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ニュース&ナレッジ
情報・メディア・通信 (TMT:Technology, Media & Telecommunications)
トピックス 2006.7.5
Thought Leadership TMT Trends:Predictions, 2006 メディア(1)
抄訳 池末 成明
はじめに
このトピックスは、デロイト トウシュ トーマツ(以下、DTT)の情報・メディア・通信(TMT:Technology, Media and Telecommunications)グループが編集した「Prediction, 2006 A focus on the media sector」に掲載された10のテーマから、以下の3点を抜粋、抄訳したものです。

●デジタル音楽の革命はまだ始まったばかり
●ビデオゲーム・セクターは「次世代」に突入
●「次世代ラジオ」にチャンネルを合わせる

1.デジタル音楽の革命はまだ始まったばかり

世界の音楽業界で進む「デジタル革命」の流れは、2006年も変わりません。CDやDVDなどの製品の売上が優位な状況は続きますが、デジタル配信の比率は拡大します。年末までにデジタル形態の音楽配信は音楽業界の全売上高の20%を占め、うち8%が合法的なダウンロード、12%が着メロになると考えられます(図表1参照)。

●急増するオンライン・ミュージック
デジタル音楽の中で中期的に最も高い成長が見込まれるのは、オンライン・ミュージックです。携帯電話の着メロ市場は成熟段階を迎えていますが、オンライン・ミュージックは、製品やサービスを提供する側の努力で、拡大します。年末までに大手レコード会社が配信する楽曲数は何百万曲にも達し、インターネットで購入できる楽曲数は拡大の一途をたどります。オンライン・ミュージックの有料配信サービスを行う国の数も増加します。OECD(経済協力開発機構)諸国では現在、人口1人当たりのブロードバンド普及率はまだ10%超と低いものの、伸び率は年間15%超で、その浸透に従ってオンライン・ミュージックの市場も拡大していくと思われます。

問題の違法ダウンロードについては、個人相手に多額の罰金を請求したり、提訴に踏み切る国が増加するため、これまで以上に厳しい制裁が課せられると思います。

●50億ドル超の着メロ市場
デジタル音楽は、それを聞く端末に最も適した仕様(フォーマット)で販売されることが肝要です。携帯電話の楽曲ダウンロードは、多くの国で極めて小さな市場にとどまりますが、着メロ市場は安定しており、2006年の総売上高は50億ドルを超えると想定されます。

ただし、デジタル音楽業界も従来の音楽業界と似たものになりそうです。パッケージはシングル盤とアルバムに重点を置き、概ね従来と同じです。契約形態もほとんど変わらず、全体としてインターネットやデジタル技術をフルに活かした画期的なものとはなりません。

世界の音楽売上高のフォーマット別シェア(2005〜2006年)

Bottom line
●やり方を見直す音楽業界

2006年以降、音楽業界はデジタル配信サービスを触媒と足がかりとして、従来のやり方を見直すことになると思います。

最大の課題は、デジタル配信の成長をどう維持していくかで、一つの案は、ニッチ層を対象に専門のオンライン市場を構築していくという発想です。通常のブランドの下にサブブランドや専門ブランドを立ち上げ、オペラから現代音楽まで特定の専門ジャンルに棲み分けをしていきます。各ニッチ・ブランドは対応する専門ウェブサイトを作り、大型の音楽サイトではあまり扱わないコンテンツ、例えば、未発表の作品や本人へのインタビューなど、広範な周辺情報を提供します。また、特定ニッチ層のニーズや好みに合わせて音質やパッケージをいろいろ用意します。例えば、オペラのファンはダウンロードした音楽にCD並みの音質を求め、ポップス・ファンは標準的なMP3の音質で十分と思うかもしれません。若年層の利用者は、アルバム全体よりも安上がりな6曲程度のパッケージ・レンタル好みます。

●利用・購入方法の工夫
オンライン・ミュージックは、現状ではブロードバンド接続やパソコン、クレジットカードを持つ人にしか利用できないため、レコード会社はこうした利用環境を改善し、誰もがオンライン・ミュージックを楽しめるように努力する必要があります。ショッピングモールや駅などに専用ブースを設け、消費者がその場で選曲し、MP3プレーヤーにダウンロードしたり、CDに焼くことが可能なシステムを作ることが重要です。購入方法も、プリペイド方式や商品券の受け付け、会員制の導入など分かりやすい方法を業界全体で考えていくべきです。

●MP3プレーヤーの開発必要
最後に、音楽業界は家電メーカーと協力し、音楽の直接購入用のMP3プレーヤーを開発すべきです。MP3プレーヤーがあればパソコンを使わないで済むため、いつでもどこでもオンライン・ミュージックを購入できるようになります。機器は、ブロードバンド接続機能はもちろん、楽曲の種類や文字が読みやすい大型のディスプレイを搭載する必要があります。

2.ビデオゲーム・セクターは「次世代」に突入
ビデオゲーム市場は今年、好調に推移するとみられます。2005年に2台の新型ゲーム機が発売されたのに続き、今年も新型機の発売が予定されているため、間違いなく好調を維持します。新型機はサイズや価格の割に高い処理能力を持つため、今年の世界のゲーム機売上高は、230億ドルに達すると予想されます(図表2参照)。映画のヒット作品を複数のゲーム機でゲーム化して販売し、効率的なマーケティングを行えば、映画とゲームのタイアップで売上が拡大します。



●ゲーム・ファン拡大の年
2006年はビデオゲーム業界にとって、若い男性以外にゲーム・ファンを拡大する初めての大掛かりな取り組みの年になるはずです。発売が予定されている教育ゲームや女性対象の新しいジャンルのゲームは、中期的に市場を拡大し、業界全体の成長を支えていきます。

2006年のビデオゲーム・セクターの見通しは明るいですが、まだ大きな課題も残っています。新型機向けのゲームが高性能になればなるほど、開発コストが巨額になるからです(図表3参照)。また、スポーツから映画まで、人気作品やヒット作品のライセンス料は今後も高水準で推移するとみられています。

ビデオゲームの平均開発コスト

Bottom line
●将来への足場固め

2006年は、新発売のゲーム機と発売予定のゲーム機の合計3モデルがゲーム業界の好調を演出します。しかし、各社とも主要3機種の成功にこだわるよりは、将来の成長への足場固めが重要です。ゲーム・セクターは、好・不況の波が大きいため、現状に甘んじている余裕などはありません。

ゲーム業界は性別、世代、地域的な広がりを超えてゲームを浸透させる努力をしていかなければなりません。今のビデオゲーム市場は若年男性に大きく依存していますが、クロスオーバー・ゲームの驚異的なヒットにもみられるように、女性もゲームに強い関心を持っています。ゲーム機メーカーやゲーム制作会社は、女性向けの製品やサービスの開発に力を注ぐとともに、業界団体は女性のゲーム機やゲームの購入実態を調べ、浸透ぶりを追跡調査する必要があります。

●社会的な風当たり対策が重要
ビデオゲームがヒットすればするほど、ゲームへの社会的な風当たりが強まるおそれがあります。子どもたちがゲームに熱中すると、親たちはゲームを子どもたちから遠ざけたいと考えます。現実には重症のゲーム依存症になった例も報告されており、ゲーム業界はこうした社会の懸念をしっかり踏まえて、対策を講じる必要があります。保護者がタイマーをセットし、一定時間が過ぎたら自動的に画面が消えるようにする仕組みをゲームに組み込むのはそれほど難しくありません。問題が深刻化する前にこうした手を打つことが重要です。

●追加的な増収策を検討
増収策として、購入後のゲームについても、追加的な売り上げを得られる方法を検討する必要があります。次世代ゲーム機にはすべてブロードバンド・アクセス機能が付いており、これを使えば多彩なデジタル・コンテンツを販売できます。新しいゲームのレベルアップやキャラクターのグレードアップ、ゲーム攻略の秘密が入手できる「チート・コード」、複数プレーヤーとのゲームなどを販売できるというわけです。ネットワークと接続していれば、地域限定の広告やパーソナライズした広告をリンクさせることも可能です。

最後に、コンソール(卓上型)ゲーム機向けの開発コストが増加し続けるため、一部のゲームソフト制作会社は基本的な仕様の変更を検討していくでしょう。手のひらサイズの小型ゲーム機は、開発コストもソフト制作コストもそれほどかかりません。モバイル・ゲームも、比較的開発コストはかかりません。電子玩具の利用も一案です。技術コストが低下して、ほぼすべての玩具に電子ゲームを組み込めるようになったからです。実際、2004年の年末商戦のヒット玩具には、4つのゲームを内蔵したデジタル式の「コマ」がありました。

3.「次世代ラジオ」にチャンネルを合わせる
ラジオのビジネスモデルは今年、大きく変貌すると思われます。ラジオの主な収入源は広告収入で、それ以外は公的な助成金に依存してきました。この状況に変化はないとしても、ラジオ局は今後、多様化するニーズや地域ごとの需要に応える番組作りをして、収益の中身を多様化させていきます(図表4参照)。

ラジオのリスナーはもうすぐ「顧客」と呼ばれるようになり、好きな番組を好きな端末で、生放送でも録音でも自由に選んで聞くことができるようになります。聞きたくなければCMを飛ばしたり、コンテンツを購入したりするチャンスも増えます。

「Radio 2.0(次世代ラジオ)」の位置づけ

●コンテンツ、広告の課金増加
放送を聞き逃したリスナーは録音を購入したり、逆にラジオ局は古いアーカイブ放送をダウンロード販売できます。優れたコンテンツを保存し、加入者のみに配信、高音質には高い料金を課することもできます。ラジオ・アーカイブのデジタル化が進めば、優良コンテンツを探し出す「コンテンツ・アグリゲーター」にライセンスを与えることも考えられます。リスナーがインターネット・プロトコル(IP)ネットワークを通じて放送にアクセスすれば、従来型ラジオによる聴取より正確にモニターできるため、違った方法で広告料金を設定できます。

ラジオ利用の新たな形態が取りざたされる一方で、世界全体の保有台数が18億台に達している従来型ラジオは、純然たる量産媒体として残っていきます。標準的なAM/FMラジオは、今後も世界の広告支出で一定のシェアを確保します。

Bottom line
●Radio 2.0(次世代ラジオ)の注目点

放送を楽しむだけのラジオ時代は終わろうとしています。ラジオ業界では、消費者に多彩なラジオ・コンテンツを提供し、収益を大幅に拡大する可能性が生まれています。ラジオの世界では今、配信手段が爆発的に増え、ビジネスモデル自体が根底から塗り換えられようとしています。いわゆる「Radio 2.0(次世代ラジオ)」の注目すべき影響には、以下のようなことがあります。

(1) ラジオ・ローカル局のグローバル化:
ラジオ放送は地域や国だけに限定されず、すべてのラジオ局が世界中のリスナーを相手にする時代が到来します。海外リスナーは、インターネットを通してアクセスするため、聴取率の追跡は従来型ラジオのリスナーよりもはるかに正確にできます。広告主にとってはサービスの質が改善し、地域限定やカスタマイズによる広告配信の余地も生まれます。
(2) ラジオ・アーカイブのデジタル化:
ドラマやコメディ、ニュース、スポーツなどの自社番組であれば、ラジオ局は過去数十年に制作委託した作品を改めてパッケージ化し、再販できます。これ以外にもデジタル化は、オリジナルの番組を聞き逃したリスナーに再放送サービスを提供するという新たな収益源を生み出します。
(3) 契約ベースの有料ラジオが世界的に台頭:
テレビ・セクターではわずか数十年の間に、一部の主要市場が広告主体から加入形式主体へと移行しましたが、ラジオ・セクターもその例に倣うべきです。
(4) 消費者には複雑さではなく、選択肢が増えたことをアピール:
デジタル・ラジオを使うと、タイムシフトからデジタル録音まで技術面での柔軟性が一気に広がります。電子番組ガイド(EPG:electronic programming guide)や番組通知、番組推薦などの便利な機能が加われば、次世代ラジオは、はるかに楽しい体験ができます。同時に「シンプルであること」を戦略の重要な柱に据えなくてはなりません。ラジオは非常にシンプルで使いやすい媒体で、消費者は何十年もAM/FMラジオに慣れ親しんできました。ラジオの機能を複雑にしても誰も喜びません。「Radio 2.0(次世代ラジオ)」を現在のラジオよりさらに分かりやすく、使いやすくするのは無理としても、同じくらいに使いやすくすることが重要です。
以上
このレポートの全文を英文のPDFファイルでご用意しています。ご関心のある方は、こちらよりお問い合わせください。
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