2010.08.26 平成21年金融商品取引法改正等に伴う金融商品取引業者等における顧客資産の分別管理の改正点 |
1. はじめに
昨今のグローバルな金融市場の混乱へ対応し、我が国金融・資本市場の機能強化を通じて、金融・資本市場の利用者が安心して取引できる環境を整備し、より信頼と活力のある金融・資本市場を構築することを目的とした「金融商品取引法等の一部を改正する法律」(平成21年法律第58号)(以下「改正法」又は「法」という)が平成21年6月17日に成立し、平成21年6月24日に公布された。また、これに関連して、「平成21年金融商品取引業者等の一部改正に係る政令・内閣府令等」が平成21年12月22日に公表された。これらについては、一部の規定を除いて、平成22年4月1日から施行されている。
金融商品取引業者又は登録金融機関(以下「金融商品取引業者等」という)は、顧客から預託を受けた有価証券及び金銭並びに顧客の計算に属する有価証券及び金銭について分別管理義務を負っている(法43条の2)が、本稿では、上記のうち、利用者が安心して取引できる環境を整備するため、金融・資本市場の利用者保護の充実の観点から新たに導入された有価証券店頭デリバティブ及び外国市場デリバティブ取引への分別管理義務*1について、改正法、改正金融商品取引法施行令(平成21年12月28日政令第303号)(以下「施行令」という)及び改正金融商品取引業等に関する内閣府令(平成21年12月28日内閣府令第78号)(以下「業府令」という)その他改正金融庁告示(以下「改正法等」という)を概略する。
加えて、平成22年6月に一部改正された金融庁監督局による「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」及び平成22年3月に一部改正された証券取引等監視委員会事務局による「金融商品取引業者等検査マニュアル」、並びに認可金融商品取引業協会である日本証券業協会から平成22年3月に発行された「顧客資産の分別管理Q&A(改訂第2版)」における、有価証券店頭デリバティブ及び外国市場デリバティブ取引への分別管理義務に関連する改正点を把握し、改正法等以外に改正された行政監督指針及び検査マニュアル並びに金融商品取引業協会における実務的解説をフォローアップする。
*1 本稿においては、法43条の2に関連する顧客資産の分別管理義務の規定を対象とするため、以下については本稿の対象外である。
・金融商品取引業者等の行う一定の投資運用業運用財産と自己の固有財産及び他の運用財産とを分別管理する義務(法42条の4)。
・金融商品取引業者等の行うデリバティブ取引等(有価証券関連デリバティブ取引等に該当するものを除く)に関し、顧客から預託を受けた金銭又は有価証券その他の保証金又は有価証券、並びに顧客の計算に属する金銭及び金融商品の価額に相当する財産の区分管理等の義務(法43条の3)。
2. 改正法等に伴う金融商品取引業者等における顧客資産の分別管理の改正点
1) 有価証券店頭デリバティブ取引への分別管理義務の導入
法改正前においては、現物の有価証券取引及び市場デリバティブ取引のうち有価証券関連デリバティブ取引に関して、i)金融商品取引業者等が顧客から預託を受けた金銭及び顧客の計算に属する金銭、並びにii)金融商品取引業者等が顧客から預託を受けた一定の有価証券*2及び顧客の計算において金融商品取引業者等が占有する一定*3の有価証券について、分別管理が義務付けられていた。一方で、有価証券店頭デリバティブ取引については、主として金融機関の間で行われていたことから、顧客から預託を受けた金銭及び有価証券の分別管理は義務付けられていなかった。
しかし、近年、金融商品取引業者等の中には、個人の顧客を相手として有価証券店頭デリバティブ取引を行っているケースが見られ、当該個人の顧客が金融商品取引業者等に預託した金銭及び有価証券について、金融商品取引業者等において分別管理が行われない場合は、当該個人の顧客を相手とした金融商品取引業者等の経営破綻時に、個人の顧客の資産の適切かつ円滑な返還が確保されないおそれがあった。そのため、投資者保護の観点と資金効率を阻害しない観点を踏まえ、2)で後述する金融機関の間の取引など「投資家保護に支障がないと認められるもの」を除き、金融商品取引業者等が有価証券店頭デリバティブ取引に関して顧客から預託を受けた金銭及び有価証券についても分別管理を義務付けることとなった。
*2, *3 契約により金融商品取引業者等が消費できる有価証券その他政令で定める有価証券は除かれている。なお、本稿執筆時点では、当該政令で定める有価証券は規定されていない(法43条の2第1項2号)。
2) 有価証券店頭デリバティブ取引における投資者保護に支障がないと認められるもの
有価証券店頭デリバティブ取引において「投資者保護に支障がないと認められるもの」とは、具体的には、(i)第一種金融商品取引業者、登録金融機関、一定の適格機関投資家*4その他デリバティブ取引に関する専門的知識及び経験を有すると認められる者*5として内閣府令で定める者を相手方とする取引(業府令137条の2、施行令1条の8の6第1項2号イ、定義府令15条1項)、並びに(ii) 資本金10億円以上の株式会社(業府令137条の2、施行令1条の8の6第1項2号ロ、定義府令15条2項)を相手方とする取引(以下、次段落で説明する分別管理の対象から除かれる有価証券店頭デリバティブ取引に類するものとして金融庁長官が指定する取引と併せて「分別管理の対象から除かれる有価証券関連業に係る店頭デリバティブ取引等」という)、として規定されている(法43条の2)。
法改正前は、選択権付債券売買取引*6については、有価証券店頭デリバティブ取引又は外国市場デリバティブ取引に類するものとして金融庁長官が指定する取引に該当するものとして、分別管理の対象から除かれていた。法改正に伴い、当該選択権付債券売買取引については、有価証券店頭デリバティブ取引に類するものとして金融庁長官が指定する取引として、上段で説明している「分別管理の対象から除かれる有価証券関連業に係る店頭デリバティブ取引等」である場合に限り当該分別管理の対象から除かれる旨、金融庁告示が改正されている(施行令16条の15、金融庁告示75号)。すなわち、当該選択権付債券売買取引が、「分別管理の対象から除かれる有価証券関連業に係る店頭デリバティブ取引等」ではない場合は、分別管理の対象となっている。
本分別管理の義務は、有価証券関連業に加えて、有価証券関連業に付随する業務として業府令で定めるものに係る取引からも生じる(法43条の2第1項2号、業府令137条)。 有価証券店頭デリバティブ取引又は前述選択権付債券売買取引に関するものとしては、他の金融商品取引業者等の業務の代理を行う一定の業務(法35条1項9号)が有価証券関連業のうち店頭デリバティブ取引又は前述選択権付債券売買取引に係るものであり、当該取引が「分別管理の対象から除かれる有価証券関連業に係る店頭デリバティブ取引等」に係るものではない場合は、分別管理の対象となっている。
*4 適格機関投資家として、金融商品取引法第2条に規定する定義に関する内閣府令(平成21年12月28日内閣府令第78号)(以下「定義府令」という)10条1項各号に掲げる者が規定されている。但し、外国の法令に準拠して外国において一定の業を行う者(個人を除く)(定義府令10条1項25号)は当該適格機関投資家の定義からは除かれている
*5 外国の法令上、第一種金融商品取引業者、登録金融機関及び本稿脚注4における一定の適格機関投資家、に相当する者(定義府令15条1項3号)並びに外国の法令に準拠して設立された株式会社と同種類の法人で資本金の額が十億円相当以上の者及び一定の特定目的会社が規定されている(定義府令15条1項4号、金融庁告示53号)。
*6 当事者の一方が受渡日を指定できる権利(以下「選択権」という)を有する債券売買取引であって、当該選択権を有する当事者が、当該選択権を行使できる一定の期間又は一定の日に受渡日の指定を行わない場合には、当該債券売買取引に係る契約が解除される取引(改正前金融庁告示56号)をいう。
3) 外国市場デリバティブ取引への分別管理義務の導入
法改正前の施行令にて、分別管理の対象から除かれる有価証券関連取引として規定されていた「外国市場デリバティブ取引」が、改正施行令の条文上外れており、外国市場デリバティブ取引への分別管理義務が新たに導入されている(法43条の2第1項2号、施行令16条の15)。
当該規制の導入も、近年、個人の顧客を相手とした外国市場デリバティブ取引もみられるようになっているところ、外国市場デリバティブを扱う金融商品取引業者等の経営破綻時等において、顧客が金融商品取引業者等に預託した金銭等について分別管理がなされない結果、顧客資産の適切かつ円滑な返還が確保されない可能性があり、また、前述有価証券店頭デリバティブ取引について、法令で分別管理義務が課されていることとの均衡を図る必要があったことに対応したものである。
4) 顧客資産の分別管理等の管理の状況の監査
上記有価証券店頭デリバティブ取引及び外国市場デリバティブ取引を含む法43条の2第1項及び第2項の規定による管理の状況については、毎年1回以上定期的に公認会計士又は監査法人の監査を受けなければならないことになっている(法43条の2第3項、業府令142条)。
以上の改正法等に伴う有価証券店頭デリバティブ及び外国市場デリバティブ取引への新たな分別管理義務を図示すると、下記のとおりとなる。
図 有価証券店頭デリバティブ取引への分別管理義務の導入

(出典)金融庁ウェブサイト(PDFファイル)
5) 対象有価証券関連店頭デリバティブ取引等に係る顧客分別金の額の算定及び顧客分別金信託の要件
以下に掲げる金銭又は有価証券について、金融商品取引業者等が金融商品取引業(登録金融機関業務を含む)を廃止した場合その他金融商品取引業を行わないこととなった場合に顧客に返還すべき額として内閣府令で定めるところにより算定したものに相当する金銭(以下「顧客返還額」という)を、自己の固有財産と分別して管理し、内閣府令で定めるところにより、顧客返還額に相当する金銭を管理することを目的として、国内において、信託会社等に信託をしなければならない(法43条の2第2項)。
・省略(同項1号)
・顧客の計算に属する金銭又は金融商品取引業者等が顧客から預託を受けた金銭(同項2号)
・顧客の計算において金融商品取引業者等が占有する有価証券*7又は金融商品取引業者等が顧客から預託を受けた有価証券を担保に供する場合若しくは他人に貸し付ける場合の当該担保に供された有価証券*8(同項3号)
*7, *8 契約により金融商品取引業者等が消費できる有価証券その他政令で定める有価証券は除かれている。なお、本稿執筆時点では、当該政令で定める有価証券は規定されていない(法43条の2第1項2号)。
また同2項本文中の、「内閣府令で定めるところにより」については、以下(i)、(ii)でさらに詳細な規定がなされている。
(i)「内閣府令で定めるところにより算定したもの」について
①法43条の2第2項2号及び3号については、下記に関する取引(ア及びウにおいては「分別管理の対象から除かれる有価証券関連業に係る店頭デリバティブ取引等」に係るものではない取引)(以下「対象有価証券関連店頭デリバティブ取引等」という)に関して、顧客の計算に属する金銭又は金融商品取引業者等が顧客から預託を受けた金銭、又は顧客の計算において金融商品取引業者等が占有する有価証券又は金融商品取引業者等が顧客から預託を受けた有価証券を担保に供する場合若しくは他人に貸し付ける場合の当該担保に供された有価証券の時価、の合計額であり、顧客毎に、算定する。
ア 店頭デリバティブ取引(業府令140条の2第1号)
イ 外国市場デリバティブ取引 (業府令140条の2第2号)
ウ 選択権付債券売買取引(業府令140条の2第3号、施行令第16条の15)
②対象有価証券関連店頭デリバティブ取引等を決済した場合に顧客に生ずることとなる利益の額を含むものとし、当該対象有価証券関連店頭デリバティブ取引等を決済した場合に顧客に生ずることとなる損失の額を控除することができるものとする (業府令140条の3第1項)。
③金融商品取引業者等が顧客との間において一括清算(金融機関等が行う特定金融取引の一括清算に関する法律 (平成10年法律第108号)第2条第6項 に規定する一括清算をいう。)の約定をした基本契約書に基づき対象有価証券関連店頭デリバティブ取引等を行っている場合において、当該算定の時において当該顧客に一括清算事由が生じた場合に当該基本契約書に基づいて行われている特定金融取引について当該一括清算事由が生じた時における評価額で当該顧客の評価損となるもの(当該対象有価証券店頭デリバティブ取引等に係るものを除く)があるときは、当該基本契約書に基づき対象有価証券関連店頭デリバティブ取引等を決済した場合においても顧客の保護に支障を生ずることがないと認められる限りにおいて、当該評価損の額を控除することができる(業府令140条の3第2項)。
加えて、顧客分別金額の算定頻度については、下記のとおり規定されている。
④個別顧客分別金額及び顧客分別金必要額を毎日算定しなければならない(業府令141条の3)。
なお、外国市場デリバティブ取引に関して顧客より預託を受けた証拠金については、証拠金が海外の取引所又は清算機関に直接預託され、金融商品取引業者に滞留しない場合は、分別管理の義務が生じない(政令案及び業府令等への平成21年12月22日付のパブリックコメントへの金融庁の回答42番)。
(ii)「内閣府令で定めるところにより、信託会社等に信託をしなければならない」について
顧客分別金信託に係る契約上満たすべき要件が下記の項目において規定されている(業府令141条の2第1項)。
①委託者、受託者及び受益者 (同項1号)
②受益者代理人の選任(同項2号)
③複数の顧客分別金信託を行う場合の同一の受益者代理人の選任(同項3号)
④一定の要件に該当する金融商品取引業者等に代わってその権限を行使する場合(同項4号)
⑤当該顧客分別金信託に係る信託財産の運用の方法(同項5号)
⑥信託財産の元本の評価額が顧客分別金必要額に満たない場合のその不足額に相当する金銭の信託財産への追加(同項6号)
⑦金融商品取引業者等が信託財産である有価証券の評価額をその時価により算定するものであること(当該顧客分別金信託が信託業務を営む金融機関への金銭信託で元本補てんの契約のある場合を除く)(同項7号)
⑧顧客分別金信託が信託業務を営む金融機関への金銭信託で元本補てんの契約のある場合の信託財産の元本の評価額 (同項8号)
⑨一定の場合に顧客分別金信託に係る契約の全部又は一部の解約を行うことができないこと(同項9号)
⑩一定の場合に顧客分別金信託に係る契約の全部又は一部の解約に係る信託財産を委託者に帰属させるものであること。(同項10号)
⑪ 一定の場合に金融商品取引業者等が受託者に対して信託財産の運用の指図を行うことができないものであること(同項11号)
⑫一定の場合に顧客の受益権が当該受益者代理人によりすべての顧客について一括して行使されるものであること(同項12号)
⑬一定の場合に当該受益権に係る信託契約を終了することができるものであること(同項13号)
⑭一定の場合にそれぞれの顧客に支払われる金額(同項14号)
⑮顧客が受益権を行使する日における元本換価額が顧客分別金必要額を超過する場合の当該超過額の帰属先(同項15号)
6) 対象有価証券関連店頭デリバティブ取引等に係る顧客有価証券の分別管理
対象有価証券関連店頭デリバティブ取引等に関し、顧客の計算において金融商品取引業者等が占有する有価証券又は金融商品取引業者等が顧客から預託を受けた有価証券について、確実にかつ整然と管理する方法として内閣府令で定める方法により、自己の固有財産と分別して管理しなければならない。但し、契約により金融商品取引業者等が消費できる有価証券は除かれている(法43条の2第1項2号、業府令136条)。なお、当該内閣府令で定める方法(業府令136条)については、本改正法等によって改正は行われていないため、従来通りの方法となる。
3. 行政監督指針及び検査マニュアル並びに金融商品取引業協会におけるQ&Aでの改正点
1) 金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針
有価証券店頭デリバティブ取引及び外国市場デリバティブ取引への分別管理義務の導入に際して、金融庁監督局による金融商品取引業者又は登録金融機関への監督指針である「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」(以下「監督指針」という)が平成22年6月に一部改正されており、「有価証券店頭デリバティブ取引への分別管理義務」に関連した以下の箇所が改正されている。
店頭デリバティブ取引業者が有価証券関連店頭デリバティブ取引(業府令117条1項29号に規定する取引*9をいう。以下同じ。)に係る金銭その他の保証金を管理するにあたっての留意事項としては、Ⅳ-3-3-1*10に準ずるほか、「Ⅳ-3-3-1(1)②*11における必要額の計算に当たっては、金利調整額及び配当金調整額を加減算することに留意するものとなっている(監督指針 Ⅳ-3-3-1(2))。
*9 本規定は平成23年1月1日より施行される(業府令附則(平成21年12月28日内閣府令第78号)1条5号)。
*10 「Ⅳ-3-3-1店頭デリバティブ取引業に係る業務の適切性 法令遵守態勢」に係る留意事項である。
*11 「Ⅳ-3-3-1② 業府令143条の2第1項6号に規定する顧客区分管理必要額の適切な算定」に係る留意事項である。
2) 金融商品取引業者等検査マニュアル
有価証券店頭デリバティブ取引及び外国市場デリバティブ取引への分別管理義務の導入に際して、証券取引等監視委員会事務局による「金融商品取引業者等検査マニュアル」が平成22年3月に一部改正されており、「有価証券店頭デリバティブ取引への分別管理義務」に関連した以下の箇所が改正されている
(9.分別管理業務 (5) ③)。
③ 有価証券関連デリバティブ取引に係る保証金(第一種金融商品取引業者等を相手方とする場合等を除く。)については、以下の取扱いがなされているか。
イ 信託会社又は信託業務を営む金融機関へ信託しているか。
ロ 顧客ごとの顧客区分管理金の額及びその合計額である顧客区分管理の必要額について、毎日計算を行っているか。
ハ 信託財産の元本の評価額が顧客区分管理の必要額に満たない場合には、その日の翌日から起算して2営業日以内に不足額を信託財産に追加しているか。
3) 日本証券業協会の「顧客資産の分別管理Q&A(改訂第2版)」
改正法等に伴い、第一種金融商品取引業及び登録金融機関を協会員とする認可金融商品取引業協会としての日本証券業協会から「顧客資産の分別管理Q&A(改訂第2版)」(以下「Q&A」という)が平成22年3月に一部改訂されている。下記項目は、有価証券店頭デリバティブ及び外国市場デリバティブ取引への分別管理義務の導入に関連した改訂Q&Aであり、上記前述以外での説明個所は詳述を行う。
(i) 分別管理しなければならない取引(Q&A 2)上記2の 1)から3)関連。
(ii) 顧客分別金の計算を行う計算単位(Q&A 28-1)上記2の 5) (i)関連。
対象有価証券関連店頭デリバティブ取引等に係る顧客分別金の額及び顧客分別金必要額の算定については、顧客毎に計算しなければならなく、この算定額を合計した額が顧客分別金となる。
(iii) 対象有価証券関連店頭デリバティブ取引等に係る顧客分別金の計算の差異に、含まなければならないもの、又は控除することができるもの(Q&A 28-2)上記2の5)(i)②③関連。
(iv) 金銭の信託の運用対象(Q&A 41)上記2の5) (ii) ⑤関連。
対象有価証券関連店頭デリバティブ取引等に係る顧客分別金信託については、次のものに限って運用する。
①.次に掲げる有価証券の保有
(a)国債
(b)地方債
(c)公社、公庫及び公団の発行する有価証券その他政府がその元利金の支払を保証しているもの
(d)信用金庫法54 条の2の4・1項の規定による全国連合会債、長期信用銀行法8条の規定による長期信用銀行債、農林中央金庫法60条の規定による農林債及び株式会社商工組合中央金庫法33条の規定による商工債
(e)金融機関の合併及び転換に関する法律8条1項の規定による特定社債
(f)貸付信託法に基づく受益証券で元本補てんの契約のあるもの
(g)担保付社債(償還及び利払いの遅延のないものに限る。)
(h)中期国債ファンド、MMF、MRFの受益証券(顧客分別金必要額の3分の1に相当する範囲内に限る。)
②.次に掲げる金融機関への預金又は貯金(金融商品取引業者等が当該金融機関である場合は、自己に対する預金又は貯金を除く。)
(a)銀行
(b)信用金庫、信用金庫連合会、労働金庫、労働金庫連合会
(c)農林中央金庫、株式会社商工組合中央金庫
(d)信用協同組合、信用協同組合連合会、業として預金又は貯金の受入れをすることができる農業協同組合、農業協同組合連合会、漁業協同組合、漁業協同組合連合会、水産加工業協同組合、水産加工業協同組合連合会
③.コールローン
④.受託者である信託業務を営む金融機関に対する銀行勘定貸
⑤.信託業務を営む金融機関への金銭信託で元本補てんの契約のあるもの
(v) 顧客分別金必要額の差替えの方法(Q&A 47)上記2の5)(ii)⑥⑨関連。
①信託財産の元本の評価額が顧客分別金必要額に満たない場合には、満たないこととなった日の翌日から起算して二営業日以内に、金融商品取引業者等によりその不足額に相当する金銭が信託財産に追加されるものであること。
②次に掲げる場合以外の場合には、顧客分別金信託に係る契約の全部又は一部の解約を行うことができないものであること。
イ 信託財産の元本の評価額が顧客分別金必要額を超過する場合において、その超過額の範囲内で顧客分別金信託に係る契約の全部又は一部の解約を行うとき。
(vi)上記(v)①の信託財産の元本の評価額が顧客分別金必要額に満たない場合について下記の通り、対象有価証券関連店頭デリバティブ取引等における取り扱いも追加されている。
① 差替計算基準日における信託財産の元本の評価日の計算主体 (Q&A 55) 上記2の5)⑥⑦⑧関連
② 信託財産である有価証券の評価額の計算方法(Q&A 56&57) 上記2の5) ⑦関連
(vii) 顧客分別金信託を解約又は一部解約できる場合(Q&A 66)上記2の5) ⑨関連
①信託財産の元本の評価額が顧客分別金の必要額を超過する場合に、その超過額の範囲内で信託契約の全部又は一部の解約を行う場合
②他の顧客分別金信託に係る信託財産として信託するため、顧客分別金信託契約の全部又は一部の解約を行う場合
(viii) 通知金融商品取引業者になった場合の留意事項(Q&A 69) 上記2の5)④⑪関連
対象有価証券関連店頭デリバティブ取引等に係る顧客分別金信託の面では、金融商品取引業者が業府令141条の2第1項4号イからトまでのいずれかに該当することとなった場合は、次の事項に留意する。
①弁護士等である受益者代理人のみが、その権限を行使するものであること(当該受益者代理人が、他の受益者代理人が権限を行使することを認める場合を除く。)
②その金融商品取引業者等が、信託の受託者に対して信託財産の運用の指図を行うことができないものであること(ただし、弁護士等である受益者代理人が特に認める場合を除く。)
(ix) 対象有価証券関連店頭デリバティブ取引等の分別管理方法 (Q&A 88-2)
①証拠金(現金)
証拠金として差し入れた場合は、顧客分別金の対象となる。但し、顧客に外国市場デリバティブ取引のサービスを提供している場合、外国の取引所又は清算機関に直接預託され、金融商品取引業者に滞留しない場合については、顧客分別金の対象とする必要はない。
②証拠金代用有価証券
証拠金代用有価証券については、分別管理の対象となる有価証券として管理する必要がある。
③評価益
計算上の利益の額(評価益)については、顧客が引き出さない場合は、金融商品取引業者に滞留するため、顧客分別金の対象となる。評価損は、顧客分別金の額から控除することができる。
④その他顧客の計算に属する金額
顧客分別金必要額の計算に当たっては、金利調整額及び配当金調整額を加減算する。
以上
参考文献
・「規制の事前評価書 - 有価証券店頭デリバティブ取引への分別管理義務の導入」 平成21 年3 月5 日 金融庁総務企画局市場課
・「規制の事前評価書 - 外国市場デリバティブ取引への分別管理義務の導入」 平成21 年10 月16 日 金融庁総務企画局市場課
・「平成21年金融商品取引法改正等に係る政令・内閣府令の概要」平成21年12月 金融庁総務企画局
・「平成21年金融商品取引法等の一部改正に係る政令案・内閣府令案等に対するパブリックコメント」(平成21年12月22日)金融庁
・金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針 平成22 年6月 金融庁監督局証券課
・金融商品取引業者等検査マニュアル 平成22年3月 一部改正 証券取引等監視委員会事務局
・『顧客資産の分別管理 Q&A (改訂第2版)』(PDFファイル)平成22年3月 日本証券業協会
・『取引所の相互乗入れ・特定投資家と一般投資家の移行手続の見直し等の概要』「旬刊商事法務」 No.1875(平成21年9月5日)

