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2012.01.15付「不適切な会計処理が発覚した場合の監査人の留意事項について(案)」について解説

不適切会計処理

著者: テクニカルセンター 吉田 美佳

日本公認会計士協会(JICPA)は、平成24年1月15日に「監査・保証実務委員会研究報告 不適切な会計処理が発覚した場合の監査人の留意事項について(公開草案)」を公表した(コメント募集は2月6日まで)。

本公開草案は、近年、上場会社において不適切な会計処理の発覚が増加していることを受け、監査人として適切な対応を行うための留意事項を取りまとめて公表したものである。

公開草案の概要は、以下のとおりである。

1.不適切な会計処理の定義

「意図的であるか否かにかかわらず、財務諸表作成時に入手可能な情報を入手しなかったことによる、又はこれを誤用したことによる誤り」(過年度遡及会計基準第4項における「誤謬」と同義)としている。

2.不適切な会計処理発覚後の監査スケジュール上の留意点

監査人は以下のスケジュールを踏まえて、監査を実施する。

(1) 有価証券報告書等の提出遅延期限【上場会社】
上場会社は、通常の有価証券報告書等の提出期限後、1ヶ月以内に有価証券報告書が提出できない場合、上場廃止事由に該当する(東京証券取引所有価証券上場規程第601条第1項第10号等)。
発覚のタイミングによっては、その後の作業時間との関係で、この1ヶ月以内の期限までに会社は有価証券報告書等の提出が困難となり、監査人も監査報告書の提出が困難となるケースがある。
(2) 会社法上の定時株主総会の延期・続行
発覚のタイミングによっては、会社の計算書類作成が遅延し、会社法第317条に基づき、定時株主総会を「延期」又は「続行」するケースがある。
この場合においても、(1)に記載した証券取引所の有価証券報告書等の提出遅延期限との関係に留意する必要がある。

3.不適切な会計処理発覚後の監査人の対応

(1)内部調査委員会・第三者委員会への監査人の対応

  •  監査人が第三者委員会からヒアリングを受ける場合には、会社と守秘義務解除の覚書を交わし協力する。
  •  第三者委員会からの調査報告書において、監査に関する記載に事実誤認がないことを確認し、事実誤認がある場合には第三者委員会に修正を申し入れる。

(2)証券取引所への監査人の対応

  •  被監査会社に対して証券取引所への事前相談を提言する。
  •  被監査会社が情報開示(プレスリリース)する前にドラフトを入手し内容を確認し、監査人の監査に関して事実関係に齟齬を来している記載や、誤解を与えるような記載がある場合、修正を依頼する。
  •  監査人が証券取引所からヒアリングを受ける場合には、上場会社から守秘義務解除を受ける必要がある。

(3)会社法第397条(監査役に対する報告)に基づく会計監査人の対応

会計監査人は、取締役の職務の執行に関し不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実があることを発見したときは、監査役に報告する義務がある。

(4)金融商品取引法第193条の3(法令違反等事実発見への対応)に基づく監査人の対応 

  •  金融商品取引法193条の3に基づく対応をとる。
193条の3第1項 監査人として法令違反等事実を発見した場合、監査役、監査役会、監査委員会に法令違反の是正その他適切な措置をとるべき旨を通知する。
193条の3第2項 法定期限内の是正その他適切な措置がとられなかった場合、財務計算に関する書類の適正性の確保に重大な影響を及ぼすと判断した場合、監査役(監査役会、監査委員会)及び取締役会に当局(金融庁長官)に申し出る旨、書面で通知したうえで、当局に書面により申し出る。
193条の3第3項 当局に申し出た旨は、特定発行者に書面で通知する。

 

  • 金融商品取引法193条の3第2項の申し出を行った場合、監査契約の解除・終了条件とすることが考えられる。

4.開示書類の訂正、過年度遡及会計基準の適用と監査対応

(1)金融商品取引法における訂正報告書及び会社法計算書類にかかる過年度遡及会計基準との関係

  • 上場会社において、不適切な会計処理が発覚した場合、過年度遡及会計基準に従い会計処理することとなるが、不適切な会計処理が金融商品取引法における訂正報告書の自発的提出事由(金融商品取引法第7条他)に該当する場合には、訂正報告書の提出が必要となることに留意する。
  • 上記の場合、会社法計算書類も、過年度遡及会計基準に従い、当期の期首剰余金の修正を行う。

(2)会社が訂正報告書を提出しないと判断した場合

監査人は、金額的重要性と質的重要性の観点から、不適切な会計処理が過去と当期の財務諸表に及ぼす影響を評価し、過去と当期の財務諸表の監査意見に影響を及ぼすと考えられる場合には、会社に訂正を促すことが適当と考えられる。

(3)訂正後の財務諸表に対する監査計画策定等における留意事項

監査手続の範囲(特に訂正箇所以外の部分)
調査委員会の調査報告書の利用の仕方
法定書類の提出期限との関係

 

(4)訂正内部統制報告書と監査報告書の関係

  • 被監査会社が財務諸表の訂正を行った場合:監査人は訂正後の財務諸表に対して監査報告書の発行が必要となる(監査証明府令第3条)。
  • 被監査会社が内部統制報告書の訂正を行った場合:それに対する監査証明は必要とされない(内部統制府令ガイドライン1-1)。

(5)監査人交代後に過去の不適切な会計処理が発覚した場合の訂正後の財務諸表の監査対応

訂正後の財務諸表の監査人は法令上規定されていないため、被監査会社は、実務上、ⅰ)訂正前の財務諸表に対し監査証明を行った監査人(以下「元監査人」という。)、ⅱ)不適切な会計処理が発覚した年度の監査人、ⅲ)それ以外の監査人のいずれかに監査を委託することになる。
訂正後の財務諸表の監査を受託する監査人は、被監査会社により訂正された部分の金額・内容の妥当性を監査するだけでは不十分であり、訂正後の財務諸表全体の監査を行う。

元監査人以外が訂正後の財務諸表の監査を行う場合、監査基準委員会報告第33号「監査人の交代」を踏まえて、元監査人から監査業務の引継ぎを受けることが望まれる。

 

(6)訂正後の財務諸表の監査報告書における追記情報との関係

国際監査基準に対応するため、平成22年3月に改訂されたわが国の監査基準は、平成24年3月期の監査から適用となるため、訂正後の財務諸表が平成24年3月期以後の場合は、「監査人は、訂正後の財務諸表に対する監査報告書の強調事項区分またはその他の事項区分に、以前に発行した財務諸表に対する監査報告書について記載しなければならない」(監査基準委員会報告59号「後発事象」第15項)とされ、訂正報告書に対する監査報告書において追記情報(強調事項又はその他の事項)を記載することが明確化されている点に留意する。

以上