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監査人の役割(継続企業の前提)

2009.5.26

著者: トーマツ リサーチ センター

質 問

継続企業の前提に関する監査人の具体的な役割について、教えてください。

 

回 答
日本公認会計士協会(JICPA)監査基準委員会報告書第22号「継続企業の前提に関する監査人の検討」(委員会報告22号)によれば、継続企業の前提に関する監査人の具体的な役割が次のとおり定められています。

7.監査人は、監査計画の策定及びこれに基づく監査の実施において、継続企業の前提に基づき財務諸表を作成することが適切であるか否かを検討しなければならない。
このため、監査人は、経営者が実施した合理的な期間にわたる継続企業の前提に関する評価について、その期間のうち少なくとも貸借対照表日の翌日から1年間を対象期間としなければならない。また、監査人は、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在すると判断した場合には、当該事象又は状況に関して合理的な期間について経営者が行った評価及び対応策について検討した上で、なお継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められるか否かを判断するとともに、財務諸表の表示を検討する責任を有しているが、企業の存続そのものについて保証を与える責任は有していない。

 

1.経営者の評価の検討

経営者は、継続企業の前提を評価するに当たり、合理的な期間にわたり企業が事業活動を継続できるかどうかについて、入手可能なすべての情報に基づいて検討することが求められています。また、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在する場合には、当該事象又は状況を解消し、又は改善するための対応策を踏まえて継続企業の前提の評価を行うこととされています。監査人は、このような経営者の評価について検討を行うことが求められています。ここで、経営者が継続企業の前提を評価すべき期間は、「少なくとも貸借対照表日の翌日から1年間」とされていますが、経営者が1年間を超える期間を対象期間としている場合であっても、監査人は、「その期間のうち少なくとも貸借対照表日の翌日から1年間」を監査の対象期間とすることとされています。

2.重要な不確実性が認められるか否かの検討

従来の実務では、一定の事象や状況が存在すれば直ちに継続企業の前提に関する注記を要すると理解されていたところがありました。平成21年4月に監査基準等が改訂され、経営者は、継続企業を前提として財務諸表を作成することが適切と判断されても、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在すると判断される場合において、当該事象又は状況を解消し、又は改善するための対応をしてもなお継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められるときは、継続企業の前提に関する事項を財務諸表に注記することとなりました。そのため、監査人は、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在すると判断した場合には、「経営者が行った評価及び対応策について検討した上で、なお継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められるか否か」について判断することが必要となります。当該改訂は、平成21年3月決算に係る財務諸表の監査から適用されています。

3.財務諸表の表示の検討

監査人は、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在し、経営者の対応策等を勘案してもなお継続企業の前提に重要な不確実性が認められるときに、財務諸表等に注記される継続企業の前提に関する事項の内容を検討することが求められます。
このような場合、監査人の責任は注記事項の検討のみにとどまるということにはなりません。 継続企業の前提に関する重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が識別されるような場合には、通常は粉飾決算のリスク(固有リスク)が高まっていると判断されるでしょうから、リスクアプローチのもとでは、資産の評価が適切であるかどうか、引当計上すべきものはないかなどに特に注意することが求められることとなります。
したがって、監査人は、注記情報も含めた財務諸表全体の適正表示について検討する責任を有することになります。

4.監査人の責任の限界

監査人の責任が、二重責任の原則に裏付けられたものであり、財務諸表に対する意見表明の枠組みの中で遂行されることは、継続企業の前提に関する監査人の責任においても同様です。  したがって、監査人は、財務諸表が企業の財政状態及び経営成績等を適正に表示しているかどうかについて意見表明する責任を有するものであり、二重責任の原則を離れて、企業の将来の財政状態等について意見表明することはありません。この点について平成14年の監査基準改訂時の前文で「監査人の責任は、企業の事業継続能力そのものを認定し、企業の存続を保証することにはなく」(平成14年改訂監査基準前文(三 主な改訂点とその考え方 6継続企業の前提について (2)監査上の判断の枠組み))、と明記されています。

以上