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情報・メディア・通信 (TMT:Technology, Media & Telecommunications)
トピックス 2006.9.6
Thought Leadership 2010年:TMT業界が変える通信
工学博士 高橋 淳一
このトピックスはデロイト トウシュ トーマツ(以下、DTT)のデロイトリサーチの情報・メディア・通信(TMT:Technology, Media and Telecommunications)グループが編集した「未来を見る目:2010年TMTが変える私たちの生活(Eye to the Future:How TMT advance could change the way we live in 2010)」の中から「2010年:TMTが変える通信(How TMT advances could change the way we communicate in 2010)」を参考にして、新たに書き起こしたものです。

全人口の半数がネットに接続
2010年までには、何億もの新興国の人々がはじめて地球規模の電気通信ネットワークにアクセスできるようになるので、世界人口の半分が電気通信サービスに接続されることになると思われます。殆どが携帯電話によるものと思われますが、新興国での固定通信ネットワークサービスの成長も含めて、公衆電話回線網全体の規模は今後も成長していくでしょう。

キラーアプリケーションであり続ける音声通信
ネットワークサービスを受容できる人口が世界的に急増し、また、通話料金の低価格化の進展によって、音声通信は2010年まで成長を続けると思われます(音声通信の総量は9兆分/年(現在)→12兆分以上/年(2010年)と予測)。特に、携帯電話の爆発的な普及、固定から携帯への乗り換えにより、携帯電話での音声通信は2010年には8兆分にもなると予測され、これは音声通信全体の60%以上にもなります。携帯電話のメールやWebブラウジングの利用の増加に伴い、ARPU(Average Revenue Per User)におけるデータ通信利用の比率は増える傾向にあり、音声利用は微減傾向にはあります。しかし、データ通信が通話のARPUを上回ってはいません(ARPUにおける音声通信の割合はおよそ60%強)。これは、本質的に、“音声による通信”がコミュニケーションの原点であり、情報共有や意思伝達する上で、音声通信が最もシンプルかつ効率的な手段であるからと考えられます。音声通信はコモディティ化したものではありますが、このような観点からみれば、依然として“キラーアプリケーション”と見なすことができると考えられます。

VoIPは総通信量に対するシェアを拡大するもののIP化のメリットの顕在化が普及の鍵
VoIP(Voice over Internet Protocol)は受け入れられていきそうですが、収益上は2010年になってもほとんど影響を及ぼさないでしょう。VoIPは音声通信全体の10%に迫るものになりますが、収益は総収益の5%にも満たないと予測されています。企業においても、一般消費者においても、VoIPが代替的な音声通信方式としか映っておらず、通話料金の削減目的にVoIPを採用する場合が多いのが実状です。音声のIP化によって、これまでの音声通信では困難であったようなアプリケーションが実現できるなど、IP化のメリットがユーザーに陽に見えるようになることが普及促進において重要であると考えられます。日本においては、ここ数年、大企業を中心に、通信コスト削減を目的としてIP電話の導入が盛んに進められました。市場での一定の成果は認知されたものの、このブームも一服感があります。企業にとってコスト削減は重要ではありますが、ビジネスのコア・コンピタンスに貢献できるものではありません。音声のIP化のメリットを、企業の競争力の源泉となるコンピテンシーの強化に役立てられるような機能/ソリューションが重要視されています。国内の主要ベンダーは、「コミュニケーション革命」や「ワークスタイル変革」をキーワードに、音声のIP化メリットを活かしたソリューションを開発し始めています。特に、企業の収益向上を狙いとして、マルチチャネル対応の充実、エージェントの効率的運用、初期投資・運用コスト削減などの点にIP化によるメリットを見出しながら、顧客接点であるコンタクトセンタのIP化の事例が増えていくと思われます。

3Gモバイル vs 固定ブロードバンド−ゼロサムゲーム?
2010年には、モバイルブロードバンドは、固定ブロードバンド並みになっているでしょう。消費者や企業の固定ブロードバンドは堅調なペースで推移しつづけ、2010年には4億9000万加入者に迫るでしょう。モバイルブロードバンド(3G)加入者も3億人に達すると思われます。データスループットの点においては、2010年になっても、固定とモバイルとでは著しい差が残ると思われます。固定通信事業者および無線通信事業者はともに、今後5年間に次世代ネットワーク技術を展開すると思われます。世界全般で見れば、固定通信事業者は、ADSL2(+)(asymmetric digital subscriber line)への動きを見せ、またそれほどの重きは置きませんがFTTH(fiber to the home)にも動いていきます。無線通信事業者は3Gネットワークの構築を続けると予想され、またHSDPA(high-speed downlink packet access)やHSUPA(high-speed uplink packet access)50のサービスを追加して現行より速い数メガビット級の接続を顧客に提供すると思われます。しかし、日本市場はこの傾向とやや異なります。特に、固定通信においては、ADSLの成長は飽和し、競争の舞台はFTTHになってきており、現在はその立ち上がり期にあります。ユーザーも、100MbpsのFTTHの魅力に気づき始め、キャリアのトリプルプレイ・サービスの提供とも相俟って、加入申し込みが増加している状況です。また、このアクセス系の光化と並行して、IPベースの次世代ネットワーク(NGN)も具体的な姿を現しつつあります。FMC(Fixed Mobile Convergence)に対する動きも見られ、HSDPAの高速モバイル通信が提供される頃からNGNへのモバイルの統合が始まると思われます。
しかし、収益や利益が急成長することはないでしょう。固定通信事業者はブロードバンド接続のコモディティ化に悩ませられ続け、単なる最高速化だけでは収益の拡大は望めず、それを活かす付加サービスの提供を求められるでしょう。一方、無線通信事業者は収益を上げられるモバイルデータサービスの立ち上げに苦闘し続けるでしょう。高額の料金を払ってまで、最高速度での接続を実際に利用することを重要視している顧客は、ごく少数なのですから。

支持されるコミュニケーション・ツールが現れる
2010年には、図1に図示したように、コミュニケーション・ツールの多様化が進むでしょう。選択が今日と劇的に変化するわけではありませんが、通信オプションの利用度合いは変わってくるでしょう。消費者は、自分のライフスタイルや環境の変化に合わせて、お気に入りのツールとして、一番使いやすく、一番安価で、一番個人に適切なものを選択するでしょう。
また、現在は接続されることなくスタンドアローンで使用されている機器の多くが、2010年では接続されるか通信可能な状態で利用されていると思われます。色々な機能の組み合わせや連携によって、よりリッチなコミュニケーション環境が実現されると思われます。デジタルカメラには写メールやE-メールの機能が組み込みこまれ、ゲーム機にはインスタントメッセージングが組み込みまれ、ラップトップには携帯電話アクセス方式が組み込みこまれ、車にさえもE-メールの送受信機能が組み込まれるといった状態が、2010年には実現しているでしょう。

図1:2005年〜2010年の、通信オプションの選択肢一覧
2005年〜2010年の、通信オプションの選択肢一覧
The proliferation of communications options, 2005-2010
Source:Deloitte Touche Tohmatsu, 2006


テレビ電話時代の到来?
2010年には、固定ブロードバンドの広汎な普及、コストの低下、サービス品質の改善、ラップトップPCやモニターへのカメラ組み込みも一般化していますが、テレビ電話の活用はそれほど増えていないかもしれません。映像コミュニケーションは、ボディランゲージや表情、癖といった非言語型コミュニケーションであり、電話よりもより多くの情報を伝えることによって臨場感をもったコミュニケーションが可能となります。しかし、一方で、それ故に伝えたくない情報も伝わってしまうということをユーザーが意識して利用しなければならないという側面があることを忘れてはなりません。90年代にマルチメディアという言葉がブームになりました。その時にもテレビ電話という製品がいくつか開発されましたが、うまく普及しませんでした。映像が小さく、画質やコマ落としのような動きなど品質面での課題もあったものの、実生活の場面での使用を電話の発展版として利用しようとすると、電話では意識しなくてよかったことにまで意識しなければならない状況があり、必ずしも便利という認識は得られなかった教訓があります。「顔は見られたくない/見せたくない(お化粧していないとか、目線を合わせたくない等)」、「映像の中の背景に家の中の様子が写ってしまう(散らかっている、見られたくない等)」といった生活上よく生じる場面での利用は難しいかもしれません。ユーザーが、電話とテレビ電話の利害得失を理解して、場面に応じて使い分けていくのかもしれません。

無線LANは個人レベルでは盛況・公共レベルでは苦闘
無線ブロードバンドは、ローカル無線網としてよりも固定ブロードバンドの延長として大きな成功を収めるでしょう。料金の低下、セキュリティの改善、設置の簡便化、信頼性が徐々に改善されることによって、家庭や職場でのWiFi接続への加入は進むでしょう。またWiFi接続の可能な機器の種類が、ラップトップからゲーム機、携帯電話、PDAにまで広がることで、個人レベルでも企業ベースでもWiFiは展開していくと思われます。しかし、WiFiテクノロジーは通信距離が数百メートルという技術的な制約から、地域をくまなくカバーするようなネットワークではなく、建物内やホットスポットでの使用に留まるでしょう。

地方のニッチ市場を見いだすWiMAX
無線ブロードバンドを広範囲(数kmまで)にわたるエリアで提供する無線技術、WiMAXは、地位を確立した固定通信およびモバイルブロードバンド・ネットワークと競争するには役不足でしょう。しかし、固定通信やモバイルネットワークでカバーすると採算が合わない地域などでのコスト効率のよいブロードバンド構築手段として利用されるでしょう。また、WiMAXを、大都市のWiFiネットワークや他のマネージド・データネットワークのバックホール回線として二次的な利用をすることも考えられます。

マシン同士の話し合い
接続手段を備えた機器の種類が着実に拡大していくことで、M2M(machine-to-machine)のトラフィック増が期待されます。業界にもたらす収益は2010年には2000億ドル以上になると見られています(現在のところでは500億ドル未満です)。2010年には、数千万台もの自動車に携帯電話による接続手段が組み込まれ、ITS(Intelligent Transport Systems)分野において開発が進められているような自動車の遠隔メンテナンスや自動車のトラッキングといったアプリケーションが可能となるでしょう。
さらに、世界のテレビ受信機の5%は直接にせよ間接的にせよブロードバンドネットワークに接続されて、遠隔でのプログラミングやメンテナンス、さらには個人向けに特化した広告の挿入までできるようになっているかもしれません。固定及びモバイルのブロードバンドが普及し、One-to-Oneのコミュニケーション環境が整備されてきたことを背景に、顧客へのリーチを確実にするマーケティングの重要性が認識され、広告を介した双方向コミュニケーションにより、その広告に対する個人の関心が高い状況での引き込みを仕掛けるような仕組みも登場するかもせれません。
RFID(Radio-frequency identification tag)は、実用に供するレベルまで価格が下がり、サプライチェーンにおいて本格的に利用されると思われます。それによって、在庫数の問い合わせ、注文や配達の状態確認、環境状態の記録、工場から消費者の手元に届くまでの個々の品々の追跡などを行うシステムが自動化されるのです。

料金の基準は距離から利便性へ
歴史的に見て、通信コストは時間×距離という単純な公式に基づいて課金されてきました。しかし、携帯電話とVoIPの登場によって、通話料金の基準が変わりつつあります。どこからでも電話をかけられてすぐに相手が出られるものほど、料金が高くなるのです。つまり、1分当たりの料金が一番高くつくのは、携帯電話による通話ということになります。逆にいえば、固定通信による遠距離通話の1分当たりの料金はそれよりかなり安くなります。もっとも不便な通話方法─VoIPでのPCとPCの通話が一番安いものになるでしょう。

図2:通話料金の革命
通話料金の革命
The evolution of charging for calls
Source:Deloitte Touche Tohmatsu, 2006
以上
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