方公共団体の財政危機の中で、より経済的な調達・契約が求められている。また、業者間の談合等の違法な取引が従来から大きな問題となっており、公正な手続の確保が焦点となっている。このような背景から、毎年いずれかの地方公共団体の包括外部監査で「契約・委託」が特定の事件(以下、「テーマ」という。)として選定されているため、その事例について紹介していく。
なお、文中における意見に関する部分は私見である。

(1)契約
地方公共団体の締結する契約について自治法第234条第1項は、「売買、貸借、請負その他の契約は、一般競争入札、指名競争入札、随意契約又はせり売りの方法により締結する。」と4つに限定した方法を規定している。なお、一般競争入札による方法が、契約締結の方法の原則とされている。
一般競争入札とは、契約に関し必要な条件を一般に公告し、不特定多数人の参加を求め、入札の方法によって競争を行わせ、そのうち、地方公共団体に最も有利な価格で申込みをした者を契約の相手方とする方法である。この方法の理念とするところは公正性と機会均等性にある。しかし、不信用、不誠実な者が入札に参加して公正な競争の執行を妨げるおそれがあること、さらに指名競争入札や随意契約による場合に比較して手続が煩雑であり、かつ、経費の増嵩を余儀なくされるという短所がある。
指名競争入札とは、地方公共団体が資力、能力、信用その他について適当であると認める特定多数の競争加入者を選んで入札の方法によって競争させ、その中から地方公共団体に最も有利な条件を提供する者を決定し、その者と契約を締結する方法をいう。この方法は、一般競争入札に比し不信用不誠実の業者を排除することができるが、特定の者の決定に当たり、それが一部のものに固定化し、偏重する弊害がないとは言えない。また、談合が容易であるというような短所を有していると言われている。
随意契約とは、地方公共団体が競争の方法によらないで任意に特定の相手方を選択して締結する契約方法を言う。この方法は、一般競争入札または指名競争入札に比しさらに手続が簡略であり、かつ、経費の面でも一段と負担が少なくて済み、しかも資力、信用、技術、経験等相手方の能力等を熟知の上選定することができる。反面、いったんその運用を誤ると相手方が固定化し、しかも契約自体が情実に左右され、公正な取引の実を失するおそれがあるといった短所もある。

せり売りとは、買受者に入札の方法によらず口頭(挙動)をもって価格の競争をさせ、地方公共団体に最も有利な条件を提供する者との間に締結する契約方法を言う。この方法は一般競争契約の一種ではあるが、一般競争入札や指名競争入札と異なり、他の競争者の申出価格を知ってお互いに競争をするものであって人札の方法にはよらず、いわゆる競売の方法によって行うものである。

(2)委託
地方公共団体は、諸種の事務事業を行っているが、本質的に地方公共団体自身が行わなければならないものは別として(自治法第252条の14の例外がある。)、それ以外の事務事業については、他の機関あるいは特定の者に委託して行わせることができる。
委託できる事務事業は、地方公共団体が直接実施するよりも、他の者に委託して実施させることのほうが効率的であるもの、すなわち、特殊な技術または特殊な設備等を必要とする、あるいは高度の専門的な知識を必要とする事務事業、調査、研究といったものである。

II 「契約・委託」をテーマとした包括外部監査の主要な監査要点
平成14年度の包括外部監査において、「契約・委託」をテーマとした地方自治体は、宮城県、東京都、神奈川県、大阪府、広島県、山口県、沖縄県、広島市、いわき市、富山市、金沢市、浜松市、長崎市の13団体となっている。
「契約・委託」をテーマとした包括外部監査の主要な監査要点は、契約事務の関係法令への準拠性、公平性、履行の確実性および効率性であり、具体的には次のような監査手続が必要である。

(1)契約に係る財務事務について予算と実績の管理が妥当であるか。
(2)契約の方式決定および相手方の選定が適法、かつ、妥当であるか。
(3)契約の締結について正当な承認を得ているか、契約書が確実に、かつ、適時に作成されているか。
(4)契約の履行として工事完成その他の契約の履行期限が守られ、工事は設計図および仕様書どおりに施工されているか。
(5)監督、検査および検収立会が的確になされているか。

なお、委託の場合には、さらに

(6)委託理由に合理性があるか。
(7)委託料の算定方法は適正か。

などが加わる。なお、本稿では過年度(平成11年度〜14年度)に公表された包括外部監査結果報告書の中から上記(1)〜(7)に関係する監査の「結果」または「意見」について記載のあるものを紹介していく。

III 「契約・委託」をテーマとした包括外部監査の「結果」の記載事例
(1)契約の方式決定および相手方の選定の適切性
■ほとんどが指名競争入札となっていることによる落札価格の高止まりを指摘しているケース
本県の公共工事の発注は、一般競争入札、公募型指名競争入札、指名競争入札、随意契約によって行われている。発注のほとんどは指名競争入札であり、平成12年度の土木部における発注件数の95.7%・発注金額の82.0%を占めている。指名競争入札は、以下の事由から、各入札参加者は、事前の打ち合わせ(いわゆる談合)により、落札価格を高止まりさせることが可能な状況にある。1)入札指名業者の事前公表は、入札実施前に競争相手を知りうる。2)予定価格の事前公表によって各入札指名業者は事前に工事の最高限度額を知りうる。
(平成13年度 鹿児島県)

■落札者の偏り、入札結果の不透明さを指摘しているケース
指名競争による入札を実施しているものの、落札者が特定の業者に偏っているものが散見される。落札率も大半が98%程度であり、入札結果が極めて不透明な状況にある。発注単位の見直し、業者指名の方法等の改善が必要と考える。
(平成13年度 横浜市)

■委託契約は随意契約に安易に流れず厳格な判断が必要であることを指摘しているケース
契約は競争入札により行うのが原則であるのに対し、長崎市の委託契約については随意契約によるものが多い。随意契約による契約は、長崎市契約規則で認められた場合のみに限定する必要がある。また、契約規則の解釈にあたっては、安易に流れないように厳密に判断するべきである。
(平成14年度 長崎市)

(2)工事請負契約または委託契約の価格の適正性
■近隣他県よりも高い特定資材の設計単価について指摘しているケース
平成12年11月の財団法人経済調査会および財団法人建設物価調査会による積算資料および建物物価によれば、比較的使用量の多い標準的仕様の生コンクリートの立米当たり単価は、四国4件の中で本県の単価が突出して高い状況を示している。県は設計積算に使用する生コンクリートの価格について、合理的で適正な設計単価となるように適切な調査手法を検討し、その価格の決定過程および他県との格差について、県民に対し合理的な説明がつくようにすべきである。
(平成12年度 高知県)

■委託料について合理的な価格算定が行われていないことを指摘しているケース
毎年度数千万円の金額を支払う本委託契約について、合理的な価格の算定が行われていない。委託業務の実施に必要な費用は、人件費を中心とした固定的経費がほとんどであるにもかかわらず、収入に比例した委託料の計算並びに減収補填加算や定額保証などとなっている。このため、互助会は下記の通り近年において過大な利益を得ている。
(平成12年度 長崎県)

■随意契約先が過大な利益を得ていることを指摘しているケース
そもそも、かかる業務の委託においては、必要な技術者のレベルや工数を見積もったうえで、積算計算を行って予定価格を定めるべきである。緑地協会のみが随意契約で、しかも、工事価格に料率を乗じるというような合理性に疑問のある規定を定め、発注者である県がこれをこのまま使用することが、財務規則上許されるとは考えられない。これは、明確な根拠規定なしに、緑地協会を長崎県の内部組織として取り扱っていることにほかならない。しかも、この料率を認めることにより、緑地協会に過大な利益を与える結果となっている。
(平成12年度 長崎県)

■委託金額の算定および決定方法の要検討を指摘しているケース
県は貿易センターと特命随意契約により本件契約を締結しているが、このような場合、見積明細を入手のうえ、貿易センターにおいて実際に要するであろう金額を把握し、委託金額算定の資料とするべきである。例えば、平成13年度における仙台市分も含めた総委託金額17,000千円のうち電気料についてみてみると、県が積算した金額は7,200千円であるが、当該費用は、貿易センターの協力により提出を受けた「経費報告書」上、管理費を配賦した後でも2,124千円(同報告書上は消費税込みの金額2,230千円)である等、実際の支出額と県の積算上想定されている支出額との間には相違がみられる。見積明細を入手しその内容を精査吟味し、委託金額の妥当性について検討を行うべきである。
(平成14年度 宮城県)

(3)契約履行の監督・検査の適切性
■業務委託のうち実施されていない作業があることから検査の形骸化の疑義を指摘しているケース
平成13年度の契約において実施が折り込まれていた作業のうち「メンテナンスクレーン点検整備業務○○千円」「燥蒸庫廃液処理業務○○千円」は実施されていない。これは、それぞれ、メンテナンスクレーンが使用されなかったこと、廃液が処理必要量に達しなかったことにより作業自体が実施されなかったものである。これに対し委託料はそのまま支払われており、結果として委託料の過大支払となっている。業務を行わなかった以上、県は上記委託料を貿易センターに返還せしめるなどの是正措置を講じるべきである。また、当該委託契約に関し、県は貿易センターからの業務完了報告書を受け完了検査を行っており、検査の結果委託業務が適正に実施されたことが確認されている。しかし、本件未実施項目の存在もあり検査の形骸化がなかったか疑問である。十分な検査を行うことが必要である。
(平成14年度 宮城県)

IV 「契約・委託」をテーマとした包括外部監査結果に添えて提出する「意見」の記載事例
■特命随意契約を行う合理性はないことを言及しているケース
県営住宅管理委託業務を住宅センターに特定することについて、この業務の主な内容は、入居者の募集、賃料の回収、設備の維持管理であり、民間のマンション管理業者なども行っているものであり、これらの管理業務自体は住宅センターのみが唯一行い得るものとは言いにくい。県営住宅は県内に点在しているが、県営住宅を一括して特定の者に管理委託を行わせることは必ずしも必要ではなく、住宅単位あるいは地区単位で委託先を選定する方法等も考えられる。近隣の住宅に関して別の者に管理を行わせしめることによって競争が生じれば、県民の福祉、県の財政にプラスの効果も十分に発生しうる。この考えによれば、一部の県営住宅について住宅センター以外にも開放し、住宅センターとの間に競争を生ぜしめ、両者に対し業務の効率化を促すことも出来る。住宅センターのみに県営住宅の管理を委託するのではなく、民間の管理業者などにもこれを開放するよう法令、条例の改正について検討されたい。
(平成14年度 宮城県意見)

■随意契約の要件に疑問があることを言及しているケース
今後は、福祉関係といえども、安易に随意契約を認めるべきではなく、随意契約とするための要件については、厳格に要件の具備を求めるべきであり、随意契約とする場合も慎重な対応が求められる。また、委託先が府との関係が強いとか、公益法人であることを強調して随意契約の例外を安易に認めるべきではなく、競争原理が働くように指導監督されることが望ましい。これら随意契約が許される場合の要件について、厳密なチェックを行うためには、随意契約とする伺い書にその理由を詳しく記載する必要がある。随意契約とする伺い書には「入札に適しない理由」や「入札に付することが不利となる理由」等について、できる限り具体的かつ詳細な理由を記載されるように改善された。例えば、他に類似の機関としてどのようなものがあるのかなど、どのような調査をしたのかについても記載を求めるべきである。
(平成14年度 大阪府)

■契約金額と見積金額がほぼ同額というのは問題であることを言及しているケース
大部分の委託事業において、契約金額と見積金額がほぼ同じであり、委託先が予算に合わせた結果がそのまま反映されている。また、相見積りを取るのが本来であるが、「特別の事情」により一つの見積りの場合でも、通常は、見積書を何回か検討し交渉した結果として契約金額が決まるものである。実際には交渉が行われたケースもあり、最終的な見積りを書類として残しているのかもしれないが、減額交渉の過程は明確に残すべきである。予算内ということで、減額交渉が行われていないとしたら問題である。一旦決まった予算でも、その範囲内で歳出をどう抑制するかという視点は必要であろう。民間企業の場合は、支出予算はどう節減したかも評価されるが、官の場合は予算を消化しようという意識が強く、そのことが財政改革の大きな足かせになっていると言われており、是正すべきである。ゼロ精算も同様である。
(平成14年度 沖縄県)

■契約の計画性の不十分さ、経済性の考慮のなさについて言及しているケース
道路事業の計画性の観点では、個別の工事契約について79%が設計変更により当初契約高を増額している点、すぐに着工できないにもかかわらず発注している工事が存在した点、道路建設事業団が施行した環状2号線川島地区で、総事業費が計画値の2倍に膨らんでいた点、「ゆめはま2010プラン5ヵ年計画」で示された計画について、その後の達成度合いの検証が必ずしもタイムリーには行われていない点、などの問題点が見られた。経済性の観点では、前述の契約額・事業費の増加に加えて、補助事業の工事契約で、翌年度へ事業費の繰越しが生じる事業において、より繁雑な事務手続を行っている点、初回の入札で落札した業者がその後、同一案件について継続して随意契約で受注している点、など入札、契約業務に際して必ずしも経済性を充分考慮していないという問題点が見られた。
(平成13年度 横浜市)
以上
『会計情報』(トーマツリサーチセンター発行/2004年9月号)
川畑秀二執筆分より抜粋
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