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投資信託及び投資法人における特定資産の価格等の調査(日本公認会計士協会業種別委員会報告第23号)

2010.11.24

著者: FIGファンドユニット 鈴木 祥子

1.はじめに

「投資信託及び投資法人に関する法律」(以下「投信法」)第11条(投資法人の場合には第201条)により、投資信託又は投資法人(以下「ファンド」)が不動産や店頭デリバティブ取引など「投資信託及び投資法人に関する法律施行令」(以下「施行令」)第3条で定められた特定資産(「投資信託及び投資法人に関する法律施行規則」(以下「規則」)第22条第1項で定める指定資産を除く。)の取得又は譲渡その他規則第22条第2項(投資法人の場合は第245条第1項)の行為(「特定資産に関する取引」)について、価格及び規則第22条第3項(投資法人の場合は第245条第2項)で定める事項の調査(以下「調査」)を公認会計士等により受けることが義務付けられている(施行令第18条、投資法人の場合は第124条)。本稿では、特定資産の価格等の調査の実務について、日本公認会計士協会業種別委員会報告第23号「投資信託及び投資法人における特定資産の価格等の調査」(平成13年3月、最終改正平成20年2月)(以下「第23号報告」)の解説と共に適用上の留意点を検討する。なお、本稿に掲載された事項は筆者の私見であり、所属する法人の公式見解ではないことをお断りしておく。

2.調査の目的及び意義

第23号報告によれば、投信法の投資家保護という立法趣旨を鑑みるに、本調査は、不動産等の取引価格の決定過程には取引所取引のような透明性が必ずしも確保されていないため、特定資産の取引価格が取引当事者により恣意的に決定されること等によって、投資信託の受益者又は投資法人への投資家が不当な不利益を受けないようにすることを目的としたものと考えられている。ここにおいて価格の調査とは、「ファンドと取引の相手方によって決定された取引価格について、事後的に、調査人が当該取引価格と比較可能な価格を入手し、両者を比較することである」とされている。また、規則第22条第3項で定める事項の調査とは、「同項で定める事項を投資信託委託会社又は資産運用会社(以下「会社」)が有する関係書類等と照合し、その一致を確かめることをいう」とされている。

3.経緯

「証券投資信託及び証券投資法人に関する法律」(旧投信法)が主として有価証券を運用するための仕組みを定めていたが、平成12年金融ビッグバンの一環として一部改正され、不動産等を含めた幅広い資産に運用できる現在の投信法に改正された。また、旧投信法第16条の2(現投信法第11条)において、投資信託委託業者等は、運用の指図を行う投資信託財産や資産の運用を行う投資法人について特定資産の取得又は譲渡その他の総理府令で定める行為が行われた時は、公認会計士、弁護士、不動産鑑定士等に当該特定資産の価格その他の事項等を調査させなければならないこととされた。それに伴い公認会計士又は監査法人がこれらの調査を行うに際して調査手続及び調査報告書の文例等を取りまとめるため、当時、業種別監査委員会報告第23号(平成13年3月22日)が公表された。当該委員会報告は、平成19年4月に不動産鑑定評価基準等が改正されたこと、また投信法および関係諸法令が改正されたことを踏まえ、(1)不動産価格の調査手続についての見直し、(2)投信法等の改正に伴う用語の見直し、(3)調査報告書及び経営者確認書の文例の見直しのため、平成20年2月13日に改正されている。

4.価格等の調査を要する特定資産とは

ファンドの投資対象資産である「特定資産」は、施行令第3条において株式等の有価証券、不動産など詳細に規定されているが、そのうち、取引所等で取引されている特定資産を「指定資産」と定め(規則第22条第1項)、調査の対象となる資産は特定資産から指定資産を除く(投信法第11条第1項)とされたことから、取引所等で取引されない特定資産が調査対象となる。以下、投資信託委託会社が指図する有価証券を主たる投資対象とする証券投資信託(委託者指図型証券投資信託)に関連する部分に絞って特定資産の価格等の調査を必要とする資産について検討すると、調査対象となる資産は以下のように分類される。(不動産に投資する投資法人を対象とした特定資産の価格等の調査についての議論は、別の機会にする。)

A 下記イ)、ロ)又はハ)の指定資産に該当しない有価証券(規則第22条第1項第1号)
イ) 金融商品取引所又は外国金融商品市場に上場されている有価証券
ロ) 店頭売買有価証券、又は
ハ) イ)又はロ)以外で、次に掲げるもの
(1) 国債証券・地方債証券・特別の法律により法人の発行する債券・資産流動化法に規定する特定社債券・社債券
(2) 株券・新株予約権証券のうち、その価格が認可金融商品取引業協会又は外国において設立されているこれと類似の性質を有する団体の定める規則に基づいて公表されているもの
(3) 投資信託又は外国投資信託受益証券・投資証券若しくは投資法人債券又は外国投資証券・オプション証券又はオプション証書
(4) 譲渡性預金証書で外国法人の発行するもの

上記イ)、ロ)又はハ)以外の有価証券が調査等の対象となる有価証券であるが、いわゆる未上場株式などの有価証券がこれに該当する。また、非上場の新株予約権付社債券(ワラント債)の分離型において、社債券部分は上記ハ)(1)から指定資産であり価格等調査の対象外であるが、新株予約権部分で価格が公表されていない場合は価格等調査の対象となるかどうか、その必要性について検討する必要がある。

B 店頭デリバティブ取引(金融商品取引法第2条第22項)に係る権利
店頭デリバティブ取引とは、金融商品市場及び外国金融商品市場によらないで行う取引をいうが、行われている店頭デリバティブ取引を例示すると下記のようになる。

  • 金利先渡取引
  • 為替先渡取引
  • 直物為替先渡取引
  • 店頭金融先物取引
  • クレジットデリバティブ取引(クレジット・デフォルト・スワップ、トータル・レート・オブ・リターン・スワップ、クレジット・リンク債)
  • スワップ取引(為替スワップ取引、金利スワップ取引、通貨スワップ取引)
  • オプション取引(為替オプション取引、金利オプション取引、通貨オプション取引)

これらはいずれも市場デリバティブ取引(指定資産、規則第22条第1項第3号又は第4号)ではないため、価格等の調査の対象とされている。

5.調査人の実施する手続及び責任

第23号報告では、価格等の調査に際して調査人は、主に以下の手続を実施することとされている。

  1. 特定資産の取引価格について、会社が同一時期及び同一条件で他の取引先から入手した価格、会社が価格情報提供業者から入手した価格、又は、会社が合理的に算出した見積価格を入手し根拠資料と照合するとともに、両者を比較する。
  2. 特定資産の取得・譲渡などの特定資産に関する取引行為について、規則第22条第3項で定める事項を確認するため、会社が有する関係書類等(日計表、コンファメーション、契約書等)と照合し、その一致を確かめる。

調査人は上記手続を実施するが、本調査は一般に公正妥当と認められた監査の基準に基づく監査ではないため、調査人は調査の実施対象である特定資産に関する取引の価格等に関して監査意見を表明するものではない。すなわち、特定資産の評価額等の妥当性を保証するものではなく、また、特定資産に関する取引に対していかなる意見も表明するものではない(第23号報告「4 調査人の責任」)。この結果、「特定資産の価格等に関する調査報告書」は、監査等の保証業務の報告書ではなく、第23号報告に定められた手続を“合意された手続”とした「合意された手続実施報告書」の性格と位置付けられている。

6.当調査における留意点

  1.  当調査手続の実施に必要な資料は会社側で準備をするため、価格等の調査を実施する調査人は当該調査が可能であるかどうか、調査業務契約締結前に業務受託可否に関するリスクを評価する必要がある。
  2.  第23号報告の標準文例を、それぞれの特定資産の実情に応じて修正する必要があるかどうか検討しなければならないことに留意が必要である。

7.標準文例について

第23号報告の平成20年の改正において、取引価格が価格の調査項目に追加されていることから、第23号報告別紙「特定資産の価格等に関する調査の結果」の文例中「(1)価格の調査」において、取引価格が追加され、「...取引価格...は、『特定資産の価格等に関する調査事項』の『取引価格』...の欄に記載したとおりである。」と変更になった。しかし、この文例だと会社から提示された取引価格についてどんな手続を実施したのかを明示しないまま保証を与えるような解釈が出来る文章にも読める。このため、第23号報告「別紙」の標準文例を次のように手を加えて記載することが考えられる(図1)。

図1 第23号報告「別紙」の標準文例の改訂案

第23号報告「別紙」の標準文例の改訂案

8.おわりに

店頭デリバティブ取引は図2が示すように平成21年から急激に取引件数が増加していることから特定資産の価格等調査の実施頻度も増加傾向となると考えられる。当該特定資産の価格等の調査は、会社から調査人への依頼により事後的に調査するため、価格等の調査が必要とされる特定資産かどうか、取得・譲渡等の行為が調査の対象となる特定資産に関する取引に該当するかどうか、会社が確認する必要があると考える。また、特定資産の価格等の調査結果に関する書類は、委託会社又は投資法人の法定帳簿(規則第26条第1項第10号又は第254条第1項第12号)として備置し、本調査の結果及びその方法の概要等についてファンドの運用報告書又は資産運用報告書で開示しなければならないとされている。

図2 店頭デリバティブ取引の取引件数

店頭デリバティブ取引の取引件数

出所: 日本証券業協会のデータを元に筆者作成

以上