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2010.11.08 国際公会計基準の現状と日本の地方公共団体への適用状況について

著者: 公認会計士 小室 将雄

平成22年10月28日、「今後の新地方公会計の推進に関する研究会」の第2回会合が開催された。議題は「国際公会計基準(IPSAS)の現状について」であり、国際公会計基準審議会委員(日本代表)の関川委員より説明があり、種々の質疑応答がなされた。本稿では、第2回会合での議論や国際公公会計基準を採用している諸外国の状況も踏まえ、日本の地方公共団体への適用について考えてみたい。

1.国際公会計基準(IPSAS)の現状

国際会計士連盟(IFAC)に常設された国際公会計基準審議会(IPSASB)において作成されている「財務報告(注1)」に関する基準であり、現在では第1号(財務諸表の表示)から第31号(無形資産)までが公表されている。民間企業の国際会計基準(IAS・IFRS)をベースに基準が作られているが、公的セクター特有のテーマ(税収や補助金の取り扱いなど)については別途の検討がなされ、現時点ではほぼ全体的な会計基準の作成が完了している状況にある。現在はIPSASの「概念フレームワーク」設定について、集中的に議論が行われている。

IPSASは先進諸国を中心に採用が進んでいると言われるが、純粋にそのまま適用している国等はスイスやEUなどの国際機関に限られており、多くはそれを参考とした基準を各国で作成して適用しているのが現状である。

また、公的機関も原則として民間企業と同一の会計基準を適用する(トランザクション・ニュートラル)というイギリスやニュージーランドのような国もある。しかしながら、IFRSの採用が各国で進む一方、IFRSが資本市場を重視した会計基準としての性格を一層強めている中で、IFRSの採用とトランザクション・ニュートラルの両立は難しくなるのではないかと考えられる。ニュージーランドでは公的セクターへはIPSASの採用を検討中であるが、これにはそのような背景があるものと思われる。

2.IPSASの日本の地方公共団体への適用状況について

現在の日本の地方公共団体においては、その多くで新地方公会計モデル(基準モデル・総務省方式改訂モデル)が採用されて財務書類が作成され、また東京都をはじめとして一部の地方公共団体では独自の会計ルールを設定して財務書類の作成が行われている。このようにいくつかの財務書類作成基準はあるものの、研究会ではいずれもIPSASに準拠しているとは言い難く、出納整理期間を織り込んでいる点をはじめ、IPSAS準拠の基準とはかなりのギャップがあるとの報告があった。

諸外国においてもIPSASをそのまま適用している国等はほとんどないことから、仮に統一した公会計基準を作るということになっても、IPSASを参考にしながら、日本の地方公共団体に適したあり方を議論することになるのではないかと思われる。

3.IPSAS導入で課題は解決するか

民間企業の発生主義・複式簿記の会計に携わった方々、また勉強を積み重ねている方々からは、「複式簿記(IPSAS)を採用していない先進国は日本だけ」「複式簿記を採用していないから無駄遣いが起こる」「複式簿記を採用していないから改革が進まない」といった声が聞こえてくることがある。しかしながら、複式簿記を採用しているであろう欧米諸国の国家や地方公共団体でそのような問題が発生していない、あるいは課題が解決しているかというと、そうでもないのはここ最近のマスコミ報道でも明らかになっているところである。

すなわち、会計制度が複式簿記でないから問題が山積するのではなく、また複式簿記を採用したから課題が解決するものでもなく、問題が発生しないように、あるいは課題を解決するように「しくみ」を構築できるか、その「しくみ」を使いこなせるかどうかということがポイントであろう。

複式簿記の本格的な導入や会計基準の統一も重要な論点ではあるが、それが実現したとしても本質的な課題に結びつくかどうかは未知数である。筆者が数多くの地方公共団体の新地方公会計の推進支援に携わっている実感として、現在の新地方公会計モデルを使いこなそうという意識が高い自治体は、地道な努力を積み重ね、それなりの効果を着実に積み重ねているように感じる。形式的な簿記制度のみの導入という見た目の良さではなく、その中身で評価されることこそ、それぞれの地方公共団体が目指すべきところではないだろうか。

※本文中の意見に関わる部分は私見である。

以上

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