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情報・メディア・通信 (TMT:Technology, Media & Telecommunications)
トピックス 2007.4.11
Telecommunications Predictions 2007, TMT Trends テレコム
デロイトリサーチ編著/抄訳・訳注 工学博士 高橋 淳一
はじめに
このトピックスは、デロイト トウシュ トーマツ(以下、DTT)の情報・メディア・通信(TMT:Technology, Media and Telecommunications)グループが編集した「Telecommunications Prediction, TMT Trends 2007」を抄訳し、訳注を付したものである。

サイバースペースの限界が見えた
2007年は、世界の通信セクターにとって興味深い年になるはずだ。世界の一部でインターネット利用が能力の限度に近づくかもしれないからだ。原因は、主に映像のトラフィック増大による需要の急拡大と、新規の実働能力に対する投資不足という二つの動向である。ボトルネックは、大陸間でトラフィックをやりとりするテラビット対応のインターネット・バックボーンに最も顕著に現れそうだ。全欧州のトラフィックの約20%を占める世界最大のインターネット・ハブ、「アムステルダム・インターネット相互接続点(AMS-IX)」経由のトラフィック量は、2007年10月までに日次処理量が2ペタバイトに達すると予想されている。これは、標準的な印刷文書1兆ページに相当する量である(図1参照)。
消費者にブロードバンド接続サービスを提供しているインターネットサービス・プロバイダー(ISP)や通信事業者のネットワークにも、同じような能力の制約が生じよう。影響はさまざまなアプリケーションのサービスの質の低下という形で最も顕著に現れるとみられる。そして、映像の利用が予想外に増えただけでもアクセス速度が落ち、消費者はその不便さから大きな不満を抱くとみられる。

図1:世界のインターネットと回線容量の伸び(2003〜2006年)
世界のインターネットと回線容量の伸び(2003〜2006年)
出典:Global Internet Geography, TeleGeography Research, September 2006


議論続く「ネットの中立性」
世界的に議論を呼んでいる「ネットの中立性」の問題は、2007年も続くだろう。インターネットの能力に陰りがみえれば、ネットの中立性をめぐる対立はいっそう激化しそうだ。中立性の支持勢力は、トラフィックの優先順位付けはインターネットの持つ基本的自由を損なうと主張している。
一方、中立性の反対勢力は、大型の映像コンテンツなど、回線容量が必要なアプリケーションによって自分たちのビジネスモデルが蝕まれていると主張する。2007年中に法制化による決着をするとは考えにくいため、両陣営とも大局的な見地から、合意に向けて別の方法を模索し、党利党略や感情論を避けることが必要だろう。
しかし、通信会社やISPは、ブロードバンド小売市場の競争激化で利益率を大幅に低下させており、新規ネットワークへの投資もままならない。このような状況が続けば、ネットの中立性論争どころか、インターネット全体の長期的な存続性を危ぶむ声さえ高まるだろう。

パソコンがボトルネック
2002年1月、米国の成人インターネット人口が史上初めて60%の大台に乗ったが、70%を超えたのはそれから4年後だった。2006年はインターネット採用の比率がほとんど変化しておらず、このままのペースでは80%台乗せには何年もかかりそうだ。
インターネットをすべての人が使えるようにするため、通信企業は一連のブロードバンド機器の需要と供給を促すべきである。インターネット採用の伸びが減速している主な原因の一つは、ネット・アクセスのための機器がパソコンに限られるためだと考えられる。パソコンがインターネットの採用と利用のボトルネックになっているのは間違いない。
その点、一連のブロードバンド機器は各自がプラグを差し込んでブロードバンド・ネットワークに接続できるため、2007年はちょうどタイミングよくボトルネックを取り除いてくれるかもしれない。ブロードバンドの機器はどれもインターネットが必要だが、パソコンは要らない。政府や業界はインターネットを電気と同じようなありふれた存在にしたいとしているが、ブロードバンド接続がパソコンに限定されていて、2007年以降も目標を達成することはできないだろう。

モバイル・テレビのカギはデータの反転
携帯電話業界が最も熱い期待を寄せているのがモバイル・テレビだ。しかし、その先行きに対する業界の楽観姿勢には首を傾げざるをえない。モバイル・テレビは大半の市場で商業的にそれほど成功していないからだ(図2参照)。
携帯電話業界は、テレビを圧縮して電話に搭載するよりも、データの流れを反転させることに傾注したほうがよい。つまり、携帯電話から映像コンテンツを取り込んで、テレビなど画質のよい機器に流す戦略に軸足を移すべきだということだ。ユーザーが作成し、電話からウェブサイトやテレビに送信する映像コンテンツの量が増えている。事業者が自社のネットワークにこのトラフィックをわずかでも取り込めれば、データ収入は飛躍的に伸びる可能性がある。

戦場は屋内通話
携帯電話事業者の歴史的使命は、ユビキタスの屋外部分を担うことだった。彼らはいまだに受信地域の拡大が重要だと考えているが、本当の戦いの場は明らかに屋内の通話である。2007年は携帯電話通話の過半数が屋内からかけられ、固定電話のシェアを奪うとみられている。携帯電話事業者は2015年までに年間8兆分もの通話時間を処理し、音声市場全体の60%以上を占める可能性がある。携帯電話のデータ利用も屋内へと動いており、多くの点でモバイル・データは屋内のほうが扱いやすい。
携帯電話事業者はこの変化を踏まえ、事業戦略を抜本的に見直す必要がある。可能であれば無線LANのような補完的なネットワーク技術を統合し、屋内の通話とデータの質を最大限改善することが求められる。

図2:モバイル・テレビに対する消費者の関心度、2006年4月
モバイル・テレビに対する消費者の関心度、2006年4月
出典:Enders Analysis / BMRB survey, April 2006

IPテレビにはイノベーションが必要
IPテレビは2007年、世界中で多くのサービスが始まる見通しだ。音声利用の減少が見込まれることから、固定電話事業者は収益源の拡大をめざしてIPテレビ事業に乗り出している。しかし残念ながら、多くのIPテレビ・サービスは従来のテレビ放送の焼き直しにすぎないようだ。消費者に新しいもの、魅力的なものを提供しておらず、何よりも一方通行の衛星放送や地上波テレビにはない、双方向ネットワークが持つ独自性を提供できていない。このためネットワーク事業者は、2007年にIPテレビを既存サービスの二番煎じではなく、テレビの再発明品として送り出す必要がある。

キラー・アプリケーションはキロバイト
通信事業者は2007年も、大容量ファイルや高速データ転送速度を生み出すアプリケーションを重視する姿勢を崩さないだろう。しかし、業界は反対の方向に進むほうが得策かもしれない。通信事業者の最大の収入源で利益率が最も高いのは、最小のファイルと最小容量に基づくサービスである。その例は、電子メールや携帯電話の着信音から音声通話まで多岐にわたる。音声通話は、最初の商業通話が開始されて以来、何兆ドルもの売上規模を誇っている。
2007年に成功する通信事業者は、量販が見込める単純なナローバンドのアプリケーションを見つけ出し、それを普及させる事業者かもしれない。大きさはすべてで、大きいに越したことはない。しかし、通信セクターでは、最大の売上と最高の利益率は最小ファイルや最小容量のサービスから生じることが多い。

トリプルプレイは諸刃の剣
バンドル商品には浮き沈みがある。潮流はトリプルプレイへと戻りつつあり、一部では固定電話、携帯電話、インターネット、テレビの4種類のサービスをまとめた「クアドロプル・プレイ」も登場している。「トリプルプレイ」を検討している事業者は、選択肢を注意深く分析し、バンドル・サービスが顧客のみならず株主を満足させるよう配慮すべきだろう。
特に、通信商品の需要が停滞している欧州で、事業の拡大と解約率の抑制にはサービスの種類を増やすことが最良との見方が広がりそうだ。しかし、3種類、4種類のサービスを同時に提供することは得意でない分野に乗り出すことであり、つまずく企業も出てこよう。結果的にブランドの価値に傷を付けたり、実際に金銭的損失を被ったりする可能性がある。

「接続機能の溝」
2007年は、「接続機能の溝」が知られるようになるかもしれない。接続機能の溝には二つのタイプがある。一つは通常、音声サービスに使われる基本的な接続機能を持つ者と持たない者の溝である。二つ目の溝は、広範なアプリケーションをサポートするのに十分高度なブロードバンド接続機能を持つ者と持たない者の溝である。
各国政府は、二つの溝を埋める政策を打ち出すべきである。接続機能はどんな形であれ、経済発展と生産性向上への大きな原動力である。電話やサービスに対する課税制度の簡素化やパソコンの分割所有の促進という単純だが有効な改善策は通用するとみられる。長期の目標としては、通信市場の自由化が視野に入ってこよう。

かえってマイナスに働く「無料化」
最後に2007年は、情報、メディア市場と同じく、通信サービスでも無料化が進むとみられている。手始めは携帯電話とブロードバンドで、付帯条件が増えるにしても無料で提供される公算が高い。しかし、無料サービスは供与側と受け手側の双方にかなりの負担を強いる。2007年に携帯電話事業者が数百万台の携帯電話に支払う補助金は、1国当たりで数十億ポンドにのぼる可能性がある。
一方、無料ブロードバンドの消費者は、利用制限、高額な技術サポート料、追加サービスの購入義務まで、さまざまな形の負担を感じるだろう。通信事業者は2007年、「無料化」がマイナスに働く可能性を十分かつ現実的に理解しながら、製品やサービスが本当に無料化にふさわしいかどうかについて、そのマイナスの影響を徹底的かつ現実的に理解し、細かく選別すべきである。
なぜなら、無料商品・サービスの提供は、より高規格の有料商品・サービスの販売につなげるためのステップであり、より確実な売上増を見込めるようにすることが主目的である。価値と質の重視が、事業を長く継続する上での主題であることに変わりはないからである。

訳注:
我々は、この2月「コンバージェンスを語る」と題する小冊子を発行した。この小冊子では、携帯電話や今後のネットワークについて、コンバージェンスやアンバンドル(ダイバージェンス)について、さまざまな論点を掲載している。また、このテーマについて、2007年3月28日、丸の内フロンティア分科会 コンテンツビジネス交流会において、パネルディスカッションを開催した。その内容について、この場所を借りて発表したい。

本稿でも解説しているネットの中立性ついて、2006年10月31日、総務省は「ネットワークの中立性に関する懇談会」の開催を発表し、その第1回目の懇談会を同年11月15日に開催した。この懇談会には、毎回、多数の報道機関や業界関係者らが傍聴し、ネットワークの中立性への関心の高さを伺うことができる。ネットワークの中立性を検索エンジンで検索すると、日本だけでも1万件もの以上のヒットがある。今後、ネットワークの中立性は、わが国においても、コンバージェンスと並んでTMT業界での中心的な話題になるだろう。この懇談会は、「IPネットワークの懇談会」を継承する形をとっており、その懇談会の性質から独占禁止法の専門家や生活者の立場から発言するジャーナリストも参加している。総務省は、「IPネットワークの懇談会」と、この「ネットワークの中立性に関する懇談会」で、通信サービスレイヤ、プラットフォームレイヤそしてコンテンツ・アプリケーションレイヤの4階層のレイヤ型競争モデルを示した(図3)。

図3:IP時代におけるレイヤ型競争モデル
IP時代におけるレイヤ型競争モデル
出所:総務省「IP化の進展に対応した競争ルールの在り方について―新競争促進プログラム2010」

また、通信ネットワークのIP化に伴う会計制度について、2006年11月7日、総務省は「電気通信事業における会計制度の在り方に関する研究会」の開催を発表し、同年11月11日に第1回目の研究会が行われた。現行の会計制度は,既存の電話網の利用や接続を前提としているため、研究会では現行制度の有効性を検証し、その後IP時代の新たな会計制度について検討し、2007年9月にも報告書をまとめる(この研究会には、監査法人トーマツからも手塚仙夫が参加している)。

ネットワークの中立性で特に注目を集めているコンテンツについて、総務省は、「コンテンツ取引市場の形成に関する検討会」を開催しており、放送番組等のコンテンツの制作力や発信力の充実等を通じ、コンテンツの取引を活性化するための対応のあり方の検討を行う。この検討会には、監査法人トーマツのTMTグループのコンテンツビジネスの専門家である伊藤雅之も参加している。
以上
Telecommunications Prediction, TMT Trends 2007」の原文(英語)はこちらからご覧ください。
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