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2008.10.29 医療機関の経営と公益性 その2

著者: 大阪事務所 ヘルスケアコンサルティング部 公認会計士 纐纈 和雅

医療機関の経営と公益性 その1」に引き続き、医療機関の経営において、一つのキーワードとなっている『公益性』に着目し考察する。なお、本文中の意見に関する部分は私見である。

1.社会医療法人の認定要件

平成20年4月に改正医療法施行規則が施行され、図表1に示した特別・特定医療法人という一般の医療法人よりも高いハードルをクリアしている医療法人を中心に社会医療法人化に向けた動きが本格化している。

図表1 種類別医療法人数(平成20年3月末現在)
種類別医療法人数

旧医療法により認められていた特別医療法人は、改正医療法の経過措置により平成24年3月までは存続が認められているが、その後は社会医療法人へ移行しない限り一般の医療法人となるため、特に収益事業を行っている場合には、移行するかしないかの判断を迫られることになる。一方、特定医療法人は租税特別措置法に基づく制度のため、現行どおり存続する。
図表2に示すとおり、社会医療法人の認定要件は、基本的事項については従来の特定・特別医療法人に求められる要件とほぼ同等であることから、必要な見直し・整備に多大な労力を割く事態にはならないと思われる。

図表2 認定要件の比較
認定要件の比較

しかし、社会医療法人に求められる本質は「高い公益性」にあり、「高い公益性」が認められるための業務基準を充たさなければ認定を受けられない。そこでまずは、次の図表3に示す業務基準を充たすかどうかをチェックする必要がある。そのうえで、社会医療法人化を目指すかどうかの方針を決定し、必要な対策を講じることとなる。
なお、単に実績があるだけでなく、都道府県が作成する医療計画に医療提供施設としての記載が求められることに留意しなければならない。

図表3 救急医療等確保事業に係る業務の基準
救急医療等確保事業に係る業務の基準

2.公益法人の公益認定

平成20年12月から始まる新公益法人制度では、医療の提供はどのような取扱いとされるかを考察してみる。
いわゆる公益法人認定法では、(1)別表に掲げられた公益に関する23事業であり、(2)不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するものを公益目的事業とし、その公益目的事業の割合が50%以上であるなどの要件を充たす場合に、公益社団法人・公益財団法人として認定されることとなっている。しかしながら、23事業の中に「医療」という文言は規定されていない。つまり、医療の提供だけでは公益目的事業とは認められないということを意味する。これは「病院、診療所は公益事業目的か」というパブリックコメントの意見に対する、以下の公益認定等委員会の回答からも推定されるところである。

医療行為であるからといって直ちに公益目的事業となるわけではありません。
サービスが一般的に提供されている場合、個別事業の公益性については他の機関が提供するサービスといかなる点が異なっているか個別に説明いただくことがあり得ます。

この趣旨は、医療法において医療法人を一般の医療法人と公益性の高い医療法人、すなわち社会医療法人とに区分する趣旨に通じている。つまり、社会的にみれば「医療」は公共財としての性格を持ち、その意味で一定の公益性は認められるものの、医療の提供を生業とする者の存在を考慮すると、医療の提供=公益目的とはならないのである。社会医療法人が「高い公益性」を有しているものとして一般の医療法人から区別されるのと同様に、医療を提供する社団・財団法人の中でも「高い公益性」を有しているものが一般の社団・財団法人から区別され、公益認定を受けられるのである。
そう考えると、医療を提供する一般社団・財団法人が公益認定を受けるための要件は、次のように整理される。

(1)公益性の高い医療を提供している
(2)福祉目的等をもった医療を提供している

(1)は社会医療法人の趣旨に準拠した考え方であり、図表3に示した医療を行っている実態があることが公益認定を受けるための要件となろう。
(2)は事業目的の原点に立ち返る考え方であり、公益法人認定法の別表に掲げられている。
一.学術及び科学技術の振興
三.障害者若しくは生活困窮者又は事故、災害若しくは犯罪による被害者の支援
四.高齢者の福祉の増進
八.勤労者の福祉の向上
十九.地域社会の健全な発展
に資する医療、言い換えれば、社会福祉法人や宗教法人、学校法人などと同じ目的で医療を提供している実態があることが公益認定を受けるための要件となろう。この場合、実態があることをどのように説明できるかが肝要となる。

3.法人形態の移行

図表4のとおり、医療施設の開設者には様々な法人形態があり、根拠となる法律が異なっている。そのため、根拠法が異なる法人格への移行は、旧法人の解散・新法人の設立として扱われることになる。

図表4 開設者別病院数(平成20年3月末現在)
開設者別病院数

社会医療法人は、医療法を根拠法として法人格が認められる法人である。したがって、医療法人が社会医療法人へ移行する場合は、同じ医療法下での移行であり、法人格は継続する。ただし、法人税法上は、医療法人が解散し、社会医療法人が設立されたとみなされることになっている。
一方、公益社団・財団法人は、一般社団・財団法人法を根拠法として法人格が認められた法人である。現在の民法法人は平成20年12月をもって一旦特例民法法人へと移行する。ここでは法人格は継続するが、特例民法法人から公益社団・財団法人ないし一般社団・財団法人へ移行する場合は、根拠法が変わることになる。すなわち、法人格が変わるということであり、特例民法法人を解散し、一般社団・財団法人を設立することになる。そのため、一定の手続が必要となるが、中でも公益目的支出計画の作成という新たな手続が求められている。
税務面のメリットを比較した場合、図表5のとおり、公益社団・財団法人よりも社会医療法人の方が税率面等で若干優遇される。特例民法法人にとっては、法人格が変わること、一定の手続が必要なこと、社会医療法人の認定要件が具体的であることから、最終目標を公益認定におく特例民法法人にとっては、社会医療法人への移行も一つの選択肢として挙げられよう。しかしながら、この場合、残余財産の帰属先に医療法人が含まれていないと、一旦解散となった際に必要な財産を移管できないこととなるため、受け皿となる医療法人を用意しておく必要がある。また、社会医療法人の認定要件を充たすためには医療法人としての実績が必要とされることから、実際に移行するまでには一定の期間を要することとなり、現実的ではないと思われる。

図表5 医療機関の開設主体別に見る主な課税の取扱い
医療機関の開設主体別に見る主な課税の取扱い

4.おわりに

公益法人改革という大きな流れの中で、医療法人や医療機関を経営する民法法人のあり方も抜本的な見直しが行われた。社会医療法人については、認定事例が出てきており、今後社会医療法人を目指す医療法人には大いに参考となろう。一方、民法法人については、これからという状況にあり、また、社会医療法人と比べると認定要件が具体的でない。
本稿では、医療機関の経営において何が公益とされるのかを整理した。公益認定を目指す民法法人においては、今後、関係機関(公益認定等審議会)との事前協議が重要になると思われる。その際の考え方の一助になれば幸甚である。

以上