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ニュース&ナレッジ
情報・メディア・通信 (TMT:Technology, Media & Telecommunications)
トピックス 2006.5.31
Thought Leadership 未来に備えよ 敵を知れ
デロイトリサーチ編著/抄訳・加筆 池末 成明
はじめに
このトピックスは、デロイト トウシュ トーマツ(以下、DTT)の情報・メディア・通信(TMT:Technology, Media and Telecommunications)グループが編集した「Be Prepared:Imperatives for TMT executives, 2005-2010(未来に備えよ:TMT企業への提言)」から、「Know who your adversaries are going to be(敵を知れ)」を抄訳し、日本の読者に合わせた加除の上、訳注として私見を加筆したものです。

Outlook
5年前には、インターネット人口や電子商取引数の増加によって、「新興のTMT企業が世界トップ企業ランキングに登場する」と信じられていました。しかしながら、雑誌フォーブスの世界トップ企業ランキング「Forbes Global 2000」の中には2000年以降に設立や合併により誕生したTMT企業は1社もありません。

事業規模の脅威
TMT業界では、既存の大手TMT企業が最大の脅威です。また、通信サービス・プロバイダ、放送局、家電メーカーなどは、新たな市場を創造するために、R&Dやマーケティングに多額の投資を進めています。この結果、新興のTMT企業は撤退を余儀なくされるか、大企業に買収されるかもしれません。しかしながら、技術力に定評がある大手企業から分割されて誕生したハイテクの新興企業は、大きな脅威となる可能性があります。

増加するM&A
M&Aは、インターネット・バブル崩壊後の数年間、沈静化していましたが、2004年以降から増加に転じました。2005年ではこのレポートが執筆された11月時点までに、TMT企業の買収額が10億ドルを超えるM&Aは57件ありました。この傾向は、今後も加速すると思われますし、いつどんな大型合併があっても不思議ではありません。

ニッチ市場からも現れる新たな競合他社
既存の大手TMT企業ばかりでなく、ニッチ市場で圧倒的なシェアを誇っている企業もTMT業界に脅威を与えるでしょう。たとえば、ある米国の電子メールのサービス企業はニッチ市場で成功を収めている好例です。この企業のデバイスは、割増料金を払ってでも、移動中に、高速かつ信頼性の高い方法で電子メールを送受信したいビジネスパーソンやエンジニアなどのために開発されたニッチ製品として発売されました。当初このデバイスは、その他の携帯電話機ベンダーにとって脅威と呼べるものではありませんでしたが、この企業が圧倒的なシェアを誇っていたニッチ市場は、数十億ドル規模の市場にまで成長し、モバイル電子メールサービス市場でトップ・シェアを誇る製品となりました。2010年までの5年間には、ニッチ市場をターゲットとするその他の企業が出現すると思われます。

訳注:DTTの「TMT業界では事業規模の大きい企業が脅威であり、この対策としてTMT企業はM&Aを進める」との見解の根拠は、「TMT業界ではR&Dやマーケティングに多額の投資が必要であり、『収穫逓増の法則』が顕著に働く」と考えているからです。「しかし、これには例外がある」というのがDTTのもうひとつの見解で、それが「ニッチ市場から登場するTMT企業」なのです。
ニッチ市場で成功する企業は、劇的にビジネスモデルの変革を進めるのではなく、段階的にビジネスモデルを変革する傾向があります。ただし、こうした企業は既存の技術をコンバージェンス(融合)させた製品やサービスを新しいコンセプトのもとで生み出し、対象を絞り込んでニッチ市場に入り込む力に長けています。このニッチ市場が巨大な市場、たとえば消費者市場にシフトすると、さらなる技術革新が進み、既存の製品の駆逐が始まります。これをDTTでは崩壊(disruption)または崩壊的革新と呼んでいます。ここでは、ニッチ市場とともに急成長した企業の「脅威」が生み出す「崩壊」というリスクをDTTは指摘したいのだと思います。

異業種との競争と提携の脅威
他業種とTMT業界の垣根が曖昧化し、業界を超えて同じ顧客をターゲットとした競争が始まっています。たとえば、家電メーカーと通信事業者は、共にコンテンツを販売しています。音楽関連会社は、移動体通信網を使った音楽配信事業で一定の収益を上げています。固定電話回線を使ったブロードバンド接続サービス事業者は、オンデマンド・テレビの配信サービスを開発しています。
しかし、TMT業界の垣根の曖昧化が進んでも、今後5年間は、技術系の企業は、通信サービス・プロバイダやメディア関連企業と同じような企業にならないでしょう。またその逆も起こらないでしょう。
ユビキタスなブロードバンド接続サービスの増加、ストレージ容量の増加、プロセッサの性能の強化、グローバル・レベルで利用できるデジタル・コンテンツの出現などにより、TMT企業は、さまざまな機器を介して、さまざまな場所から、より高い頻度で、より多くの消費者に、より多くの製品やサービスを提供できるようになりました。また、適正なアプローチで事業を展開すれば、莫大な利益を上げることもできるようになりました。図1には、新しい競合環境の概要が説明されています。

これらの収益機会を利用して収益を上げている企業に共通の特徴は、2社またはそれ以上の企業で事業を展開している点にあります。このような提携が業界の競争環境をダイナミックで複雑なものに変え、新しい提携の展開や解消が新たな脅威を呼ぶでしょう。TMT企業は、パートナーの特定、パートナーと共同で行う業務の管理や展開、提携関係の解消などについて、これまで以上に管理する必要があります。

訳注:DTTのTMTグループは、業界を超える提携においては業務提携から始めることを推奨し、株主の賛意が得られるかどうか検討した上で、資本提携に進むことを推奨しています。

図1
2005年から2010年までの新しい競合環境
出典:Be Prepared:Imperatives for TMT executives, 2005-2010より翻訳

Bottom line
1.真の競合相手を把握する

TMT業界において勝ち組企業となるためには、真の競合相手が誰なのかを把握する必要があります。既存のTMT企業に大きな影響を及ぼす脅威は、既存の大手TMT企業の提携によってもたらされる可能性も高いといえます。またTMT企業は、チャネル・パートナーを競合相手とみなさないよう注意する必要もあります。音楽関連企業は当初、自社製品を販売する技術系企業に対しきわめて神経質な対応を取っていましたが、現在では、重要な販売チャネルとして関係を強化しています。

2.提携の形成に向けた準備を行う
今後5年間、提携を形成できる能力が、TMT企業にとって不可欠なスキルとなります。戦略的な提携は、組織の勢力範囲を拡大するのに有力な方法となっていくと思われます。投資費用が増加し、かつ事業の多様化の失敗に対して株主が許容しなくなっている現在、堅調な事業展開が見込める提携を形成する方が得策です。

3.差別化を重視する
既存のTMT関連市場では、価格競争が激化していますが、最終的には、他社と差別化できる独創的な商品の商品化力の競争へと移行していくはずです。このため、競合に打ち勝つことができるような差別化に必要な取り組みを推進していけるかどうかが、TMT企業の成功を左右することになります。
以上
このレポートに掲載されている「中国とインド:その脅威、市場、収益機会」は、プレスリリースの『中国・インド市場の潜在能力の完全開花は十年以上先 〜テクノロジー企業は長期投資を行い、進展を焦らないこと〜』(2006.3.6)で、『Thought Leadership 未来に備えよ ビジネスモデルの革新』(2006.5.31)は、このニュース&ナレッジの中で、その要旨を紹介しています。あわせてご参照ください。
このレポートの全文を英文のPDFファイルでご用意しています。ご関心のある方は、こちらよりお問い合わせください。
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