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コラム
会計士の仕事
第5回 実査・立会・確認
前回、会社が作成している財務諸表が正しく表示されているという監査意見を述べるために、監査人はその裏づけとなる「十分かつ適切な監査証拠」が必要であり、この監査証拠を入手するための手法として色々な監査手続きがある旨お話しました。今回は、その監査手続きの中で、強い裏づけ(証明力)が得られる代表的な監査手続、つまり「実査」「立会」「確認」という3つの監査手続きについてご紹介しましょう。
お札も数える実査
実査とは、監査人自身が「現物」を実際に確かめる監査手続きです。会社は現金とか預金通帳とか株券とか、あるいは小切手、受取手形など色々な形態で資産を保管しています。会社の会計帳簿にはこれら資産がそれぞれの勘定科目(現金・預金・受取手形・有価証券など)で記録されています。これら、おのおの金額が正しいかどうかについての証拠を入手するには、その現物を監査人が実際に確かめることが最も効果的・効率的です。つまり現金であれば、監査人が直接その数量、金額を数えます。また有価証券についても、同様にその数量、金額を数え、会計帳簿と一致していることを確かめます。
このような実査の対象となる資産は、現金、預金(預金通帳・預金証書)、受取手形、有価証券(株券など)、ゴルフ会員権などの証書、切手・印紙などがあります。
これら実査は原則として決算日を基準に実施しますが、実務的には3月末の決算であれば4月1日の早い時間に会社に訪問して実施します。ここで重要なのは、実査の対象物に換金性(お金に換える時間が早い)があるために、一時的に融通しあって不足金を隠蔽しないように、現金、受取手形、有価証券、預金通帳・証書などを、同時に実査することです。
また、ただ数量、金額を確かめるだけではなく、その資産が会社名義になっているのか等も同時に検証します。
棚卸に立会う
立会とは、商品・製品・原材料・仕掛品などの棚卸資産について、会社が実地棚卸を行う際に監査人が現場に立会い、その実施状況を視察してその妥当性を確かめることをいいます。商品・製品を販売する会社では、少なくとも年1回は倉庫・販売店などに保管されている棚卸資産の数量を数え、帳簿上の数量との一致を確かめたり、同時に、汚れ、賞味期限切れなどで売れなくなった棚卸資産の有無を確認する作業を実施します。このような作業を実地棚卸と呼び、その現場に監査人が立会い、実施状況を把握することを立会といっています。
そして、監査人は、実地棚卸が予め定めた棚卸手続に準拠して実行されているか、棚卸資産が正確に把握されているかを確かめるのです。
立会にあたっては、次のような留意事項があります。
・前もって棚卸計画を検討し不備があれば改善を求めること
・棚卸計画に定めた棚卸手続に準拠して実行されているかを確かめること
・監査人自らが抜取検査(テストカウント)を行うこと
また、決算日以外の日に実地棚卸を行った場合は、実施日と決算日との間の棚卸資産の増減、売上総利益率の比較検討などの全体的な分析を行います。

会社が持っている棚卸資産には様々なものがあります。またこれらは、様々な場所に保管されています。例えば、外食産業であれば、工場の倉庫にはたくさんの食材(肉、魚など)が保管されています。冷蔵庫であれば5度程度の温度ですが、冷凍庫ですとマイナス30度にもなっており、この中を歩き回って実際の数量を確認する作業を実施します。冬場は良いのですが、夏場になると外気との温度差が60度近くにもなり、体力・気力が充実していないと実施できません。防寒服に身を包みますが、30分もたつと電卓の働きばかりではなく、頭の働きも鈍くなりこのくらいが限界でしょう。その他石油タンクに登ったり、細かいビスを数えたり、体力・気力が必要ですが、実際の商品などを見たり、手に触れたりするわけですから会社の内容を理解する上では、最も適した監査手続きと言えるでしょう。
取引先に直接確認する
確認とは、取引先から文書による回答を求め、勘定残高、取引高または保管数量などについて、実在性・正確性・真実性・網羅性などを検討する監査手続です。これにより信頼性の高い外部証拠を入手出来ると同時に、会計記録の正確性を確かめることで取引に関する内部統制の信頼性を確かめることも出来るのです。確認の対象項目は、得意先などの受取手形・売掛金、貸付金、倉庫業者などに保管されている棚卸資産、金融機関などの預金・借入金、他に保管されている担保物権、支払手形・買掛金、偶発債務、リース取引に係る債権・債務などです。
確認書は、監査人が債務者などに直接発信し、その回答も監査人が直接入手する必要があります。これは、会社側による確認書の偽造を防ぐためです。
確認にあたっては、次のような留意事項があります。
確認の方法・時期・確認先は監査人が決定すること
発信手続きに際し、宛先不明で返送される可能性があるため、監査人の住所などを記載すること(返送されたものは別途調査の必要があります)
確認書未回収先については代替的手続きを実施すること(売掛債権の場合は先方からの入金、検収通知、出荷伝票などをチェックするなどの手法があります)

これら実査、立会、確認など厳格な監査手続きが、社会から信頼される高品質な監査の礎になるわけです。また、直接的、具体的な業務であるだけに、クライアントとのさまざまな逸話が残されている世界です。
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