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公会計改革 トピックス 2007.6.13
監査委員の重い責任 〜自治体財政健全化法を機能させる〜
本部パブリックセクター 公認会計士 森田 祐司
自治体財政健全化法においては、普通会計の「実質赤字比率」とそれに公営企業までを含めた赤字の比率である「連結実質赤字比率」、借金残高の財政負担である「実質公債費比率」、公社・第三セクター(以下、三セク)への将来的な税金負担である「連結将来負担比率」の4つの財政判断指標を算定し、健全化基準や再生基準により、財政の健全化・再生に取り組むことが要求される。この制度を有効に機能させるためには、各指標値を正確かつ適切に算定することが基本となる。財政健全化法では、財政判断指標を監査委員の審査対象とすることにより指標値の正確性・適切性を確保するという制度設計が行われているが、ここで期待される監査委員審査が実効性を発揮するためには、これまでの決算審査等とは異なる能力が監査委員に要求されることになる。以下に財政健全化法に基づく監査委員の活動の各段階で必要とされる能力について考察する。

(1)審査対象となる会計および作成プロセス
まず、審査対象に、一般会計や特別会計、公営企業会計などの制度的に設置されている個別の会計ごとの審査だけではなく、普通会計という統計上のバーチャルな会計が対象に加わる。この普通会計の統計情報の作成過程には、一般会計と特別会計から公営事業会計を除いた各会計間の取引を相殺した純計を算定し、建設事業への人件費等の按分計算など、決算統計特有の手順があるが、多くの自治体でこの作成過程や手順が文書化されず検証が不可能なケースが見受けられる。この作成過程を検証可能にする一義的責任は財政部局等にあるものの、監査委員には、作成過程を理解の上、手順が適切に文書化され、作成過程が検証可能かどうかを検討し、必要な改善指導を行う能力が要求される。

(2)指標の算定方法と審査内容
次に、指標の算定方法は、今秋に制定予定の省令に拠るため、現時点では詳細な内容は明らかではないが、例えば、公営企業会計における事業特性上のやむを得ない赤字を見積もり、指標算定上考慮することや、連結将来負担比率では、公社・三セクへの将来負担の見積もりが要求されると想定される。監査委員は、このような見積計算の適切性も審査する必要があり、歳入歳出に関する決算数値の正確性のみならず、経営計画等の将来見通しの実現可能性についての判断能力も求められることになる。

(3)審査過程の明確化
さらに、これまでの決算審査が適切に行われてきたかどうかとは別の問題として、指標値の如何により自動的に一定の措置がなされる財政健全化法では、指標値の正確性が確保され適切な審査が行われたかどうかを、事後的にも問われる可能性が高い。そのときに監査委員には、適切な審査を行ったことの説明責任、すなわち、挙証責任を負うことに留意しなければならない。より具体的には、審査結果を得るまでの各プロセスにおいて入手した審査証拠を管理し、意見形成過程を文書化し、対外的に説明可能な状況にしておくという審査能力が不可欠であるといえる。

約1年後に実施される平成19年度決算に基づく財政判断指標を対象とした審査に課せられた重い責任と必要な能力を考えれば、監査委員に残された時間は短いといわざるを得ず、外部専門家の活用も含む早急な対応が必要であろう。

(注1)財政判断指標のイメージは、経済財政諮問会議・資産債務改革の実行等に関する専門調査会・第4回配付資料1「地方の資産・債務改革について(総務省提出資料)」(PDFファイル)の最終ページを参照。

(注2)財政判断指標の計算式等の概要は、総務省・公営企業会計制度に関する実務研究会・第4回配付資料2「健全化判断比率等の概要について」(PDFファイル)を参照。

※本文中の意見に関わる部分は私見である。
以上
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