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海外のM&A事情(1) デューデリジェンスにおいて人事部門が戦略的パートナーとして活躍するために

Initiative Vol.27

著者: グレン・ラプキン Glen Lipkin (プリンシパル/デロイト コンサルティングUS・ニュージャージー事務所)他

翻訳:デロイト トーマツ コンサルティング ヒューマン キャピタルグループ M&Aチーム

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海外デロイトのM&A専門コンサルタントの執筆による記事や対談など、日頃あまり触れることの少ない海外のM&Aに関する有益な情報を、今月よりシリーズ化してお届けします。第1回はデロイトUSのコンサルタントによるデューデリジェンスに関する記事をお送りします。



M&Aのデューデリジェンス(以下、DD)においては、時間が非常に限定的であるため、相手企業の財務状況の精査や、条件交渉に盛り込む内容の検討、戦略の策定などに重点をおくことが普通です。

その結果、人事領域におけるDDは、大きなリスクを孕む領域のひとつであるにもかかわらず、人件費削減機会の特定といった財務的な視点に基づく定量的分析に終始しがちとなります。人事のバックグラウンドを持つ人がDDのメンバーとして存在しない場合は、ますますこの傾向が強まります。

「人」に関する財務的なリスクは、氷山の一角に過ぎません。むしろ定量化できないリスクを把握することにより、M&Aに伴う組織改編、人材のリテンション、企業文化の融和といった、M&Aの成否に関わる重要な側面において、有効な対応策を講じることが可能となるのです。

M&Aに伴う組織改編: 無事にM&Aをクローズさせ、また最終的な成功に導くためには、統合後の組織の設計や人員の選定を適切に行う必要があります。またここでは、組織改編の移行期においても問題なく事業が継続されるよう、段階的に人員を削減するといった対応策も必要となります。人件費削減機会の特定などといった定量的分析だけでは、とてもこのような取り組みを効果的に行うことはできないでしょう。

人材のリテンション: M&Aに際して、事業運営に必要な知識やスキルを持った人材の特定と引き留めが必要になります。有効なリテンション施策が存在しない場合、事業運営のカギとなる人材が、最も必要とされる時に失われてしまうような事態になりかねません。ここでも単純な財務分析・定量分析の枠を超えた情報の分析が不可欠となります。

企業文化の融和: 会社が合併するとき、文化的な衝突は避けられません。そしてこの衝突は、統合の取り組み全体を台無しにしかねません。この問題に対応するためには、相手企業のリーダーシップのスタイル、意思決定のプロセス、変化への受容性、ワークスタイル、従業員同士の交流のあり方、キャリア観や仕事観といった点における、相手企業との文化的相違についての理解が欠かせません。

もし読者の皆さんが人事部門を率いる立場であれば、M&Aにおいて「人」に関するリスクを単純化し過ぎることにより、不適切な統合計画の策定、正確さを欠いたシナジーの予測、予期していない費用の発生、重要な人材の流出といった事態を招いてしまうことは想像に難くないと思います。

このような事態を食い止めるためのアプローチとして、人事部門が戦略的なパートナーとしてM&Aの初期のフェーズから取り組みに参画する方法や、人事領域のDDをサポートする人事部門内のチームを立ち上げる方法が考えられます。このアプローチについてステップに沿って解説します。

【ステップ1】経営企画部門との連携

多くの企業において、M&A戦略の全般的なプランニングや相手企業の選定など、M&A推進の中心的な役割を担うのは経営企画部門です。人事部門は、経営企画部門との間に良好なパートナーとしての関係を築き、相手企業の選定や戦略の策定といった、M&Aにおける初期のフェーズから取り組みに関与すべきです。

初期段階から人事部門がM&Aの推進に関与することで、M&Aの目的を十分に理解することが可能になり、場合によってはM&Aの実施可否に関する意思決定を左右するような、「人」に関する課題について有益な示唆を提供することができるようになります。

例えば、新しい戦略の方向性として、既存の事業ポートフォリオへの新事業の追加、事業領域の水平・垂直方向への拡大、事業のグローバル展開といったシナリオが検討されている場合、それぞれの戦略シナリオの実行における必要人材のスペックは全く異なります。

このような戦略レベルの方向性を熟知することにより、人事部門は「人」に関わるコストや統合の課題、シナジーなどを検討するために相手企業からどのような情報を収集すべきかを特定することができ、DDに携わる(しばしば人事のバックグラウンドを持たない)メンバーを効果的に支援することが可能となるのです。

さらに、人事部門がM&A実行の背景となる戦略を十分理解することは、M&A実施後に戦略に合致した適切な組織を設計するためにも必須といえます。

次ページへ続く

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