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| 情報・メディア・通信 (TMT:Technology, Media & Telecommunications) |
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| トピックス 2006.7.19 |
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| Thought Leadership MVNO(1) その可能性とMNOへのメッセージ |
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| 池末 成明 |
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はじめに
仮想移動体通信事業者(MVNO:Mobile Virtual Network Operator)とは、携帯電話会社(MNO:Mobile Network Operator)から、電気通信設備の一部を借りてサービスを提供する事業者をいいます。電波は、テレビやラジオ、警察なども利用しているため、利用できる電波に限りがあります。このため、MNOになれる事業者の数には限りがあり、国により制度が異なりますが、MNOになりたい事業者は、国から周波数の割当を受ける必要があります。一方、MVNOは、MNOから設備を借りて携帯電話市場に進出するので、周波数の割当を受ける必要はなく、異業種からの参入もできます。したがって、MVNOという制度は、MNO以外にも携帯電話市場に参入できる機会を与える競争政策ともいえます。なお、MNOは、厳密にはMVNOに対応してのみ使う用語ですが、ここでは国から周波数の割当を受けた携帯電話会社をMNOと呼んでいます。
このトピックスでは、デロイト トウシュ トーマツ(以下、DTT)が管理するナレッジベースおよび各国のナレッジマネジャーの支援を得て入手した世界のMVNOの事例を参照・整理した分析結果をいくつかご紹介します。その後、DTTの情報・メディア・通信(TMT:Technology, Media and Telecommunications)グループが開発したMNOやMVNOの事業計画を策定するための方法論をごく簡単にご紹介します。このトピックスは、世界のMVNO市場に進出を検討している事業者も読者として想定しているため、特に日本の制度に特化した記述にはなっていません。
なお、このトピックスの意見の部分は私見です。
MVNO誕生の背景
世界で最初のMVNOに相当するビジネスは、20世紀末の北欧に始まったといわれています。その翌年、英国の通信事業の自由化を促進する半官半民の組織であるOFTEL(現Ofcom)は、「設備がなくても携帯電話市場に参入したい」という異業種の要望を受け、MVNOという概念を確立させました。その後、OFTELの活動が実を結んだ英国でMVNOが始まり、その成功を追いかけるように欧州各国でMVNOが設立され、米国やアジア太平洋地域へと広がりました。
MVNOは、2000〜2001年頃、新規の市場参入が減少しましたが、その後、2003年頃から新しいMVNOが相次いで誕生し、国を超えたMVNOのM&Aが進みました。DTTでは、2005年頃から世界的規模でMVNOの本格的な成長期に進んだと考えています。
実は、日本でもMVNOが始まっています。日本の動向については、別の機会に詳細をご紹介することとしますが、総務省では、「移動体通信市場において、周波数の割当を受けずにサービス提供を行うMVNOの参入を促進し、更なる競争の進展を通じた料金の低廉化、サービスの多様化を図るため、MVNOに係る制度運営の透明性・予見可能性を高める」ために、「MVNOに係る電気通信事業法及び電波法の適用関係に関するガイドライン」(平成14年6月11日)を策定・公表しました。今後、日本でも、こうした総務省の競争政策による後押しばかりでなく、MVNOとの提携に関心の高いMNOによってMVNOに進出する事業者が急速に増加すると考えられます。
MVNOの可能性
DTTでは、MVNOをMNOの回線の再販業者として位置づけています。DTTは、2010年までに世界のMVNOの占有率は10%以上となり、MVNOが携帯電話業界の一大勢力になると予測しています。DTTでは、このMVNOの成長を「再販業者のルネサンス」と呼び、固定通信まで巻き込んだ再販業者の活性化が進むと予測しています(TMT Trend Prediction 2006, Focus on Telecommunications, DTT)。
わが国でも携帯電話の販売会社や回線の再販業者を中心にMVNOを展開することが容易に想像できます。しかし、MVNOは、これだけにとどまらず、さまざまな形のサービスへの応用が考えられ、その潜在的な市場規模は、現在の音声を中心とした携帯電話の市場規模の少なくとも数倍に達すると思われます。このさまざまな形のサービスの登場こそが、総務省がもくろむ市場の多様化による通信産業の育成を進めるための、競争政策の目的だと言われています。これは、総務省の競争政策が新しい段階に進んだことを意味しています。以前より総務省は、さまざまなメディアを通じて、その方向性を示唆してきており、これに同期するかのように業界内部でも活発な発言や活動がありました。こうした動向の分析は、また別の機会に行いたいと思います。
MNOへのメッセージ
―MVNOへのサービスの義務化
MNOの方々にとっては、周知の事実ですが、MNOにMVNOと契約することを法律で義務づけている国もあります。DTTは、「MNOに限らず通信事業者は、各国の規制の流れに逆らわず、うまく活用していくことが望ましい」と主張してきました(Global Telecommunications Indsutry Index 2004)。MNOは、MVNOを脅威として位置づけるのではなく、新しい収入源となる流通チャネルと位置づけるべきだと思います(TMT Trend Prediction 2005 Focus on the mobile and wireless sector, DTT)。
―市場の成熟化
かつて、各国のMNOは、市場の導入段階から成長段階では、「法人と個人」や「プリペイドと後払い」などに大きく分けるだけのマーケティングを進めてきました(TMT Trend Prediction 2005 Focus on the mobile and wireless sector, DTT)。DTTは、「携帯電話市場が成熟期にある現在、MNOは、市場の細分化によるマーケティングを進めるべきだ」と主張しています(TMT Trend Prediction 2005 Focus on the mobile and wireless sector, DTT)。
一方、日本では、全ターゲットに対してプロモーションを展開する総力戦を進めているように思われます。これは、市場の成熟期にあって、2Gから3Gへの製品の入れ替えを進めるために起きている現象と思われます。こうした総力戦の中で、市場細分化による市場浸透化を進めることは、MNOにとって大変な負担になります。
こうした中、2006年、日本では、電話番号をそのまま使って他社の携帯電話に移行できるナンバーポータビリティ制度が始まります。成熟期において、このような競争政策が導入された今、既存のMNOは、コトラーを引き合いに出すまでもなく、既存の加入者の維持が重要で、新規加入者を獲得するよりコストもかからないと思います。DTTでは、このような局面においては、加入者を失うよりは、自社にMVNOを取り込んで、加入者を維持することもシナリオのひとつだと主張しています。
にもかかわらず、日本に限らず、勝ち組のMNOは、MVNOの活用という選択肢よりは自分自身ですべてのターゲットに対して個別に製品やサービスを用意しようとする可能性があります。しかし、この経営姿勢は、結局、市場の柔軟性や多様性を阻害し、市場全体の成長を停滞させ、そのまま自らの成長の限界を生み出すリスクがあります。DTTは、繰り返し、MNOにMVNOのような制度の導入には逆らわずに、積極的に活用することを主張しています。一方、新興のMNOは、こうした制度の利点を生かしていくものと思われます。
―MVNOとコミュニティ
DTTでは、「MNOが細分化を進めるにあたって、既存の利用者のデータを活用して、利用者ひとりひとりをターゲットにし、そのニーズを満たすテーラーメイドのサービスパッケージや価格体系などを計画し、加入者に提案する必要がある」と主張しています(TMT Trend Prediction 2005, Focus on the mobile and wireless sector, DTT)。
こうした主張の妥当性を分析する過程で、浮かび上がったのがコミュニティーをターゲットとしたMVNOの重要性です。2004年、DTTのナレッジマネジメントチームの共同作業によって、世界各国では、学生、特定のスポーツのファンなどのコミュニティや特定の国に通話をする民族的な加入者層(注)をターゲットにしたMVNOが増える傾向にあることがわかりました。こうしたMVNOは、このようなコミュニティやターゲットに対して、特別なブランドや販売チャネル、価格パッケージなどをCSF(Critical Success Factor:主要成功要因)として持っており、このCSFを使ってサービスを拡販、加入者数を伸ばしています。たとえば、通話料においては、同じコミュニティのメンバー同士では通話料を値下げするなどの価格政策を持っているMVNOがあります。
わが国においては、MNO自身が、こうしたMVNOとの提携を初期段階で進めることで、加入者との間に間接的ではありますが、MNOへの継続的なロイヤルティを高めることができます。MNO自身でこうしたシナリオを描ききる必要はなく、細分化戦略を立案する必要もなく、このようなMVNOを受け入れるパッケージ戦略があれば十分だと思われます。
(注)一般的に、特定の国に通話をする民族的な加入者層からの通話料は、回収リスクがあると言われています。このため、この加入者層をターゲットにしたMVNOは、携帯電話をプリペイド契約にする必要がありますが、わが国では、犯罪の防止などの観点から、プリペイド契約に対して厳しい対応を行ってきました。よって、この加入層をターゲットとする場合は、通話料の回収方法などにつき、十分な検討が必要です。
―低価格のMVNOに対する対策
MVNOを進めるにあたり、低価格の携帯電話サービスの出現に恐れるのではなく、このビジネスチャンスを初期段階でリードして、付加価値の高いMVNOを出現させて共存共栄を図るために、こうしたビジネスモデルの必要性を持つ可能性のあるMVNOや事業者と提携するための事業戦略やマーケティング戦略を持つ必要があります。
―MVNOはニッチ市場
DTTでは、一般的にMVNOが対象とする市場はニッチ市場であって、ひとつひとつの市場はMNOがターゲットとすべき市場ではないと考えています。また、MVNOの成功はコンテンツやデータサービスと、これを支えるアプリケーションがその成功の可否を決めると思いますが、DTTでは、そのすべてをMNOで用意することも非効率だと主張しています。また、DTTでは、MNOは、MVNOと競争するのではなく、むしろMVNOにその役割を委ねる方が合理的で、結局、早期に投資コストを回収できると考えています。よって、既存のMNOにとって、注意すべきMVNOは、海外のMNOや新興のMNO、低価格を売りにするMVNOが水平展開して、日本でMVNOになる場合に限られると思います。
わが国では、過去、海外ではMVNOが行う法人向けのアプリケーションを組み込んだ業務をMNOが行うことも多く、この傾向は今後も継続するとはいえ、MNOだけでは市場のニーズに応えることが難しくなってくると思われます。
―MNOの水平展開
MNOであっても、地域によってはすべての設備を用意することは合理的ではありません。このような場合は、MVNOとして進出することも考えれます。特に、新興のMNOは、国内だけでなく、海外への進出を進めやすい環境が整ってきていると思われます。 |
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| 以上 |
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| このトピックスで引用したTMTグループのニュースレターであるThought Leadershipシリーズの『TMT Trend Prediction 2006, Focus on Telecommunications, DTT』と『TMT Trend Prediction 2005 Focus on the mobile and wireless sector, DTT』の英語版および全訳はPDFでご用意しております。ご関心のある方は、こちらよりお問い合わせください。 |
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