| ニュース&ナレッジ |
 |
| 情報・メディア・通信 (TMT:Technology, Media & Telecommunications) |
 |
| トピックス 2006.6.21 |
 |
| Thought Leadership TMT Trends:Predictions, 2006 テレコム(2) |
 |
| デロイトリサーチ編著/抄訳 池末 成明、訳注 高橋 淳一 |
 |
はじめに
このトピックスは、デロイト トウシュ トーマツ(以下、DTT)の情報・メディア・通信(TMT:Technology, Media and Telecommunications)グループが編集した「Prediction, 2006 A focus on the telecommunications sector」から、以下の3点を抜粋、抄訳し、訳注として私見を加筆したものです。
1.コンバージェンスの勝者、敗者、傍観者は?
2.再版事業者の復活
3.多角化の難しさ
1.コンバージェンスの勝者、敗者、傍観者は?
コンバージェンスは、2006年も各社にとって重要なカギになると考えられます。しかし、特に固定電話事業者については、コンバージェンスが生み出す収益をフルに取り込むことは容易ではありません。
・土台はブロードバンド接続技術
広がり続けるコンバージェンス・サービスの土台となるのは、ブロードバンドの接続技術です。VoIPや監視カメラ・システムなどこれから伸びていくアプリケーションも、電子商取引やオンライン・ミュージックなどの成熟しつつあるアプリケーションも、引き続きブロードバンドの接続機能に頼ることになります。しかし、ブロードバンドのプロバイダは他の企業と異なり、サービス利用に伴う収入増は期待できません。レコード会社であれば歌曲がダウンロードされるたびに使用料が支払われ、電子商取引企業であれば取引ごとに売上を計上できます。セキュリティ会社はブロードバンドを使った監視カメラ・システムのサービス料を課金できますし、メディア企業はウェブ検索ごとに料金を課すことになっています。それに引き換え、ブロードバンド・プロバイダの接続料金は今後も定額制のままとみられ、競争激化を背景に、ダウンロードの速度は速くなっても料金は安くなるという状況が続くと思われます。
訳注1:
固定電話事業者はブロードバンドで数十メガビット/秒を超えるダウンロード速度を目指し、携帯電話事業者も最大で数メガビット/秒の速度に高めようとしています。しかし、こうした「スピード」競争にもかかわらず、定額制が主流のため、固定電話、携帯電話両事業者とも収益は増えない構造になっています。そうした現状を打開するために、固定電話のブロードバンド事業者は、サービスのバンドル化によりARPUを上げるような方策をとろうとしています。たとえば、IPテレビ、高速インターネット・アクセス、通常の固定電話の3つをパッケージにしたサービスなどが代表的です。
・通信業者は「敗者」の可能性
2006年の通信事業者は、コンバージェンスの分野では「敗者」となる可能性があります。コンバージェンス・サービスの提供において基本的な役割を果たし、次世代ネットワークの推進に何百億ドルもの投資を行い、コンバージェンス・サービス拡大の礎となりながら、通信事業者はそれに見合った代価を得られない公算が高いからです。
Bottom line
・「イベント」による追加的収入がねらい
すべてのTMT企業は、コンバージェンスから利益を得るチャンスがあります。コンバージェンスは2010年までに少なくとも1兆ドルの巨大市場になるとみられていますが、その中でTMT企業は「勝者」「傍観者」「敗者」に色分けされることになります。通信会社が「勝者」の仲間入りをするためには、「イベント」ごとに、あるいはサービス料金の一部として追加的な接続料収入を得られるようなビジネスモデルを構築する必要があります。「イベント」とは、たとえばダウンロードや動画配信、VoIP通話、テレビ会議やインターネット検索をさします。消費者の通信・エンターテインメント支出は増加の一途で底なしではないにしても、すぐに増勢が止まるとは考えにくい状況です。加入者のアクセスとコンテンツへの飽くなき欲求をすくい上げることのできる企業が、成功を収めます。
・ハイエンドでは段階的料金制へ
しかし、毎月の定額料金制より、透明でわかりやすく値ごろ感のある料金体系でない限り、加入者を一律料金からイベント・ベース・モデルに切り換えさせるのは容易ではありません。ハイエンドの高額市場では段階的料金制度(tiered pricing)が始まると思われます。この市場は、ニーズが明確で可処分所得が比較的高い加入者向けに高速通信、高水準のサービス、サポート体制を提供しています。この料金体系が導入されれば、通信事業者は万全のサポート体制を備え、より高速で信頼性の高い高額サービスを提供する一方、量販市場向けには割安な一律料金のサービスを提供することが可能となります。
2.再販事業者の復活
2006年は、規制緩和と市場のニーズがあいまって、固定電話、携帯電話のいずれの市場でも、再販事業者(リセーラー)の勢いが強まると思われます。新たなネットワークの構築に総額で数十億ドルを投資している通信インフラをもつ企業群は中期的に自らがどんな役割を果たすことになるのか、内部で活発な議論をすることになると思われます。
・伸びるMVNO
携帯電話セクターでは、仮想移動体通信網事業者(MVNO:mobile virtual network operators)、すなわち無線通信インフラを他社から借り受けてサービスを提供している事業者が今後も伸びる見通しです。家具小売企業からポイントカードのオーナーに至るまで、既存ブランドは自社の加入者ベースの規模とブランド人気を活用したいと考えているからです。MVNOでは、価格より価値を重視する傾向が強まります。3Gサービス事業者によっては、3G帯域を活用したニッチ製品やニッチ・サービスを開発するため、水平的、垂直的に専門化したMVNOに目をつけるところも出てくると思われます。加入者ベースの中での異なるニーズに応えるため、新しいサブブランドを作ることも考えられます。
・活発化する再販業者ビジネス
固定電話セクターでは、市場の規制緩和に加え加入者アクセス網の共同利用であるローカル・ループ・アンバンドリング(LLU)によって、多種多様な再販事業者のビジネスが活発となる見通しです。既存事業者に最もやっかいな再販事業者はLLUを実施している業者かもしれません。この分野は利益率に余裕があり、設備投資も比較的小額で済むため、既存事業者の市場シェアを奪うことがあるためです。
Bottom line
・再版事業者を戦略に取り組む
通信インフラをもつキャリアは、どのようなタイプの再販事業者であろうと脅威と見なさず、ビジネス・チャンスととらえるべきです。市場にはまだ、自社インフラをもつキャリアが対応しにくいか、専門知識がないために開拓できていないニッチ分野が数多くあります。このため、既存の通信事業者は当初から再販事業者を戦略に組み込んで事業計画を策定すべきです。再販事業者は、経営が良好で課金が妥当であれば、売上と利益を伸ばせると思われます。
・新規ネットワーク販売力強化
固定電話、携帯電話両事業者とも次世代ネットワークの構築を進めていくなかで、経営資源が大きく損なわれる可能性があります。再販事業者と協力して行けば、新規ネットワークの販売力はさらに強化されます。キャリアの小売部門だけでは、売上を最大化するのに十分とはいえません。
・市場にダイナミズム
規制当局からみると、再販事業者の復活はこれまで寡占的だった市場にダイナミズムをもたらす力となりえます。加入者にとっては、選択肢が広がることはいつでも大歓迎のはずです。
3.多角化の難しさ
2006年は、通信各社が事業の多角化を進める年になります。多角化は既存顧客とインフラを活用する方法として、一方では、コア・ビジネスの減収をカバーする増収の対策として実施されそうです。
・バリューチェーン組み込む動き
固定電話事業者は、ブロードバンド・ベースのテレビ・サービスのほか、マネージドITサービスとシステム・インテグレーションの分野に進出する公算が高いとみられます。携帯電話事業者は法人向けソリューションのほか、コンテンツの制作と集約に乗り出します。これらはすべて、メディア、エンターテインメント業界のバリューチェーンに組み込もうとする動きと判断できます。
・買収とアライアンス
事業多角化の方法としては、企業自体の自助努力ではテンポが遅いので、買収とアライアンスが一般的です。この手法を取ると一気に変化するため、通信会社は大規模なIT設備プロジェクトからテレビ番組の編成まで、すべてを手がけることになってしまうかもしれません。
訳注2:
通信業界では、2006年にM&Aが活発化すると思われます。通信各社は長い間投資を手控えてきた結果、多額のキャッシュを保有しており、金融機関や事業の多角化を目指す異業種企業も買収に乗り出す構えを見せているからです。一部の買収ターゲットは、入札企業が複数現れることで、買収コストが高くなるかもしれません。しかし、企業にとってM&Aは多額のコストがかかり、後戻りできない拡大オプションのため明確な戦略上の合理性がなければなりません。多角化のためのM&Aには細心の注意が必要で、場合によっては、アライアンスやパートナーシップといった柔軟な戦略の方が妥当な選択となるかもしれません。
また、通信事業者にとって、M&Aが大きな効果を発揮するのは、エマージンング・マーケットへの参入です。つまり、高成長を持続しているアジアや南米のエマージング・マーケットとしての新興市場に参入することです。それによって通信各社は資産ポートフォリオの均衡をとることを検討する必要があると思われます。
・シナジー効果の成長は望み薄
多角化が順調に進んだ企業では、適度なリスク分散と新たな収入源の確保によって業績が改善します。しかし、多角化が価値の破壊をもたらし、企業が保有資産を広く浅く拡大させるため、シナジー効果による成長は望めなくなります。
Bottom line
・防衛的な多角化
2006年の多角化は、積極的な戦略的経営にもとづくというより防衛的な意味合いが強くなります。多角化は重要な戦略的ツールですが、慎重に対応しなければなりません。
●多角化は、企業の長期戦略の一環であってこそ意味をもちます。思いつきや、何かの対応策としての多角化は、価値の破壊につながることがあります。
●多角化はそれ自体の速度があるため、限度を超えてやりすぎることがあります。たとえば、マネージドITサービスに乗り出した通信事業者数社は苦境に陥っています。
●多角化には大量の人的資源が関わるため、コア・ビジネスという経営の本筋から逸脱してしまうおそれがあります。
訳注3:
多角化での事業分野は、既存の事業分野とシナジーを生むようなものを考えることが重要です。知識・経験・スキルのない事業分野に進出して新たに立ち上げていくより、自社の強みを梃子にしてシナジーをとりながら新しい事業分野に取り組むことの方がリスクを抑えられる可能性があるからです。
・映画、番組制作との関係づくり
テレコム業界の動きを警戒しているメディア業界には、保守的な風土もあり政治力もあります。テレコム業界は、映画や番組制作会社と関係を結ぶほうが、メリットが大きいかもしれません。さらに、コンテンツの権利処理は、複雑であり、制度上の課題もあって、アライアンスやM&Aだけでは解決できないハードルがあります。
・事業拡大の一手段
多角化は、できれば事業を拡大させるための複数の手段のひとつと考えておくほうが無難です。 |
 |
| 以上 |
 |
|
 |
 |
| Copyright |
 |
2008 Deloitte Touche Tohmatsu, Tohmatsu Tax Co. All rights reserved. |
|
 |
| Deloitte(デロイト)とは、スイスの法令に基づく連合組織体のデロイト トウシュ トーマツおよび相互に独立した個別の法的存在であるネットワーク組織のうちのメンバーファームのひとつあるいは複数を指します。デロイト トウシュ トーマツとメンバーファームの法的な構成についての詳細は、www.tohmatsu.com/deloitte/ をご覧ください。 |
 |
| |
|
| |
 |
|