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コラム
会計と監査のしくみ
第1回 文明開化と会計士制度の足音
会計監査を理解するためには、会計や監査自体の「仕組」だけではなく、会計監査を取り巻く経済や社会、法律や制度などの「仕組」を知る必要があります。これらの知識は実のところ膨大なものですが、まずは、明治時代以後の日本の近現代史に沿って、会計士の誕生や監査法人の登場にいたる足跡を辿っていきましょう。
西洋式会計事始
『帳合之法』
福沢諭吉『帳合之法』(慶應義塾蔵)
日本で初めて西洋式簿記についての書籍が出版されたのは、明治6年(1873)、福沢諭吉の著書『帳合之法』(初篇2冊)に遡ります。これまで、たとえば大福帳のような単なる記録に過ぎなかった帳簿が、複式簿記概念の導入によって「経営を判断するツール」の用件を備えるようになったことは大きな変化でした。同年12月、イギリス人のアラン・シャンドの『銀行簿記精法』も大蔵省から刊行されました。こちらは国立銀行で採用され、後には保険業、信託業、さらには一般の商工業にも普及していきました。
新しい西洋式簿記への需要は高く、簿記教育は盛んになっていきましたが、これに伴い、会計教育を掲げた学校も増えていきました。この中で、外国の会計士制度も紹介されはじめました。
この頃から、会計事務所の看板を掲げるものも出てきましたが、簿記学校の片手間に広告的な意味合いで営業していたものが大半で、組織的な業務を本格的に行なう事務所は少なかったようです。
わが国で最初に本格的な会計事務所が出来たのは、明治40年(1907)5月のことです。大阪港等商業学校で教鞭をとっていた森田熊太郎が、大阪で森田会計調査所を開業したのが始まりです。明治42年(1909)には、会田勘左衛門が東京で帝国会計協会を設立しています。
会計士制度を求める声
明治40年初頭に起こった日露戦争後の反動恐慌は、この秋にアメリカで起きた恐慌の影響もあって、明治時代最大の恐慌になりました。休業銀行が多数発生し、企業の倒産が相次ぎました。このような状況下の中、「日糖事件」という大規模な企業破綻、不正経理、贈収賄事件が発生し、会社側から社長以下旧役員8人、議員・前議員23人が検挙されました。
この事件がきっかけになって、責任の所在が不明瞭な当時の監査役制度への批判が強まり、独立の職業的監査人、すなわち会計士制度の設置を求める声が高まってきたのです。明治42年に農商務省は、こうした動きを背景に、『公許会計士制度調査書』を公刊し、その中で、会計士制度の設置と試験による選抜、企業に対する会計監査の義務付けなどを唱えています。
会計士誕生への遠い道程
しかし、政府は会計士制度に関する慎重な態度を崩しませんでした。これは会計監査という企業経営へのチェックや指導を快しとしない、財界側の保守層の反対があったためと思われます。
明治44年(1911)には200余りの商法改正が行なわれましたが、監査制度に関しては整理的な改正に留まりました。その後も政府による制度設立への具体的な動きはありませんでした。
大きな転機がやってきたのは、第1次世界大戦後の大正3年(1914)でした。日本経済は好況、不況の大きな変動を繰り返していました。こうした混迷した背景から、国家資格としての会計士制度を求める声は大きくなって、ついに初の会計監査士法案が帝国議会に提案されたのです。しかし、実際に会計士制度が設置されるまでには、この後に長い道のりが待っていました。
*参考文献
『50年のあゆみ』日本公認会計士協会
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