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情報・メディア・通信 (TMT:Technology, Media & Telecommunications)
トピックス 2006.11.22
Thought Leadership デジタルコンテンツ時代のリスクとマネジメント体制
Deloitte & Touche LLP、Deloitte Consulting LLP 共著/抄訳:知的財産グループ 永田 伸之
このトピックスはDeloitte & Touche LLPとDeloitte Consulting LLPの情報・メディア・通信(TMT:Technology, Media and Telecommunications)グループが編集した「誰があなたの知的財産を守るのか(Who's minding your IP?)」を抄訳したものである。

近年、コンテンツ流通チャネルが多様化することにより、新しい消費者ニーズが開拓され、ビジネスモデルの変化が起こっている。新しいビジネスチャンスを獲得するためには、環境の変化に応じた素早い対応が求められる状況となっている。また、既存のビジネスモデルを変化させることでリスクが高まり、コストが増加することが散見される。
多くの企業における知的財産マネジメントの現状は、旧来より存在するメディアを想定した縦割り型による事業部別マネジメントとなっており、全社的な視点が欠落している。そのため、事業部間の知的財産マネジメントポリシーが一貫しておらず、環境変化への対応が遅かったり、侵害への対応が不十分であったり、事業部における局所的な収益拡大のみを企図したマネジメントとなり、全社的な収益の拡大には結びつかない可能性がある。
企業全体の収益を最大化するためには、現在の環境変化に対応した全社的な知的財産マネジメント体制を構築、実行する必要があると認識されたい。

既存のマネジメント体制に潜むリスク
旧来の業界慣習を常として捉えると思わぬ落とし穴が待ち構えている。ビジネスモデルが激しく変化する中では、環境変化に柔軟に対応し、収益を生み出す知的財産マネジメントを積極的かつ先進的に構築していかなければならない。
新しいビジネスモデルにおいて収益を最大化するためには、コンテンツのマーケティング対象を既存の市場セグメント、チャネル、フォーマットにとらわれずに開拓する能力が求められる。
このような環境変化に対応できない企業においては、次のような状況や潜在リスクが想定される。

1.収益機会を逸してしまう
■権利の有効期間を把握していない
どの権利が失効しているか把握しておらず、権利の失効前に販売する「最後の」機会を失うことになる。

■どのコンテンツが収益化できるか把握していない
コンテンツが収益化できる可能性について把握、評価できない場合、販売機会を失うことになる。

■コンテンツごとの収益性が把握できていない
コンテンツごとの損益が把握できなければ、収益を達成するためのコスト管理ができず、結果的に利益率が低下する可能性がある。

2.新しいビジネスチャンスを逃してしまう
■新しいメディアに対応した管理体制が未構築である
コンテンツのライセンスアウト、配信、管理が複数のプラットフォーム(例えば携帯電話、インターネット、携帯音楽プレーヤー)に対応した管理体制がない場合、貴重な販売機会を失うことになる。

■知的財産に関するデータ管理体制が不十分である
旧来の販売チャネルに比べ、コンテンツの取引が多様化し、管理すべきデータも増加しているため、将来的に管理ができなくなる可能性がある。

■柔軟なマネジメント体制が構築できていない
従来の縦割り構造の組織では、急速に変化する市場ニーズやアライアンス先への対応が遅くなる可能性がある。

3.コストが増加してしまう
■知的財産マネジメントコストの把握が不十分
ビジネスモデルが多様化すると共に、契約は複雑になり、マネジメントコストは増大する。一方、現在のシステムから全社的な経営判断に必要な知的財産の収益と費用の情報を得られず、コストが把握できないため、コストが増大する可能性がある。

4.訴訟リスクが高まってしまう
■自社の知的財産を把握していない
自社の知的財産および権利の種類を把握していないために権利侵害が起こるかどうかの判断ができず、訴訟が提起される潜在的な可能性がある。


知的財産マネジメントの成功事例
新しい環境変化に対応した知的財産マネジメント体制の構築に成功した企業には以下のような事例が見受けられる。

1.できることから始めている
包括的かつ全社的な知的財産マネジメントを構築することは複雑でリスクを伴うが、構築をしないことのほうがより大きなリスクを生み出す。知的財産マネジメントに関連する活動を優先し、できるところから手をつけ、継続的に改善を続けることで全社的な知的財産マネジメントを構築している。

2.責任権限を明確化にしている
全社的な知的財産マネジメント構築への必要条件として、組織における責任権限を明確化することが挙げられる。経営企画、法務部長、事業部の役職者等を知的財産マネジメントの責任者とし、マネジメント体制構築のために必要な資源や権限を与えている。

3.全社的な管理体制を構築している
全社的な管理のための組織を構築し、知的財産マネジメント体制の構築や現状の知的財産に関連する活動を実施している。組織としては、知的財産委員会等の設置が考えられるが、最終的には、これらの組織は「知的財産最高責任者(Chief Intellectual Property Officer:CIPO)」などに集約されている。このような管理体制は部門横断的であり、事業部の損益を超えて、企業価値を創造する観点での管理が求められる。旧体制を維持したい改革反対派の抵抗が想定されるため、経営トップからの指示がなければ成功は難しい。

4.新しいビジネスモデルを開拓している
現在、メディアの融合や株主の要請、急速に変化する消費者のニーズによって、産業構造が著しく変化している。激しい変化に対応するために新しいビジネスモデルを導入し、より柔軟に対応することが求められる。デジタル配信等、新しい商品や市場にあわせたより広範囲なコンテンツの収益化方法の検討を行っている。

5.大局的に考えている
組織の壁を越えて、すべてのコンテンツのライフサイクルを考慮しながら、全社的な知的財産マネジメントを構築している。また、全社的に考え、複数の市場や場所、時間にまたがるコンテンツの権利や利用の可能性に対しての視点を確立している。また、収益を最大化することを目標として、知的財産ポートフォリオを確立し、価値を生み出していない製品を洗い出し、革新的な製品のパッケージ化を行い、販売機会を検討している。大局的な視点で市場機会を捉え、現場で機会を実現している。

6.「気づき」を与えている
知的財産マネジメントを進めることに対して、組織から大きな抵抗を受ける可能性がある。知的財産マネジメントに対する取り組みの重要性に関して、キーパーソンに「気づき」を与えるため、企業全体や個々の事業部門におけるメリットを説いたり、対応しなければならないリスクについて強調している。

7.リスクを認識し、回避している
権利の買収や販売、使用の状況について、正確に追跡することに重点を置いている。その第一歩として、リスクの高い領域を特定し、優先順位を付け、対処している。考慮すべきリスクの例としては、以下のようなものがあげられる。
・知的財産権の侵害による訴訟コストの発生
・収益管理体制の不備による収益管理の失敗
・SOX法への対応不足によるコンプライアンスの欠如
・第三者からの支払い管理不足による収益の取りこぼし
・新しいビジネスチャンスへの対応不足による機会損失
・知的財産管理に係るコスト管理不足
・非効率、対応不足なITシステム


知的財産マネジメント体制構築のために
知的資産マネジメントの構築は現状の診断に始まり、全社体制の組成を行った後、個別の課題解決のための短期的なプロジェクトと全社的な改革に向けた長期的なプロジェクトを組み合わせて実行する。

1.現状の知的財産マネジメント診断
知的財産マネジメント体制の構築はまず、現状の知的財産マネジメントを診断することから始まる。知的財産がどこで創出され、管理されているかを特定することに始まり、組織的な課題の明確化、知的財産にまつわる機会と脅威の分析など、知的財産に関連する活動や課題の整理を行う。
知的財産マネジメント診断により、全社的な知的財産マネジメント構築のための計画が立案できることに加え、早急に解決すべき課題を発見することができる。

2.組織全体を巻き込んだプロジェクト体制の組成
成功のために最も重要な要素は、知的財産マネジメントの責任権限を明確化し、最高経営層からのサポートを得ることである。加えて、他部門の役職者を巻き込むことにより、各部門の知的財産マネジメントとの関係が明確化され、全社的なマネジメントが実現される。

3.知的財産マネジメント構築プロジェクトの実施
知的財産マネジメント診断と各部門の関係が明確になった時点で、知的財産マネジメント体制の構築プロジェクトを実行する段階に入る。プロジェクトは全体を数段階のフェーズに分け、各フェーズにおいて、重要な鍵となる要素を設定し解決する。それらの要素の例としては、必要な業務の特定や全社と事業部の責任権限の明確化、また、現状でのリスクへの対応等が挙げられる。

4.知的財産マネジメントと全社経営計画
知的財産マネジメント構築プロジェクトは、すべての業務に影響を与える。現状のプロセスを把握し、改善の機会を特定すると共に、新しいビジネスモデルや企業のプロセスを構想し、経営計画を立案し、その組織を企業横断的モデルに移行するなど、横断的な活動も含まれる。

5.ガバナンス体制の構築と成功事例の水平展開
知的財産マネジメント体制の構築における重要な成果は、包括的なガバナンス体制が確立されることである。企業の知的財産プロセスは複雑で、かつ、複数の事業領域の分野において新しいプロセスやシステムが実施されるため、現在、実現しているリーダーシップや課題解決の成功事例を発見することが実施・運用段階における成功の鍵となる。
以上
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