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第4回 監査証拠と監査手続き |
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| 監査証拠とは何か |
前回は、監査を行うにあたって、内部統制組織に依拠した監査が実施できるかどうかを判断するために、つまり、財務諸表項目の検討のために実施する実証手続の範囲と実施の時期を決定するために「内部統制の評価」が必要であることをお話しました。今回は、この監査手続きを進める上で重要な概念である「監査証拠」について要点を述べていきます。
さて、実務上の指針を示す監査基準委員会報告書(21号)の『十分かつ適切な監査証拠』では監査証拠を「監査人が監査意見を形成するに足る合理的な基礎を得るために入手したすべての情報であり、財務諸表の基礎となる会計データ及びそれを裏付ける情報から構成される」と定義しています。
つまり、会社が作成する財務諸表が正しく表示されているという監査の意見を述べるためには、その裏付けとなる情報の入手と、その情報がどの程度信頼できるかの判断が必要となります。その裏づけとなる情報が監査証拠であり、その入手方法が監査手続と言えるでしょう。
監査証拠は、財務諸表の基礎となる会計データ及びそれを裏付ける情報から構成されるものですが、前者は仕訳帳・総勘定元帳・補助元帳などであり、後者には請求書・契約書などの書類、監査人の監査手続により入手した情報及び監査人の分析によって得られた推定値などから構成されています。
次に、監査証拠は、会社から独立した情報源から入手されたものか、会社から入手したものかにより、「外部証拠」と「内部証拠」に分類することができます。また、監査人が監査手続の実施(例えば実査、確認)により直接入手したものか、あるいは間接的に入手したものかによっても分類することができます。さらに裏付けとしての証明力の強弱により「強い証拠」と「弱い証拠」に分類することも可能です。一般的に、外部証拠は内部証拠より、直接入手した監査証拠は間接的に入手した監査証拠より証明力が強いといわれています。 |
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| 十分かつ適切な監査証拠とは |
会社が作成している財務諸表が正しく表示されているという監査の意見を述べるためには、「十分かつ適切な監査証拠」を入手しなければなりません。つまり、財務諸表が正しく表示されているという意見の背後には、財務諸表の基礎となる取引や会計事象についてその正しさを立証する証拠が必要なのです。その立証すべき目標を「監査要点」といい、その監査要点に適合し、監査人が必要とする証明力を持っており、かつ過不足のない監査証拠を「十分かつ適切な監査証拠」といいます。まず、監査要点には、実在性(本当にあるのか)、網羅性(すべて記録されているか)、権利と義務の帰属(本当に会社のものか)、評価の妥当性(適切な価額か)、期間配分の適切性(適切な期間に配分しているか)、表示の妥当性(適切な勘定科目で表示しているか)が挙げられています。例えば、一般的に売掛金のような資産項目であれば実在性が、借入金などの負債項目であれば網羅性が一つの重要な監査要点として設定されます。また、企業の内部統制に存在するリスクを認識し、その上でどのような監査要点に着目して、どのような監査証拠を求めるのかを詳細に決定することをリスクアプローチです。
つぎに、監査証拠の証明力ですが、銀行など会社から独立した情報源より入手したもの(外部証拠)の方が会社から入手したもの(内部証拠)より証明力が強く、監査人が実査・確認によって直接入手したものの方が間接的に入手したものより証明力が強いとされています。つまり、内部より外部、間接的より直接的な方が証明力の強い監査証拠となるわけです。
さらに、十分かつ適切な監査証拠を入手するためには、特定の監査要点に対して複数の情報源からの、または異なる種類の監査証拠を入手しなくてはなりません。それらに相互矛盾がなければこれらの監査証拠は強い監査証拠と判断できますが、もし矛盾があれば監査手続きを追加実施する等の方法によりその矛盾を解消しなければなりません。その結果、十分かつ適切な監査証拠が入手され、監査の意見を述べる基礎が得られたことになります。 |
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| 監査証拠の入手と監査手続き |
監査証拠を入手するための手法としての監査手続きには、つぎのようなものがあります。監査人はこれらを単独であるいは組み合わせて実施します。
実査――手許現金や定額預金証書などの現物を実際に確かめる
観察――業務の現場に赴いて業務処理の適否や信頼性などを確かめる
立会――棚卸や有形固定資産の現物調査などの現場に赴いて実施状況を確かめる。なおこれには監査人が自ら実査したり、
抜き取り検査を行うことも含む
確認――財務諸表項目の情報について取引先など第三者に対して文書で問い合わせ、その回答を直接入手し評価する
質問――財務諸表項目の情報について経営者・従業員などに問い合わせる
閲覧――定款・規定・契約書などの文書を通読して概観的に経営や業務を把握する
査閲――文書・会計データなどを比較・分析しその正確性・信頼性を概括的に確かめる
証憑突合――会計データと証憑書類を照合し取引の正確な記録を確かめる
帳簿突合――会計帳簿間の照合によって取引の正確な記録を確かめる
計算突合――会計帳簿などの計算の正確性を監査人自らが計算して確かめる
再実施――会社の手続きを監査人自らが実施し正しく運用されているかを確かめる
分析的手続――財務データ間または他データとの関係で推定値を算出し比較する
以上のような活動を通して、監査人は十分かつ適切な監査証拠を入手し、監査意見を形成するわけですが、すべての監査手続きを実行するわけではありません。ここでもリスクアプローチという方法論に則って、リスクの程度に従って合理的な監査手続きが選択されるのです。
いよいよこの連載も監査の渦中に入ってきました。 |
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