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情報・メディア・通信 (TMT:Technology, Media & Telecommunications)
トピックス 2006.12.27
Thought Leadership コンバージェンスを語る 〜TMT企業、総務省へのインタビューを経て〜
工学博士 高橋 淳一
はじめに
近年、デジタル化技術とIP技術の浸透により情報処理システムや通信システムが容易に相互接続できる技術環境になった。また、ビジネスや日常生活でのICT(Information & Communication Technology)の活用が深まるにつれて、様々なデータ/コンテンツが相互流通・相互利用できる環境が急速に整備されつつある。このようなシステムやデータ・コンテンツ流通のシームレス化は、これまで別々のものとして存在していたものが互いに接続され/組み合わされ/統合されることによって1つのものになるというイメージから、「コンバージェンス」(融合)と呼ばれている。

この潮流によって、ビジネスや業界/業態の境界が曖昧になり、ビジネスモデルが変化する、あるいは変化することを余儀なくされる状況にあるため、企業はこのような不確実な市場環境に迅速に対応しながらも事業を拡大していかなければならないという厳しい歩みを迫られている。

この「コンバージェンスを語る」は、このような厳しい市場環境において、各企業が、それぞれの事業の立場から「コンバージェンス」をどのように捉え、それに対してどのような成長イメージを描き、また、それに向けてどのような取り組みを行っているかについてのインタビュー調査である。そして、このインタビューから得られた知見をもとに、「コンバージェンス」という潮流を価値を産み出すものと捉え、ビジネスに活かしていくための着眼点を見出すとともに、それを具現化するための考え方について考察した。なお、文中意見に係る部分は、このインタビューで得られた知識など限られた範囲/条件で検討したものである。また、本トピックスに述べた意見の部分は、TMT分野のマーケティングや戦略の専門家集団である筆者が所属するTMTグループの見解である。

調査の概要
■テーマ:「コンバージェンス」を語る
■目的:「コンバージェンス」の本質とそれを踏まえたビジネス戦略の方向性を探る
■実施方法:
日本のTMT業界における代表的な企業のCXO/事業部長クラスの方々及び総務省の職員の方々に、「コンバージェンス」の捉え方と戦略/取り組みに関してインタビューを実施
インタビュー対象:民間企業9社、総務省
インタビュー時間:1時間〜1.5時間(平均)
■主たる質問事項:
「コンバージェンス」という変化の潮流は、御社のビジネスにとってどんな利害得失(利点、欠点、リスク)をもたらすと考えておられますか?その理由は?
「コンバージェンス」に対する認識のもとで、御社が、現在または将来、戦略的に実行しているまたは実行したいと思われていることはどのようなことでしょうか?また、それは御社の事業においてどのような位置付けですか(例えば、新たな収益源、コスト削減、多角化/多様化、未来への布石など)?
御社の戦略の実行によって、御社、御社の顧客(コンシューマまたは法人顧客)はどのようなメリットを受けると考えておられますか?
御社の戦略を実行するに当たって、考慮すべき重要因子をどのように考えておられますか(例えば、需要喚起策、提携、実行のタイミング、業界の商慣習や競争力学、収益性/利益性、技術進展の速さなど)?
「コンバージェンス」の次に来るものはどのようなものであると思われますか?

インタビューから学んだこと
インタビューにご協力いただいた各企業の市場におけるビジネスの立場は様々であるが、「コンバージェンス」の捉え方やその取り組み方に対する考え方については、2つの共通点があることがわかった。

1)「コンバージェンス」をチャンスと捉える
1つは、どの企業も「コンバージェンス」を、新しいビジネスを創出する、あるいは現在のビジネスを更に拡大する好機と捉えている点である。「コンバージェンス」という言葉は、「2つ以上のものが融けあって1つになること」という意味を持つことから、“複数存在したものが1つになってこれまでのものが無くなってしまう”、“或るものが、別の或るものに置き換えられる”、“別個に存在していたビジネスの境界が曖昧になり、既存ビジネスが呑み込まれてしまう”などの危機感から守りを意識するようなネガティブなイメージとして捉えられることも多い。しかし、インタビューにおいては、「コンバージェンス」は“新しいビジネス市場/チャネルの出現”であり、“製品やサービスの新たな付加価値を創造できる機会の出現”といった、攻めのビジネス機会として捉えられている。

例えば、放送事業者の場合には、ブロードバンドネットワークでの放送コンテンツの流通が可能になり、これまでのような放送コンテンツ及びその流通についての独占性が弱められるという見方がある。しかし、コンテンツを流通させる新たなチャネルが増えることで、コンテンツ制作力の強みを更に発揮できる機会ができたというポジティブな見方で取り組みが進められつつある。

企業や経済の情報・データの調査分析に強みを持つ、ビジネス分野の出版事業者の場合には、従来、情報誌という紙媒体での提供が主体だったが、これらの情報やデータに対するオンライン化ニーズの顕在化によって、通信によるリアルタイム提供というビジネスに発展してきている。これは、通信というチャネル向けにビジネスの強みである情報・データをその表現・提供形態を変えて提供する、言い換えれば、情報・データというコンテンツに対する制作力を強みとしてビジネスを発展させてきたと解釈でき、放送事業者の場合と同じような見方ができる。

また、通信サービス事業者や通信機器事業者の場合には、固定や移動体といった物理的な手段の多様化、音声・データ(文字、映像、画像など)といった媒体の多様化を背景に、NGN(Next Generation Network)構想でも唱えられているようにネットワーク上の主戦場がコンテンツ・アプリケーションにシフトするという状況にある。これまでの強みであった音声やデータのベアの通信サービスはコモディティ化し、価格競争のみならず定額サービスの登場によって従量方式での事業拡大は困難な状況になってきている。

しかし、多種多様なコンテンツ・アプリケーションをユーザーが“4つの安”(安価、安全、安心、安楽)で使えるように、また、コンテンツ・アプリケーション事業者が効率的にそれらを開発・提供できるようにするために、プラットフォームのユーテリティ機能などを充実させ、これまでのプラットフォーム構築・運用の強みと組み合わせて付加価値を高めようというポジティブな見方で取り組みが進められている。

一方、プラットフォームのレイヤー機能のアンバンドル化を背景に、通信サービス業界に、コンピュータ業界で起きたオープン化の波による発展と同様の変革を起こし、通信サービス市場/業界の更なる成長を促進するような取り組みも進められている。代表的な例としては、通信機能をモジュール化し、通信機能を色々な機器や端末に容易に組み込み、ネットワーキングによって新しいアプリケーションを提供しようとする取り組みがある。通信サービス事業者からネットワークを借りて新たな付加価値サービスを提供するMVNO(Mobile Virtual Network Operator)も、プラットフォームのレイヤー機能のオープン化の見方から出現したビジネスモデルであり、この例に当たる。

「オープン化」や「アンバンドル化」というと、「コンバージェンス」の意味合いとは対抗するように見える。しかし、これらの変革があるからこそ、端末、通信サービス、コンテンツ・アプリケーションなど、それぞれの領域での競争が起こる。そして、それらの効果的な組み合わせによって、ユーザーにとって魅力的な多種多様のコンテンツ・アプリケーションが提供される市場に再構成されるという「コンバージェンス」のシナリオが考えられる。

2)市場との対話
もう1つの共通点は、どのようなものを使って、どこに「コンバージェンス」を作れば、ユーザーにとって魅力的なものになるかを、市場との対話を通して、試行錯誤による経験を積みながら進めているという点である。

例えば、移動体通信事業者の場合には、携帯電話端末が得た個人の携帯必需品としての地位を個人の生活動線に見立てて、生活動線上の行動に携帯電話端末で実現できる機能をマッチングさせて組み込むところに「コンバージェンス」を作り出している。一般には、「リアルとバーチャルの融合」と呼ばれている。携帯電話端末による電子マネー/クレジット機能サービスは、生活動線で頻繁に現れる決済という行動に対して、従来の現金などによる支払い行動に比べて利便性や何らかの経済的利得を与えるものとしてユーザーに受け入れられつつある。このサービスは、生活動線上の支払いというシーンにおいて、電子決済という手段と携帯電話端末においてその機能を実現するための技術とが「コンバージェンス」して作られたものと見ることができる。

また、検索したレストランのホームページからクーポンを携帯電話端末にダウンロードし、それをそのレストランに持って行って提示することにより何らかの経済的な利得を得るといったサービスは、検索→クーポン取得→持参→提示という流れを、携帯電話端末での電子的な処理と個人の移動との「コンバージェンス」によって手間のかからない行動の流れにしたものと見なすことができる。

これらのサービスは、ユーザーにとって、生活シーンにおける新たな手段の登場になるため、慣れ親しんでいる既存の手段からそれらのサービスに移行させるために、ユーザーがそのメリットを理解できるように導くためのプロモーション活動やユーザーが満足する機能・使い勝手・経済性のブラッシュアップは必要不可欠の活動として行われている。“技術でできること”が必ずしも“価値があること”ではないため、どのようにすれば新しい技術がユーザーに受け入れられるものになるかを常に意識した取り組みがなされている。

一方、「オープン化」を図る取り組みは、生活シーンに存在する様々なものをネットワーキングに組み入れるというところに「コンバージェンス」を作り、魅力的な製品・サービスを作り出そうとしている。生活シーンに登場する機器類に対するユーザーの使用習慣に新たな利便性を加える、あるいは更なる利便性・効率性などによって使用習慣を変えるような製品・サービスの開発を試行的に進めながら、ビジネスを広げつつある。これは、携帯電話端末だけでは覆いきれない生活動線上の課題に対して、生活シーンに登場する機器類を巻き込んで新たな解決策という価値を提供するという「コンバージェンス」と見なすことができる。

また、通信サービス事業者や通信機器事業者の場合は、多種多様なメディアや通信手段を効果的に組み合わせることができるプラットフォーム環境を作り出すことによって、この技術的環境を使って開発・提供される様々なコンテンツ・アプリケーションを生活シーンにおける五感を使った自然なコミュニケーションや自然な行動に融けこませるような「コンバージェンス」を作り出そうとしていると考えられる。近年、固定通信と移動体通信の融合として注目されているFMC(Fixed Mobile Convergence)は、このようなプラットフォーム環境を作るための「コンバージェンス」の1つと見なすことができるであろう。

FMCの応用例として、BT(British Telecom)などは“One Phone”と呼ばれるサービスを開発している。このサービスは、固定通信と移動体通信の端末を共通化し、これまで意識的に行ってきた、「家庭での電話は固定通信」、「屋外では移動体通信」といった使い分けをプラットフォームの機能として取り込み、ユーザーは通話シーンを意識せずに同一の電話端末を利用できるというものである。これは、電話というアプリケーションを、空間的制約を意識せずに自然に利用できるようにする(通話という行動をより自然にする)サービスと言える。

コンテンツ配信チャネルの拡大というチャンスを得た放送事業者や出版事業者の場合には、チャネル/端末とコンテンツのマッチングにおいて「コンバージェンス」を作り出そうとしている。チャネル/端末と言っても、それらの機能というよりはそのチャネル/端末の利用シーン、すなわち、ユーザーの心理的・物理的環境という意味合いである。どのようなコンテンツが各利用シーン/チャネル/端末に適しているか、コンテンツの内容ばかりでなくその表現方法に至るまで、ユーザーの受容性を高めるための試行や改良などが続けられている。

放送事業者の場合には、マルチコンタクトポイント戦略の取り組みとして、衛星・地上波などのTVばかりでなく、電車・車・看板など屋外設備への放送コンテンツの送信というビジネスの開発・普及において、適材適所での放送コンテンツの内容及び表現のあり方が検討されている。出版事業者の場合も同様に、企業や経済の情報・データ提供サービスにおいては、統計やマクロ情報にフォーカスした情報誌に対してリアルタイム性・時間的変化の詳細さなどにフォーカスしたオンラインサービスといった、基になる情報・データベースは同じでも、チャネル毎、すなわち利用シーン/ニーズに合わせた配信によりビジネスを拡大させている。

最近注目を浴びているワンセグ・サービスは、上記の移動体通信事業者及び放送事業者の「コンバージェンス」の作り方を組み合わせたものである。放送コンテンツの内容・表現と生活動線という特徴をもつ携帯電話端末とのマッチングと連携の視点から、サービス開発・試行が開始されたところである。

価値を産む「コンバージェンス」に向けて
情報通信ネットワークの変遷の中で考えると、現在の状況は、複数のネットワークの共存/相互補完の時代とみなすことができる。従来、唯一のコミュニケーション・プラットフォームとして機能していた電話網・専用線網に加え、コンピュータ間の通信ネットワークとして発展してきたインターネット網、そして、今やコミュニケーション・プラットフォームの中心的存在になった移動体通信網、また、ホットスポット・ワイヤレスLANや遠距離・高速の期待が高まるWiMaxなどといった固定無線網が、その機能・経済性の観点から使い分けられて共存している。そして、デジタル化技術とIP技術によって、これらがシームレスに繋がり1つのプラットフォームになっていくことが、情報通信ネットワークの視点での「コンバージェンス」である。つまり、「単独」→「多様化」→「融合/統合」の変遷の中で、現在は、「多様化」→「融合/統合」の状態にあるということである。この変遷はまさに自然の流れと考えることができるが、「多様化」がどのような価値のもとで「融合/統合」していくかを見極めることが、このような潮流の中でのビジネスの成否に大きな影響を与えると思われる。上述したインタビュー調査の知見によれば、各企業は、「多様化」あるいは「多様化」→「融合/統合」の状況において、価値を持ったビジネスを産み出そうと積極的に取り組み、ユーザーにとってどのようなものが価値として魅力的なのかを市場との対話の中から探りあてようとしている。

各事業者の例に沿って、その価値の事例を先に述べたが、価値を考えるための本質的な着眼点を見出しておくことは、現在のような複雑かつ変化の激しい市場におけるビジネス創造においては非常に重要である。そこで、顧客/ユーザーの視点から、価値を考えるための着眼点について考えてみる。図1は、先に述べた「単独」→「多様化」→「融合/統合」の変遷を、顧客の生活シーンという空間への通信手段やサービスのマッピングとして表したものである。

コンバージェンスへのシナリオ

「単独」→「多様化」の流れにおいては、生活シーンでの利用は多様化(多手段/機能)によって着実に拡大している。このような環境の中では、顧客は、複数ある通信手段やサービスの中から、顧客自身の生活シーンの各場面に適合するものはどれかを、顧客自身が持つ利便性・経済性・安全性などに対する価値観に従って意識的に選択して利用している。従って、提供しようとする通信手段やサービスが顧客に受け入れられるためには、この選択基準が顧客の価値観としてどのように形成されていくのかを熟知することが重要になる。まして、技術の発展スピードに合わせて色々な通信手段やサービスが日々登場する今日では、顧客にとってその基準を作っていくことが難しくなっていると考えられるので、この形成過程を知ることは、提供しようとする通信手段やサービスの価値を顧客に深く浸透させるためのヒントを与えてくれると考えられる。

この形成過程は次のように説明できる。顧客は、複数の通信手段やサービスで構成される“環境”において、それぞれの相対的な位置付けや価値を意味する“コンテクスト”を整理・理解する過程を経て、顧客自身の価値観を構築していくものと考えられる。このような「環境のコンテクストに対する認識」は、具体的な生活シーンでの実際の利用という顧客の経験を通してはじめて定着していく。頭で理解できることと実際の利用によってわかることにはギャップがあるので、経験による評価が真の価値観を形成することになるわけである。このように考えると、上述した2つ目の共通点として示した、市場との対話による試行錯誤的な開発・普及という取り組みは、顧客の「環境のコンテクストの認識」を探って製品・サービスにフィードバックする、あるいは価値あることに気づかせ顧客の認識を変えることに強い影響を与える活動ということになるであろう。

一方、「多様化」→「融合/統合」の流れにおいては、更に大きな「環境のコンテクストの認識」の変化を顧客に促していかなければならないと予測される。「多様化」においては、提供される通信手段やサービスの殆どが生活シーンにおける1つの行動に対応するものであり、そのシーンにおいてどれを利用するかという選択のコントロールは、顧客自身の「環境のコンテクストに対する認識」に基づいている。しかし、「融合/統合」においては、「多様化」での各通信手段やサービスが連携/統合して複合的な多機能/手段の形になって価値を産むようになるため、顧客の選択のコントロールに大きな変化が生じる。なぜなら、これまで顧客自身に主導権があった選択のコントロールの一部、すなわち利用の諸条件などの一部が提供される通信手段やサービスに取り込まれ、新たな手段やサービスとして提供されるようになるからである。すなわち、連携/統合されることにより、いわゆる“気の利いた”通信手段やサービスになるからである。

従って、顧客にとっては、「環境のコンテクストに対する認識」を大きく再構成しなければならないし、生活シーンの各場面においてどの複合的な通信手段やサービスを利用するかを再定義する必要が出てくる。顧客にとっては、これまでの経験値を変えながら、新たな価値観を構成することに相当するため、この価値観のシフトを促すには、これまで以上に強い動機付けと価値認識の堅実さが求められると考えられる。このような理由から、「融合/統合」では、提供する通信手段やサービスの価値を謳うばかりでなく、顧客に気づかせ、経験させて、「環境のコンテクストに対する認識」を変化させ、価値観の変化を促すといった着実なステップが重要になると考えられる。顧客の消費心理モデルとして代表的なAIDASモデル(注)と顧客経験、及び価値観のベースとなる「環境のコンテクストに対する認識」の間の関係を十分に考慮して、上記した価値観の変化を促すサイクルに顧客を引き込む具体的なプロモーション活動を考え、実行することが、ビジネスを軌道に載せるために必要となるであろう(図2参照)。

コンバージェンスにおける価値観の変化と形成過程との関係

また、これまでの議論では、基本的な考え方を導くため、「多様化」の帰結として「融合/統合」を捉えた。しかし、実世界では、「融合/統合」によって「多様化」に属する新たな手段やサービスが産まれ、それらと他のものとの更なる「融合/統合」が繰り返されるのが現実的である。このように考えると、この再帰的な「コンバージェンス」によって提供される通信手段やサービスは、益々、高機能化・高性能化するので、各段階での顧客の価値観の醸成を一歩一歩着実に実行することがビジネスの成長において必要不可欠になるに違いない。

「単独」→「多様化」→「融合/統合」の変遷において、価値を産む「コンバージェンス」の重要な着眼点は、生活シーン上の経験に基づく「環境のコンテクストに対する認識」の変化の促進とそれに基づく価値観の定着であることを述べた。インタビュー調査の知見で述べた、生活動線に沿って「コンバージェンス」を作るという取り組みや、チャネル/端末とコンテンツの内容や表現をマッチングさせるという取り組みは、上記のことから、顧客に対して新しい価値観を醸成し、利用に導くための有効なアプローチと考えることができる。
価値を産む「コンバージェンス」としてビジネスを創造するために重要となる基本的な考え方を整理すると次のようになる。

生活動線の中で、時間的・空間的な効率性/経済性/安全性などに関する潜在ニーズを見出し、その利用シーンにおいて、連携/統合による課題解決策を手段やサービスとして設計すること
コンテンツ・アプリケーションは、それが提供されるチャネル/端末の利用シーンにおける顧客の心理的・物理的・行動的状況に適合するような内容や表現であること
「環境のコンテクストに対する認識」を着実に変化させ、提供する手段やサービスに対する価値認識に到達させるためのシナリオを具体化し、プロモーション活動として具現化すること
ビジネス変化の速さを考慮にいれて、「多様化」の手段やサービスの提供に当たっては、次のステップとしてどのような「コンバージェンス」とするかという成長シナリオを考えておくこと

むすび
インタビュー調査に基づき「コンバージェンス」の本質と、この潮流の中で価値を産むようなビジネスにするための着眼点を考察した。上述した着眼点に基づいてビジネスを創造するには、そのアプローチとして、市場分析、シナリオプランニングに基づくビジネス戦略、マーケティング戦略、アライアンス戦略とスキームなどが必要となる。市場分析においては、「多様化」あるいは「融合/統合」の状況を分析・理解するために、提供される手段やサービスの相対的な価値比較や各ビジネスプレイヤーのプロモーション活動の分析などを実行する必要がある。ビジネス戦略においては、競合あるいは関連プレイヤーが試行/提供する手段やサービスの状況に対して、新しく開発する手段やサービスの価値やその成長をどのように位置付けるかを検討する。ここで重要なことは、競合などが仕掛ける手段やサービスが未だ市場に定着していない状況、すなわち、市場形成が不確実な状況でのビジネス戦略をどのように検討するかということである。このようなケースにおいては、想定しうるシナリオを複数作り、それらを組み合わせるシナリオプランニングのアプローチが有効であろう(このアプローチに関しては、Deloitteの“Strategic Flexibility”という方法論がある)。

また、プロモーション活動の具現化のためのマーケティング戦略、連携/統合による手段やサービスを実現するために、Win-Win関係をもたらすビジネスパートナー選定や将来のビジネス成長や変化を想定した効果的なアライアンス戦略・スキームの策定も、ビジネスの具体化に必要である。アライアンスの検討は、プロモーション活動の具現化においても重要となる。
このようなアプローチによって、顧客ニーズの視点に立ち、生活動線における潜在ニーズの認識と顧客が期待する価値及びその変化を、「コンバージェンス」によってどのように解決していくかを訴求していくことが、価値を産む「コンバージェンス」を導くことになるだろう。

(注)AIDASモデル:消費者が商品を購買するまでの反応を5段階で示したもの。
AIDASの各アルファベットは、以下の単語の頭文字を表し、各単語の意味は以下の通り。
Attention(注意):消費者の注意を引き、商品の存在に気付かせること
Interest(興味):その商品に興味や関心を持たせること
Desire(欲求):「欲しい」という感情をもたせること
Action(行動):購入するという行動を起こさせること
Satisfaction(満足):商品を購入した後に「本当にこの商品を購入してよかった」という満足感をもたせること
以上
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