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重要な疑義を生じさせるような事象等(継続企業の前提)

2009.5.26

著者: テクニカルセンター

質 問

継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況とは何ですか。どのようなケースが該当するのか具体的な例示をもって教えてください。

 

回 答
経営者及び監査人の検討対象ともなる「継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況」については、監査・保証実務委員会報告第74号「継続企業の前提に関する開示について」(開示実務指針)の第4項において以下の項目が示されています。
なお、従来の実務では、一定の事象や状況が存在すれば直ちに継続企業の前提に関する注記を要すると理解されていたところがありました。平成21年4月に監査基準等が改訂され、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在し、これらの事象や状況に対する経営者の対応策等を勘案してもなお継続企業の前提に関する重要な不確実性がある場合に継続企業の前提に関する注記を行うこととなりました。当該改訂は、平成21年3月決算に係る財務諸表の監査から適用されています。よって、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在することが、直ちに注記を要する状況とはならないことに、留意する必要があります。

(区 分)

(例 示)

財務指標関係

・売上高の著しい減少
・継続的な営業損失の発生又は営業キャッシュ・フローのマイナス
・重要な営業損失、経常損失又は当期純損失の計上
・重要なマイナスの営業キャッシュ・フローの計上
・債務超過

財務活動関係

・営業債務の返済の困難性
・借入金の返済条項の不履行又は履行の困難性
・社債等の償還の困難性
・新たな資金調達の困難性
・債務免除の要請
・売却を予定している重要な資産の処分の困難性
・配当優先株式に対する配当の遅延又は中止

営業活動関係

・主要な仕入先からの与信又は取引継続の拒絶
・主要な市場又は得意先の喪失
・事業活動に不可欠な重要な権利の失効
・事業活動に不可欠な人材の流出
・事業活動に不可欠な重要な資産の毀損、喪失又は処分
・法令に基づく重要な事業の制約

その他

・巨額な損害賠償金の負担の可能性
・ブランド・イメージの著しい悪化

 

1.財務指標項目関係

まず財務指標関係の情報は、財務諸表利用者が基本財務諸表である貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書から読み取れる情報であり、基本的には企業の事業活動に関する危険信号に相当するものと考えられます。また、継続しなければ重要な疑義には該当しないとの誤解を生むことを避けるため、開示実務指針では、「重要な営業損失、経常損失又は当期純損失の計上」や「重要なマイナスの営業キャッシュ・フローの計上」等の例が示されています。

2.財務活動項目関係

次に財務活動関係ですが、重要な疑義に結びつく決定的な状況が債務の返済の困難性であり、開示実務指針ではこれを営業債務、借入債務、社債に分けて示しています。しかし、債務返済の困難性については、実務上、それを解消する手段の実行可能性の評価を通じて検討することになると思われます。解消手段としては、営業活動のキャッシュ・フローの改善手段(不採算事業からの撤退など)、投資活動のキャッシュ・フローの改善手段(重要な資産の処分など)及び財務活動のキャッシュ・フローの改善手段(新たな資金の調達など)に分けて考えることができますが、このような手段により返済原資を確保することが不可能な場合には最後の手段として債務免除しかないということになります。このため、開示実務指針では、債務返済の困難性に続いて、「新たな資金調達の困難性」、「重要な資産の処分の困難性」、「債務免除の要請」が例示されています。

3.営業活動項目関係

営業活動関係については、事業活動の規模が縮小し、営業キャッシュ・フロー(収入)が減少するような状況、場合によってはマイナスに転じるような状況が想定されています。このため、一般には、売上高の著しい減少や重要な営業損失の計上といった状況は、財務指標の悪化に結びつくものと考えられるわけですが、不採算事業の売却・撤退のように逆に営業キャッシュ・フローを改善するものもあり、重要な疑義に結びつくかどうかについては総合的な判断が必要となります。
また、開示実務指針に例示されている「主要な仕入先からの与信又は取引継続の拒絶」のように、信用不安から信用取引を拒絶される場合や取引の継続を拒絶される場合は、債務返済の困難性に直結することになるといえます。
この他、開示実務指針においては、新商品を市場にタイムリーに投入できないことにより市場から撤退すること等といった「重要な市場又は得意先の喪失」や、フランチャイズ契約、技術援助契約等の契約上の権利の更新ができないこと等といった「事業活動に不可欠な重要な権利の失効」、担保権の実行による事業用土地の強制処分等といった「事業活動に不可欠な重要な資産の毀損、喪失又は処分」などが例示されています。

4.全般的な留意事項
  • 継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況に該当するか否かは、単独の事象又は 状況による場合もありますが、通常は、複数の事象又は状況が密接に関連して発生又は発現することが多いと考えられるため、総合的に判断する必要があります。
  • 継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況を一律に定義することは困難です。このため、企業の営む業種の特殊性により、上記の例示以外の財務指標を用いることが適切な場合や、上記の例示以外の項目が継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況に該当する場合もあることに留意する必要があります。
  • 連結財務諸表を作成する際には、経営者は、親会社の個別財務諸表に関する継続企業の前提の評価の過程に加え、連結ベースの財務指標や、子会社において発生又は発現した継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況のうち親会社に重要な影響を及ぼす項目も検討する必要があるとされています。

以上