2010.03.26 医師会等における公益法人制度改革対応時の留意点 |
1. はじめに
平成21年12月1日に公益法人制度関連三法が施行され、現在、全国の旧民法第34条法人(特例民法法人)がその対応に迫られている。
一口に公益法人と言っても様々な活動を行っており、その規模・内容は千差万別である。公益法人制度改革への対応に関する書籍等は既に数多く出版されているため、本稿においては医師会や歯科医師会等の医療系専門家団体(以下、医師会等という。)に焦点を当て、公益法人制度改革対応における特徴的な留意点を取り上げる。
なお、本文中の意見に関する部分は私見である。
※文中で使用している略字の説明については以下のとおり。
FAQ :内閣府公益認定等委員会 よくある質問(FAQ)
認定法 :公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律
法人法 :一般社団法人及び一般財団法人に関する法律
2. 医師会等の類型と役割
医師会等の団体に類型されるものとして、医師会・歯科医師会・看護協会・放射線技師会等の医療系各種専門技師会等が挙げられ、主な役割は以下のものが考えられる。
- 一般市民向けの医療情報の提供等の普及啓蒙活動
- 医師・技師等への専門知識提供等の専門家教育活動
- 地域の医療・保健・福祉活動への専門家等の連携・調整
- 会員相互の交流・互助
- 開放型病院や検査センター等の施設運営
公益法人制度改革へ対応するためには、まず最初に各法人の実施している活動を公益事業、収益事業、共益事業に仕分けを行い、公益社団法人あるいは一般社団法人への移行可能性を検討することとなる。5の施設運営に関する事業については、各地域における施設の役割は異なるため、法人によって公益事業として位置付けるか収益事業として位置付けるか判断が分かれる可能性がある。
また、当然のことながら各法人によって其々の事業が占める割合は異なっており、同様の事業を行っている法人であっても同じ法人形態を選択できるとは限らない。移行する法人形態による影響も異なるため、各法人独自の検討が重要となる。
3. 公益法人制度改革への対応における留意点
今回の制度改革においては、公益社団法人か一般社団法人かという法人形態の選択に注目が集まりがちであるが、法人形態にかかわらず対応しなければならない改正点も多い。多くの改正点の中でも医師会等において特に特徴的な留意点を以下に記載する。
(1) 会計
公益法人制度改革への対応においては、財務的な判断が重要となる。
公益社団法人への移行申請をする場合における公益目的事業比率、収支相償等の判断や、一般社団法人への移行申請をする場合における公益目的支出計画の策定等については、あくまで現在の会計処理が適切に行われている事が前提となっているため、公益法人制度改革の対応の検討を始める前に改めて一般的な会計基準に基づいた処理が行われているか確認することが重要である。
- 受託事業等の会計処理
多くの医師会等において、自治体等から休日診療や各種検診、学校保健関係の事業、急患センター運営等を契約主体として受託している法人も多い。しかしながら、法人によっては受託事業が全く法人の会計に反映されていないケースも見受けられる。法人の会計に反映させるか否かは、事業内容や委託契約書の内容に因るため一概には言えないが、顧問会計士・税理士に相談し、現在の会計処理が適切に行われているか再確認していただきたい。 - 任意設置機関の会計処理
一部の医師会等においては、支部・部会等の法律に定めのない任意の機関を有する法人もある。しかしながら、規程上では支部・部会等を法人内の機関として位置付けながら、法人の会計には含まれていないケースも見受けられる。支部・部会等を法人内の機関として扱う場合においては、支部・部会等の会計も法人の会計に取り込み、各年度の計算書類等に反映させる必要がある。(FAQIII-1-①)
公益社団法人に移行した場合は、その部会・支部等の財産は法人全体の財産となり、部会・支部等を解散したとしても、部会・支部の構成員に財産を分配することは当然できなくなる(認定法第5条4項)。また、非営利型の一般社団法人に移行した場合においても、支部・部会解散時の財産の分配は非営利法人の要件に抵触する恐れがある(法人税法施行令3条1項3号、3条2項6号)。(任意設置機関のガバナンス上の留意点については後述する。)
(2) ガバナンス
今回の公益法人制度改革において、法は、法人のガバナンスを確保するため、理事・監事等の機関を法定し、それらの権限・責任・選解任手続等について規律を設けることにより其々の機関の位置付けを明確化し、併せて機関相互の権限関係をも規定することにより適切な法人運営がなされるように図っている。そのため、法人の運営方法について、法の規定に合致するよう見直さなければならない部分も多いが、医師会等に特徴的と思われる部分を取り上げる。
- 代議員制
医師会等は多数の会員によって構成されるケースが殆どであるため、代議員制を採用している法人も多いと思われる。
移行後、代議員制を採用する場合には、従来から社員から会費を支払う者として「会員」という資格を設けた上、その資格を有する者(会員)の中から法人法上の「社員(代議員)」を定めるという規定会員(従来の社員)を定款に設けることにより、従来の「社員」の範囲を変更する方法が考えられるが、法人法の趣旨に反しないよう以下の点に注意が必要である。
- 「社員」(代議員)を選出するための制度の骨格が定められていること。
- 各会員について、「社員」を選出するための選挙(代議員選挙)で等しく選挙権及び被選挙権が保障されていること。
- 代議員選挙が理事及び理事会から独立して行われていること。
- 選出された代議員が責任追及の訴え、社員総会決議取消しの訴え等法律上認められた各種訴権を行使中の場合には、その間、当該代議員の任期が終了しないこととしていること。会員に「社員(代議員))」と同等の情報開示請求権を付与すること。(FAQIV-3-(1)-①)
図表1 新制度における代議員制度導入例

上記方法で「代議員制」を採用することは可能であるが、現在の会員(=社員)の権限を奪うことにもつながるため、比較的少人数で構成されている法人は代議員制の採用の是非も含め、法人全体のガバナンス体制を検討して頂きたい。
- 任意設置機関の位置付け
今回の制度改革においては、法人のガバナンスを確保するため、法人の重要事項の意思決定、業務執行の決定、職務の執行を行う機関として、社員総会・理事会等の機関を定め、機関相互の権限関係を規定することにより適正な法人運営がなされるよう図っている。
法人内に支部・部会等の任意設置機関を設けて運営する場合は、法律上の機関である理事会、社員総会等の権限を奪うことがないように、当該機関の名称、構成及び権限を明確にする必要がある(移行認定又は移行認可の申請に当たって定款の変更の案を作成するに際し特に留意すべき事項についてII-2)。
また、法人のガバナンス体制を見直すに当たり、従来、法人内の任意設置機関を法人外の人格なき社団として独立させるケースも想定されるが、名称・法律行為等において制約を受けるため注意が必要である。
図表2 任意設置機関の位置付け

- 役員の3分の1規定
認定法第5条第11項で定められている「他の同一の団体の理事又は使用人等の合計数が理事総数の3分の1を超えないものであること」について、「他の同一の団体」の対象は法人格の有無は問わないため権利能力なき社団も含まれることに留意する(FAQ IV-2-③)。
一部の医師会等では協同組合や信用組合、関係の深い人格なき社団等と役員を兼務しているケースも想定されるため、これらの法人が公益認定を目指す場合には、役員構成を見直しする必要がある。
(3) 税務
主に平成20年度の税制改正において、公益法人制度改革に合わせた各種の変更がなされたが、医師会等が移行法人形態を検討するに当たり影響が大きいと思われる開放型病院等の法人税の取り扱い及び固定資産税・都市計画税(以下、固定資産税等)について取り上げる。
- 開放型病院等に法人税法上の取り扱い
公益社団法人に移行した場合、公益目的事業としたものは法人税法に規定する収益事業であっても非課税となるが、医師会・歯科医師会等が開設する開放型病院・診療所については非営利一般法人に移行した場合には、一定の条件で法人税法上の収益事業から除外される規定が設けられた(法人税法施行令5条1項29号ワ、法人税法施行規則)。
図表3 開放型病院等の法人税法上の扱い

図表4 非営利一般法人に追加的に求められる開放型病院の非課税の要件

- 固定資産税等
医師会等が設置する各種施設に対する固定資産税等については、従来から地方自治体ごとに条例で各種減免措置等定められているが、従前、非課税措置等が講じられている施設については公益法人制度改革に合わせ以下の措置が採られている。
- 公益社団法人が設置する施設について、旧民法第34条法人が設置するものと同様に非課税。
- 一般社団法人に移行した法人が設置する施設で、移行の日の前日において非課税とされていたものについて、平成25年度までの間に検討を行い適切な措置を講じるとされ、平成25年度分まで非課税措置が継続。但し、看護師、准看護師、歯科衛生士その他政令で定める医療関係者の養成所において直接教育の用に供する固定資産については、非営利一般法人に移行した場合は平成25年度以降も非課税措置が継続される(地方税法348条2項9の2)。
4. 最後に
平成25年11月の移行申請期限までに後3年半となった。医師会等においても、今後申請に向けての準備が活発になるものと思われる。現在、様々な業態の公益法人へのコンサルティングを行っているが、その経験上、医師会等の会員に対する説明や会計・規定類の整備等の準備期間を勘案すると移行申請までに1~2年程度は必要と思われ、残された時間はあまり長くはない。
本稿では医師会等における特徴的な留意点を中心に取り上げたが、各法人の移行方針の決定、体制整備の一助になれば幸いである。
以上

