クロスボーダーPMI(越境PMI) 日本企業の筋力にあわせた方法論(下)Initiative Vol.23 |
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前回の「Initiative」Vol.22 では、「PMI筋力不足、パワー不足の企業が、買収してしまったらどうすればよいか」と問いかけて、「小さい筋力をうまく使いながら、しかも筋力を高めていくような方法」として、「5つの矢モデル」を紹介しました。

要約すれば、第一の矢が自治、第二の矢がシナジー、第三の矢が部分的統合、第四の矢がガバナンスで、第五の矢は、第一から四の矢で得られる情報や経験がすべて流れ込み、PMIを真に生かす新結合を構想するものです。
今回は、この第五の矢、すなわち「最適構造」について、詳しくのべます。これが、外国企業という黒船による刺激を活用するために重要な鍵となります。
「自治+ガバナンス」を通じて知る(第一・四の矢→第五の矢)
第一の矢印は「自治」で、その意味は、相手のことは相手にまかせてしまう、ただし最小限のガバナンスはきかせると書きました。また、それをうけて、第五の矢印で、そうする中で、相手の「やり方」をしっかり観察すると書きました。問題はこの観察です。何を観察するのか?大きく分けると「仕組み」と「人材」です。黒船を臨検するポイントです。
「仕組」面では、相手にまかせる前提として、相手の仕組みについて徹底的に理解することに力点をおきます。相手が保持しているありとあらゆるデータを手に入れるようにします。あわせて、相手のトップマネジメントメンバーに対して、相手の人となりをつかむこともかねてヒアリングを行います。
同時に、途中のトラッキングや、成果の評価、ガバナンス(第四の矢)の一環として行いますから、それを通じて単に数値評価を行うだけではなくて、少しよくばって、相手に対する理解を深めることにつとめます。
ただ相手のやっていることをそのままみたり、文書をよんでもそれではわかりません。なぜ相手がそのようにやっているのか、原理的なところまで掘り下げて理解する必要があります。
原理的というのは、なぜ、日本の人事制度とこのように違うのか、その理由は何か、といった掘り下げです(たとえば、人材の流動性が違うので、こういうふうに、職務重視の仕組みになっている、といったことです)。
「人材面」でいうと、相手のトップマネジメントがどういう人々で、どういう経営手法をとっているのか、そこをしっかり観察・診断します。さきほど触れたように、トップマネジメントのメンバーに対して1対1やグループヒアリングなどもかけていきます。買収相手を事業・組織上で管理する部門の責任者と人事関連の責任者が、一緒になってヒアリングをかけるような設定が重要です。
取得した資本の比率によっては、全面的にお互いの情報を開示できない場合もありますが、極力、相手のふところに入り込む努力が必要です。
(なお、このアプローチの前提として相手の人材をリテインすることが必要ですが、その重要なヒントも、市場調査とあわせて、上記の観察やヒアリングからでてきます。)
観察の精度をあげるために、こちら側の人材を相手組織に送り込むことも有効な手です。社外役員的にボードレベルに送り込む「ボード人材」、相手の実質的なトップリーダーの一員となり、かつ、日本側とうまくつなぐ、オフィサーレベルの「リエゾン人材」がまず考えられます。
相手のやり方を、恒常的にかつまぢかにみるために、誰をおくりこむか、そういう人材の人材要件は何か、どうやってそういう人材をみつけるか、育成や支援をどう与えるかなども検討します。
シナジープロジェクトで知る(第二の矢→第五の矢)
日本企業の場合も含めて、シナジープロジェクトは統合直後からすぐに走り出すのが一般的です。そのシナジープロジェクトや、シナジー以外でも日常的に相手と一緒に仕事をするひとがでてきます。
相手について、こちらのそれぞれの分野の専門家(製造、マーケティング、開発、営業、管理)が、複数の目で、相手の諸状況を現場でつかむことになります。発想の仕方の違いも、大いにでてきます。
大切なのは、違いをつかむことに価値を見出すことです。自社の強みのどの部分が通用するか、どの強みを相手に提供すれば相手をもっと強化できるか。逆に相手の強みで、自社に生かせるところはないか、特に自社のグローバル経営で生かせるところはないか、が注目ポイントです。
欲をいえば、シナジープロジェクトを通じて、両者をあわせたバリューチェーン全体について最適な姿を考えます。たとえば、開発・調達・生産・マーケティング・販売・管理機能などをどうまとめて構成するか、両者の間の関係をバリューチェーンに即してどう構成するのがベストかなどについて、すぐに結果がでるもの、時間がかかるものなどに分けつつ、具体案をつくることは、新結合を構想する上で中心的なネタになります。
同時に、多くの人数が現場レベルで相手と出会うシナジープロジェクトでは、ほとんど必ずといっていいほど、相手側と揉めるリスクがあります。揉め事は可及的速やかに解決することが必要ですが、同時に、揉め事の原因分析を通じて、相手と自分の徹底的な解剖をすすめます。
仕組面でいえば、たとえば、両者の組織構成の相違によって、カウンターパートのもの同士が、お互いの社内でもっている権限が異なる場合とか、意思決定の方法がトップダウン的なのかミドルアップ的なのかとか、戦略的なのか現場重視なのかとか、いろいろな実情がわかってくるはずです。
人材面でいえば、お互いに外国人と一緒に仕事をすることにどれくらいなれているか、語学力はどうか、そもそも両社のチーム内でチームリーダーが信頼感を得ているのかどうか、ほんとうのキーパーソンはお互い誰なのか、買収に対して、トップレベルと比べて現場レベルで温度差があるのか、などさまざまなことがみえてきます。
あわせて、相手企業のどの分野の人材がすぐれていているとか、(こちらの人材で代替可能かということも含めて)リテンションの必要性とか、しかしリテンションが難しそうだとか、いろいろなことが実相としてみえてきます。
こうした分析は、この後述べる、ベストの組み合わせのための基本情報として活用するわけですが、同時に、すぐに応急的な措置を講じることも当然必要です。
メンバーの人選をやり直すとか、緊急の研修を組んで相手と一緒にやっていく上で最小限守るべきことを再徹底するとか、通訳を増やすとか、打てる手をうっていきます。あわせて、揉め事がおきたらどうするかなどコンフリクト・マネジメントの体制を整えます。
(次ページへ続く)
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