| ニュース&ナレッジ |
 |
| 情報・メディア・通信 (TMT:Technology, Media & Telecommunications) |
 |
| トピックス 2006.7.19 |
 |
| Thought Leadership MVNO(2) MVNOへのメッセージと事業計画 |
 |
| 池末 成明 |
 |
MVNOの課題
DTTでは、MVNO市場はニッチ市場だと考えていますが、ニッチ市場であるということは、本当に投資に見合うだけの顧客層がその市場に存在するかどうかという課題が生じます。この課題は事業計画を策定する場合、もっとも重視すべきテーマとなります。
また、わが国においては、端末メーカーは一説によると50万台以上の需要がないと対応しないと言われています。既存の端末を転用するにしてもMVNOの加入者であることを認識するための特別なモジュールが必要です。
したがって、実は、MVNOは、大型ブランド(たとえば、アニメやキャラクター)や強力な販売チャネルなどのCSF(critical success factors:主要成功要因)を持っていないと、投資からのリターンを云々する以前に、端末メーカーを動かすだけの需要を見込むことができないのです。特に、携帯電話端末にMVNO独自の付加価値、たとえばキャラクターをあしらった端末やキャラクター関係のコンテンツを集めたサイトにボタンひとつで飛べるような機能を付加したい場合には、携帯電話メーカーとの交渉とどこまで需要を見込めるか提示できることが重要だと思われます。
もっとも、端末はMNOのものをそのまま使い、自社が端末の所有者となって、その請求された課金を改めて加入者に再請求するような方法をとれば、多少は事情は変わるかもしれません。
また、MNOがMVNOへ端末を入手できるような政策をとれば端末メーカーも動くでしょう。端末メーカーに端末を開発させ、製造させるための方法として、MVNOが端末メーカーの開発費や広告宣伝費を負担するというアイデアも考えられます。たとえば、放送業界で協力してMVNOを作り、そこで得た広告宣伝費やコンテンツプロバイダーからの販売手数料などをMNOやMVNOなどで分かち合うといった方法も考えられるかもしれません(実際に類似したアイデアを使ったモデルが過去にあります)。
さらに、MNOが端末メーカーと共同して、MVNOに端末を提供できるような環境を整備していくことも考えられますし、MVNO市場は外資系の端末メーカーにとってはビジネスチャンスですので、協力するかもしれません。
しかし、こうしたアイデアもそれに見合うだけの収入がなければ事業として継続させることはできません。十分な収入を作り出すのも、ひとえに各関係者が持っているCSFは何かを把握した上で、クロスマーケティング政策などを練り、現実的な事業計画を作り上げることになります。こうしたモデルをDTTでは、「組織のコンバージェンス」と呼んでいます(The trillion dollar challenge, DTT)。
MVNOのビジネスモデル
総務省は、コンテンツ業や流通業、金融業界などの異業種によるMVNO市場に参入を後押しし、携帯電話市場の多様化を進めて、携帯電話市場を活性化させることを考えています。
総務省総合通信基盤局データ通信課が、2005年11月29日でのMVNO協議会の発足説明において発表したMVNOの参入ビジネスパターンの加工して、以下にいくつかビジネスモデルを検討したいと思います。
―異業種による多角化:ブランドを利用した立地戦略
2003年頃、英国のあるMVNOは、グループ会社の大型小売店に携帯電話の専門店を開設し、そのブランド力を活用して、拡販したことから急成長しました。この成功を見て、欧州では大型小売店などによるMVNO市場への参入が相次ぎました。しかし、このような戦略は、成熟産業である携帯電話市場ではすでにあまり有効ではないと言われており、このビジネスモデルで成功するためには、もう少し検討が必要だと思われます。たとえば、
・流通業(ポイント制や電子商取引)
・運輸業(マイレージサービスや予約、チェックインの簡便化など)
・金融機関(クレジットカード、電子取引など)
異業者はMVNOを電話サービスと考えるのではなく、自社のサービスの付加価値をつけるためのデータ通信としてMVNOを検討するべきでしょう。音声サービスは、そのコアビジネスの延長線にある付加価値になります。
―FMC(Fixed Mobile Convergence)
FMCとは、固定と移動の融合によって相乗効果のあるサービスを創出しようというコンセプトです。代表的なサービスとして、同一端末で、屋内では固定通信、屋外では携帯電話を自動的に使い分け、顧客にとって端末の統一化や通信料金の低減といった利点をもたらすものが登場しています。固定事業者にとってこのFMCがどのようなメリットをもっているかは、これだけで非常に大きなテーマであり、またMVNOとの関係でも論述する内容が豊富であるため、機会をみて論述します。
―放送サービスとの融合:コンテンツによる展開
MVNOによる携帯電話サービスに加えて、スポーツやニュース速報、アニメーションのキャラクターなどを利用したコンテンツ提供するサービスが話題を呼んでいます。さらには、携帯電話の小さな画面に地上波を使ってスポーツやニュースを流すサービスも始まっています。このようなサービスで異業種が成功するためには、自社のコンテンツやブランドの優位性をCSFとして位置づける必要があると思われます。
―地理的な水平展開による融合
海外では、他国のMVNOを買収したり、他国のMNOと提携することによって、広域のMVNOとなって成功した事例があります。今後、日本においても、新たに市場に参入するMNOやMVNOがM&Aや提携によって全国ばかりでなく世界にも展開していくと思われます。
MVNOの事業計画
MVNOのビジネスモデルは、その参入市場の状況が異なり、参入企業の業種も規模も異なるため、固定したパターンは存在しません。従業員が50名にも満たない小規模なMVNOであっても成功している事例があります。どのようなMVNOのビジネスモデルがあっても不思議ではありません。DTTでは、利益を生むビジネスモデルを決定するため、次の4フェーズで事業計画の策定を進めることを推奨しています。
(1)シナリオ分析
シナリオとは、不確実性未来を予測する際に設定するいくつかの戦略オプションをいいます。シナリオ分析とは、複雑で広範囲な影響をダイナミックに評価する方法をいいます。MVNOに限らず、どんな企業でも新たに事業進出を進める場合、いくつかのシナリオを想定します。その一例を作成してみましたので、ご参照ください(シナリオの名前は、自由につけてかまいません)。

たとえば、トロイの木馬とは、海外の敵陣(海外市場)に兵卒(営業)を潜ませた木馬(MVNO)を送り、夜になって敵陣を急襲する(シェアをとる)方法を想像して名づけました。他のシナリオを作って、別の名前をつけてもかまいません。
各シナリオには、CSFが必要です。MVNOが検討すべきCSFには、ブランド、販売チャネル、マーケティング、顧客ベースなどがありますが、これに限るものではありません。また、CSFは、これらのうちのひとつかもしれませんし、すべてかもしれません。CSFの検討は、シナリオにあわせて決めます。シナリオは、上の表のように、市場開拓のレベルと市場の自由度のレベルにわけてもよいですし、他のフレームワークを考えてもかまいません。
その後、自社のCSFを意識して、シナリオごとにMVNOモデルを開発します。また、必要に応じて、再び新たにCSFを検討します。
(2)シナリオ分析に基づくワークショップ
ワークショップでは、どのシナリオが現実的か討議を進めます。(1)で用意されたシナリオの中から、シナリオを3点から4点選択します。また、このフェーズでは、自分たちの進むべき将来のシナリオも選択します(MNOの場合には、もう少しシナリオを増やす必要があります)。
(3)事業計画案の策定と評価
このフェーズでは、選択したシナリオのMVNOモデルに対して事業計画のドラフトを作成します。この事業計画では、それぞれのMVNOのビジネスモデルについて、ターゲットとすべき顧客層をいくつか定め、その市場調査を行った上で、ターゲットを具体的に絞り込んでおくことが重要です。また、事業計画の策定では、以下のポイントを検討する必要があります。
・運用経費:OPEX(Operational Expenditure)
・資本的支出:CAPEX(Capital Expenditure)
・MVNOがすでに提供している製品やサービスとのシナジー
・各MVNOモデルで必要な資金とファイナンスの方法
・資本提携の可能性
・海外進出によるMVNOであれば規制や税法上の検討
・各MVNOモデル化でのMNOの利益の予測
・事業から撤退する場合の基準と処理方法
事業計画のドラフトは、客観的な評価を行う必要があります。特に、海外でMVNOを展開する場合には、制度面と税務面での検討が必要です。特に、税務面の課題は、ローミングでもあった課題でありましたが、MVNOでも同様な課題を検討する必要があります。
(4)交渉
事業計画がドラフトされた後、MVNOとMNOとの交渉の際に、各モデルの利点を示し、その需要予想だけでなく、MVNOとMNOが相互に受諾できる卸売価額などを提示します。MNOであれば、MVNO向けの価格パッケージを策定する必要があります。その後、MVNOとMNOと協議は、次のような対策を取ります。
・さらに分析を進めるべきMVNOモデルの事業計画を選択
・選択したMVNOモデルに関する詳細な事業計画の策定
このトピックスが、MNOやMVNOを検討されている企業、MVNOに投資を検討されている企業の方々に、わずかながらでもご参考になれば幸いです。
なお、前述の通り、日本のMVNO市場を考える場合、最大の壁は、MNOにあるのではなく、投資に見合うだけの顧客層をMVNO自身が確保できるかという課題と、携帯電話端末との関係です。たとえば、英国で最初に始まったMVNOの端末は日本製ですが、この端末のデザインやロゴなどについても、ブランドと需要があったからこそ、このMVNOは議論できたわけです。 |
 |
| 以上 |
 |
| このトピックスで引用したTMTグループのニュースレターであるThought Leadershipシリーズの『TMT Trend Prediction 2006, Focus on Telecommunications, DTT』、『TMT Trend Prediction 2005 Focus on the mobile and wireless sector, DTT』、『The trillion dollar challenge』の英語版および全訳はPDFでご用意しております。ご関心のある方は、こちらよりお問い合わせください。 |
 |
|
 |
 |
| Copyright |
 |
2008 Deloitte Touche Tohmatsu, Tohmatsu Tax Co. All rights reserved. |
|
 |
| Deloitte(デロイト)とは、スイスの法令に基づく連合組織体のデロイト トウシュ トーマツおよび相互に独立した個別の法的存在であるネットワーク組織のうちのメンバーファームのひとつあるいは複数を指します。デロイト トウシュ トーマツとメンバーファームの法的な構成についての詳細は、www.tohmatsu.com/deloitte/ をご覧ください。 |
 |
| |
|
| |
 |
|