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日本企業の会計不正の動向調査 2010 第1回

上場企業に見る会計不正のトレンド

著者: Saori Mishima and Kazunori Ota of Deloitte Tohmatsu FAS, Forensic Services

これまで、デロイトトーマツFAS株式会社のフォレンジック専門家による提供業務から得た経験や理論的な側面を様々な形で提供してきました。今回からは、視点を変更し、弊社が所有する不正事例のデータベース(フォレンジックデータベース)から、情報を適宜抽出・分析を実施し、統計的な視点から、何がわかるのかを複数回に分けて解説したいと思います。

1. 上場企業に見る会計不正のトレンド


1.1. 公表されている会計不正の動向

図表1-1はデロイトトーマツFASのデータベース(フォレンジックデータベース)から、上場企業が公表した会計不正を抽出し、手口別に分析したものである。

【図表1-1】 不正の手口別会計不正の動向


調査方法:2007年4月から2010年3月にかけて会計不正の事実を公表した上場企業120社を対象とした。1社の事例で複数の不正の手口が存在するため、合計は会社数よりも多くなる。


1.2. 公表されている会計不正の特徴

上場企業が公表した会計不正、すなわち財務諸表の虚偽表示は、2008年3月期39社、2009年3月期42社、2010年3月期39社となっており、過去3年間において会計不正の公表件数は減少していない。手口別にみると、いわゆる粉飾決算に係る公表(不適切な収益認識、負債・費用の隠蔽、費用・収益の期間帰属の操作、不適切な資産評価等)が各年度約3分の2を占めており、資産の流用のほとんどは現金・預金の横領である点は各年度とも同様の傾向を示している。

また、公表されている会計不正は、複数の手口が伴うものが多い傾向がある(次回以降に詳細な分析を実施予定)。

  • (不適切な収益認識)+(費用・収益の期間帰属の操作)
  • (負債・費用の隠蔽)+(費用・収益の期間帰属の操作)
  • (現金・預金の横領)+(不適切な資産評価等)
  • (不適切な資産評価等)+(汚職) 等

 

1.3. 公表されている会計不正の特徴

他方、日本企業における一般的な会計不正のトレンドを見ると、資産の流用が不正手口が発覚件数としては多数であるのが通常である。デロイトトーマツFASが2009年6月に発表した「企業の不正リスク実態調査(Fraud Risk Survey 2007-2009)」においても資産の流用は不正手口の約7割を占めており、不正な財務報告に比して件数ベースでは多い結果となっている。

分析した図表1-1は、各証券取引所が定める適時開示基準に従って適時開示が必要と会社が判断し、公表したものを集計したものである。適時開示基準においては、投資家の投資判断に重大な影響を及ぼす事実か否かを適時開示の判断基準としているため、公表の対象となった会計不正は、投資家の視点から定量(金額)的にあるいは定性的に重要な会計不正であるといえる(図表1-2)。

【図表1-2】 公表されている会計不正と一般的な発覚不正の傾向のイメージ


したがって、不正な財務報告(粉飾決算)による会計不正は、適時開示が必要となる重大な会計不正となる可能性が高い一方で、不正の発覚件数では資産の流用の方が一般的に多いものの、適時開示に至らないケースがほとんどであるということが伺える。

以上
(次回に続く)

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