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国際会計基準とM&Aについて 第2回

2009.07.09

著者: デロイト トーマツ FAS株式会社 パートナー 森山 太郎 執筆

日本の企業結合会計の主な改正点

前回述べたように、企業結合会計に関してはIFRSの適用の前に日本基準のコンバージェンスへの対応が必要となる。そこで今回は日本の企業結合会計の改正点を簡単に見ることとする。200812月の改正は 「ステップ1」と呼ばれるもので、IFRSとの差異の多くが解消することとなったが、一部の差異は「ステップ2」での改正を予定している。この新しい基準は20103月期から早期適用、20113月期から強制適用となる。

 

1. 持分プーリング法の廃止

(従来) 持分プーリング法を適用する場合(持分の結合)があった。

(改正後) 持分プーリング法は廃止。

 

持分プーリング法の存在は日本のM&A会計基準の特殊性の象徴とする見方もあったが、今回の改正ではコンバージェンス推進の観点から持分プーリング法を廃止した。ただし共通支配下取引、共同支配企業の形成における会計処理は従来と変わらず持分プーリング法が適用される。

2.  株式を取得対価とする場合の時価の測定日   

 

(従来) 合意公表日前の合理的な期間における株価

(改正後) 企業結合日または事業分離日における株価

 

企業結合の合意の公表日から企業結合日(取得側の企業の株式を割り当てる日)の間には一定の期間があり、その間に株価は変動する。したがってこの改正により、企業結合の対価に株式を用いるケースでは、取得金額は企業結合日まで確定できなくなった。図表4は、のれんの発生と償却のしくみを模式的に示している。のれんに関する議論では取得資産・引継負債の測定(時価評価)に焦点が当たることが多いが、取得対価自体が変化すれば、のれんの金額、ひいては償却額にも影響が及ぶことになる。のれんの償却費を反映させた形での取得側の企業の業績予想にも影響が及ぶことになる。

株式を取得対価とする場合の時価の測定日

 

3.     段階取得の会計処理

 

(従来) 個々の取引ごとの原価の合計

(改正後) 対象会社の取得時点(=企業結合日)の時価で測定する。

 

図表5の例で説明する。図表5は対象会社の株式を10%、20%、21%と段階的に取得し、合計で51%に達したケースで、株価は最近の取得時点ほど高くなっている。従来の会計処理は取得原価の積み上げであり、取得対価はA+B+Cであった。改正後は支配の獲得(=51%に到達したとき)の前後で投資の継続性がなくなり、支配獲得前の投資は時価で売却して再購入したかのように取り扱う。したがって図の例では過去の投資AとBからの含み益Dが利益に計上されるとともに、取得対価はA+B+C+Dとなる。

段階取得の会計処理

 

 

4.  少数株主持分の測定

 

(従来)  部分時価評価法と全面時価評価法の選択適用

(改正後)  全面時価評価法に一本化

 

図表6のとおり、全面時価評価法では、子会社の純資産を、親会社持分(A)に限らず、少数株主持分に相当する部分(B) も含めて時価評価する。のれんは親会社持分のみが対象である。ちなみに後述する米国基準、IFRSでは少数株主持分に対するのれん(Xの部分)も認識し(IFRSでは企業結合取引ごとにXの部分を認識するか否かを決定する)、「全部のれん」と呼ばれているが、日本での導入は将来的検討課題となっている。

少数株主持分の測定

5.  負ののれんの会計処理

 

(従来) 20年以内で償却し、償却費は営業外収益に計上

(改正後) 取得原価の配分を見直した後に残った部分については、発生時に一括して特別利益に計上(図表7参照)

 

現在の株式市況の状況下では、最も注目を集めているトピックの一つである。負ののれんが発生するのは、対象会社の時価純資産を取得対価が下回っている状態であるが、時価ベースでのPBR(株価純資産倍率)が1倍未満なら直ちに負ののれんが認識できる、ということにはならない。まずは取得原価の配分、すなわち対象会社の資産・負債の時価評価を見直すことが必要である。しかし、実務的には見直しの作業をどのように行うかは議論の余地があるものと考えられる。

また、改正後は負ののれんは特別利益に計上されるため経常利益への影響はなくなる。なお、現行の基準を適用して認識した負ののれんの償却は、改正後も従来と同じ方法を継続する点にも留意が必要である。正ののれんについては、従来通り20年以内で償却することとされ、今後「ステップ2」で取扱いが検討される予定である。

負ののれんの会計処理

6.  在外子会社株式の取得により生じたのれんの会計処理

(従来) のれんは発生時の為替相場で換算された後は、円貨建の資産と同様に会計処理される。

(改正後) のれんは在外子会社の資産と同様に取り扱われる。つまり決算日の為替レートで換算替えを行い、のれんの当期償却額は在外子会社の費用と同じ為替レートで換算される。このため、在外子会社ののれん償却費は、円貨で見た場合は毎期一定とはならない。

 

 

7.  企業結合等により受け入れた無形資産の会計処理

 

(従来) 取得した資産に法律上の権利又は分離して譲渡可能な無形資産が含まれる場合には、取得原価を当該無形資産等に配分することができる。(「企業結合に係る会計基準」三2.(3)、下線筆者)

(改正後) 受け入れた資産に法律上の権利など分離して譲渡可能な無形資産が含まれる場合には、当該無形資産は識別可能なものとして取り扱う。(「企業結合に関する会計基準」29項、下線筆者)

 

会計基準の変更点としては「できる規定」が原則に変わっただけであるが、現行の規定では、無形資産の認識の実務はほとんど行われていなかったことから、実務上は相当な影響が出ると思われる。

 

8. 企業結合に係る特定勘定の処理の見直し

 

(従来) 短期間で発生することが予測される費用または損失に限定。5年以内の取り崩し。できる規定であった。

(改正後) 期間に関する限定は削除。負債を認識することが原則となった。

企業結合により将来に発生が予測される費用または損失について、取得原価の配分に際して負債(特定勘定)を認識することも、「できる」規定から原則に変更となった。

9. 仕掛中の研究開発費の取扱い

 

(従来) 取得原価の配分時に研究開発費も配分対象となるが、研究開発費に配分された金額は企業結合の日の費用として会計処理された。

(改正後) 仕掛中の研究開発費は資産計上する。研究開発の完成後に費用化される。


 

次号(第3号)につづく

 

 

以上